長期レビュー
パナソニック「プチ食洗 NP-TCR1」前編
■夫婦二人暮らし・単身者向けの食器洗い乾燥機が登場。でも使えるの?
パナソニックの食器洗い乾燥機「プチ食洗 NP-TCR1-CK」。カラーはホワイトもあるが、今回は“アラサー”向け家電シリーズ「ナイトカラー」のブラックモデルを購入した |
今回のレビューで取り上げる家電製品は、パナソニックが少人数世帯向けに開発し、2月に発売した新製品、食器洗い乾燥機の「プチ食洗 NP-TCR1」だ。
この食器洗い乾燥機は、従来の食器洗い乾燥機よりもコンパクト化することで、夫婦2人、または単身者など、少人数世帯での設置性を向上した点が特徴。設置面積の47×30cm(幅×奥行き)というのは、水切りカゴのサイズとほぼ同じという。
しかし、コンパクトになったということは、庫内容量もコンパクトになるということ。果たして食器や調理器具は、ちゃんと庫内に入ってくれるのか。また、基本機能である洗浄力はどうなのだろうか。というか、そもそも設置できるのか。新しい製品なので、導入にはどうしても不安がよぎる。
パナソニクの発表会資料より。少人数世帯が増加中という | そこで開発されたのがプチ食洗。水切りカゴとほぼ同サイズの面積に設置できるという |
そこで今回は、独身の我が賃貸住宅(2DK)に実際に導入し使ってみて、導入する価値があるのかどうか、その実態を前後編の2回に渡って紹介してみよう。
詳細なまとめについては明日の後編にて報告させて頂くが、ざっくりした感想を先に言わせていただくと「生活がかなーりラクになった」ということは確実に言える。それでは本編をご覧いただこう。
メーカー | パナソニック |
製品名 | プチ食洗 NP-TCR1-CK |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入価格 | 59,700円 |
■購入前は「何で食洗機なんか買うの。手洗いでいいじゃない」と考えていました
いきなりレビューの出鼻をくじく話になるが、私は食洗機の導入には乗り気ではなかった。
そもそも食器洗い乾燥機の必要性を感じておらず、「食器洗い乾燥機にそんなにお金と場所をかけなくても、手洗いでいいじゃない」と考えていた。
もちろん、その便利さは重々承知している。当媒体では過去に何度か食洗機のレビューを紹介しており、その使用レポートを読んで、導入すれば便利に使えるという印象は抱きいている。というか、食洗機を導入すれば、我が家のシンクや水切りカゴにたまりまくっている食器がキレイに片付けられるはず。導入すれば、きっと暮らしが便利になるのは間違いない。
でも、やっぱりマイナス面ばかりに目がいってしまう。毎日必ず自炊するわけでもないし、ただでさえ狭い部屋がもっと狭くなる。そんなお金を掛けなくても、手洗いで十分。結論は毎回それだ。
そんな折、2011年の12月に「プチ食洗」のニュースを取り上げたところ、人気記事となり、その後の会議で“ニュースで人気があったからレビューでも紹介しよう”ということが決まった。レビュアーは、単身者で食洗機を導入していないという、プチ食洗のターゲットに合致する私になった。
実は当編集部内で既に食洗機を導入しているスタッフが多く、「食洗機がない生活なんか考えられない」と、ことあるごとに食洗機のメリットをアピールされた。しかし逆の立場である私にとっては、食洗機がある生活が考えられない。結局、生活の邪魔になって、無用の長物となるのでは……最終的には、この不安は見事に覆るのだが、ともかくマイナスの気持ちからレビューがスタートした。
■「お客さん、これキッチンに入りませんよ」→「やっぱり入りました」
我が家でレビューすることは決まったが、果たして本当に、狭い我が家に設置できるのか。
プチ食洗がいくら従来モデルと比べてコンパクトであるとはいえ、設置にはそれなりのスペースを要する。設置面積は前述の通り30×47cmだが、高さも46cm必要だ。
我が家でプチ食洗を設置するスペース。水切りカゴに食器を放置するという体たらくぶりだが、とりあえずここに置いてみよう。なお、その上にある横長のラックはもともと上手に使えていなかったので取り外すことにした |
さっそく、我が家のシンク脇のキッチンカウンター部分のスペースを測ってみると、50cm四方ほどの面積があった。ちょうど水切りカゴを置くしかないが、とりあえず許容範囲内だ。高さについては横長のラックにつっかえることになりそうだが、もともと大して使っていなかったので、いっそのこと全てとりはずしてしまった。
スペースは確保できたので、量販店の通販で購入を申し込んだ。申し込み後に、オペレーターのお姉さんから電話連絡があり、「設置面積は十分ですか?」と念を押された。オペレーターさんからはこのほか、水栓の形状やメーカー名などが確認された。メーカー名は「分からない」と答えたが、電話後に水栓をよーく見ると「TOTO」の文字が。せめてこれくらいは告げておけばよかった。
申し込んだその週の週末、量販店から派遣された地元の工事業者がやってきた。すぐに設置してくれる……と思いきや、
我が家の水栓(交換後)はマイナーな型を使っているらしく、専用の分岐水栓の取り寄せに10日間待たされた |
「これ、水栓の型番が分からないから設置できませんね。10日お待ちください」
どうやら、我が家の水栓はマイナーなもので、これに適合する分岐水栓の在庫がなく、取り寄せに10日ほど掛かるらしい。業者の人は、我が家の携帯電話の水栓を写メで撮影し、それを水栓の業者に送信していた。言ってくれれば事前に写真送っておくのに……。結局この日は、プチ食洗が我が家に搬入されることはなく、水栓の形を確認するだけで終わってしまった。
プチ食洗がやってきたのは、約束通りその10日後。業者さんが分岐水栓を取り付けた後、黒い本体が我が家に運び込まれてきた。しかし、ここで衝撃の一言を告げられる。
「お客さん、これキッチンに入りませんよ」
ええっ! マジですか! だって面積的には問題ないハズですよ! とりあえず家に運び込んで設置してください!
