長期レビュー
パナソニック「プチ食洗 NP-TCR1」後編
パナソニック「プチ食洗 NP-TCR1-CK」 |
パナソニックが2月に発売した、少人数世帯向けの食器洗い乾燥機「プチ食洗」を、前後編に渡って紹介している。昨日公開した前編は、導入までの顛末と、実際に洗浄した様子を紹介した。水切りカゴ相当の設置面積でも問題なく設置でき、かつ高い洗浄力も備えていることがわかった。
後半では、小型化されたことで庫内サイズは問題ないか、または省エネ性はどれほどのものなのかなど、前半では紹介しきれなかった部分に触れる。そして、最後にこのプチ食洗が“買い”なのか否かを、ジャッジしてみよう。 [前編は→こちら]
■容量が少ないけど大丈夫? どれくらい詰め込めて、どれくらい洗えるか
前編では、小さいプチ食洗の設置性と洗浄性能の高さを評価した。しかし、小型になったということは、そのぶん通常のファミリー向けモデルと比べて、庫内容量がカットされるということになる。果たして、プチ食洗の庫内容量は十分なのだろうか。
独身の我が家では、容量にまったく問題なし。調理に使ったフライパン、食材を切ったまな板、料理を盛りつけた皿が一度に洗える |
結論から言ってしまうと、我が家の場合は特に問題にならなかった。独身なので、使う食器は自炊したとしてもたかが知れているため、調理したフライパンや鍋と一緒に、食器やコップが一度に洗えてしまう。手洗いの場合、「あーめんどくせー」とそのままシンクに置きっぱなしにするなんてこともあったが、プチ食洗を使えば、洗剤を入れてスイッチを入れるだけですぐにできてしまう。
とはいえ、本格的に自炊をした時はもっと食器を使用するし、今後家族が増えた時は大量に食器を使うかもしれない。メーカーではプチ食洗の庫内容量24Lについて「食器が18個入る」と謳っているが、それはあくまでも業界の測定基準に基づいた数値で、実際のものとイコールではない。そこで、庫内いっぱいまで食器を投入した場合、どれだけの数が入り、どれだけの洗浄力があるのかを見てみよう。
我が家にある食器をどんどん投入していみると、大皿2枚、小皿2枚、茶碗2個に小鉢2個、コップ2個に湯呑み2個の計12点が入った。箸とスプーンを1セット入れたこともカウントすれば、14点が入ったことになる。置き方を工夫すれば、もっと入ったかもしれない。
しかし、入れるだけなら無理やり詰め込めばできる。問題は、洗えるかどうかだ。実は、今回食洗機に投入した食器類には、賞味期間が切れたドレッシングとステーキ用ソースを掛け、しばらく置いておいた。これが洗い落とせれば、成功だ。
食器がどれくらい庫内に入って、ちゃんと洗えるかを試してみよう。なお、洗浄力を確かめるために、すべての食器に賞味期間切れのドレッシングとステーキ用ソースと掛けている | よく使う食器を投入すると、皿2枚、小皿2枚、茶碗2個、小鉢2個、コップ2個、湯呑み2個の計12点が入った。箸とスプーンを入れれば14点投入できたことになる |
洗浄後の食器類を見ると、おっ! ちゃんと洗えている! ドレッシングとソースだらけだった食器が見事に白くなっている。
成功成功……と思いきや、ひとつだけ汚れが残っていた皿があった。庫内の右隅に設置した2枚の大皿のうち、外側に置いていたヤツだ。皿の上半分に、ソースの残りカスが貼りついている。こうなってしまったのは、その内側に置いていた底の深い皿が、下のノズルから送られる洗浄水の通り道を塞いでしまっただめだろう。説明書でも、「食器や小物類などが重ならないようにする」とあった。
ほとんどの食器はキレイになっていた | が、一番右端に置いた皿に、ステーキソースの汚れが…… | 投入時の皿のアップ写真。一番右端が問題の皿だ。底が深い皿に水の通り道が妨げられたのだろうか |
このテストのあと、キムチ鍋を作った鍋や食器類の食器を洗ったのだが、ここでも一部にキムチの赤い跡が残ってしまった。大量の食器を洗う際には、ただ投入するだけではなく、うまく水流に当たるように配置する努力が必要になってくるようだ。
■食洗機と手洗い、コストはどっちが安い?
