三洋、エナジーソリューション事業で2015年度1,000億円目指す
三洋電機株式会社は、12月10日、同社が取り組むエナジーソリューション事業に関する事業説明を行なった。
同社では、太陽電池による「創エネ」、二次電池による「蓄エネ」、各種機器による「省エネ」に加えて、エネルギーを効率よく活用するためのソリューション事業として「活エネ」を提示。新たな事業として展開する方針を明らかにしている。
三洋電機エナジーソリューション事業統括部の花房寛事業統括部長 |
三洋電機エナジーソリューション事業統括部の花房寛事業統括部長は、「パナソニックによるTOBが完了し、まもなくパナソニックグループに正式に入ることになる。そのなかで、三洋電機の立ち位置を明確にし、三洋電機の技術の推移を集めて展開する事業として、まずエナジーソリューションの統括事業部を設置し、今後、積極的に展開していく」とした。
同社では、ソリューション事業をスマートエナジーシステム(SES)とし、電力の創り方、蓄え方、機器の使い方を高度に融合させ、トータルに最適コントロールすることで、CO2排出量の最小化、電力の需給安定化を図るものと定義している。
また、11月1日付けで、エナジーソリューション事業統括部を、社長直轄部門として、70人体制で新設。技術開発機能、マーケティング・営業機能、エンジニアリングを含むサービス開発機能、施工管理、品質保証機能を持ち、「三洋電機が持つSESコア技術と、業界のリーダー企業とのコラボレーションによって、商品開発を加速していく」とし、「こうした取り組みを通でて、三洋電機は、エンジーソリューション事業において、日米欧をあわせて2015年度には1,000億円の売り上げ規模を目指す」との方針を示した。
これまで同社が展開していた3つの「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」に加えて、「活エネ」を新たなソリューション事業として展開していく | 電力を創る、蓄える、利用するの3つを融合させることで、CO2排出量を減らし、電力の需給安定化を図るという | 同社の強みが生かせる事業として、売り上げ規模1,000億円を目指す |
1,000億円のうちコントローラーなどの機器で700億円、サービス事業で300億円を見込んでいる。
「蓄電池の広がりについては、補助金制度が後押しすることが重要。まずは米国市場での立ち上がりを期待している。また、業務用システムから展開し、住宅用としての広がりは最後になるだろう」などとした。
SES事業では、まずは店舗、学校、工場などへ展開。地域まるごとの事業展開へと広げていく考えをしてしている。
工場SESや高層ビルSESといった大規模市場、店舗SESやマンションSES、学校SES、病院SESなどの中規模市場、モビリティSES、ガソリンスタンドSES、ホームSESといった小規模市場に対象を分類、それぞれの規模にあわせて提案を行なっていくという。
具体的な事例として、電動ハイブリッド自転車の充電を可能とする徳島県庁のソーラー駐輪場への設置、2010年に設置する予定の京王線の桜上水駅の電動ハイブリッド自転車のレンタルサイクルサポートへの活用。6カ月間で25%以上のCO2排出量の削減を達成しているローソンの呉広公園店での実証実験、三洋電機の加西事業所の新工場などについて触れた。
小規模システムの例として徳島県庁内のソーラー駐輪場の例 | 中規模システムとしてローソン呉広公園店の実証実験の例 | 中規模システムの例としての小学校におけるSES提案の例 |
「三洋電機は、40年以上に渡る二次電池の経験を生かし、業界をリードするLiイオン電池を投入。30年間に渡る太陽電池ビジネスでは、業界トップクラスの変換効率を誇るHIT太陽電池、50年以上に渡る省エネ業務用機器の高いシェアを持っている強みを生かすことができる。開発および実用化では他社に先行し、良好なエナジーシステムの開発環境を持っている。デバイスに留まらず、ソリューションとして発展させて事業を展開していく」としている。
また、「ツールを提供するだけでなく、使う人の意識を変えるというところまで踏み込んでいきたい」とし、「徳島県庁のソーラー駐車場では火力発電に比べて年間475kgのCO2排出を削減でき、杉に換算すると34本分となるが、自動車の代わりにハイブリッド自転車を利用してもらえれば、年間21トンのCO2削減が可能となり、杉に換算すると約1,500本分に匹敵する」などとした。
同社では、SES事業のシンボル的な製品として、HIT-W太陽電池、LED照明、バッテリーストレージ、EV/PHEV/EHBの充電システムを統合化したSolalibを製品することで、エナジー事業を統合した提案を行なっていく。
「パナソニックとはまだ具体的な話をしているわけではなく、エナジーソリューション事業の1,000億円のなかには盛り込んでいない。だが、エネルギー問題は世界にとっても重要なテーマであり、シナジーを早い段階で成果につなげたい」と語った。
さらに、スマートグリッドとの連動についても言及。「出力の変動が大きい太陽光発電の電気が大量に送配電網に流れ込むと系統が非常に不安定になる。SESを利用することで、太陽光発電で作った電気を自前で使い、系統への供給を抑制。蓄電池の活用で安定化を図ることができる」と語った。
なお、同社の加西事業所の新工場のエコ工場化への取り組みが、国土交通省の「平成21年度第2回住宅・建築物省CO2推進モデル事業」に採択されたことを明らかにした。国から8億1,200万円が補助される。
大規模システムでは三洋電機の加西事業所の新工場の導入例を紹介した | 加西事業所の新工場は国土交通省の「平成21年度第2回住宅・建築物省CO2推進モデル事業」に採択された |
加西事業所では、SESの実証実験の場として、2010年7月にハイブリッド自動車用リチウムイオン電池の新工場「グリーンエナジーパーク」を竣工する予定で、建屋工事費130億円の投資とは別に約50億円を投資し、1MWのHIT太陽電池と、1.5MWhの大容量、高電圧リチウムイオン電池システム、各種省エネ機器を連携制御するエネルギーマネジメントシステムなどの個別技術を統合した工場SESを導入。CO2排出量削減とエネルギーの最適活用を図る。これにより、年間約2480トンのCO2排出量削減が可能になるという。
(大河原 克行)
2009年12月10日 14:38