長期レビュー
パナソニック「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000」 その1
パナソニック「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000」 |
■あの“GOPAN”が、パナソニック版になって登場
米粉を使わず、自宅にある“お米”からパンが焼ける世界初のホームベーカリーとして爆発的な人気を博した三洋電機の「GOPAN」。発売当初はなかなか手に入らず、やきもきした人も多いのではないだろうか。実は筆者もそのひとりだ。
その後、三洋電機がパナソニックの完全子会社化したことにともない、GOPANは、パナソニック版「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000(以下、SD-RBM1000)」として、再登場した。GOPANデビューに遅れをとってしまったゆえ、「これを見逃すわけにはゆかぬ! 」とばかりに手に入れた次第だ。
メーカー | パナソニック |
製品名 | GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 40,800円 |
というわけで、本レビューでは、SD-RBM1000で何ができるか、実際に試しながら、その使用感や魅力などについてお届けしたい。なお、三洋版GOPANからの改良点は運転音を抑えた点や、冷めたごはんからパンを作る「ごはんパン」コースを新たに搭載した点だ。詳しくは、本誌記事をご覧いただきたい。
■1台で、お米と小麦両方のパンが焼ける
「SD-RBM1000」は、これ1台で、お米食パン、小麦食パン、パン生地、麺類、ケーキ、もちなどが作れる。米粉は一切使用せず、お米の粒から作る「お米パン」や、小麦グルテンを含め、小麦を全く使わない「小麦ゼロパン」、残ったご飯を加えた小麦の「ごはんパン」が作れるというのが大きな特長だ。
本体はパンケースをセットした状態で、約11.7kg。従来のパナソニックの小麦パン用のホームベーカリー(1斤用)に比べると、1.5倍ほど大きく見えるが、作れるパンのサイズは1斤だ。
SD-RBM1000本体正面 | 右側面 | 背面 |
コード収納部 | 左側面 | 上から見た様子。ガラス窓がついているので、中が見える |
操作部 | 本体ふたを開けた状態 | 内部の様子 |
本体には、自動投入ケース、ミトン、計量カップ、洗浄ブラシのほか、米パン用として、米パンケース、米パン羽根、米パン用計量スプーン1、米パン用計量スプーン2、小麦用として、小麦パンケース、小麦パン羽根、ヌードル羽根、計量スプーン、生種容器が付属する。お米のパンと小麦のパンでは、使用するパンケースが異なるため、2種類用意されているのだ。また、材料を用意する際にも、簡単に計れるよう、お米パン用と小麦パン用の計量スプーンがあるのは親切だ。
また、取扱説明書のほかに、レシピ集「Cook Book」がついている。フルカラーでバリエーションも豊富なので、必見である。
付属品。左上から、米パンケース、小麦パンケース、計量カップ、生種容器、米パン羽根、ヌードル羽根、小麦パン羽根、自動投入ケース、米パン計量スプーン1、米パン計量スプーン2、計量スプーン、洗浄ブラシ | 米パンケース(左)と、小麦パンケース(右)の側面 | 米パンケース(左)と、小麦パンケース(右) |
左から米パン羽根、小麦パン羽根、ヌードル羽根 | 米パン羽根は、ミル刃を保護する保護カバー付き | お米を粉砕するミル刃 |
保護カバーをつけた米パン羽根 | 米パン羽根は、米パンケースにしっかりセットする | パンケースに羽根を取り付けた状態の比較 |
自動投入ケース | 自動投入ケースの中の様子 | 自動投入ケースをセットする |
カチッと音がなるまで押す | お米パン用のセッティング |
焼きたてのパンケースを持っても安心なミトン | 天然酵母パンを作るときに使用する生種容器 | 計量カップ |
米パン計量スプーン1。スプーンのハンドル部分には、計れる材料が書いてあるので、間違えにくい | 米パン計量スプーン2 | 小麦パンで使用する計量スプーン |
洗浄ブラシ。米パン羽根の洗浄で大活躍する | 専用の小麦グルテン | 取扱説明書やCookBookなど |
下に、以前レビューした、パナソニックのホームベーカリー「SD-BM102」と比較した様子を載せておく。普通のホームベーカリーに比べると、かなり大きい事がわかるだろう。
「SD-RBM1000」(左)と「SD-BM102」(右) | 上から見た様子 | ふたを開けてみたところ |
操作はすべて液晶パネル右側の操作キーで行なう。操作キーは、「米パン/米パン生地/小麦パン(ごはんパン)/天然酵母/調理・もち」に分かれている。
