【特別企画】
LED電球、どれを買う? 2010

大塚商会「LumiDas(ルミダス)」

~光の拡散性や排熱など、LEDの弱点を克服したLED電球
by 藤原 大蔵

 

LED電球は大手家電メーカーだけのものじゃない――大塚商会「LumiDas」

大塚商会「LumiDas 一般電球形5.8W BL06-100/120VE26S」。白熱電球60W相当の直下照度を備えているという
 家電量販店で、大手家電メーカーの製品と、そうではないメーカーの製品が並んでいた際、後者に対して「大丈夫かなぁ?」と不安がよぎってしまうことは、誰しも一度はあるだろう。その製品が100円程度で購入できる安物ものならまだしも、LED電球のように決して安い買い物で済まされないモノの場合は、なおさらである。

 今回紹介するLED電球「LumiDas(ルミダス)  BL06-100/120VE26S」は、オフィス用品からシステム構築まで広くサービスを提供する大塚商会が手がけたもの。その価格は2,723円(価格は楽天市場。2010年6月時点)と、ずば抜けて安いわけでもなく、公表されたスペックもLED電球の中ではフツー。となると、家電専門メーカーのものではないLED電球に、数千円を出費する価値ってどこにあるのだろうか。使用前は、正直言って身構えてしまったのである。

 ところがルミダスを実際に使ってみると、それは杞憂どころか、目からうろこ、大手家電メーカーもウカウカしていられないのでは、と思えるほどバランスの良いものだったのである。結論を言ってしまうと、明るさ、光色はLED電球の中では上位。しかもLED電球にありがちな、「光の拡散性の弱さ」、「高温になる放熱部」といったデメリットも改良したものだったのだ。

 というわけで、今回はこの大塚商会が手がけたLED電球「ルミダス」を紹介しよう。バリエーションは60Wタイプのみなので、60Wの白熱電球と60W相当の電球形蛍光灯と比較して、その実力を探っていく。

(注)同社では調光器に対応したLED電球「DBL06-100/120VE26S」も発売している
シリーズ名LumiDas(ルミダス)
定格消費電力5.8 W
シリーズ名標準モデル
品番BL06-100/120VE26S
白熱電球と比較した
明るさ(直下照度)
60W相当
購入価格
(楽天市場 6月時点)
2,723 円
光色電球色相当
色温度3,000 K
平均演色評価数Ra82
口金タイプE26
全光束390 lm
調光器対応- (注)
密閉器具対応-
サイズ109.5 x 63 mm
実測質量128 g
定格寿命40,000時間

 ※白熱電球は三菱電機オスラムの 「LW100V57W2PZ」(2個パック143円で購入)を使用
   ※※電球形蛍光灯は、2008年の特集で 総合的に性能の高かったパナソニックの「パルックボール プレミアQ(クイック)」(1,390円で購入)を使用



サイズ比較

 サイズは109.5×63 mm (高さ×直径)で、白熱電球、ルミダス、電球形蛍光灯と横並びに並べてみると、“大きめの電球”に見える。背丈こそ電球形蛍光灯よりも低いが、直径が白熱電球よりも8mm太いのだ。

 ただし、放熱部は白く、浅い溝(スジと言うべきか)があるだけなので、LED電球にありがちなゴツゴツした印象にはならない。また、ソケット部に向かってスッキリとくびれている。まとめれば、大きめながらも白熱電球との置き換えを意識したものになっていると言えそうだ。ちなみに重量は128gと、LED電球の中では軽い部類に入る。

ルミダスの高さは109.5mm(中央)で、60Wタイプ白熱電球(左)と比べると15.5mm高い。光源部は大きめだが、ソケットにかけて細くくびれており、電球のフォルムに近い。白色の放熱部には浅いスジがある程度でアッサリした仕上げだ直径は63mm(中央)。60Wタイプの白熱電球(左)と電球形蛍光灯(右)の直径は55mmなので、かなり大きく見えてしまう。光源部は半透明のポリカネード樹脂

