長期レビュー

GW直前企画! 春キャンプを楽しもう その2

~本格アウトドアクッキング編
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 前回は、春キャンプの魅力を伝えるべく、炊飯器を使った食事やキャンプの中でも暖かいキャンプ用ヒーターなどをご紹介してきた。今回はキャンプの一番の醍醐味でもあるアウトドアクッキングを中心にご紹介しよう。

 まず、紹介したいのは薪や炭で加熱する屋外用のオーブン「ダッチオーブン」だ。その独特の機能性や火力の強さから、家庭のキッチンでも使えるダッチオーブンも登場し、女性に注目されているアイテムだ。

 機能は普通のオーブンとまったく変わらなく、ローストビーフやチキン、グラタン、ビザ、パンまでキャンプ場で作れてしまう。しかも、鍋のフタが非常に重いので圧力釜的な使い方もでき、ケンタッキーのような圧力をかけたチキンのフライだって作れる。

今回行った「カントリーベア ファミリーキャンプ場」は、焚き火可能サイトにはブロックを使ったかなどが設置されている

 そしてダッチオーブンに欠かせないのが、火力の強いコンロだ。先日紹介したテーブルコンロではパワー不足。とはいえ、ほとんどのキャンプ場では、地面に薪を組んで直火を起こすことが禁止されている。これは芝生や地面に熱が伝わってしまい、芝生をダメにしてしまったり、地面の中に住んでいる虫たちを殺してしまうからだ。

 ただキャンプ場によっては、焚き火用のかまどが用意されているサイトもある。U字溝を使っていたり、ブロックをコの字に組んでいたりと色々だ。とはいえ芝生サイトは、かまどが設置されていることが少なく、基本的に焚き火は禁止になっている。

 そんな芝生サイトでも、焚き火ができる場合がある。足の長いバーベキューコンロを使ったり、今回紹介するファイヤースタンドを使う場合だ。これらは、焚き火をしても芝に熱が伝わらないようになっているので、焚き火OKというわけだ。

 ただしこれらの器具を使っても芝生サイトでは「焚き火禁止」というキャンプ場もあるので、予約時に「焚き火台」を使って焚き火をしてもいいかどうかを確認しておこう。


キャンプ場で火遊びしながらオーブン料理!

直径25cmほどの「ダッチオーブン10インチ」。ひとまわり大きい直径30cmの「12インチ」タイプもある。

 今回使うダッチオーブンは、コールマンの「ダッチオーブン10インチ」だ。


メーカーコールマン
製品名ダッチオーブン10インチ
希望小売価格8,820円
本体サイズ260×190mm(直径×高さ)
重量約6.5kg
材質鋳鉄
付属品収納ケース、リッドリフター

 本体だけで6.5kgもあるので、これに食材を入れると7~8kgになる。キャンプ場に備えてあるかまどを利用する場合は、焼き網を2重にしたり、鉄棒を渡すなどした方がいいだろう。またフタだけでも2kg近くあるので、小さな子供には開けさせない方がいい。

 今回使ったダッチオーブンには底敷きがないので、そのまま食材をダッチオーブンに入れてしまうと、食材が鍋肌に触れてしまいコゲコゲになってしまう。オーブンとして利用する場合は、別売の「ステンレスプレート 10インチ」が必要だ。

 到着した日の晩ごはんは、ローストチキン。詳しくは「象印真空内釜圧力IH炊飯ジャー 極め炊き NP-LU10その2」のレシピを参照して欲しいが、鍋に水を500ccほど張り、そこに塩と砂糖、隠し味のしょうゆを、これ以上溶けないというほど加えた飽和溶液を作る。これがビックル液だ。ウチではコレに冷蔵庫の残り野菜のタマネギやニンジン、セロリの葉っぱなどをみじん切りにしたものを加えている。さらにビールやお酒などを入れたり、ナツメグなどの香辛料をいれたりしてもいい。

ダッチオーブンの下に引く「ステンレスプレート 10インチ」は、別売となっており定価は2,730円。オーブンとして使うには必需品だ塩と砂糖、しょうゆを少し加えたビックル液に、香味野菜のみじん切りを放り込む2晩漬け込んだチキンは、30分ほど塩ヌキをする。塩分控えめにするなら1時間の塩ヌキ

 あとはチキンをジップ袋に入れ、さましたビックル液を加えて1日~2日間冷蔵庫で寝かせて味を染み込ませる。

 キャンプ場では、塩抜きをするところから。大きなボウルに袋から取り出したチキンを入れ、30分~1時間ほど水を変えながら塩抜き。水気をよくふき取って、ダッチオーブンの中に投入する。

 10インチのダッチオーブンに投入したのは、チキンの足6本。うち2本が他の肉と重なってしまったが、まぁソレはヨシとしよう。3~4人家族なら今回使った10インチ(25cm)タイプでいいだろう。5~6人家族の場合は、ワンサイズ上の12インチ(30cm)がお勧めだ。