「米パン」キーでは、「お米食パン/お米小麦食パン/小麦ゼロお米パン/玄米食パン/玄米小麦食パン/雑穀食パン/雑穀小麦食パン」が作れる。この中で最も短い時間で作れるのは、「小麦ゼロお米食パン」で、所要時間は3時間27分(最大だと4時間2分)。もっとも時間がかかるのは「玄米食パン」で、所要時間は5時間19分になる(最大6時間11分)。玄米や雑穀が入ると、浸水時間が長くなるためだ。
「米パン生地」キーでは、「お米パン生地/お米小麦パン生地/小麦ゼロお米パン生地/玄米パン生地/雑穀パン生地」が作れる。生地だけ作って、あとはアレンジして焼き上げたい方向けのコースである。
「小麦パン」キーでは、「小麦食パン/早焼き/グルメパン/フランスパン/パン生地/ピザ生地/全粒粉食パン/ご飯パン」が作れる。「小麦食パン」の所要時間は、2時間47分~3時間50分。コース中で最も短時間でできるのは、「早焼き」食パンの2時間(最大2時間20分)。一番時間がかかるのは「フランスパン」で約4時間40分。なお、「グルメパン」と「全粒粉食パン」では、アラームで具材を追加投入できる「ミックスコール」が使える。
「天然酵母」キーでは、「小麦食パン/パン生地/生種」が作れる。生種の準備には約24時間かかり、さらに小麦食パンの所要時間は6時間31分~7時間20分と、最長。余裕を持って準備したいところ。
「調理・もち」キーでは、「米粉ヌードル/小麦ヌードル/米粉ケーキ/小麦ケーキ/ジャム/もち」が作れる。米粉ヌードルは約15分で手軽に作れる。
機能面ではほかに、「予約」キーで指定した時間に焼き上げる、最大13時間までのタイマー機能が使える。ただし、「ごはん食パン/パン生地/ピザ生地/生種/ヌードルメニュー/ケーキメニュー/ジャムメニュー/もちメニュー」では使えない。「焼き色」キーは、パン焼き可能なコースに限り、「標準/濃/淡」の3段階で調整できる。
以上、SD-RBM1000は非常に多彩なメニューを備えている。
■お米パンの作り方
お米パンの作り方をご紹介しておこう。お米パンの作りなんて面倒くさいのではとお思いの方もいらっしゃるかもしれないが、戸惑うのは、手順になれない最初だけだ。付属の計量スプーンを活用すると、簡単に準備できる。
材料は、お米220g、水、小麦グルテン、砂糖、塩、ショートニング(または無塩バター)、ドライイーストの7品だ。小麦パンの場合、これにスキムミルクが加わるが、お米パンでは使わない。なお、お米220gとは、だいたい1.5合である。ご飯ならお茶碗に軽く3杯といったところだ。小麦グルテンは、専用の「米パン用小麦グルテン」を使用している。
まず、「米パンケース」に、米パン羽根をセットする。羽根をセットしたら、お米を220g用意する。お米は洗米し、水を加えて420gにしておく。
お米を220g計る | 洗米後、水を加えて420gとする |
用意したお米と水を「米パンケース」に入れたら、さらに米パン専用の「米パン計量スプーン2」を使って、砂糖1杯、塩1杯を「米パンケース」に入れる。その後、ショートニング、または無塩バターを10g、「米パンケース」に追加する。「米パンケース」の準備はこれで完了だ。砂糖や塩はスプーンで計れるし、慣れてくると油脂類も大まかな量が分かるようになってくるので、計量はそれほど苦にならない。
次に、「自動投入ケース」に、小麦グルテン50gと、ドライイースト3gを入れる。計量には、付属の米パン専用の「米パン計量スプーン1」を使うといい。大きい方で小麦グルテン、小さい方でドライイーストが計れる。
米パンケースに、米、水、砂糖、塩、ショートニングを入れる | 小麦グルテンは50g | ドライイーストは3g |
材料を入れた「米パンケース」と「自動投入ケース」を本体にセットしたら、「米パンコース」キーを押して「お米」コースを選ぶ。あとは「スタート」キーを押すだけだ。約4時間後にはお米を使った見事な食パンが完成する。
ちなみに、お米パンは、小麦パンに比べてパンケースから取り出しやすい印象だ。比較対象が旧型の「SD-BM102」で恐縮だが、お米パンは羽根ごと抜けるというのも理由の1つかもしれない。
「ミル」では、米粒が粉砕されてペースト状になる | 小麦グルテンとドライイーストを混ぜて練ると、まとまりのある生地に | 「ねり」のあと、「発酵」を経て「焼き」に。窓だけでなく、今の工程が表示で分かるのもうれしい配慮だ |
完成したお米パン。小麦パンと違い、上が白っぽくなるのが特徴 | 米パン羽根を抜くと、このような大きな穴になってしまう | パンケースは、すかさず水につけておく。相手はお米だけに乾燥させては大変だ |
とはいいつつ、実は、一番最初に作ったお米パンは微妙に失敗作だった。一応パンとしては完成していたが、思ったように膨らんでくれなかったのである。
