家電製品ミニレビュー
パナソニック「エスプレッソ&コーヒーマシン NC-BV321」
■賃貸マンションにも置けるエスプレッソマシン
パナソニック「エスプレッソ&コーヒーマシン NC-BV321」 |
コーヒーが好きだ――というより、もうほとんど中毒みたいなもので、起きぬけに1杯、出かける前に1杯、さらに職場でも1杯と毎日必ず飲んでいる。ここ何年もコーヒーメーカーを愛用しているが、選んできたのはどれもドリップコーヒーのみに対応するシンプルなもの。エスプレッソやミルクを泡だてたフォームドミルクに対応したものは選んでこなかった。
理由は1つ、面倒くさそうだから。私にとってコーヒーメーカーは毎日必ず使うものなので、手間がかかるものや操作が面倒なものには興味がなかった。また、本格的なエスプレッソマシンともなると、どれもサイズが大きく賃貸マンションの狭いキッチンには置けなかったのだ。
そんな私が初めて使ったエスプレッソマシンが、今回紹介するパナソニックの「エスプレッソ&コーヒーマシン NC-BV321」だ。パナソニックが17年ぶりに出したエスプレッソマシンで、アラサー世代をターゲットとした「ナイトカラー」シリーズの製品だ。年齢的にいうと、アラサー世代ど真ん中の私だが、NC-BV321を見ていると確かにこれは欲しくなるなと思う。
サイズや価格が手ごろで、これで本格的なコーヒーが飲めるなら――と思わせるのだ。1台でドリップコーヒー、エスプレッソ、さらに蒸気でミルクを泡だてるフォームドミルクに対応している。
メーカー | パナソニック |
製品名 | エスプレッソ&コーヒーマシン NC-BV321 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシカメラ |
購入価格 | 29,800円 |
本体サイズは184×360×367mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約5.1kg(エスプレッソホルダー装着時)。これまでコーヒーメーカーを置いていた場所にそのまま置き換えられるサイズだ。NC-BV321では、3つの機能を搭載しているが、これらの機能の切替は全てアタッチメントの交換で行なう。
そのため、本体付属の部品は多い。ドリップコーヒー用のバスケット、バスケット蓋、エスプレッソ用のホルダー、さらにフォームドミルク用のミルクカップ、ミルクカップ蓋が付属する。部品は細かいものも多いので、保管用のスペースなどを設けた方がいいかもしれない。
製品本体。左からエスプレッソホルダー、ドリップコーヒー用のバスケット、ミルクフォーマー | 本体正面 | 本体側面 |
本体背面 | 操作部は本体上部にある | ミルクフォーマーにスチームを入れるダイヤル |
■エスプレッソって何? どうやって作るの?
さて、ここで少しエスプレッソについて説明しよう。エスプレッソは、コーヒー粉に圧力をかけて抽出するもので、一般的なドリップコーヒーに比べると濃厚で、一度に飲む量も少ない。カフェラテとは、エスプレッソに泡だてた「フォームドミルク」を入れたものだ。最近でこそ、コーヒーショップが多くなってエスプレッソやカフェラテという単語も珍しくはなくなってきたが、まだまだ家庭で楽しむという人は少数派だろう。
エスプレッソは圧力をかけて抽出するため、専用の機器や専用の粉を用意する必要がある。1回分の粉をパッドにパックした「カフェポッド式」や、カートリッジを本体にセットする「カプセル式」など機器によって抽出方法が異なるが、ドリップコーヒーよりも手間もお金もかかるのは確かだ。
それでもエスプレッソマシンが欲しいと思ったのは、なによりエスプレッソがおいしいから――これに限る。あの濃さと苦味は癖になるし、フォームドミルクを入れたカフェラテは、ドリップコーヒーにミルクを入れただけのカプチーノとは全く違う独特の風味がある。多少高くついてもコーヒーショップに足が向かうのは、エスプレッソを楽しみたいからに他ならない。
