家電製品ミニレビュー
パナソニック「ホームベーカリー SD-BMS101」前編
●焼きたてのパンが食べたい!
パナソニックのホームベーカリー「SD-BMS101」 |
ホームベーカリーとは、その名の通り家でパンを焼くことができる家電製品。小麦粉やベーキングパウダーといった材料を投入してスイッチを入れるだけで、自動で生地をこねたり発酵したりして、こんがりと焼きたてのパン焼きあげてくれるのだ。
何と言っても、焼きたてのパンが家に居ながら味わえるのが最大のメリット。こんがりと焼けた小麦の匂い、もっちりとして弾力のある白い中身に、カリッとサクッとした皮……考えただけでもお腹が鳴る。近所のパン屋では、焼きあがり時間ピッタリに行かない限り難しい。そんな焼きたてのパンを、思いのまま食べてみたい! ……と、ひそかに思い続けていた。
このホームベーカリー、このところ非常に人気のようだ。社団法人日本工業会によると、2008年度のホームベーカリーの需要は、前年度比で120%に増加している。炊飯器や電子レンジのような必須の製品ではないのに、数字をしっかりと伸ばしているのである。昨年あたりから、不況を受け内食(うちしょく)の需要が高まっている影響かもしれない。
というわけで、社会的にも個人的にもニーズのあるこのジャンルを見逃すワケにはいかない。今回はホームベーカリーを取り上げることにしよう。。
●蒸しパン、白パン、米粉100%パン……最新モデルは調理メニューが増加
さて、ホームベーカリーとはいっても、メーカーは意外と多い。パナソニックに三洋電機、東芝に象印、ツインバードといった家電メーカーはもちろん、自動車製品なんかも取り扱うエムケー精工というところも出している。この4月には、ティファールがフレンチバゲット用のホームベーカリーも投入するとのこと。ホームベーカリーは戦国時代を迎えている。そこで選んだのは、パナソニックの「SD-BMS101」である。
メーカー | パナソニック |
製品名 | SD-BMS101 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 25,498円 |
「SD-BMS101」では、通常のパンケース(中央)のほか、スチームケース(左)が同梱される。これが、蒸しパン、白パンという新メニューを実現するのだ |
しかし、今年と前年モデルは大きく違っている点がある。それが調理メニューの数である。
以下の表を見てほしいが、今回のモデルでは“白パン”“蒸しパン”“米粉パン(100%。グルテンあり/なし両方とも可)”という3種類のメニューが追加された。特に蒸しパン、白パンの2点は、他のメーカーのホームベーカリーでは作ることができない“業界初”のメニューとなる。
品番 | SD-BM102 | SD-BMS101 |
発売日 | 2009年2月1日 | 2009年9月20日 |
自動メニュー | 食パン 食パン早焼き ソフト食パン 全粒粉パン フランスパン | 食パン 食パン早焼き ソフト食パン 全粒粉パン フランスパン 米粉100%(グルテン入り/なし) 蒸しパン |
半自動 | デニッシュ風食パン メロンパン | デニッシュ風食パン メロンパン 白パン |
生地づくり | パン/ピザ うどん/パスタ生地 | パン/ピザ うどん/パスタ生地 |
価格(※3/15 Amazon.co.jp) | 18,800円 | 25,498円 |
白パン、蒸しパン、米粉パン……何と食欲を刺激する甘美な響きだろうか! 特に米粉パンは、このごろテレビCMや雑誌などで取り上げられる機会も多いが、実際に口にしたことはない。以前から試してみたかったところだ。
てなわけで、使用する機種はパナソニックの「SD-BMS102」に決定。本製品から搭載された新メニューを中心に、蒸しパンは前半、白パンと米粉パンは後半に紹介する。なお、従来モデルでも搭載されていた「メロンパン」や「全粒粉」、うどんやピザなどの「生地づくり」については、過去のレビューで詳細に紹介されているため、そちらをご参考いただきたい。
