【IFA 2012】
パナソニック、欧州市場での白物家電事業を加速

~IFAで「フリースタイルIH」など新製品を展示
IFA 2012のパナソニックブースのようす

  パナソニックは、8月31日から、独ベルリンのメッセ・ベルリンで開催される家電見本市「IFA 2012」において、欧州市場におけるアプライアンス(白物家電)事業を拡大する方針を示し、新たな製品を発表した。

 本レポートではAV製品も含め、ヨーロッパにおけるパナソニックの施策を紹介する。


「パナソニックの白物家電事業は海外での成長が著しい」

パナソニック グローバルコンシューマーマーケティング部門 アプライアンスマーケティング本部 中島幸男本部長

  IFA 2012の開催に先駆けて8月29日に行なわれた会見では、パナソニック グローバルコンシューマーマーケティング部門アプライアンスマーケティング本部長の中島幸男役員が登壇。「欧州市場には、これまで、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の大型白物家電製品を投入してきたが、これに加えて、ビルトインキッチン、調理商品、理美容家電にもラインアップを拡充する」とし、統一感を持った新たなデザインの調理家電製品や、フリースタイルIHなどの新製品を発表した。

 パナソニックでは、今年初めて、IFA会場に白物家電製品を出展し、新製品とともに、同社が持つ業界トップクラスの省エネ性能を訴求する考えを示した。

  中島本部長は、「パナソニックのアプライアンス事業は、世界屈指の成長を遂げてお
り、特に海外での成長が著しい。欧州市場では、2013年度には、2011年度比で30%増、2015年度には、2013年度比で40%増の成長を計画している」としたほか、「パナソニックは、全世界に56の製造拠点、13の生活研究所、5つのデザイン会社を持っているが、欧州には1つの製造拠点のほか、2008年に設立した生活研究所、2009年に設立したデザイン会社があり、今後も欧州市場に向けたニーズにあったモノづくりを進めていく」とした。

欧州市場でのアプライアンス事業の成長目標パナソニックは欧州に製造拠点・生活研究所・デザイン会社を持つ

パナソニックヨーロッパ会長兼CEO ローラン・アバディ常務役員

  また、パナソニックヨーロッパの会長兼CEOであるローラン・アバディ常務役員は、欧州主要5カ国におけるアプライアンス市場におけるパナソニックのマーケットシェアが10.2%と、第2位になっていることを明らかにした。さらに、デジタル一眼カメラでは31.4%と首位を獲得し、37型以上のLEDテレビで10.25%のシェアを獲得したことや、欧州5カ国における37型以上の薄型テレビでは第3位になったことなどを示し、欧州市場におけるパナソニックの存在感が高まっていることを強調した。


自由な位置で調理できる「フリースタイルIH」を公開

 具体的な製品では、調理家電では、統一したデザインを採用した電子レンジ、トースター、湯沸かしポット、コーヒーメーカー、ホームベーカリーが展示された。また、理美容家電では、一部には日本向け製品が展示されていたものの、ヘッドスパや男性用のヒゲ剃り、トリマー、女性向けの脱毛用シェーバー、ナノイードライヤー、ポケットドルツなどを展示し、欧州市場においてもパナソニックビューティー製品群の展開を開始する姿勢を示した。

今後欧州市場で本格化させるパナソニックビューティー製品群を展示するブース男性向けトリマー製品群メンズシェーバーの製品群も展示
ナノイー技術を搭載した各種製品も用意。ただしこれらは日本向けモデルの展示だった欧州市場向けの女性用ボディケア製品の展示も行なわれたポケットドルツは“モバイルビュティー”製品として提案
新たに発表された「フリースタイルIH」

 また、「フリースタイルIH」というIHクッキングヒーターを新たに発表した。一般的な“1つの鍋が置かれる場所に、1つのコイルを内蔵する”という発想を大きく変えて、45個の小さなコイルを天板部に細かく搭載。これらのコイルの1つ1つにセンサーを搭載し自由な場所で調理が行なえるという。さらに、鍋底の温度を測定し、自動的に最適な温度に調節することもできるという。

  このコイルから非接触型の家電製品を組み合わせることで、IHから電力が供給され、電源コードを接続することなく、フリースタイルIHの上で調理などが行なえる仕様となる。 


