家電製品ミニレビュー
パナソニック「ホームベーカリー SD-BMS101」後編
SD-BMS101 |
●一手間あるがそれだけにおいしい「白パン」
さて、「蒸しパン」に続く、スチームケースのもう1つの機能が「白パン」。焦げ目を抑えて焼くことで、ふわふわ、しっとりとした食感が特徴のパンだ。アニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場したこともあって、幼少期に“おいしそう”と刷り込まれた人も多いはずだ。
ただし、こちらは蒸しパンと比べるとやや面倒。というのも、パンケースで生地をこねた後、スチームケースに移し替える必要があるのだ。
調理手順は、薄力粉/無塩バター/砂糖/塩/水あめ/牛乳/水を、まずはパンケースに入れる。次に、ドライイースト1.4gをフタ内部の専用容器に入れたら、メニューで「白パン」を選び「スタート」ボタンを押すと、生地のねり/寝かし/発酵を行なう。これが、調理の第一段階だ。
第二段階は、スタートボタンを押してから80分後。ピッピッという音が鳴り運転が止まったら、パンケースを取り出し、中からパン生地を取り出す。生地は生温かいペースト状になっているが、これを【1】手で押えてガスを抜き、【2】包丁で2分割し、【3】生地を丸めて、【4】スチームケースに入れる、の順で、生地をスチームケースへと移し替えていく。
材料は薄力粉/無塩バター/砂糖/塩/水あめ/牛乳/水 | 80分後に運転が停止。パンケースの中はこんな感じになっている |
生地をパンケースから取り出した後は、手で押して空気を抜く | 2つに分割し、切り口を中に入れるように生地を丸める | パンケースの中に2つを並べるようにセットする |
最後の第三段階は、まず先ほど本体から取り出したパンケースを洗い、パンの羽根を取り外した後、中に水を60mlほど入れる。そして、パンケースを本体内にセットし、その上にスチームケースを載せ、フタを閉じてスタートボタンを再度押せば、あとは完成まで一直線だ。調理時間は合計で2時間45分。白パンのできあがりだ。
食パンのように、スタートボタンを押したらそれまでというわけではなく、途中で一手間掛けなければいけないのはやや面倒。量も食パンほど多くないのもちょっと残念だ。ただし、それだけに味は絶品! フワッと柔らかく、しっとりとした味わいはまるでケーキのよう。食パンや蒸しパンとはひと味違った上品さがある。これはとてもおいしいです!
水を入れたパンケースに載せ、再度スタートボタンを押せば、白パンのできあがり | できあがりはこちら。焦げ目を抑えて白く作るには、水の分量を過不足なく入れるのがポイント |
水を少なくすると、写真のように焦げ目がつき、完全な白パンとはいえない | しっとりとした食感でとてもおいしい。まるでケーキのような上品さがある |
というわけで、以上が今回から加わったスチーム調理メニューだが、どちらも非常においしいかった。いずれも仕上がりはやや少量ではあるが、それだけに通常の食パンよりも短い時間で作れる。特に、蒸しパンのスピード、白パンのしっとりとした仕上がりは、普通のホームベーカリーでは実現できないものだ。もしかしたら、これは今後のホームベーカリーの必須オプション機能になるかもしれない。
●なかなか手強いグルテンフリーの米粉パン
米粉には、ホームベーカリーでの使用を想定したグルテン入りのもの(右)と、まったく添加物の入っていないグルテンフリーのもの(左)がある。本製品は、このどちらでも調理できる点が特徴だ |
米粉とはうるち米を製粉したもので、パンやお菓子、麺類などの生地に使用できる。米の消費量の拡大や、高騰する小麦の代替原料として注目されている。最近はテリー伊藤がテレビCMや電車内広告に出ているので、ご存じの方も多いだろう。
パナソニックのホームベーカリーでは、従来モデル「SD-BM102」までは米粉を全体の20%までしか配合できなかった。しかし、今回のモデルでは、米粉100%に対応。しかも、グルテン(粘り成分)入りの米粉はもちろん、小麦アレルギーの人でも大丈夫な、グルテンなしの純粋な米粉パンも作れるという。
しかも説明書を見ると、グルテンなしの米粉100%パンを作るには、ホームベーカリー専用に作られたグルテンフリーのミックス粉でなくても、水飴などを使えば作れるらしい(ただし説明書では、米粉は必ず「福森シトギ2号」使うという指定がある)。道は険しい方が良い、ならばミックス粉なしで作ってみようではないか!