次は、省エネ性能について見ていこう。食器洗い乾燥機は温水を使ったり水を噴射させたりと、当然電気を使用する。いったいどれくらいのランニングコストがかかるのか、ワットモニターを使って、洗浄1回当たりの電気代を測ってみよう。ちなみに、センサー機能「エコナビ」は、デフォルトのON状態で使っている。
運転をスタートした序盤は、消費電力は7~8W程度。その後、洗浄に入ると600W台まで上がるが、以降1Wだったり60~80Wだったり600Wだったりと変化を繰り返す。乾燥では650Wの時間帯が多かった。
運転開始時の消費電力は7~8W程度だった | 洗浄時は数Wだったり60~80Wだったり600Wだったり、消費電力の変化が激しい |
運転1回当たりの電気代は、「12.32円」と表示された。なお、待機電力は「0.0W」表示だった |
1時間40分後に運転が終了すると、ワットチェッカーの電気代表示は「12.32」円を示していた。朝食と夕食の1日2回使うとすると、1カ月の電気代は単純計算で約740円。365日使うとなると、約9千円掛かることになる。これとは別に、水道料金や洗剤代も掛かるので、年1万円以上の負担は考えておいた方がよさそうだ。
パナソニックが公開している、手洗いとプチ食洗の総ランニングコスト比較。手洗いはガス代や使用水量が多いため、プチ食洗よりもコストが安いという |
これを見ると「結構高いな」と思うかもしれないが、パナソニックの試算を参考にすれば、実は手洗いよりもランニングコストは安いらしい。手洗い1回当たりのコストは約27円で、プチ食洗の1回分のコストは約19円。手洗いは水に加えてガス代も掛かるため、結果的にプチ食洗よりも高くなるという(いずれも、食品18点の洗浄の場合。洗剤代含む)。
この数字に基づき、1日2回、365日使った電気代を計算すると、手洗いが19,710円、プチ食洗が13,870円。プチ食洗に買い換えることで、1年で5,930円節約できることになる。
まあ、あくまでこの数値は試算で、毎回食器を18点洗うことはないだろう。しかし食洗機には、手洗いに掛かっていた時間が空くという“余裕を生み出す”効果もある。空いた時間でほかの家事をやったり、趣味の時間に割くことも可能。この点は食洗機の大きなメリットのひとつだ。
■運転モードは基本的にひとつだけ
そういえば今回のレビューでは、運転モードに関する説明をほとんどしていないことに気付いた。しかし、あまり語るべきことはない。というのも、基本的には通常の洗浄以外のモードは用意されていないからだ。
前回比較として紹介したファミリー向けモデル「NP-TR5」では、「低温ソフトコース」や「スピーディコース」「80度すすぎモード」「予約機能」などのさまざまなモードがあったが、本製品ではそういったものはない。
本体全面の操作パネル。時短モードなどは特に用意されていない。機能満載な食洗機をお望みの場合は、ファミリー向けモデルの方が良いだろう |
一応、「行程」ボタンというものも用意されており、乾燥運転をカットしたり、逆に乾燥のみの運転もできる。ただ、これ以外のことはできない。電源を入れてスタートボタンを押し、1時間40分運転するのが基本だ。
今になっては慣れてしまったが、最初は「もっと早く仕上げてよ!」とイライラしてしまった。説明書には「すすぎ回数を増やす」「乾燥時間を高める」「エコナビをOFFにする」などの隠しコマンドが説明されているものの、時間が短くなるモードは用意されていない。ちなみにNP-TR5には、運転時間約33分のスピーディ運転が用意されている。
というわけで、このプチ食洗は、基本的な洗浄機能に特化した製品だ。機能満載な食洗機を望む方には、ファミリー向けモデル「NP-TR5」の方が良いだろう。
