家電製品ミニレビュー

ダイソン「カーボンファイバーDC26 moterhead complete」

~カーボンファイバーブラシで拭き掃除いらず!
by 藤山 哲人
ダイソン「カーボンファイバーDC26 moterhead complete」

 ルートサイクロンという独自の技術で注目を集めてきたダイソンの掃除機。新しい技術が大好きな筆者も、数年前からダイソンユーザーだ。筆者が使っているのはDC22という数年前のモデル。吸引力の強さに惚れて、使い続けているが「重くてかさばる」というのは否めないところだ。

 ところが、そんなイメージを払拭するかのごとくA4サイズに収まる小型の「DC26」キャニスター(床置き)タイプが2009年の4月に発売された。それから1年半が過ぎ、DC26シリーズに新たなラインナップが加わった。

 それが今回紹介するDC26の「ダイソン カーボンファイバー」シリーズだ。掃除機本体は、小型軽量ながら、吸引力は大型の従来機並み、あるいはそれ以上を誇るDC26のままだが、「カーボンファイバーシリーズ」は従来のDC26に採用されていたヘッド(掃除機の先)を改良し、とくにフローリングの汚れをキレイにすることが可能になったという。

 今回はDC26 カーボンファイバーシリーズの最上位機種であるDC26 motorhead complete (モーターヘッド コンプリート)を使ってみて、どれほど機能強化をされたかを探ってみよう。


メーカーダイソン
製品名カーボンファイバーDC26 moterhead complete
希望小売価格オープンプライス
ダイソンオンラインストア販売価格89,800円

まずはDC26本体のおさらいから

 本体はA4の紙にピッタリ収まるほど小型で重量は3.3kgほど。これまでのDC26の詳しいレビューは「長期レビュー ダイソン「DC26」」を参照して欲しいが、カーボンファイバーシリーズで変更された本体は、コンセントプラグの形状とホースにあった継ぎ手がなくなっていることぐらいで、見た目は変わらない。

旧DC26のコンセントは、円筒系をしていたカーボンファイバーシリーズのDC26では、コンセントに刀のツバのようなものが付き、抜き差しがしやすくなっている
旧DC26にあった吸気ホースの継ぎ手これは撤廃さてれよりスリムなデザインになった
(6)は手元からヘッドに伸びる柄となっており、長さをワンタッチで数段階に切り替えられるようになっている。大人から子供まで、床から天井まで、幅広く掃除ができるだろう

 また付属品もほぼ旧DC26と同じものが用意される。最上位機種のDC26 motorhead completeには、(1)モーター駆動のカーボンファイバーヘッドをはじめ、(2)ソフトブラシツール、(3)布団ツール、(写真にはなし)フレキシブル隙間ノズルが標準添付されている。またオプション品として用意されている(4)ミニT字ノズルや(5)コンビネーション(ブラシ・隙間)ノズルも取り付けが可能だ。

今回の目玉「カーボンファイバーヘッド」とは?

 カーボンファイバーヘッドについては、文字でうんうん語るより、まずは実物を見て欲しい。

ヘッドの中に見えるブラシがカラフルになっている!というのは、デザインだが、壁や家具に当たる正面のエッジ部分にファブリックのクッションが取り付けられている注目すべきは裏側のブラシで、従来の赤いブラシに加え、黒いブラシが付いているのが見えるだろう従来機のヘッドには、前縁部のクッションがない。こちらのヘッドはモーター駆動ではなく、側面から吸い込んだ空気で風車をまわし、それを動力としてヘッドのブラシを回転させている

 さらにカーボンファイバーヘッドを分解してブラシを取り出してみると、赤いナイロン製ブラシのウェーブに沿うように、黒い細いブラシが密集しているのが分かるだろう。

赤いブラシは、デッキブラシほどの太さと硬さを持つ、ナイロン製。これで絨毯の奥にあるゴミを掻き出すようになっているブラシを掃除したり、絡まった髪の毛や輪ゴムを取りやすくするため、コインでダイヤルを回すだけでカンタンに分解できるナイロン製の赤いブラシに比べ、非常に細く細かい黒いブラシが密集している。これが「カーボンファイバー」と呼ばれるもので今回の最大の特徴