「あ、入りました。そうか、これ小さい最新モデルなんですね(笑)」
オーイ! 驚かさないでよ! 「(笑)」じゃ済まないよー!
というわけで、スムーズに設置するためには、設置スペースの確保とともに、水栓のメーカーや品番を調べておくのがベスト。品番が分からない場合は、事前に水栓の写真を送ってしまうというのもアリかもしれない。
最終的に、我が家の50cm四方のキッチンカウンターに、まったく問題なく設置できた。水切りカゴよりもちょっと奥行きがあるようだが、幅は本当にピッタリだった。設置当初は、キッチンに対して縦に置いていたが、まな板を使うスペースがないこと、撮影がしにくいことから、横向きに移動させた。どちらでも大丈夫だった。
設置したプチ食洗。向かって縦向きに設置しているが、撮影のことを考えて横向きに直した。どちらでも問題なく設置できた | ちょうどピッタリのサイズ。補強具などを使わずに取り付けられた | 食洗機の排水はホースを通ってシンクに流される |
■とりあえずシンクに放っておいた皿とマグカップを洗ってみた
プチ食洗が我が家に無事設置されたので、とりあえず何かしら食器を洗ってみて、その洗浄効果を試してみよう。
とりあえず、焼きそばを食べた後の皿、コーヒーを飲んだあとのマグカップとスプーンを洗ってみよう。ご覧のとおり、しぶとい汚れがひっついている |
まず用意したのが、前日に自炊した焼きそばを食べるのに使った皿、コーヒーを入れっぱなしにして放置していたマグカップ、そしてマグカップの中に入れたままにしていたスプーンだ。皿には脂とソースが、またマグカップとスプーンにはコーヒーが乾いた跡が、それぞれ張り付いている。「これはレビュー用にわざと洗っておかなかったんだからね!」と虚勢を張りたいが、正直、まるでダメなオヤジの私にとっては、こんなことは日常茶飯事だ。
食器を投入する前に、本体正面のボタンを押して前面パネルを開ける。すると、中には1段のトレーが顔を出す。ファミリー向けモデルの「NP-TR5」の場合、庫内には縦に2段階のトレーがあるが、プチ食洗では1段だけだ。説明書によれば、コップは左奥、大型の皿は右側、箸やスプーンは中央など、食器ごとの定位置が決まっているらしい。
ちなみに庫内容量は24Lで、庫内に投入できる食器の目安は、2~3人家族に相当する18点。NP-TR5の43L・53点と比べるとかなり少なくなるが、このあたりが“プチ”なところだろう。NP-TR5と比べると、運転モードの有無などでスペックに差があるようだ。
前扉を開けたところ | 内部のラックは1段 | カップは逆さまに、皿は内側を向くようにセットする |
品番 | NP-TR5 (ファミリー向けモデル) | プチ食洗 NP-TCR1 |
容量 | 43L(食器点数53点 ) | 24L(食器点数18点) |
パワー除菌ミスト | ○ | ○ |
エコナビ | ○ (汚れ具合/汚れの種類 /食器量/室温) | ○ (水温/室温) |
低温ソフトコース | ○ | - |
スピーディコース | ○ | - |
80度すすぎモード | ○ | - |
予約機能 | ○ | - |
洗浄ノズル | トリプルブーメランノズル +ダブルブーメランノズル | ダブル ブーメランノズル |
運転時間(50Hzの場合) | 84分 | 99分 |
運転音(50Hzの場合) | 36dB | 40dB |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) | 550×343×564mm | 470×300×460mm |
設置面積 | 343×550mm | 300×470mm |
洗浄に戻る。前述の3点を庫内に投入し、所定の位置に食洗機用の洗剤を投入する。あとは、フタを閉めて、本体前面パネルの「電源 入」→「スタート」ボタンを押すだけで運転がスタートする。ちなみに食洗機用洗剤は、購入者特典としてサンプルが付いてきた。洗剤メーカーも新規客を逃すまいと必死のようだ。