 ルミダスがこのように太めな理由としては、LEDの配置方法が影響しているだろう。LED電球は、LED素子が中央に配されているケースが多いが、本製品は、電球の外周に沿うように22個のLEDが設けられている。これにより、光がよく広げる狙いがあるという。真横から見ると、樹脂製の光源部を通して、この小さなLEDチップが並んでいるのが透けて見えるが、上から見る分にはそれほど気にならない。拡散性については、順を追って見ていこう。

器具に取り付けたようす

 器具への収まりは良い印象だ。丸い半透明な樹脂の発光部が電球らしい。放熱部や電球の外周に並ぶLEDチップは、かなり覗きこまないと見えてこない。

【白熱電球:60W】
電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した
【電球形蛍光灯】
電球の直径は白熱電球と同じだが、高さがあるため、内側のらせん状の蛍光管が透けてみえる
【ルミダス:60W】
“太っちょ”な見た目も、器具に取り付けてしまうと、それほど大きくは見えない。むしろ、まんまるな光源部がとても電球らしい。器具とのバランスも悪くない

光の広がりかた

 光源部を中心にほぼ球形に拡散している。白熱電球や蛍光灯ほどではないが、ソケット方向や側面に、他社のLED電球よりもかなり光が回り込んでいる。また、LED電球らしい光のノビがあり、遠くまで届いている。電球の外周に沿うように配置されたLEDチップの効果がしっかりあらわれたようだ。

【白熱電球:60W】
ソケットぎりぎりまで明るい。電球を中心に床面に近いところから光が広がっている
【電球形蛍光灯】
白熱電球と同じようにソケット付近も光が届く。遠くまでは光が届かない印象
【ルミダス:60W】
ほぼ球形に光が拡散している。ソケット付近と側面への光の回り込みもあり、光が全体的に良く広がり、遠くまで光が届いている

拡散性を高めるよう、電球の外周に沿って22個のLEDが配置されている。中心部にはLEDがないため、光源部中央が暗くなってしまうが、照らした面にムラができるなどの悪影響はない
 この写真を撮っているうちに気付いたのだが、近くで見ると、電球カバーに光のムラができている。電球の外周にLEDチップが連続して並ぶ姿や、電球の中心部が暗くなる点が、肉眼でもしっかりと確認できる。

 ただし、照らした面に光のムラがでなかったので、ランプとしての性能に悪影響は出ていないようだ。こうしてみれば個性的だが、電球がむき出しにならない限り、気になるものではないだろう。

明るさ(55cm直下の照度)

 415Lxという明るさは、60WタイプのLED電球の中でも上位。40Wの白熱電球(同条件で437Lx)と、ほどんど変わらぬ明るさが得られた。また、光色が自然で色がくすまずに鮮やかに見えるため、数値的にはもっと明るいはずの電球形蛍光灯よりも、明るい印象を受ける。

【白熱電球:60W 800Lx】
光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測
【電球形蛍光灯 475Lx】
【ルミダス:60W 415Lx】
400Lxを下回るLED電球が多い中、415Lxと、明るさは上位。また、全体的な明るさの印象は40Wタイプの白熱電球と変わらない印象だ
※参考 白熱電球:40W 437Lx】

 これもまた撮影中に気付いたことだが、ルミダスの放熱部が熱くなかったのには驚いた。LED電球は、光源部自体は熱くならないが、放熱部はちょっとでも触れたらやけどしかねないほど高温になるものが多い。そんな中ルミダスは、たしかに熱は持っているのだが、素手で握りしめ続けられる程度。これまでたくさんのLED電球に触れてきたが、こんなLED電球は経験上初めてだ。



 正直に言って、かなり優れたLED電球と言えるだろう。LED電球の中でも形状は大きめだが、明るさ、光の広がり、光色など、光自体に関して言えば、相当なレベルにあるのではないだろうか。次にレポートは実使用に進んで行くが、かなり期待ができそうな印象である。




