長期レビュー
パナソニック「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000」 その2
本レビューで使用したお米がこちら。ミルキークイーンは1回目で登場している。こうして並べてみると、改めてお米の違いを感じさせられる |
米粉を使わず、自宅にある“お米”でそのままパンが作れるホームベーカリー「GOPAN」。パナソニックから発売された2代目モデルの「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000(以下、SD-RBM1000)」の各機能と実際の使用感については、前回のレポートでお伝えした。第2回となる今回は、いろんなお米を使ってパンを作り、その味を食べ比べてみよう。
今回作ったのは、お米を使ったパンの中でも、小麦グルテンも使わない「小麦ゼロのお米食パン」、残りご飯を入れた「小麦ごはんパン」、発芽玄米を使った「玄米食パン」、さらに同じお米パンでも、お米を変えたら仕上がりがどう変わるかといった疑問から、コシヒカリ、タイ米、カリフォルニア産カルローズを使ったお米パンをご紹介する。
■小麦を一切使わない「小麦ゼロのお米食パン」を試す
まず試すのは、小麦を一切使わず、お米だけで作る「小麦ゼロのお米食パン」だ。普通、パンを作る時には、小麦グルテンを含んだ強力粉を使う。GOPANで、米パンを作る時もそれは同様だ。一方、今回の「小麦ゼロのお米食パン」を作る際には、強力粉の代わりに上新粉を使う。通常のお米パンならドライイーストは3gだが、「小麦ゼロのお米食パン」の場合は5gとやや増える。また、油脂類はショートニングまたはバターを使うところを、オリーブオイルを用いるといった違いがある。
さっそく小麦ゼロのお米食パンを作ってみよう。材料を「米パンケース」と「自動投入ケース」に入れ、本体にセットしたら、「米パン」キーから「小麦ゼロ」を選び、スタートボタンを押した。
使用する白米は320gと100g増量 | 水とあわせて、640gとする | 砂糖、塩、ショートニング、オリーブオイルを加える |
小麦グルテン50gの代わりに、上新粉80gを用いる | ドライイーストは5g | 「米パン」キーから「小麦ゼロ」コースを選ぶ |
約4時間後、ふたを開けると、そこに現れたのは、クッキーのように固そうな、ゴツい塊。小麦グルテンを使って作ったお米パンほど膨らんでいない。だが、取り出して上から押してみると、見た目に反して弾力があった。
あら熱を取ってからカットしてみると、非常に濃密で、弾力がある、しっとりした内相が現れた。気泡は小さいが、確かに膨らんでおり、どっしりとした「パン」である。
完成した「小麦ゼロのお米食パン」 | 取り出してみると、羽根まで一体化した感じ | お菓子のようでもある |
粘り気があるため、できたてにナイフを入れると、少々ヨレたようになる | 弾力性は抜群 |
これまで作った小麦食パンや、小麦グルテンを配合したお米パンと食べ比べると、相当の粘り気は感じられるが、かなりのボリュームで食べ応えがある。しかも、一晩たっても固くならず、しっとり感と弾力を保ったままだったことにも驚いた。
もともとは、小麦アレルギーをお持ちの方向けの機能だと思われるが、うっかり小麦グルテンを切らしてしまった時にも使える機能だ。小麦グルテンは、なかなか近所のスーパーで売っていないが、上新粉なら、すぐ手に入る。
■残った冷や飯を使った「小麦ごはんパン」
次に試すのは、冷めた残りご飯を混ぜて作る「小麦ごはんパン」である。ご飯が残っているのでもったいない……そんなときに、ご飯も無駄にならず、便利なレシピである。
使えるご飯は、100~200gまでの常温保存されたもので、炊飯または解凍後、1日以上経過したご飯は使えないとされている。ちょうど軽く1膳分程度のご飯が余ったので、試してみた。