 食材を入れたダッチオーブンは、あらかじめ強火にしてあったかまどに掛ける。燃料は薪でも炭でもかまわないが、バーベキューなどにくべる炭よりも1.5倍から2倍を用意しておくのがポイントだ。最後はダッチオーブンのフタの部分に燃え盛る炭を乗せ、上からも加熱する。これでダッチオーブン内が均一に熱せられるというわけだ。

よく水気を切ったチキンをダッチオーブンに。鍋肌に触れないように配置していくのがポイント食材を入れると激しく重くなるので注意! 焼き網の強度にも注意ダッチオーブンのフタの上にも炭を置き、上下から内部を加熱する

 この状態のまま30分から1時間加熱するとローストチキンのできあがりだ。できあがりの頃合は、チキンから滴る余分な脂分がダッチオーブンの底に落ち、辺りにいい香りを振りまき始めた頃。かまどを囲んで火遊びでもしていれば、あっという間に時間が経つ。ポイントは、鍋の中の香りが流れてくる風下にいるということ。

 なおダッチオーブンの内部温度を計ることはできなかったが、ウチのオーブンで作ったときの時間を比較してみると、写真のような火力でおよそ250℃以上といった感じだ。

真っ暗な中に光る炎は見ていて飽きないチキンの臭いがしてきあら、いったんフタを空けて焼き具合を確認上面の火が強かったようなので、再びフタをして底からの火だけで10分加熱。いい感じに焼きあがった

 いい香りがしてきたらフタの上にある炭をどけて、仕上がりを確認。今回は少しフタの上に置いた炭が多かったようなので、上ばかり焼けてしまったため、再度フタをして下からの火だけで10分追加して加熱した。

めっちゃウマそうなコゲ目に、あたり一面に広がる香り!手づかみでガッツリ行くのがキャンプだ!

 できあがりはご覧の通りで、ウチのオーブンで作るのと遜色ない仕上がり。いや、食べてみて分かったのだが、ウチの電気式オーブンだと1時間ほど加熱するので水分が少なくなってしまうのだが、ダッチオーブンで作ると外がこんがり中はジューシーな仕上がりになる。ウチで作るよりローストチキンより、ジューシーさが格段に上だ。

ウマそうにガツっつく子供たち皮が嫌いな子でもでも、パリパリに仕上がるので残さず食べる

キャンプ豆知識 “テントのサイズはどのぐらい?”

 これからテントを購入しようと思っている人にアドバイス。テントのサイズは「何人用」という表記がされているが、3人家族だからと言って3人用を買ってはダメ。確かに3人用のテントなら大人3人が“なんとか”寝られるスペースはあるものの、着替えなどを入れたバッグを置いておくスペースがないのだ。

 もし3人家族の場合なら4~5人、4人家族なら5~6人用のテントを買うこと。また地面からの湿気や熱を遮るため、「銀マット」と呼ばれるものも合わせて購入しよう。これがあるとないでは、テントの快適さがまったく異なる。

ダッチオーブンでもう一品!

カボチャまるごとをオーブンで焼く料理にチャレンジ!

 翌日の晩のメニューは、カボチャのオープン焼き。筆者が苦手なカボチャだが、せっかく子供たちが考えくれたメニューなので、コレ1本で行くことにした。

 作り方は簡単。カボチャの上をくり貫き中の種を取ったら、そこにチーズと牛乳、そしてベーコンを放り込むだけだ。一番大変なのは、生のカボチャのくり貫きだ。最初は三徳包丁で頑張っていたが、まさに言葉通り「刃が立たず」(歯違いだけど)、結局サバイバルナイフでくり貫いた。おそらく出刃包丁でも可能だろう。

包丁じゃ刃が立たず、サバイバルナイフでザクザク!とフタを空けたら、中の種をスプーンで取り出す

 加熱時間は1時間ほど。ローストチキンに比べると若干弱火で長時間加熱するといいようだ。今回はチョット火が強すぎたようで、皮がこげてしまったが、割ってみるとホクホクのカボチャに仕上がった。ただ少しミルクが多すぎたようで、ちょっと取り分けが大変だった。

牛乳とチーズ、ベーコンを入れたカボチャをオーブンの中に1時間ほど加熱したところ、はじめは強火で徐所に弱火にして中まで火を通すちょっと牛乳が多すぎたみたい……カボチャの半分ぐらいまででいいようだ

焚き火コンロのないトコでもキャンプファイヤー!