……と意気込んだものの、結果は見事に大失敗。下の写真を見ていただければ分かると思うが、パンらしきものはできたものの、まったく膨らまなかった。説明書通りに作ったはずなのだが……。
失敗した、グルテンフリーの米粉パン(のようなもの) | 見るも無残なその姿。一応説明書どおりには作ったつもりなんだが…… |
そこで、毎週パン教室に通っている母親の元へ行き、作ってもらったところ、これが見事に大成功。この年になって母親に頼るというのも恥ずかしい話だが、以下に注意すべきポイントを指摘しながら、調理手順を紹介する。
グルテンなしの米粉パンで一番重要なのが、“もち粉と水あめの糊”。コイツがちゃんと作れていないと、米粉はうまく膨らんでくれない。私が失敗した際は、これを雑に作ってしまった。
“もち粉と水あめの糊”を作るには、まずもち粉小さじ1/2を水小さじ1で溶かし、それを電子レンジで30~40秒加熱。取り出してよく混ぜた後に、水あめ45gをさらに混ぜる。そしてこれに、合計270gになるまで水を入れ、よくかき混ぜる。
グルテンフリーの米粉100%パンの材料。特に、水あめ、もち粉、水を混ぜて作る“糊”はしっかりと作るようにしよう | こちらが“もち粉と水あめの糊”。グルテンフリーではこれが一番重要 |
糊ができたらパンケースに投入し、その上から米粉、砂糖、塩を入れる。そして最後に、粉の“頂”に作った窪みにオリーブ油を垂らして準備完了。後は「米粉」→「小麦なし」を指定してスタートボタンを押すだけだ。時間は1時間55分後と、結構短いのは嬉しい。
でき上がったグルテンフリーの米粉パンは、食パンとは違って天面が平らにできあがった。また、中身もややドロッと感があり、パンナイフを使っても切りにくい。しかし、説明書によればこれで普通とのことらしい。
粉の真ん中にオリーブオイルを垂らして運転スタート | こちらがグルテンフリーの米粉100%パンのできあがり。膨らんでいないので失敗したかと思ったが、説明書の写真もこのような仕上がりだった |
お米を想起させる、もっちりとした食感。味は甘く、とてもおいしい |
グルテンフリーの米粉パンを作る際には、やはりミックス粉を用意しておくのが良いだろう。毎回“もち粉と水あめの糊”をわざわざ作るのは、それだけでもかなりの面倒。店頭ではなかなか売っていないので、通販で前もって購入しておくことをお勧めする。
●グルテン入り米粉100%パンはほとんど食パン。皮のサクッと感がおいしい
グルテン入りは、通常の食パン作りとほとんど変わらない。そのうえ調理時間は短めなので、結構使い勝手が良い |
こちらはグルテンフリーと比べると調理はラク。パンケースにグルテン配合の米粉、バター/砂糖/スキムミルク/塩/水を入れ、ドライイーストをフタの専用ケースに入れれば準備完了。食パンとまったく同じ要領だ。
できあがった米粉100%パンは、見た目も香りも食パンとほとんど同じ。ややもっちり感が強く、パンの皮部分が“サクッ”と軽めなところは違うかもしれないが、基本は変わりない。どちらとも甲乙は付けがたいが、個人的には皮の“サクッ”感が気に入ったので、食べ続けていくうちに、米粉パンの方がおいしいのではないか、と思えてきた。
グルテン入り米粉100%パンのできあがり。2時間半という調理時間の短さも良い | 見た目はほとんど食パンと同じだ |
食べ比べると、中身はもっちりとしており、皮がサクッと軽いのが特徴。ただし、かなり普通の食パンに似ている | シチューと一緒に食す。時間が経っても皮がサクサクと良い食感。全体的にはとてもおいしいかったです |
この米粉パンのメリットは、調理時間の短さもある。2時間半と、通常の食パンに比べて1時間半も早くできる。一度食べてみて、味に遜色がないと感じたら、こちらをメイン用途にするのも十分アリなのではないか。
なお、グルテン入りの米粉も、スーパーなどで取り扱っている店は少ない。通販での購入が主となってくるだろう。また今回はグルテン入り/なしともに、メーカー推奨の粉を使わなかったが、調理ミスを防ぐためには、推奨品を用いるのが無難な選択だろう。
●豊富なパンメニューで、おいしいホームベーカリーライフを
以上、新メニューを中心に「SD-BMS101」を紹介したが、スチームメニューが加わったことで、単なる食パンを作る機械というよりも、幅広いパンがおいしく楽しめる、本当の意味での「ホームベーカリー」に近づいたような印象を受ける。流行りの米粉100%パンにも対応しているのも抜け目がなく、非常に完成度の高い商品といえるだろう。
もちろん、今回紹介した以外にも、旧モデルで搭載されているような、レーズン投入機能やメロンパン/全粒粉パン/うどんやパスタなどの生地作りモードも備えている。本当に盛りだくさんである。
あえて欠点を探すとなると、1.5斤や2斤など多めに焼けないところか。ただし、実際に今回米粉パンを1斤焼いたが、母と姉と私の3人でも食べきれなかったくらい。少人数世帯が増えている現在では、むしろ1斤で十分ではないだろうか。
また、ねりや寝かし、発酵といった動作を個別で動作できないため、パン作りのエキスパートには物足りなく感じられるかもしれない。ただし逆に言えば、コース通りに作ればおおむね正しくできるので、初心者でも十分に扱えるのはうれしい。もちろん、凝ろうとすれば説明書やホームページでレシピはたくさん公開されているので、いつも同じメニューばっかりで飽きる、なんてことにもならないだろう。
米粉パンも焼けて、他社にはないパンの調理メニューも備えているSD-BMS101。すでに既製品を持っていて、「米粉パンが焼けない」、「パンのメニューが少ない」と不満を抱えているなら、買い替えの第一候補にして何ら問題はない。初めて「ホームベーカリーが欲しい!」と思っている人にも、自信を持っておすすめしたい。
2010年3月18日 00:00