と、熱く語ったところで、NC-BV321に話を戻そう。NC-BV321では、エスプレッソ抽出にカフェポッド式を採用。1回ごとの粉がパックされていて、そのままセットするという、広く知られている方法だ。近所のスーパーではなかったが、たとえばコーヒーの専門店などに行けば必ずあるし、インターネットでも簡単に手に入る。私のお勧めはコーヒー専門店チェーンの「KALDI(カルディ)」だ。比較的安く買えるし、種類も揃っているので見ているだけで楽しい。
なお、カフェポッドは直径44mmで世界共通で規格化されているものなので、旅先で買って来て、自宅で試飲なんてことも可能だ。
カフェポッド。写真はパナソニックのもの | 直径44mmのポッドにコーヒー粉が詰まっている |
■スライド式アタッチメントで使い分けは簡単
前述したように、NC-BV321ではドリップコーヒー/エスプレッソ/フォームドミルクの3つの機能を搭載する。これらの機能は、アタッチメントを交換して使い分ける。アタッチメントの交換はスライド式で、取り外しは簡単。更に操作も単純で、迷わない。
まず、ドリップコーヒーとエスプレッソを抽出する場合について説明しよう。まずはコーヒー粉、あるいはカフェポッドをそれぞれのホルダーに入れて、本体にセット。本体手前のハンドルを下に降ろしたら電源を入れて、エスプレッソボタンを押す。その後、湯沸かしが終わったら抽出ボタンを押す。これだけだ。
普通のコーヒーメーカーと違うのは、電源を入れたあと、湯沸かしを待って、再度抽出ボタンを押さなければいけないこと。とはいえ、NC-BV321の最大抽出数はカップ2杯なので、湯沸かし時間も短く、それほど待たされることはない。また、湯沸かし終了後、抽出終了後など、その度に「ピピ」という電子音が鳴る仕組みなので、操作を忘れることもない。
エスプレッソホルダー | ドリップコーヒー用のコーヒーバスケット | コーヒーバスケットには蓋が付いているので、本体にセットするときは必ず蓋をする |
コーヒーバスケットを本体にセットしたところ | 手前のハンドルを下ろす。後は、電源ボタンを入れて、ドリップボタンを押して、湯沸かしが終わったら抽出ボタンを押す | エスプレッソホルダーを本体にセットしたところ |
もう1つ、抽出口下にカップを置くことを忘れてはいけない。抽出口下のスペースはゆとりがある設計になっていて、大きめのマグカップからエスプレッソ用のデミタスカップまで対応する。特にエスプレッソホルダーは、カップのサイズに合わせてノズルの長さを調節できるようになっている。飲み物に合わせてカップを選ぶのも楽しみのうちだ。
エスプレッソホルダーのノズルは長さを調節できるようになっている | カップの高さが低い時はノズルを伸ばして、飛び散りを防ぐ |
エスプレッソは、業務用と同じ9気圧で抽出しているため、濃厚で表面のクレマもしっかり立つ。カフェポッドで気軽に味を変えて楽しめるというのも楽しい。
ドリップコーヒーは、抽出数が2カップと少なめなこともあって、じっくりと丁寧に抽出している印象。たとえば、我が家で普段使っている5カップ抽出できるコーヒーメーカーに比べると、豆の味や風味がよりダイレクトに伝わってくる感じだ。ミルクを入れて飲んでもコーヒーの風味がしっかり際立つ。
NC-BV321で入れたエスプレッソ。表面にはクレマも立っている | こちらはドリップコーヒー |
■専門店並み! まろやかなフォームドミルクが楽しめる
次に、一般的なコーヒーメーカーにはないミルクフォーマーの使い方を紹介しよう。こちらも特に難しいことはない。ミルクカップにミルクを入れて、フタをしっかりとしたら、本体にセット。ハンドルを下ろして電源を入れる。次に本体側面の蒸気ハンドルをONにする。すると、カップ内に蒸気が出てきて、ミルクが泡立つという仕組みだ。
ただ、ドリップコーヒーやエスプレッソとは違い「排水」という作業が必要になる。コーヒーの抽出温度は100℃前後なのに対して、スチームは135℃前後と抽出温度が違うため、ノズルなどに溜まった水を一度排水してから、作業を行なう。