■メンテナンスは毎回のフィルター掃除と月1回の庫内掃除
最後に、メンテナンスを紹介しよう。手入れする場所は、食器から洗い流された残滓を溜めるフィルターと、本体内の拭き掃除の2点だ。
残滓フィルターは、フタの手前に飛び出ている取っ手をつまんで取り外せる。これは毎回必ず掃除するものらしいが、私はそれをすっかり忘れていて、しばらく残滓を溜めこんでしまった。しかし、取り外して歯ブラシでこすれば、すぐにキレイにできた。掃除しないと目詰りし、洗い上がりが悪くなったり、カビやニオイの原因になるという。忘れがちなので注意しておこう。
残滓フィルターはカゴを取り外した中にある。毎回洗うとは知らずに、ずーっと使い続けていたため、かなり溜まっている | ブラシでこすれば簡単に落ちた。ちなみに写真のブラシは、使い終わった電動歯ブラシの替えブラシ |
本体の掃除は、月に1回、カゴを外して庫内を拭き掃除するだけ。私の場合、まだ買って3週間程度なので掃除をしていないが、庫内の壁はなんだかヌルヌルしかかっているように感じる。先程の庫内容量チェックの際に、ドレッシングやソースを使いすぎたかもしれない。食洗機の庫内洗浄剤があるようなので、これで一気にキレイにしてみたい。
■むしろ単身者にピッタリ。「邪魔」「手洗いでいい」という人にこそ使ってほしい
というわけで、今回のプチ食洗については以上だが、導入から3週間ほど経った今、もはや我が家に欠かせないものとなった。
導入前は「狭い部屋に明らかに不釣り合い」と思ったものの、ボタンを押すだけで確かな洗浄効果が得られる喜びを一度体験すると、もう手放せない。手洗いに戻れと言われてもそれはカンベンだ。前編で挙げた「食器洗い乾燥機にそんなにお金と場所をかけなくても……」という迷いは、いとも簡単に破られた。確かにサイズはそれなりにあるが、すぐに慣れてしまった。
導入してよかったのが、食器を洗うことが面倒くさくなくなったことだ。以前は自炊をすると片付けが煩わしくて、コンビニ弁当を買うことが多かったが、プチ食洗を買ってからは「そうか、俺には強い味方がいる」と、積極的に料理をするようになった。また、コストの項でも触れたが、手洗いに掛かっていた時間を省いて“余裕”が生まれるという効果もある。
さらにいえば、シンクに食器を放置することもなくなったので、我が家の生活環境も改善された。購入前は「独身には必要ない」と思っていたが、逆に身の回りの整理に気をかけない独身者にはピッタリだと感じた。というか、こんなイイ機械、ファミリー層だけが独占しちゃいけませんよ!
もはや我が家に欠かせない存在に。本体サイズも気にならなくなった。邪魔と感じることもない | 空きスペースで調理できるよう、小型サイズのまな板を買った |
もどかしいのが、コンパクト性と庫内容量の狭さという、背反する問題だ。確かにコンパクトになったことで、我が家の狭いキッチンにも設置できた。しかしそのぶん庫内も狭くなり、たくさんの食器を入れた場合、洗い切れない部分ができてしまう。ファミリー層の期待には応えられないかもしれない。それを考えると、メーカーが謳う「単身者や夫婦二人暮らしの少人数世向け」という言葉は、本当にその通りだ。
プチ食洗を導入することで、我が家の暮らしはラクになった。食洗機を買いたいと思っているシングル・DINKS層、その中でも特に「それでも大きいじゃん」「狭いキッチンには邪魔」「手洗いでいいよ」と思っている人にこそ、このプチ食洗をお勧めしたい。
2012年4月5日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)