準備の作法は、「小麦ゼロのお米食パン」と若干違う。「自動投入ケース」は使わず、先に水を入れてから、ドライースト以外の材料を入れ、最後にドライイーストを乗せる。あとは「小麦パン」キーで「ごはん」コースを選択し、スタートキーを押す。
冷やご飯162gを使用してみた | 使用するのは「小麦パンケース」 | 羽根をとりつけ、先に水を入れる。水は通常の小麦パンよりかなり少なめだ |
冷や飯を投入 | 強力粉、バター、スキムミルク、塩、砂糖を入れたら、最後にドライイーストを入れる | 「小麦パン」キーで、「ごはん」コースを選んで、スタート |
焼き上がったパンは上までこんがり色づいており、まさに小麦パンなのだが、米粉を使った米粉パンと比べて違うのは、表面が少々ぶつぶつしているところだ。Cook Bookの注意書きには、「ご飯粒の形や食感を感じるパンになる」とあるが、取り出したパンは、冷や飯を混ぜたとは思えないふっくら感。焼きたてを食べてみると、内相はややもっちりしていたが、ご飯粒らしい感覚はなかった。ただし、耳には部分的に固さを感じたので、それがご飯粒なのだろう。焼き上がってから時間が経過し、全体がなじんでしっとりしてくると、耳に感じた固さも消えた。
完成した「小麦ごはんパン」。表面がぶつぶつしているのが確認できる | 焼けたパンの裏側。羽根が完全に中に埋め込まれた状態。その分ケースからは取り出しやすい |
膨らみ方はまさに小麦パン! | ご飯粒の痕跡は確認しにくい |
ベースは小麦なので、特有の軽い食べごたえはあるが、ご飯を入れた分、少々腹持ちがアップしたような気はする。ただ、「ご飯が少しだけ余った」という状況で、パンの材料として使うだろうか。筆者ならちょっと迷うところだ。ご飯だけ食べてしまうかもしれない……。
■玄米を丸ごと食べられる「玄米食パン」
体にいいといわれる玄米から、「玄米食パン」を作ることもできる。「玄米食パン」の材料は100%玄米ではなく、米220gのうち、白米90gに玄米130gを混ぜるスタイル。これに水を加えて430gにしたら、「米パンケース」に入れた状態で8時間吸水させる。
あとは通常のお米パン作りの流れに沿って、砂糖、塩、ショートニングを加え、「自動投入ケース」には小麦グルテンとドライイーストを入れ、「米パン」キーの「玄米」コースをスタートさせる。
白米と玄米を合わせて220g用意する | 水を加えて430gに |
米パンケースに移したら、一晩(8時間)吸水させる | 8時間後の様子。これに砂糖、塩、ショートニングを加える |
できたパンは、内相がほんのり玄米色。どこにも玄米の皮は見あたらず、見事にすべてが練り込まれた状態になっていた。味もクセがなく、弾力があっておいしい。パンとしての食感を全く損なうことなく、栄養と繊維質が豊富なパンができあがったのである。ご飯の玄米がどうも苦手という方でも、パンになれば……という気がするが、いかがだろうか。
完成した「玄米食パン」 | 外側には玄米の痕跡はない | カットしてみたが、中にも玄米を感じさせるものは見あたらない |
とはいえ、1つ気になったのは、8時間という吸水時間だ。これでは食べようと思っても、すぐというわけにはいかない。
そこで試しに、もう1回チャレンジ。今度は自己責任で、8時間吸水させずに、いきなり材料をすべていれてスタートキーを押してみた。
完成した吸水時間ゼロの「玄米食パン」は、8時間吸水させたものとまったく変わらない出来だった。ミル刃には負担がかかっているかもしれないが、食べたいと思ったときから、最短時間でできるほうがうれしい。
吸水時間を省いて、いきなり材料を全部入れてみた | 完成した給水時間なしの「玄米食パン」 | 特に違和感は感じられない |
玄米が残っている様子はない | 内相の状態は、給水させたときとまったく変わらなかった | 弾力も十分で味もGOOD! |
■お米を変えると、パンの質も変わる!