フリースタイルIHで鍋を動かしている様子
45個の小さなコイルを、天板部に細かく搭載している非接触型電源の家電製品を組み合わせることで、フリースタイルIH上で調理が行なえる。写真中央にあるのが、ケーブルフリージューサーフリースタイルIHへの取り組み

  洗濯機では、パナソニックが得意とするインバータ技術を採用したヒートポンプの強みを訴求。コンプレッサーの回転数や乾燥温度を柔軟にコントロールでき、省エネを発揮できることを強調。省エネ性能で「A+++」の認定を受けている製品なども品揃えしたという。

ベーカリーも特徴的なデザインとしたヒートポンプ搭載のドラム式洗濯乾燥機の試作品を展示
省エネ性能で「A+++」という高い評価を獲得した、サイドバイサイド型の大型冷蔵庫真空断熱材「U-Vacua」が省エネに効果を発揮していることを体験的に紹介スリム型冷蔵庫もラインアップ

  また、記者会見では、先頃日本で発表したスマート家電の一部を紹介。スマートフォンを通じて、活動量計や体組成計、血圧計で測定したデータをクラウド上で管理。それをもとに、電子レンジに接続することで、個人ごとに適した最適なメニューを電子レンジやスマートフォンを通じて、紹介するといったことが可能になるなどと語った。

スマート家電の実演展示をするコーナー活動量計や体組成計、血圧計なども展示されたパナソニックが実現するスマート家電の世界

  中島本部長は、「アプライアンス商品では、住宅空間、非住宅空間、パーソナル空間の3つの観点から、Eco&ソリューションを提供することで、2018年には世界ナンバーワンの環境革新企業を目指す」と発言。一方で、パナソニックヨーロッパの会長兼CEOであるローラン・アバディ常務役員は、神奈川県藤沢市で行なっているスマートシティ「藤沢サスティナブルスマートタウン」への取り組みを紹介しながら、街まるごとでの環境への取り組みを加速していることを示し、新たにロシアのスコルコボにイノベーションシティを展開していることを紹介した。

電子レンジ製品のラインアップの拡大している欧州向け家電製品では、「円」と「線」を基調としている欧州市場向けに投入する掃除機も展示した。ユニークなデザインのものも目立つ
スチームアイロンも欧州市場に投入することになるLED照明の各種製品も展示していたリチウムイオン蓄電池も展示。環境革新企業としての方向性を強調した

  そのほか、同社では、世界最大となる「103型裸眼3D表示プラズマディスプレイ」や、表示した対象物を移動させることができる「インタラクティブ多視点3Dシステム」を発表した。

  液晶テレビでは、60型の液晶テレビを新たに追加するなど、LEDバックライトテレビの品揃えを6割増加させて24モデルに拡大し、ラインアップを一新。また、欧州委員会がテレビの消費電力に新たな規制を発行したことを受けて、パナソニックが得意とする省エネ技術を生かすことで、前年の同等モデルと比較して消費電力を25%削減し、17機種のLEDテレビで「エコA+」基準を達成したことを紹介した。

パナソニック グローバルコンシューマーマーケティング部門AVCマーケティング本部長の西口史郎役員

 パナソニック グローバルコンシューマーマーケティング部門AVCマーケティング本部長の西口史郎役員は、「2012年からはSmartVIERAを投入。キレイ、簡単、つながる、エコ、デザインの5軸から、新たなトレンドを提供してきた。ネット接続されたテレビにより、2012年は新たなコネクティビティやサービスを提供する。スマートフォンやタブレット端末の写真や動画を、指先の操作だけでVIERAに送り込むSwipe & Shareの機能など、他社にはないユニークな機能を訴求していく」と語る一方、「2015年には半分以上のテレビがスマート化されると予想されており、パナソニックはスマートテレビをさらに強化していく」との方針を示した。

  同社ではさらに、“スマートモビリティ”のキーワードによって、新たな提案を進める考えも強調していた。

103型の裸眼3Dディスプレイ。デジタルサイネージなどの利用を想定インタラクティブ多視点3Dシステム。実際の宝石を会場に持ち込んでデモストレーションの様子新たに発表した60型液晶テレビ





(大河原 克行)

2012年8月31日 00:00