長期レビュー

パナソニック「IHホットプレート KZ-HP2000」 その3

~スタミナ作りに、夏の鍋もいいもんだ!
by すずまり

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



パナソニック「IHホットプレート KZ-HP2000」

 「KZ-HP2000」は別売の天ぷら鍋を使えば揚げ物調理も可能となっているが、最終回となる今回は、付属の鍋を使って「加熱」や「味しみこみ」機能を試しつつ、これまでの使用感を総括してみたいと思う。第1回目はこちら、第2回目はこちら


連続して最大9時間55分もじっくり煮込める「加熱」機能

 メインテーマとなる鍋だが、鍋本体の使い心地としては、一般的な鍋や土鍋とほぼ変わらない。割り下を入れるなどして空焚きをしないよう注意すればすき焼きも可能だ。ひとめ見て気に入ったのはふたが透明で中が見える点。土鍋風鍋のときはふたが黒く、いかにも土鍋のふたという風情だった。それはそれで趣があってよいのだが、やはり調理中に中の様子が分からないとのは不便だ。

 鍋用のメニューとしては、「加熱」と「味しみこみ」の2種類が用意されている。コンセントを接続した状態では「ホットプレート」が選択されているので、[コース]を押して「加熱」または「味しみこみ」に切り替えてから[切/スタート]ボタンを押すという手順になる。下矢印ボタンを長押しすると「保温」になるあたりはちょっとニクイ。

 「加熱」では火力「中」で加熱が始まるので、適宜矢印ボタンで温度設定を行なう。気になる火力だが、「保温」は75W、弱火は150Wまたは260W(弱)、中火は450Wまたは700W(中)、強火は900Wまたは1,400W(強)となっている。

 ワット数で言われてもピンとこない方は、レシピの黒豆、おでん、カレー、シチューなどは150W~450W(弱の下~中の下)、茶碗蒸し、おこわは260W~450W(弱~中の下)、関東風すき焼き、寄せ鍋は450W~900W(中の下~強の下)、沸騰は1,400Wという情報を参考に、鍋の中の沸騰具合をみながら調整すればいいだろう。

 「味しみこみ」はその名の通り、じっくり味をしみこませるための機能だ。素材をぐつぐつ柔らかく煮込むわけではないので、あらかじめ調理済みであることが前提となる。沸騰はしていないがアツアツな、コンビニのおでんを思い出せばいいかもしれない。

 ホットプレートのときは経過時間が分かる「カウントタイマー」のみだったが、「加熱」では「カウントタイマー」と「切タイマー」の両方が有効だ。特に「切タイマー」は時間がきたらブザーが鳴り、自動的に加熱が停止するのでありがたい機能だ。最大9時間55分まで設定可能で、20分までは1分刻み、20分以降は5分刻みでセットできる。つまり、9時間55分は煮込めるので、スロークッカーのような使い方も可能というわけである。

 というわけで、今回はその機能を確かめるというよりは、製品そのものを使って、夏の鍋料理を楽しむというスタイルになった。これから積極的に内食したいという方に、多少なりとも参考になれば幸いである。

野菜と鶏肉のコンソメスープ煮

 感覚を確かめるにはまずはシンプルにスープを……というわけで、いつものように鶏肉、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、しめじ、キャベツ、にんにく、茄子をコンソメスープで煮込んでみた。最後に胡椒と粉チーズをふりかけ、バジルを載せて完成。怪しいスープに思えるが、シンプルでなかなかおいしい。加熱をスタートしてから10分程度で沸騰し、全然ストレスを感じることなく調理できた。基本的な使用感は土鍋風鍋付きIH調理器とは変わらないと言ってもよいだろう。

鶏肉のほかに、あんな野菜もこんな野菜もどんどん放り込んでしまうのだ様子をみながら柔らかくなるまでぐつぐつ煮込む手作りパンと一緒に食べると格別の味わい!
酸味をプラスしたくなったらトマトをいれてみてもよい煮込み中にプレートを触っても熱くない

残った野菜スープでカレーライスへ

「切タイマー」を使って煮込めば、ちょっと目を離していても安心

 残った野菜スープに再び玉ねぎ1/2個と鶏肉200g分をプラスしてカレー作りへ移行である。

 いったんタイマーで20分ほど煮込み、切れたところで固形のルーを投入。ルー全体が溶けたところでよく混ぜ、そのまま再びタイマーで15分煮込んで完成だ。時間になれば勝手に加熱が止まるのでありがたい。トッププレートに置いておけば温め直しもスイッチ1つで楽だった。煮込んでいるのが土鍋風の鍋というのにはやや違和感はあるので、一般的な鍋料理から洋風メニューにも合う鍋の形を期待したい。