ひとくちに白米といっても、いろんな種類が存在する。実は、最初に試したお米パンに使ったのは「ミルキークイーン」というお米。もっちり感があり、冷えても固くならないのが特徴だ。これをパンにすると、やはりしっとりモチモチしていて、特有とも思える弾力性を持っていたのだ。
最初は小麦と米の違いかもしれないと思っていたのだが、お米の質がパンにも現れているのではないか、という気がしてきた。そこで、「ミルキークイーン」以外のお米でも作ってみようと考え、おいしいお米の代表格「魚沼産コシヒカリ」、パラパラっとした食感と独特の香りが特徴の「タイ香り米」、サラダにも使えるという、軽い食感が特徴のカリフォルニア産の「カルローズ」を使って、お米食パンを作ってみた。
・魚沼産コシヒカリパン
何もパンにしなくても、という気もするが、逆にパンにしたらどうなんだという興味も尽きない「魚沼産コシヒカリ」。「ミルキークイーン」はボインボインと形容したくなるようなもっちり感だったが、「魚沼産コシヒカリ」のパンは、小麦パン以上、「ミルキークイーン」以下のもっちり感で、確かに粘り気の違いが感じられた。
若干もったいないという気もしつつ、投入 | 高級(?)お米パンができた |
見た目では判断できないが、食べてみると違いがでる | ミルキークイーンほどの粘り気はないが、上品な味わいな気がする |
・タイ米パン
「タイ香り米」 |
パラパラしたお米ということで選んだのが「タイ香り米」。粒の細長い形が特徴で、開封すると特有の香りが楽しめる、タイ料理でもおなじみのお米だ。この香りはミル中には部屋中に漂うほどで、パンになっても継続することが分かった。
パンになると、弾力は強いが、もっちり感は少ない。小麦パンに近いといっていいか迷うところだが、「ミルキークイーン」や「魚沼産コシヒカリ」と比べると、食感はわずかに軽く、あっさりした気がする。
ほかのお米と同じように「米パンケース」へ。パンになる前からいい香りがする | 「タイ香り米パン」が完成 外観でほかとの違いはない | 羽根は取り出す際に抜けた |
匂いをかぐと、タイ米の香りがする | 粘り気は控えめだが、弾力はしっかり | 小麦食パンがあったので、サイズや断面を比較。お米のほうが内相が白い |
・カリフォルニア産カルローズパン
今回使用したカリフォルニア産カルローズ |
知人からいただくまで、実は最近までその存在を知らなかったのが「カルローズ」。カリフォルニアオリジナルの中粒種で、日本のお米(短粒種)と、タイ米(長粒種)の中間タイプだそうだ。サラダ、リゾット、スープ、カレー、ドリアに最適だというから、粘りはかなり抑えられている。1合だけ炊飯器で炊いてみたところ、粒はタイ米に似た形になり、粘りがなく、味もあっさりしていた。ドライカレーなどにしてもよさそうだ。
この「カルローズ」でお米パンを作ったところ、「タイ米パン」に似た印象のパンができあがった。小麦パン以上の弾力を持ち、しっとりもっちりしているものの、粘りは「ミルキークリーン」より軽め、とでも言おうか。ただ、「タイ米パン」のような個性的な香りはなく、代わりに、甘い香りが楽しめた。
炊飯してみたところ、粘りの少ない軽いご飯ができた | いつも通りに準備 |
カリフォルニア産カルローズパン。外観に特に大きな変化はない | タイ米同様に、今回も「米パンケース」から出す際、羽根が抜けたのが印象的 | 断面。大きめの気泡が見られる |
コシヒカリパン(左)、小麦ごはんパン(中央)、小麦ゼロパン(右)を並べてみた。小麦ごはんパンは言われなければわからないだろう |
以上、いろんな種類の白米からお米パンを作ってみたが、お米を変えるだけで、パンの見た目や味も変わってくるのがわかった。お米が持つ粘り気は、そのままパンの質感としても現れる。お米パンは実に奥が深い。
拙宅では普段、ごはんの際には「ミルキークイーン」を炊いている。このミルキークイーンを使った米パンが、試した中ではもっとも粘りと水分を有しているようだった。耳付きのパンでもあっさり折れ、2つ折りのサンドイッチなどが簡単にできてしまう。時間が経過してもその弾力は失われないので、1枚のパンにパッと何かを挟んで、急いで食べるのに重宝している。そんな米パンの特性にこだわって、米選びからこだわってみても面白い。
次回は、そのほかのメニューや、 SD-RBM1000を使っていて気づいた点などをご紹介したい。
2012年1月23日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)