 この「カーボンファイバー」の素材は、「炭素繊維」と呼ばれているものだ。文字通り炭(カーボン)の極微細な粉を繊維状にしたもので、非常に強く非常に軽いハイテク素材。F1などのレーシングカーのボディーに使われているほか、驚くべきところでは最新型の飛行機では、金属の代わりとして骨組みや外板にも使われているほどなのだ。

 なお、F1のボディーや骨組みに使う炭素繊維は、ちょうど布のように繊維を縦と横(場合によっては斜め)に織り込んで焼き固め、板状にして使っている。

 ヘッドに使われているカーボンファイバーは、非常に柔らかく、まるでウサギや猫の毛のよう。このように横にはくねくね、フサフサと柔らかいが、引っ張りに対する頑丈さは金属並みなので、高速に回転するヘッドでも切れてしまうことがない。

 しかも炭素でできているため、電気を通しやすいというのも特長だ。そのため絨毯やフローリング、たたみなどと擦れても静電気が起きづらく、床のゴミを確実に掻き集め吸い込んでくれる、まさに掃除機のヘッドにもってこいの素材。こういう「言われてみれば確かにそうだ」というアイディアを製品化するのは、さすがダイソンのエンジニア! と感服してしまう。

赤いナイロンブラシは、絨毯の奥に入ってしまったゴミを掻き出すブラシ黒いカーボンファイバーブラシは、おもにフローリングの細かいゴミを拭き取る

 はたして、このカーボンファイバーブラシを使った新しいヘッドは、どれほど床をキレイにしてくれるのか、実際に実験をしてみよう。

ルートサイクロン&カーボンファイバーヘッドは鬼に金棒

 まずは絨毯での吸い込みテストから。毛がループ状になったキッチンマットに、“オリジナルブレンド”の粉塵300gを均一に撒いて、掃除前・後の絨毯の重さを計ってみた。なおオリジナルブレンドの粉塵は、花壇用の消石灰(比較的重い粒子)に、小麦粉(比較的軽い粒子)、そして砂(大きい粒子)を混ぜたもので、ホコリは含まれていない。

掃除機のヘッドの大きさにあわせてウレタンでガイドを作り、粉塵を撒く前に重量を測る次に掃除機をかけて、再び重量を測る。これで絨毯に残っているゴミの重さが分かる

 掃除機をかけた後の絨毯の重さから、かける前の重さを引けば、絨毯に残った粉塵の量が計算でき、さらに撒いた300gから残った粉塵の重さを引けば、掃除機が吸った粉塵の量が計算できるというわけだ。またヘッドを移動する速度によっても集じん力が変わってしまうので、ここでは毎秒5cm(ほぼヘッド長さ)の速度で移動しつつ、片道(ヘッドを往復させない)のみとした。

 ただDC26のカーボンファイバーヘッドだけでは、吸い込み具合が分からないので、次のような機種で比較した。


メーカー/モデル集じん方式年式ヘッド吸込仕事率
ダイソン/DC26ルートサイクロン2010年カーボンファイバーモーターヘッド170W
ダイソン/DC22ルートサイクロン2007年タービンヘッド;モーター方式ではなく空気によりブラシを回転する方式200W
東芝/VC-D4K紙パック1996年回転ブラシのないモデル吸引仕事率440W

 東芝のVC-D4Kは、1996年製の古い掃除機で、しかも回転ブラシもないモデルとなっているが、今回は自宅実験のため、手元にあった掃除機を使った。悪しからずご了承いただきたい。しかし、日本では掃除機の機能の目安として一般的になっている吸引仕事率でみると、VC-D4Kの方が2倍以上もパワフルだ。結果にどのような違いが出るか予測してから読み進めると、面白さ125%アップ(当社比)だ。

・東芝/VC-D4K
 かけ始めは440Wのパワフルな吸引力で吸い込むも、20cmも進むとモーター音に異変が!