【実使用編】


 ここからは実際の生活シーンに取り付けてルミダスの実力を探っていく。なお、パッケージに「高温の環境下や密閉した環境では寿命の低下の恐れがある」と書いてあったため、浴室や密閉型のインテリアライトの写真は割愛している。

玄関

 玄関には全く問題なく使用できるだろう。白熱電球と並べて比較すると暗くなってしまうが、実際の使用では十分な明るさが感じられる。影が他社のLED電球よりも穏やかな印象で、光の拡散性の高さが表れていた。光色は蛍光灯よりも良く、色被り感がほとんど無く、くすんだ印象にもならない。もちろん、点灯した瞬間から明るいのも、LEDならではの良さだ。

【白熱電球:60W】
床面まで光が届き、十分な明るさがある
【電球形蛍光灯】
比較すると色味が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる
【ルミダス:60W】
自然な色合いでスッキリとした光色は玄関に相応しく、実用的な明るさが十分感じられた。白熱電球に比べれば暗くなる点は仕方がない

トイレ

 玄関同様に、トイレでの使用にも良い。撮影時、60Wタイプの白熱電球に合わせているので、写真の印象はどうしても暗くなってしまうが、清潔感が感じられる少し白っぽい光色は、トイレでの使用も快適である。

 なお、トイレは点滅頻度が高いため、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯の写真は割愛する。

【白熱電球:60W】
明るく気持ちよく過ごせる
【ルミダス:60W】
トイレでも快適に使える。白熱電球よりも白っぽい光は清潔感を感じる。白熱電球よりも暗くなるが、十分な明るさが感じられた

リビングルーム

 テーブル面、棚にもしっかりと光が届き、心地よい明るさが得られる。光が透過するシェードであっても、さすがに上方向や側面への光は白熱電球よりも暗くなってしまう。しかし、部屋全体の明るさのバランスは良好である。シェード全体はくまなく光り、器具の持つ印象はほとんど変わらないのも良い。

 非透過タイプも良好。天井や壁面からの反射光は残念ながら望めないが、テーブル面は十分に明るい。白熱電球や蛍光灯よりも光のコントラストがつくので、他の補助照明ともあわせやすく、雰囲気のあるリビングルームが演出できるだろう。

 

【白熱電球:60W×2 透過タイプのシェード】
光が部屋全体に行き渡り十分な明るさが得られている
【電球形蛍光灯×2 透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部、側面へも光が広がる。しかし、照らされた面はLED電球よりも暗い印象で、また色被りによりテーブルなどがくすんで見える
【ルミダス:60W×2 透過タイプのシェード】
暑苦しく見えないさわやかな光色が良い。自然な色合いで、快適なリビングルームが演出できる。天井や周りからの反射光は、白熱電球と比べると当然暗くなってしまうが、テーブル面や棚への明るさは十分に感じられる

【白熱電球:60W×2 非透過タイプのシェード】
十分な明るさが得られ、コントラストのある空間になっている
【電球形蛍光灯×2 非透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部へも光が広がるが、透過タイプと同様、色味はいまひとつ
【ルミダス:60W×2 非透過タイプのシェード】
部屋全体の明るさのバランスが良く、テーブル面にも十分に光が届く。LED電球の中では光の拡散性が良いため、天井からの反射光もある程度期待できる点はうれしい

 リビングを撮影していて感じたのが、光色が自然で、暑苦しさが抑えられているというところだ。一般的なLED電球の電球色というと、色温度は2,800K前後だが、ルミダスはやや白っぽさが加わった3,000K。暖かみのある電球色に、白っぽさが加わった光色ということになる。黄色や赤に偏った「人工的な電球色」にはならなかったのは、個人的にうれしく思う。


食事の風景

 結論からいえば、まったく問題なく使用できる。光色の良さが際立っており、食べ物全てがおいしそう見える。食器やランチョンマットの微妙な色合いもしっかり識別できるほど、それぞれの色がスッキリと、くすまず鮮やかに見えるのがとても良い。また、影の出方が穏やかで、華やかな明るさがあるので、快適な食事のシーンが演出できるだろう。