火の番をしていると、子供たちはどこかからか拾ってきた木の枝をコンロに突っ込んでは、煙がモクモクと立ち上る

 人間って不思議。他の動物なら火を恐れるのに、なぜか人間だけは火を恐れない。それどころか、火を見ているだけで心が落ち着いたり、何時間も火の面倒をしていてもぜんぜん飽きない。人類が誕生してからおよそ20万年前と言われているが、後天的に小脳に刻み込まれた本能のように老若男女問わず、火遊びが大好きだ。

 もちろんウチの子供たちも例外じゃない。ヤツらが「キャンプに行きたい!」という理由の5割は火遊びだ。自宅で使っているバーベキューコンロじゃ物足りないらしく、薪を使ってボンボンと赤い炎を起こしたいらいしい。

 そんな火遊びに持ってこいなのがコールマンの「ステンレスファイアープレイス/M」だ。


メーカーコールマン
製品名ステンレスファイヤープレイス/M
希望小売価格21,525円
使用時本体サイズ500×500×440mm(幅×奥行き×高さ)
収納時本体サイズ500×390×170mm(同)
重量約9lg
材質ステンレス、他
付属品焼き網、収納ケース

 U字溝などを使ったコンロよりずっと大きく、薪を縦に組んでも余裕の深さがある。でもコンパクトに折りたためるので、車に積み込んでもさほど場所を取られないのがいい。

頑丈なので底の方に積んで、その上に荷物を置いても大丈夫この専用バッグも添付品となっている

 なによりステンレス製なので、火にも強く長持ち! 昔は焚き火コンロを一斗缶(業務用のペンキなどが入っている18Lの四角い缶)に穴を開けて作っていたが、2泊3日のキャンプをすると酸化してしまってボロボロ――この「ステンレスファイアープレイス」は、大火力で使っても何度でも使えそうだ。

 バッグの中に入っているのは4つ。本体と底板、それに断熱用のプレートに焼き網だ。

バッグの中に入っているもの。焼き網は他で使っていたので、写真に写っていないが標準添付されている本体を展開する。本当は、けが防止のために軍手や皮手袋をした方がいい本体から足を出す。ロックピンを押し込んで、足をシッカリ固定させる

 組み立ては5分もかからない。まず本体を展開して井桁を作り、底にある足を立てる。そこに炭床になる床を差し込み、断熱用のプレートを本体に引っ掛けて完成。これでキャンプファイヤーを楽しめる。

本体底に炭床を差し込む。炭が貯まったら底板を抜いて捨てられるので便利断熱用のパネルを本体に引っ掛ける。その効果は絶大だった最後に焼き網を乗せて完成。隙間から薪や炭を投入できるようになっている

 写真のように薪を縦に組んでも余裕の深さ。もちろん薪ではなく炭を燃料にしてもいい(深いので火力は弱めになる)。側面はすべてメッシュになっているため、風の回りも良く着火もラクチンだ。

 注意するのは、火の番を必ず1人立てておくこと。何時間もずーっと座って番をしなければならないが、たいてい誰がやるかでモメることになり、じゃんけんで決めることになるほど人気だ。

 今回は中2のお姉ちゃんがその役を勝ち取ったが、ご覧のように炭が完全に灰になるまでずーっと、炭をつついていた。辺りはもう、真っ暗なのに……

大火力にもビクともしない、しっかりした作りに感心火の番は何時間やっていても飽きない

 重いダッチオーブンを乗せても、しっかりとした作りで安定感も抜群。薄っぺらな断熱プレートではあるが、その効果は高く芝生を痛めてしまうこともないだろう。

キャンプ豆知識 “キャンプ用のコンロを買うとしたらガス式?ガソリン式?”

 せっかくなのでキャンプ用のツーバーナーコンロも買いたいという人もいるだろう。そこでお店に行ってみると、ガス式とガソリン式がある。いったいどちらを選んだらいいのだろうか?

ガソリン式のツーバーナー。燃料切れだけでなく、圧縮空気が少なくなっても火力が落ちるので、調理中も何度かポンプをシュコシュコやらないといけないのが面倒

 経済性から言えば、本体価格はガス式もガソリン式も大差ないが、ランニングコストが安いのはガソリン式。ホワイトガソリンという揮発性の高い燃料を使うが、緊急時には車のガソリンでも使えるというものだ。ただしガソリン式は、扱いが非常に面倒。ガソリンをタンクに入れたら、タンクのポンプをシュコシュコと押し込んで、タンク内に圧縮空気を入れなければならない。また点火は、ライターなどで行なう必要があり、運転開始時にはチョークを開けるなどの手間が入るほか、火が安定するまでに数分かかる。

 手軽さから見ると、ガス式が圧倒的に便利。自宅のコンロと同様に着火も簡単だ。なにより便利なのは、たたむとコンパクトになる点。ガソリン式に比べると、たたんだときの大きさは1/4ぐらいなのだ。キャンプ場を見ていると、現在の主流は圧倒的にガス式になので、とりあえずガス式をお勧めしよう。

 筆者の場合はガソリン式を使っているが、これは十年以上も前に買ったものだ。故障したパーツを単体で購入できるので、オーバーホールして直しては色を塗りなおし……を繰り返し、いまだに現役だ。

 今回は、料理に火の番とキャンプの夜のお楽しみをご紹介してきた。最終回となる次回は、キャンプの必須アイテムである照明器具を中心にご紹介したいと思う。



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2010年4月14日 00:00