シャープのCOCOROBOが当初計画を大きく上回る出足に

~今年秋にはUSB活用の周辺機器も投入へ
シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部・阪本実雄事業部長(写真はCOCOROBO発表会時のもの)

 6月7日に発売になったシャープのロボット家電「COCOROBO(ココロボ)」が、当初計画の3倍以上の売れ行きをみせているという。

 シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部・阪本実雄事業部長は、「初年度10万台の販売目標に対して、順調な滑り出しになっている」と自信をみせる。

 COCOROBOは、掃除機能を搭載したシャープ初のロボット家電。シャープの独自開発による人工知能「ココロエンジン」の搭載により、電気の充電量や、部屋の温度、掃除の状況、ユーザーの使用状況に応じて、COCOROBOが毎日違った反応をするなど、これまでの家電製品とは異なった動作をする点が特徴だ。

 同社によると、6月は約3割のシェアを獲得。7月はそれを上回るシェアになっているという。

 購入者のプロフィールを分析しきれている状態ではないとするが、「新たなガジェットに高い関心を持つ層のほか、30~40代の共働き世帯、シニア層などの購入が目立つ。また、愛玩道具として、購入する層も少なくない」(阪本事業部長)としている。

「COCOROBO(ココロボ) RX-V100」。スマートフォンとの連携機能も搭載する充電台にセットしているところ。掃除後は自動で充電台に戻る

 COCOROBOの開発に携わったシャープ A1269プロジェクトチーム・妹尾敏弘係長は、「一般的な掃除機では、自分で掃除をすることが難しいという目が不自由なシニアのユーザーが、毎日、COCOROBOに声をかけて、掃除をしてもらっているという利用例があった」とする。

 阪本事業部長も、「愛玩道具として購入した場合、当初はCOCOROBOの『癖』のようなものがわからず、文句をいいたくなる状況にあるようだが、2日ほど経過すると、掃除のときにどんなものをよけておいた方がいいのか、どんな会話ができるのかといったことが理解できる。最初は文句をいっていても、次にはCOCOROBOに掃除を任せておいても大丈夫という意識に変わり、続けて、会話を通じてかわいいという想いが生まれるという変化がみられている。購入者の意識が短期間で大きく変わるのもCOCOROBOの大きな特徴」と語る。

COCOROBOが売れている要因とは?

 阪本事業部長は、予想を上回る売れ行きを見せている要因として、いくつかの理由をあげる。

 1つは、日本のメーカーが開発した製品であることへの期待感、安心感だという。

 「日本の家屋の状況を知り尽くしたシャープの掃除機づくりのノウハウによって開発された製品であることが評価をいただいている。超音波センサーによって壁にぶつからずに家具を痛めないこと、HEPAクリーンフィルターとプラズマクラスターイオンにより、空気にもこだわった設計としている点など、日本のメーカーならではのこだわりが受けている。ダストカップのゴミを捨てる際にも手を汚さないという点も人気の要因」と語る。

 2つめには、吸い込み能力の差だという。

 COCOROBOでは、大風量を生み出す高速回転ターボファンを搭載。本体前方のサイドブラシと回転ブラシが、かき込んだゴミを、高速回転ターボファンで吸い込み、フローリングの目地に詰まった細かなゴミまでキャッチする。

 「ロボット掃除機はゴミを吸わないのではないかという意識が強かった利用者にとって、しっかりとゴミを吸い取る能力が受けている」という。

 そして、COCOROBO特有のココロエンジンに対する評価も高い。

 「声を出して会話をしてくれるという点で、これまでの家電製品にはない楽しさを感じていただいている。ココロエンジンの評価には手応えを感じる」とする。

 発売当初から競合製品に対して割高である点がマイナスポイントになると懸念されていたが、「確かに本体価格という点では、COCOROBOの方が高い。しかし、運用コストで比較した場合、COCOROBOのリチウムイオン電池は、1,500回の充電が可能であり、毎日使っても約3年間の寿命がある。それに対して競合他社はニッケル水素電池を採用しており、充電回数は300~500回。毎日使えば、1年ちょっとで交換しなくはならない。電池の交換費用を考えれば、COCOROBOが高価であるというわけではない」と語る。

 現時点でのCOCOROBOの販売量の約3割が、無線LANやUSBポートなどを搭載した上位モデルであり、「予想以上に上位モデルの販売比率が高い」と、高価格帯での売れ行きも好調だ。

無線LAN、カメラ、ボイスコミュニケーション機能などを省略した「RX-V80」本体サイズはRX-V100(左)と同等だが、スマートフォン連携機能などが省略される

 量販店での好調ぶりに加えて、地域販売店や、百貨店外商部などでの販売が好調だという。

 「これまで量販店店頭では、COCOROBOの店頭展示用モードとして、3分に1回しゃべるようにしていたが、7月以降、販売店側の要請もあり、1分間に1回しゃべるようにし、訴求力を高めている。展示の手法を変更できるという点でも、これまでの家電にはない、COCOROBOならではの特徴だといえる」という。

 阪本事業部長は、今後の計画として、今年秋にも、COCOROBOの上位モデルに搭載しているUSBポートを利用した周辺機器を発売する予定であり、新たな用途提案により、販売に弾みをつけたい考えだ。






(大河原 克行)

2012年7月24日 00:00