●食パンは“ガリッ”なら通常モード、“フワッ”なら牛乳かソフトモード
さて、新メニューが増えたとは言っても、ホームベーカリーの基本は食パンを作ること。前回のレビューのおさらいも含めて、まずは食パンから作ってみよう。
調理方法はとにかく「簡単」の一言。所定量の小麦粉(強力粉)/バター/砂糖/塩/スキムミルク/水を「パンケース」という容器に入れ、ドライイーストをフタ内部の専用容器に入れる。あとはメニューで「食パン」を選んで、スタートすれば、できあがりを待つだけ。本当に簡単なので、最初はこんなモノでできるのかと不安になった。
まずは食パンを作る。パンケース中央にパンの羽根をセット | 次に、ケース内に小麦粉(強力粉)/バター/砂糖/塩/スキムミルク/水を投入。結構テキトーに入れちゃったけど、大丈夫だろうか…… | ドライイーストは、フタの中にある専用容器に入れる。自動投入なので簡単。ただし、投入時は「バチッ」という音が何度か鳴ってうるさい |
しかし、そんな不安も、完成後にフタを開ければすべて解決。キツネ色にこんがりと焼けた食パンが“早く食べてちょうだい!”と言わんばかりに、 ふっくらとふくらんでいるのだ。
それでは一口……こんがりとした香ばしい味が口の中一杯に広がり、うまい! ……が、皮がちょっとガリッとしすぎな感も。中身ももうすこしソフトな方が個人的には好みなのだが……。
ちゃんと膨らんでいるじゃないですか! ちなみに、できあがりのタイマーが鳴った後は、すぐに取りだしてあら熱を取らないとしぼんでしまうらしい | できあがりはキツネ色でとてもおいしそう | 食べてみると、うーんおいしいんだけど、皮も中身もハードな食感。中身も空洞が多い。個人的にはソフトなのが好きなのだが…… |
そこで、ソフトモードで改めて作ってみると、皮の部分はややシナッとしており、中身も全体的にふっくら、しっとりとした仕上がりになった。中身もきめ細かくて、香りも十分! 正直に言って、こっちの方が好みだ。
説明書によると、牛乳を使うのも良いとのこと。そこで、水のかわりに牛乳を多めに入れ、さらいソフトモードで作ってみたところ、中身の味が甘く感じられ、食感ももっちりとしている。何も付けなくてもとてもおいしい。これはお店で売っているパンよりもおいしいではないか! うますぎる!
個人的に大ヒットだったのが牛乳配合パン(ソフトモード)。焼き上がりの見た目の時点で、通常モードとは違う雰囲気 | 柔らかいので、パンナイフがスッと通ります | このキメ細やかな表面を見よ! 中身がぎっしりと詰まっており、食感ももっちり。お店で売っているパンよりもおしい! |
以上、食パンの調理手順についてサラッと紹介したが、いかんともしがたいのが調理時間だ。通常の食パンモードは4時間、ソフトモードでは5時間もかかってしまう。パン作りに慣れている人なら“こんなもんだ”と思えるだろうが、初心者にはどうしても長く感じられる。もちろん、ドライイーストや干しぶどうなどは自動投入してくれるので、スタートボタンを入れて放っておくだけだが、“お腹空いたからパン焼こうっと”とスイッチを入れても、炊飯器のように1時間たらずではできない。朝食や夕食の時間に会うように、予約モードを使うのが賢い使用方法だろう。
なお、2時間で焼き上げる「早焼き」モードもあるが、個人的な感想を言わせてもらえば、香りも味が足りない気がする。これは、調理時間を早めているため、寝かしや練り、発酵時間をカットしているせいだろう。よっぽど急ぎでない限りは、使わなくても良いだろう。
というわけで、食パンに関しては、時間が掛かるけどそれ以外は超カンタン。しかも、分量さえ守っていれば、失敗することもほとんどなく、おいしく作ることができる。SD-BMS101は、“小さな労力で大きなリターン”という、夢のような家電製品だ。