 どうやら紙パックの目詰まりが始まったようだ。そのまま60cm程度まで進めると、紙パックは完全に目詰まりして、カーテンなどが吸い込み口をふさいでしまったような音となる。以降は、まったく吸い込んでいない感じだ。

 結果は次の写真の通り。

右から左までは1m。左からかけ始めているので右に向かって、どんどんゴミが残った“美しいグラデーション”の完成!フィルターも掃除して紙パックも新しくしたので440Wパワフルな吸い込みを見せるスタート地点
中間の50cm付近では、中央部はかろうじて吸い込んでいるも、両端は掃除していないのと同等に粉塵が残ったままゴール地点は、掃除機をかけてないも同然の無残な結果だ

・ダイソン/DC22 turbinehead
 スタートからゴールまで変わらない吸引力。なるほど、宣伝どおりだ。実際には新しい絨毯を使って残った粉塵の量を測ったが、ここでは「東芝/VC-D4K」で掃除した絨毯に「ダイソン/DC22」をかけた写真を見てもらおう。

ダイソンのヘッドは小さいので、右側のガイドに合わせて吸い込んでみた。スタート地点から20cm程度のあたりで、もう吸い込みの違いが現れているのが分かるだろう。左側にできた数cmの帯が、「東芝/VC-D4K」をかけた後。かなり粉塵が残っているスタートから50cm付近では、明らかな違い。吸引仕事率440Wでも紙パックが詰まったら、ダイソンの200Wに劣るというのがよく分かるゴール地点。左側は「東芝/VC-D4K」が残してしまった粉塵。右側はDC22がキレイにしてくれたあと

・ダイソン/DC26 motorhead(カーボンファイバー)
 吸引仕事率で見るとDC22より30W低いDC26だが、スタートからゴールまで、安定した吸い込みを見せパワーの差をほとんど感じない。グラデーションもなく、両端のガイドとの隙間に残ったわずかな粉塵が残るだけだ。ただ微粒子は絨毯に捉えられたままのようで、絨毯が元の色にまで戻ることはなかった。

この写真を見れば、宣伝どおり「吸引力の変わらない掃除機」というのが分かるだろう細かい粒子や砂粒がループの隙間に入ったままだが、かなりキレイになっている

・数値が語るルートサイクロン&カーボンファイバーの最強タッグ
 3機種での実験を終え、吸い込んだ粉塵の量を比較したのが次のグラフだ。

毛足の長い絨毯を一番キレイにできたのは、DC26 motorhead(カーボンファイバー)で、吸い切れなかったゴミは48g。次はDC22 turbineheadで56gを吸い切れなかった。最下位は16年前の東芝 VC-D4で122gと4割の粉塵を絨毯に残したままだった

 厳密にDC26のカーボンファイバーブラシがどのぐらいの威力を発揮するのかは、DC26に従来式のヘッドをつけて比較すべきだが、コネクタ形状の違いから実験できなかった。とはいえ、DC22とDC26の吸引力が互角とすれば、その8gの差はカーボンファイバーブラシが絨毯に起きる静電気を抑える効果があり、より多くの粉塵を吸い取ったと言えるだろう。

 なお掃除機の機能を比較する上で参考になる「吸込仕事率」だが、実際に掃除をしてみると、吸込仕事率が一番高いはずの東芝の掃除機が最下位となった。。「吸込仕事率」については、別の機会で詳しく説明するが、これにこだわり過ぎると機種選定を誤ってしまう可能性もあることを覚えておいて欲しい。

毛足の短いフェルト生地の絨毯でもカーボンファイバー強し!

 毛足の長い絨毯では、最新式のDC26 motorhead(カーボンファイバー)が一番ゴミを残さずキレイにできたが、毛足の短い絨毯ではどうだろう? しかも生地はフェルトなので静電気が発生しやすいタイプだ。

 また毛足の長い絨毯では、スタートから20cmもすると紙パックが目詰まりを起こしてしまったので「あまりにも紙パック式には過酷」ということで、散布する粉塵を1/3の100gにして、もう少し互角に戦えるステージを用意した(笑)。加えてこの実験は、すべてのフィルター類をクリーニング・乾燥した翌日に行なっている。

 さて実験内容は先と同様なので、掃除後の絨毯の写真のみを見ていくことにしよう。

東芝/VC-D4Kは、粉塵を1/3に減らしたもののゴール地点のゴミを吸い残してしまった。なおスタートからゴールまでの距離は、今回50cmとなっているダイソン/DC22 turbineheadは、安定した吸引力を持続。ただ毛足が短いとガイド近くの粉塵は吸い取れず、吸引範囲がヘッドより一回り小さくなる感じだダイソン/DC26 motorhead(カーボンファイバー)は、見た目ではDC22と大差ない。やはりガイド近くの粉塵は吸い取れていないよう