何と購入時に各社の食洗機用洗剤のサンプルが付いてきた | 洗剤の投入口はラックの左手前側 | 本体前面の操作パネル。操作を行なうのはここだけ |
運転中は、“サッパーン”“ジャバジャバ”といったような、それなりの運転音がする。キッチンの戸を閉めてリビングに居ても、「あ、動いているな」というのが分かるくらいだ。ちなみに運転音は40dB。とはいえ、不快感を伴うものではなく、むしろちゃんと洗っているというのは逆に良いかもしれない。
運転中のようす。ザッパーン、ジャバジャバという水の音が結構聞こえる |
■洗剤入れてボタン押すだけで食器がピッカピカ。コンパクトながら確かな洗浄能力
やがて、「ピーッ、ピーッ」という音で運転終了。しかし……運転時間は結構長い。定格時間は約1時間40分(正確には99分。50Hzの場合)で、たしかにその通りの時間で終了した。そんなに時間を掛けなくても、手で洗えばすぐに終わる。使い始めの頃は、この長い運転時間は正直不満だった。
しかし、洗い上がりのコップに皿を見ると、その不満も吹っ飛んだ。汚れがほぼ100%と言っても良いくらい、キレイに落ちている。以前よりもピカピカになっている印象すら受ける。というか、汚れが付いていたのかさえ怪しいくらいだ。
カップはツルツルのピッカピカ。コーヒーの汚れなどはまったく確認できない | スプーンもツルツルだ | 皿も真っ白になった |
ちなみに本製品では、高濃度の洗剤液をミスト状にして食器に吹きつけて、汚れを落としやすくする「パワーミスト洗浄」と、洗浄効果が高く除菌効果もある「高温洗浄」(70℃)を搭載している。このパワーミストと高温洗浄は、ファミリー向けモデル「NP-TR5」でも搭載されている。洗浄力に関しては、上位モデルと見劣りはしないだろう(ただし、NP-TR5では80℃のすすぎ機能やパワー洗浄コースなども付いている)。
続けて、焼きそばを調理した後のフライパンも洗ってみたが、いずれも見事にキレイになった。大きいので入らないのではと心配したが、ちゃんと入れられた。ただし、フライパンと一緒に大皿と小皿とコップ2個も……みたいに大量に入れるのは難しいだろう。
さらに、カレーを作りながらも洗うのを忘れて1週間放置していた鍋を洗ってみた。こちらは底にごくわずかなカスが残ったが、そのほかは完全にきれいになった。説明書によれば、鍋の焼け付きや焦げ付きは、食洗機では落としにくいとのこと。そもそも、食洗機を導入すれば1週間も鍋を放置することはないので、普通に使用後に洗えば、ここまでしぶとく残ることもないだろう。また、水が当たりにくい鍋の裏側も意外ときれいになっていたのにはびっくりした。
焼きそばを調理したフライパンも洗ってみよう | ちょっとキツめだがちゃんと投入できる。なお、フライパンや鍋は使えるものと使えないものがあるため、説明書で要確認を | フライパンもツルンと綺麗に |
カレー調理後に1週間も放置していた鍋。これはさすがに難しいのでは… | 投入は意外とすんなりできた。外側の吹きこぼれによる汚れも気になる |
洗浄後はこのとおり。若干カスが残ったが、もともと鍋底の焦げ付きは苦手とのこと。それでここまできれいにできるのだから逆にスゴイ | 鍋の外側の汚れも結構落ちた。これは意外だった |
ともかく、洗浄力に関しては、我が家の場合はまったく問題ない。しかも、食器を投入して洗剤を入れスイッチを押すだけで、ここまでキレイな成果が出るとは思わなかった。導入までに時間はかかったが、なんというハイ・リターン! 導入前は“必要ない”と思っていた食洗機だが、この汚れ落ち具合を見て、一気に“食洗機派”に傾いてしまった。
前編についてはこれで終わり。明日の後編では、今回紹介しきれなかった庫内容量と省エネ性、メンテナンス性について触れてみる。そして最後に、“プチ食洗は買いか否か”という大命題に迫っていこう。
2012年4月4日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)