ルーを溶かし入れたら再び「切タイマー」で15分煮込む15分後、野菜たっぷりのカレーが完成した最初に具を炒めていないが、十分おいしくいただける

「中」で煮込んでいる様子。沸騰しては収まり……の周期を繰り返している

肉と野菜をたっぷり食べたいから「豚肉の蒸ししゃぶ」

 季節柄、悩んだのが鍋料理のメニューである。暖をとりたい冬ならいざ知らず、夏の鍋とはいかに? 悩んだ末、夏の鍋に求めるものは、鍋の熱さと冷えたビールの対比、および暑さを乗り切るスタミナを維持できる栄養が重要なのではないかという結論に達した! 早い話、ビールがおいしくてパワーのつきそうな鍋というわけだが。

 そこで冷しゃぶ用の豚肉と野菜を使った鍋を作ってみた。用意した野菜は、もやし、水菜、長ネギ、エリンギ、えのき。鍋の中に刻んだ野菜を敷き詰め、その上に冷しゃぶ用の豚肉を満遍なく並べていく。この料理で面倒な作業があるとすれば、上に肉を並べる部分くらいだ。あとは上からみりんとめんつゆを少々ふりかけ、フタをして中火で約15分。かけるのはお酒でもよい。豚肉の色が変わったらOKだ。ほぐして野菜とざっくり混ぜ合わせ、あとはしゃぶしゃぶ用のごまだれでいただく。

鍋に野菜をたっぷり敷き詰める。水分の多くは野菜から出てくれるのだ野菜の上に冷しゃぶ用の豚肉を満遍なく並べ、上からめんつゆやみりんを適量かけるふたをして[コース]ボタンで「加熱」を選択。選択しわすれると「ホットプレート」になってしまうので要注意
食材の水分で蒸し上がってくる野菜もたっぷり食べれられる「豚肉の蒸ししゃぶ」が完成したお好みのたれをつけて召し上がれ
紫蘇を巻いてもおいしい

 今回はストレートのごまだれに紫蘇を組み合わせてみた。ごまだれをたっぷり絡めた肉と野菜をそのまま食べたら、次は大きな紫蘇の葉で巻いて食べるのだ。するとこってり感が抑えられてさっぱりと食べられる。薬味として用いられることの多い紫蘇はそのままでは量を食べることは難しい。しかし、肉と合わせると不思議とどんどん食べられる。翌日特に予定がなければニンニクもたっぷり入れてみたいところだ。

鉄分を補給したいなら「豚肉とほうれん草」も

多少歯ごたえが欲しかったので、豆もやしと一緒にいただいた

 汗をだっぷりかきつつ、ビールをグビグビ飲める鍋もいいけど、女性だったら貧血予防のために鉄分&スタミナが必要では、と考えていたところ、知り合いから教えていただいたのが「豚肉とほうれん草のしゃぶしゃぶ」だった。作り方は至って簡単。鍋に昆布を敷き、日本酒をたっぷり注ぐ。そこでざく切りにしたほうれん草やしゃぶしゃぶ用の豚肉をさっと茹で、好みのたれでいただくというもの。

 疲れているときはさっぱりしたポン酢で。濃厚さと甘さが欲しいならごまだれでいただくとかなりの量のほうれん草を食べられる。鉄分が不足しがちな女性に特にお勧めだ。

 ほうれん草がすぐ柔らかくなってしまうので、長い時間煮込めないので注意していただきたい。また、使うお酒は料理酒ではなく正真正銘の日本酒なので、お酒の弱い方は注意しよう。

お酢で大根と手羽元を煮て、ひんやり煮物を

鍋に材料とひたひたになる程度のだし汁と醤油、みりん、砂糖、お酢を入れて「加熱」で煮込む

 「味しみこみ」を使ってみたくて試したレシピが、お酢を入れて煮る大根と鶏肉の煮物だ。プレート、鍋と熱々料理が続いたので、あえて冷ますとおいしい夏の煮物とはなんぞや? と悩んだところたどり着いたのが「お酢」。お酢を入れると独特のさっぱり感が出るのだ。しゃぶしゃぶ系の豚肉はかなり脂身が多いため、おいしいけれどあまり頻繁に食べるのもためらわれる。脂に飽きたら、やはりさっぱりした煮物だろう。お酢を入れると独特のさっぱり感が出るのだ。