初お米パンは食パンとはいえない形になってしまった | 味はおいしいが、膨らみ切れていない…… |
おそらく、失敗の原因は水温だろうと推測している。十分なふくらみを得るためには、室温と水温の関係に注意を払わなくてはならないのだ。説明書には、室温が20℃以上のときは、約5℃の水、室温が20℃未満の場合は、約20℃の水を使うこととされている。当時は、冷蔵していた飲料水を使ったような記憶がある。室温に対して、温度が低すぎたのかもしれない。
毎回温度計を使うべきかもしれないが、これが面倒で、作りたくなくなっては残念だ。環境を確認して、うまく対応したいところ。拙宅の台所の気温は、現在おおむね20℃弱。水は常温保存のペットボトルを使用しており、水温は17℃前後のようだ。20℃には少々足りないが、この常温保存のペットボトルの水を使ったところ、うまく焼けるようになった。試す前に、室温と水温を確認しておくといいだろう。
ただ、室温が30℃を超えると、うまくパンができないことがあるそうだ。まだ夏を経験していないのだが、夏季だけは冷蔵庫の冷水を使うほうがよさそうな気がしている。
■小麦パンとお米パンを比べてみた
次に、これまで食べていた小麦パンとお米パンの違いを比べてみた。比べたのは、GOPANで焼いた米パンと、パナソニックのホームベーカリー「SDーBM102」で焼いた小麦パンだ。
以下の写真をご覧いただきたい。膨らみ方や焼き色に違いこそあれ、内相(内部の白い部分)はほとんど同じだ。食べると、風味と食感で明らかに違いがあるのだが、それもそういうパンですと言われたら、納得してしまうだろう。お米でここまで焼けるのだから、人気にならないはずがない! と改めて納得させられた次第だ。
左が旧型の「SD-BM102」で焼いた基本の小麦パン。右が「SD-RBM1000」で焼いたお米パン | 頭の焼き色には違いが出る。お米パンは白っぽい |
カットしてみた。左が小麦パン、右がお米パンだが、食べるまでは違いは分からない | 羽根の跡だけは豪快に違う。お米パンには大きな穴ができてしまうのが悩みの種だ |
■工程がわかりやすく、目にも楽しい
ここで、SD-RBM1000の工程を振り返ってみよう。SD-RBM1000は、「浸水」→「ミル」→「ねり」→「発酵」→「焼き」という5つの工程を経て、お米からパンを作り上げる。「浸水」はお米に水を吸わせる工程なので、何も起こらない。「スタート」キーを押してすぐ「ガッガッガッ」という音を立てながら「ねり」が始まる小麦パン用のホームベーカリーとは異なり、しばらく静かなのだ。
「浸水」が終わると、いよいよ「ミル」だ。水を吸った米粒を粉砕し、なめらかなペースト状にする工程である。「ミル」が始まると、約40秒間大きな音が鳴り、約5分間停止するという流れを10回繰り返す。米粒が見る見るうちに白い液体になっていく様子は感動的ですらある。GOPAN最大のハイライトといっても過言ではない。
「ミル」が終わると、「自動投入ケース」から、小麦グルテンとドライイーストが投入され、「ねり」が始まる。小麦グルテンが入ると、ペースト状だった材料が一気に粘りを帯び、生地らしくまとまっていく様子は、小麦グルテンの役割がハッキリ感じられて楽しい。
「ねり」が終われば、あとは「発酵」と「焼き」工程だ。男性のこぶし大ほどだったパン生地が、パンケースの中で膨らんでいるのが見える。十分膨らんだことが確認できたら成功したも同然。そして、焼き上がりを知らせるピーピーという音が聞こえたら、「取消/切」ボタンを押して、晴れてお米パンとご対面である。
お米パンができるまでを簡単な動画にまとめてみた |
これまで使用していたパナソニックのホームベーカリー「SDーBM102」は、焼き上がり時刻は分かるものの、中で何が起きているか、音でしか確認できなかった。ねり工程ならふたをあければ見えたが、気になるからといって、うっかり発酵中に開けるようなことはしたくない。この点、SD-RBM1000は、窓がついている上に、工程がパネルで確認できるので安心だ。失敗しても途中で分かるため、場合によってはリカバリも可能なのだ。
本稿執筆時点では、使用開始からまだ1カ月にならないが、お米のパン生活がかなり浸透してきた。「あの米粒が、まさかここまでパンになるとは! 」と驚くとともに、その味や食感に魅了されている。お米のご飯を食べたいときも、パンを食べたいときも、材料は同じ米びつからというのもまたうれしい。強力粉を切らしていても、パンが焼けるのである。とにかく美味しいし、腹持ちもいい。友達に振る舞ったりしているが、皆一様に驚いてくれるのもまた楽しい。 心なしか、男性ウケしているような気もするのだが、気のせいだろうか?
次回は、さまざまなパンの作例をご紹介する。
2012年1月16日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)