デニッシュ風パンにも挑戦。パン生地にひと晩凍らせた1cm四方のバターをどんどん投入 | ちょっと膨らみ型がイビツだが、何とかできあがった | 味は確かにデニッシュ風! ただし、レシピ通りに作ると、市販品に比べると甘みは薄く感じられた |
●超簡単なスピードメニュー「蒸しパン」は、ホームベーカリーの幅を拡げる
基本的な機能を紹介したところで、本製品から新たに搭載されたメニュー“白パン”、“蒸しパン”の作り方を見ていこう。
両メニューを作るには、「スチームケース」という付属品を使用する。これは、食パンの調理に使用したパンケース上に載せて使用するもの。パンケース内に入れた少量の水を沸かすことにより、そのスチームでスチームケース内のパンを、高温でなく中温で蒸すように加熱するのだ。
ちなみにスチームケースを使った調理は、白パンが2時間45分、蒸しパンが35分と短い。特に蒸しパンの35分は、1時間以上の調理が当たり前のホームベーカリーの中では例外的だ。簡単そうなので、まずは「蒸しパン」から作ってみよう。
まずは蒸しパンの生地作り。卵/砂糖/牛乳/サラダ油を混ぜ、そこに薄力粉とベーキングパウダーを加えてさらに混ぜる。この生地をスチームケースの中に入れれば生地づくりは終了だ。
次に、羽根を取り外したスチームケースの中に35~40℃のお湯を100mlだけ入れる。その上に、生地の入ったスチームケースを載せ、本体にセットして「蒸し」モードでスタートすれば、あとはたった35分でできあがりだ。
できあがりのアラーム音でフタを開けると、これは誰がどう見ても蒸しパン! 説明書には、蒸し足りない時は“追い蒸し”をするよう書かれていたが、手順通りでまったく問題なかった。
蒸しパンを調理する際には、パンケースの中には生地ではなく、35~40℃のお湯を100mlだけ入れる | 生地はスチームケースの中に入れ、スチームケースをパンケースの上に載せる | 本体にセットして35分調理すれば、あっという間に蒸しパンのできあがり! |
当然ながら、味も蒸しパン。ただし、コンビニで売っているものよりもふっくら・もっちりしており、断然こっちの方がおいしい。とはいえ、砂糖をドバッと25gも使っているのをこの目で見ているため、中年太りに拍車が掛かりそうで怖いが……まあ、おいしいので良しとしよう。
ちなみに、牛乳の代わりに市販のコーヒー牛乳を使った蒸しパンを作ってみたが、怖気づいて砂糖をまったく入れなかったため、味気ない仕上がりになってしまった。ここは“蒸しパンは甘いのが当然”と開き直って、強気に味付けするのが良いだろう。
できあがった蒸しパン。卵の黄身を多めに入れたので黄色が強く出ているが、これはどこからどう見ても蒸しパン。ふっくらしていて素朴な味。おいしい! |
牛乳の代わりにコーヒー牛乳を使った“コーヒー蒸しパン”。見た目は良いが、砂糖を入れなかったため、ちょっと苦いだけの謎のパンになってしまった |
この蒸しパンの良いところは、味はもちろんだが、調理時間が短いところだ。調理時間が長いのが当たり前のホームベーカリーに、“すぐに作れる”という新たな選択肢が加わることになった。これは意外と大きな前進ではないだろうか。
また、調理時間もそうだが、準備も材料を混ぜるだけと簡単。ちょっと小腹が空いたときにチョイチョイッと作る、なんてのも大丈夫だ。
なお、当然ながら1回に1個しか作れないが、かなり大きいので数人で分けて食べるのにもまったく問題ない。子供が多い家庭でも、ちゃんと切り分ければ、取り合いになる心配もないだろう。
それでは、もう一つのスチームメニュー「白パン」を紹介したいが……ちょっと分量が多いので、明日に回すことにする。後半は、白パンと米粉100%パンにチャレンジ。中途半端で申しわけないが、しばしお待ちを!
2010年3月17日 00:00