 大根、にんじんを食べやすいサイズにカットし、手羽元とともに鍋の中に入れる。あとはひたひたのだし汁と醤油、みりん、砂糖、お酢を入れて煮るだけだ。15分中火で煮込みながらアクをとり、さらに弱火で15分煮込んでから、「味しみこみ」を2時間にセット。アラームが鳴ってスイッチが切れたらトッププレートからおろし、冷めるまで待つ。煮込んでいる間はお酢のさわやかな香りがしていいものだ。

材料が柔らかくなったら、「味しみこみ」で2時間煮込む時間が来てスイッチが切れたら鍋をトッププレートから降ろし、冷ますお酢が入ることでさっぱりとした味わいの煮物になる

 「味しみこみコース」は、沸騰させずにひたすら煮込むモード。ゆえに雰囲気としてはスロークッカーの「弱」に似てるかもしれない。切れても自動的に保温はされないが、料理によってはスロークッカー代わりに使えそうだ。利用頻度からスロークッカーを単体で用意するのはどうかと考えていた方には嬉しい機能かもしれない。ただし鍋単体でキッチンの隅に(床の上にも!)おいておけるスロークッカーとは異なり、トッププレートの分だけ場所はとるのが難点だが。

内食に、パーティに、忙しいときに、大活躍間違いなし

 「夏に鍋とかホットプレートって熱くてうだりそう……」という先入観ありきで試していたのだが、結果的には大いにありである。確かに吹き出す大量の汗を拭きながらの食事は大変だが、冷房で冷えた体が中から活性化していくような感じがする。摂取したい栄養を考え、食材をピンポイントで選んでいくと、冬の寄せ鍋とはまた趣が異なるスタミナ鍋になるのだ。冬と違い、冷めてからでもむしろさっぱり食べられる夏の鍋や煮物は、二度おいしい料理といえるだろう。

 以上、ホットプレートと鍋を日常的な感覚で利用してみたわけだが、これがかなり楽しめた。1セット持っているだけで、火力の強いホットプレート料理から鍋料理まで楽しめ、さらにIH調理器としても利用できるのだから非常に利便性の高い製品である。

 フルタイムで働く既婚の知人女性は、自分の帰宅が遅くなったときはホットプレートを活用することが多いのだという。聞けば「(帰っても何も用意されてないので)ホットプレートなら準備も簡単ですぐ食べられるし、自分だけ台所に立たなくて済むから」と教えてくれた。彼女のように、帰宅後パートナーは休憩、自分だけは引き続き家事をこなすという女性は結構いるのではないかと推測する。そんな方にも、いや、むしろ男性にも大いに活用していただけるのではないかと思う。

 やや不満があるとすれば、ホットプレートのふたが透明ではないことや、ホットプレート上の焼きムラだろうか。また、鍋を載せても、うっかり「ホットプレート」のまま加熱を開始してしまいがちなので(何度かあった)、専用の土鍋を載せたときは自動的に加熱になるなどのなんらかの機能があったらいいなと感じた。

 さらにわがままを言えば、炒めてからそのまま煮るという工程に移れる鍋があるとかなり重宝がられるのではないかという気もした。別途専用パンを購入すればいいのだが、せっかくなのでぜひセット化を望みたいところである。

直接壁のコンセントを使おう!

 最後に「絶対にたこ足配線はせず、必ず壁のコンセントから直接電源をとって欲しい」と声を大にして言いたい。

 実はついうっかりやってしまった失敗がそれなのだ。習慣とはおそろしいもので、ホットプレートを使う際、何気なく視界に入ったたこ足配線中のコンセントにプラグを差し込んでしまったのであった。

 調理を開始してしばらくすると、「ピー!」というブザー音とともに突然加熱が停止した。何度試しても埼スタートできない。気づいたときにはコンセントがかなりの高熱を発しており、付属の電源切り替えスイッチすら機能しなくなっていた。発生した熱でタップ内部が壊れ、電気供給が停止してしまったのだった。加熱が停止したことで、火災に発展しなかったのが幸いである。

 これからご利用になる方はくれぐれも注意していただきたい。




2009年7月24日 00:00