 見た目での違いはほとんど分からなかったDC26とDC22なので、残った粉塵の重さから吸い取ったゴミの量をグラフ化してみると、僅差ながらDC26の方がキレイになっていることが分かった。

DC26は、カーボンファイバーが功を奏したためかわずか2gながらよりキレイになっている。とはいえ、2gといえば小麦粉で小さじ1杯ほどあるので、見た目の分量として多いのかもしれない。

劇的にフローリングがキレイになるカーボンファイバーブラシ

 ダイソンいわく「カーボンファイバーブラシは、フローリンクでもっとも効果を発揮する」という。そこで最後の実験は、フローリングで実験してみよう。ただコイツはg単位で重さを量るのには重量がありすぎるので、ここでは掃除前・後のダストカップ(紙パック)の重さを計ってみることにした。

フローリングをガイドで囲って粉塵100gを均一に広げる。掃除前後のダストカップの重さを計れば、吸引した粉塵の量が出てくるというわけだ

 まずはDC26のカーボンファイバーブラシと、DC22のアクリルだけのブラシを比較してみると――うはっ! 確かにぜんぜん違うっ!

 また結果は明らかに見えているが、紙パックの東芝/VC-D4Kにも参戦してもらったところ、こんな具合になった。ちなみに、この実験もフィルター類を洗って紙パックを新しくしてから行なっている。

ヘッドの違いが明らかに分かる結果(左がDC26とカーボンファイバーブラシ、右がDC22とアクリルブラシのヘッド)。静電気を抑える効果が不明だが、極細で密集したカーボンファイバーのおかげで、微細な粉末もすくい取っているのがよく分かる左から、紙パックの東芝/VC-D4K、DC26 motorhead、DC22 turbineheadの結果。これで掃除したのか? というほど紙パック式の残したゴミは多い

 ということで、これまでどおり数値で比較してみると次のようになる。

DC26とDC22の違い“たった”2gしかないが、見た目の違い“あれほど”激しい

フローリングならダイソン カーボンファイバー! 拭き掃除は不要!

 実験は以上だが、ふだんの家の掃除なら、これほど厳しい環境ではないはずだ。日常で実験に近い状態になりそうなのは、キッチンで小麦粉をブチ撒けてしまった! というぐらいだろう。しかしDC26なら、新たに採用されたカーボンファイバーブラシ搭載のmotorheadのおかげで、ほとんどの粉を吸い取ることができるだろう。あとはさっとひと拭き雑巾をかけるだけという感じだ。

 もちろん変わらない吸引力を持った本体なので、小麦を100gこぼそうが、まるごと1袋1kgブチ撒けようが、同じようにキレイになる。

 日常での掃除なら、DC26 カーボンファイバーを使えば、拭き掃除がいらなくなるほどキレイになると言えるだろう。ちなみに次のグラフは、撒いた粉塵をどれだけ集じん(吸い込めた)できたかを割合で示したものだ。

吸い込めたゴミの重さを撒いたゴミの重さで割った集じん率。どんな床でも、カーボンファイバーを使ったDC26 motorheadの優位性が現れている

 今回の実験で2度目に驚かされたのは、このグラフがダイソンが第三者機関に依頼してテストした結果に非常に似ている点だ。一部では「うさん臭い」と言われる発表(実は筆者もウソとは言わないが、数値が良すぎないか? と思っていた)だが、筆者の実験では「リアルなデータ」と裏付ける結果になってしまった。

 掃除の時間を短縮したい人、子供が多くてゴミっぽいファミリー世帯で、掃除は昼間にする(騒音はけたたましいので、夜やアパートでの利用は不向き)場合におすすめの掃除機だ。それだけでなく、粉ものを多く扱う業務でもカーボンファイバーを使ったDC26 motorheadが最大限に威力を発揮するだろう。

ダイソンの掃除機のみならず、ヘッドブラシには髪の毛やゴムなどが絡みやすい。現状、これは手で地道に取るしか方法がない

 ただひとつの問題は、ローラーヘッド式すべての抱える超難問。「髪の毛やゴムなどがブラシに絡まる」という点だ。でも、ダイソンのエンジニアなら「そんな方法があったのか!」というアプローチで、近い未来に解消してしまうかも知れない。




2011年3月7日 00:00