“ロボットはカッコ良いだけでは成り立たない”、iRobot CEOコリン・アングル氏

~執事ロボットを披露

“日本のユーザーは世界で一番要求が多い”

iRobot CEOのColin Angle氏(コリン・アングル)と「ロボット掃除機アイロボット ルンバ700シリーズ」

 ロボット掃除機「ルンバ」などで知られる米国のiRobot(アイロボット)のCEO(最高経営責任者)のColin Angle氏(コリン・アングル)は、来月7日より日本で発売するロボット掃除機「ロボット掃除機アイロボット ルンバ700シリーズ」のプレゼンテーションを27日、都内で開催した。

 ロボット掃除機「ルンバ」は、2002年(日本では2003年より)の発売以来、世界で累計600万台を売り上げたロボット掃除機で、日本ではアメリカに次ぐ販売台数20万台を達成している。本体には、アイロボット社独自の「人工知能 AWARE」を搭載し、数十のセンサー(センサーの数は未公開)により、室内を検知、自動で掃除を行なう。

 10月7日より発売する「ルンバ700シリーズ」では、人工知能 AWAREや数十のセンサーによって得た情報をより素早く処理できる「高速応答プロセス iAdapt(アイ・アダプト)」を新たに搭載した点が特徴。これにより、部屋の環境や家具の配置なども考慮して、常に最適な掃除をできるほか、ゴミを残さず除去するために同じところを平均4回掃除するという。

 コリン・アングル氏は、700シリーズの開発に当たって、日本のユーザーの声を多く取り入れた事を明かした。

 「日本のユーザーは世界のどのユーザーよりも要求が多い、素晴らしいユーザーだ。それはつまり、日本のユーザーが認めた製品であれば、世界のどの地域にでも自信を持って持っていけるということでもある」と話した。

 具体的には、畳にも対応する掃除力や使い勝手、デザイン面などにおいて、日本ユーザーの声を多く取り入れているという。

 実際、700シリーズでは、ブラシや吸引システムを改善したほか、0.3μmの微細なゴミを99%以上除去する「ダストカットフィルター」を対応するなど、排気面にも配慮。ダスト容器がゴミで一杯になるとランプで知らせる「ゴミフルサイン」機能なども新たに搭載している。

コリン・アングル氏自らがルンバを手にとってプレゼンテーションを行なった10月7日より日本で発売される「ロボット掃除機アイロボット ルンバ700シリーズ」左からエントリーモデル760、スタンダードモデル770、ハイエンドモデル780クリアモデル

“ロボットは人の役に立つものでなければならない”

福島第一原発に提供したパックボット

 一方、iRobotは、3月に発生した東日本大震災による原発事故の事後処理にロボットを提供したことでも注目を集めた。これについてコリン・アングル氏は、「昔はロボットというと、夢のあるもの、かっこいいものというイメージが強かったが、私たちの目指すロボットはそうではない。人の役に立つもの、実用性があるものでなければいけない。今回の福島原発の事故ではそれを証明できたと思う」と語った。

 また、同社が福島原発にロボットを提供してから、実際に使用するまで約1カ月の時間が経っていたことについては、「あくまで、安全性を優先しなければならなかったから。ロボットが到着してから、東京電力の社員に操作を教えなければいけなかったし、爆発の可能性がある以上、慎重に事を進める必要があった」と説明した。

 会場では、原発事故の事後処理にも活躍したパックボットが登場。プレゼン中のアングル氏に水を届けるなどのパフォーマンスも披露していた。

コリン・アングル氏は、戦争などでも同社のロボットが活躍した例を挙げ、「危険な場所にこそロボットが行くべきだ」と語るプレゼンテーション中のコリン・アングル氏のもとにパックボットが水を届けるパフォーマンスもルンバの新モデルにかかっていた布を取り除く役目もパックボットが担当した

 プレゼンテーションでは、iRobotの今後の方向性についても触れられた。まず、紹介されたのは、表面の硬度を変えることで、物をつかむロボットアーム。コリン・アングル氏は、「映画のターミネーター2に登場する変形するロボットを見て『これかっこいいね』というところから始まった」とアイディアを語った。

 「ロボットアームは、指などがついているわけではなく、塊で物を捕えるため、構造が単純で、色々なものに応用できる。まだ開発過程ではあるが、このアイディアがどう進化するのか期待して欲しい」

表面の硬度を変えることで、物をつかむロボットアーム。写真は開発段階のものパックボットの先端などに付けることで、様々なシーンで活用できるとしている

 更に、会場では執事ロボット「AVA」も披露された。AVAはタブロット端末を搭載したロボットで、家の状況や自分のスケジュール状況を把握してくれる執事のような役割を担うという。本体には、赤外線センサーとカメラ機能も搭載しており、セキュリティロボットとしての機能も搭載する。

 本体には、Appleのタブレット端末「iPad」を搭載しているため、Appleが提供するテレビ電話サービス「Facetime」にも対応。自宅にいながらにして、医者と話したりすることもできる。なお、今回披露されたAVAはプロトタイプで、製品化や詳細な機能については未定。

執事ロボット「AVA」日々生活していく中で生じる様々なつながりや、やるべきことをAVAが管理してくれるというAppleのタブレット端末「iPad」を搭載する
AVAはプロトタイプとして発表されたため、製品の詳細な機能については未定会場には色違いのモデルが展示されていた土台部分。ローラーで動く仕組みになっていた

 日本市場においての今後の製品展開については、「日本の最も重要な問題の1つが高齢者の問題。これは世界各国の先進国に共通した問題でもある。高齢者が1人で自立した生活を送れるようなロボットが必要とされている。現時点でも様々なアイディアがあるが、すぐに製品化を進めるのではなく、役立つものだけを作りたい。たとえば、高額すぎて手に入らないものや、全体の10%の人しか必要としていない製品を作っても意味がない。まずは掃除の分野でシェアを拡大し、その後に更なるジャンル拡大を図っていきたい」と慎重な姿勢を通した。






(阿部 夏子)

2011年9月27日 17:19