【白熱電球:60W】
全体的においしそうに見える
【電球形蛍光灯】
左右の写真と比較すると、色味のバランスが崩れ、食卓全体がくすんだ印象に見える
【ルミダス:60W】
演色性がとても良く、お勧め。食べ物が全ておいしそうに見え、食器やマットの微妙な色の違いも良くわかる。影の出方も柔らかでキツイ印象にならないのも良い



白熱電球との交換で、元が取れるのは【10カ月以内】

 60Wタイプの白熱電球と交換した場合、10カ月以内に元が取れる試算結果となった(1日8時間使用と仮定)。60WタイプのLED電球で、実売価格が2千円台後半の製品の中では、一般的な数値。他社製品と同様、1年以内で元を取ることができる。

 電球形蛍光灯と交換した場合は40カ月(3年4カ月)と、60Wクラスで2千円代後半のLED電球の中では割と早い時期で元がとれる。これは、ルミダスの消費電力が4Wと、2千円台後半の製品よりも低いことがこの結果につながっているだろう(だいたいが5W)。現在蛍光灯を使っているのであれば交換を急ぐ必要はないが、光色も良く、すぐ点灯することを考えれば、LED電球に交換するメリットはあるだろう。

【ルミダス:60Wタイプ】
従来の光源と比較した“いつになったら元が取れるか”試算
使用期間消費電力
(実測)
1カ月3カ月半年
(6カ月)
9カ月10カ月1年2年3年4カ月4年
ルミダス:60W4W2,744円2,787円2,851円2,915円2,936円2,979円3,234円3,575円3,745円
白熱電球56W370円966円1,932円2,897円3,195円3,792円7,583円12,638円15,166円
電球形蛍光灯10W1,445円1,554円1,719円1,883円1,938円2,047円2,704円3,580円4,018円
※表中の金額は、電球代と電気代をプラスした「維持費」  ※1日の使用時間は8時間と仮定
※白熱電球には、4カ月ごとに電球代を加算する (切れた電球代の購入費として) ※電気代は1kWh=22円で計算

【白熱電球:60W 56W】【電球形蛍光灯 10W(安定時)】【ルミダス:60W 4W】

欠点が少なくバランスに優れたLED電球。食卓にお勧め

 当初は半信半疑だったルミダスだが、フタを開けてみると、電球に求められる明るさ、光色など、大手メーカーが提供するLED電球に何ら遜色のない、質の高い製品であった。しかも、拡散する光、柔らかな影、高い放熱効果という、他社製品では得られないメリットも備えているのである。

 あえて弱点を挙げるならば、密閉器具に対応していない点と、価格が大手メーカーと比べてあまり安くない点だろうか。とは言っても、密閉器具非対応というのは大手メーカーの多くのLED電球にも言えることだ。

 ルミダスのお勧めの場所は、色味の良さが一番求められる食卓の真上に設置する明かりだ。食べ物の色味が良く、華やかさのある明るさが得られ、それでいて不必要な強い影が出にくいのは大きなアドバンテージだ。色温度が3,000Kと少し白っぽい光色は、多くのキッチンの天井に取り付けてある白色蛍光灯と併用しても相性が良いだろう。

 「LED電球の人工的な光色が気に入らない」、「電球色はなんだが暑苦しい」、「LEDの光り方はスポットライトみたいで落ち着かない」という不満を持っている人にお勧めしたいLED電球である。



大塚商会「LumiDas(ルミダス) 一般電球形 5.8W」はこんなLED電球

・演色性が高く、色味が重要な食卓には特にお勧め
・光は拡散し、光色も自然。高い放熱効果も
LED特有の強い影がなく、白熱電球のような柔らかな雰囲気が得られる
・60Wタイプの白熱電球と交換した場合、10カ月以内に元がとれる(1日8時間使用)





2010年6月29日 00:00