最初はこの排水という作業に慣れずに苦労したが、慣れればそれほど苦には感じなかった。本格的なエスプレッソを家庭で楽しめるならこれくらいの手間は許容範囲だ。
ミルクカップは透明で、ドーム型のため泡立ち具合も目で確認しやすく、温度なども手で確かめることができる。
ミルクフォーマーを本体にセットしたところ | 泡だてる前のミルク | 泡立てているところ |
スチームでミルクを泡立てているところ |
NC-BV321のすごさを一番実感できたのは、ミルクの仕上がりを見た時だ。ふんわりときめ細かく泡立っていて、喉ごしが柔らかい。妹が来た際に出したら「なにこれお店じゃん!」と感激して、その場で製品を注文していたほどだ。
泡だてた後のミルク。キメの細かいふわふわのミルクが仕上がっている | 泡はボリュームがあって、かたさもある | 妹が飲んで「某コーヒーショップを超えた!」と感激していたカフェラテ |
■ほとんどの部品が水洗いできる
さて、毎日NC-BV321を楽しんでいるわけだが、気になるお手入れ部分はどうだろう。NC-BV321ではほとんどの製品が、分解できて、それぞれ水洗いにも対応している。これには少し感動してしまった。というのも、コーヒーメーカーでは給水タンクが本体と一体になっていて、洗えないものも多い。加熱しているから大丈夫だよね――と思いつつも、水アカなどが気になっていたのだ。
その点、NC-BV321では、給水タンクはもちろん、エスプレッソホルダーも、ミルクカップもミルクカップのノズル部分も洗うことができる。それぞれの部品の取り外しもごく単純なものなので、手間もそれほどかからない。ただし、食器洗い乾燥機には対応していない。変形の恐れがあるので、必ず手で洗うようにしよう。
ほとんどの部品は水洗い対応 | 給水タンクも本体から取り外しできる |
本体は、抽出時の飛び散りなどにより、汚れが付いてしまうが、拭き取ればすぐにきれいになる。注意したいのは、一般的なコーヒーメーカーにはない、抽出口下の受け皿の部分のお手入れ。カップから溢れたものや、抽出時にノズルに残っていたコーヒーなどを受けるところだ。ここはついつい忘れがちなので、意識して掃除するようにしたい。
抽出口周辺はコーヒーが飛び散ってどうしても汚れてしまう。でも、拭き取るだけで簡単にきれいになる | ついつい忘れがちな抽出口下の受け皿部分 | コーヒーが溜まってしまうので、マメにお手入れしよう |
■一杯のコーヒーで楽しむ贅沢な時間
毎日のコーヒータイムがちょっと楽しみになる製品 |
使い続けて1カ月が経つが、“コーヒー中毒”の私の使用頻度は1日数回以上。使い勝手も味も申し分なく、満足度は高い。我が家は一家揃って、コーヒーが大好きなので、家族が遊びに来たときは、大活躍だった。父は「エスプレッソをダブルで」、妹は「カプチーノ」、母は「アメリカンを2杯分」など注文が細かいのがタマに傷だが、それでも家族でこうやって、おいしいコーヒーを飲めるということに幸せを感じた瞬間だった。
父(60歳)くらいの世代になると、エスプレッソを自宅で楽しめるということ自体を知らなかったようで、それもこんなにコンパクトな製品であることに驚いていた。妹に続いて父も購入の検討を始めたようだ。
コーヒーが好きな人にとって、おいしいコーヒーを飲む時間はまさに至福の時間。これまでも、エスプレッソが飲めるマシンを検討したことは何度もあるが、いつも価格やサイズ、そして購入後の使い勝手がネックになって、導入を見送ってきた。
NC-BV321の優れているところは、手軽なだけでなく、味もしっかりしているところ。操作は至ってシンプルだが、汎用性の高いポッド式を採用していることで、自分の好みの豆を手軽に楽しむことができる。カプセル式などに比べてコストが抑えられる点も魅力だ。
サイズや使い勝手というエスプレッソマシンの壁を取り払った優れた製品。ちょっと贅沢なコーヒータイムを自宅で楽しむことができる。
2011年5月11日 00:00