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第10回:ニッケル水素電池はどれを買えば良い? 国内メーカーガチンコ対決!【前編】


市場に数多く出ているニッケル水素電池。今回は、各社のそれぞれの性能を調べて、どの電池を選べば良いかを検証してみよう!

 乾電池のように使い捨てではなく、繰り返して使える電池といえば「ニッケル水素電池」。デジカメや懐中電灯など、さまざまな電化製品の電源として使用している人は多いだろう。

 現在、家電量販店のニッケル水素電池の棚は、三洋電機の「eneloop(エネループ)」や、ソニーの「Cycle Energy(サイクルエナジー)」、パナソニックの「充電式エボルタ」で占められている。さらに昨年、東芝から「IMPULSE(インパルス)」、日立マクセルから「ECOFUL(エコフル)」という製品が新たに登場。三洋/ソニー/パナソニック/東芝/日立という、大手国内家電メーカーが一同に会する熱い市場となった。

 しかし、ここまで多くのメーカーが出てくると、「どの電池を買えばいいいいのか分からない」「各メーカーの違いがさっぱり分からない」と悩んでいる人もいるだろう。各社とも電池の容量や繰り返し充電回数がまちまちだし、価格も単3電池4本セットで1,600円くらいするのもあれば、1,000円程度のものもある。

 そこで「分からないことは、自分で調べるやってみる!」がモットーの我が家電ラボの出番だ。今回は、量販店などで身近で買える、国内メーカーの代表的なニッケル水素電池についていろいろな実験を行ない、「本当に長持ちするニッケル水素電池はどれか?」や、「一番乾電池と同じように使えるニッケル水素電池はどれか?」など、製品選びのポイントを調べることにしよう。

 Do it Oneself!

 たくさんありすぎてよくわからないニッケル水素電池選びに、終止符を打つことにしよう!


実験にエントリーしたニッケル水素電池はこの5製品だ!

 今回、実験の対象としたのは、国内メーカー5社の乾電池型ニッケル水素電池だ。海外メーカーについてはやっているとキリがないので除外している。

 また、できるだけ条件が揃うように、電池容量が1,900mAhもしくは2,000mAhのニッケル水素電池を選んでいる。中には、2,000mAh以上の大容量タイプや、1,000mAh程度の小容量タイプのニッケル水素電池を扱うメーカーもあるが、これについても除外している。

   【1】三洋電機(パナソニック)「eneloop (エネループ)」

   【2】パナソニック「充電式EVOLTA (エボルタ)」

   【3】東芝「充電式IMPLUS (インパルス)」

   【4】ソニー「CycleEnergy GOLD (サイクルエナジー ゴールド)」

   【5】日立マクセル「ecoful (エコフル)」

【1】三洋電機(パナソニック)「eneloop (エネループ)」
ニッケル水素電池の普及の先がけとなったのがこのエネループだ。もはや定番とも言えるが、ほかの電池と比べて性能はどうなのだろうか?
【2】パナソニック「充電式EVOLTA(エボルタ)」
三洋がパナソニックグループに入ったことで、パナソニックには「エネループ」と「充電式EVOLTA」の2つのニッケル水素電池ブランドが存在することになる。おそらく多くの読者が両者の違いを気にしていると思われるが、その性能はいかに? 筆者も超・気になっている!
【3】東芝「充電式IMPLUS(インパルス)」
東芝が2011年10月から発売したニッケル水素電池シリーズ。新しい製品ではあるが、家電量販店でもよく見かける。名前はなんだか強そうな感じだ
【4】ソニー「CycleEnergy GOLD」(サイクルエナジー ゴールド)
「サイクルエナジー」シリーズは、比較的早く市場に投入している。ソニーはリチウムイオン電池メーカーとしても有名なので、充電式電池のノウハウは豊富だろう
【5】日立マクセル「ecoful」(エコフル)
東芝同様、2011年10月に発売された新しいニッケル水素電池シリーズ。ほかの4シリーズと比べるとあまり売っているところを見かけないが、性能はどうだろう?

メーカー 三洋電機
(パナソニック)
パナソニック 東芝 ソニー 日立マクセル
ブランド名 eneloop
(エネループ)
充電式
EVOLTA
(エボルタ)
充電式
IMPLUSE
(インパルス)
Cycle Energy
GOLD
(サイクルエナジー
ゴールド)
ecoful
(エコフル)
電池の型番 HR-3UTGB HHR-3MWS TNH-3M NH-AA MHR-3SAY
容量 1,900mAh 1,900mAh 1,900mAh 2,000mAh 2,000mAh
繰り返し使用回数 1,800回 1,800回 1,500回 1,000回 1,000回
生産国(電池に記載) 日本 中国 中国 中国 中国
1年後残存率 90% 90% 85% 記載なし 記載なし
4本セット購入価格 1,580円 1,580円 1,280円 1,080円 1,480円

 なお実験にあたっては、それぞれの電池を3回充放電を繰り返したうえで使用している(車で言う「慣らし運転」を終えた状態)。また室温を一切管理していない普通の生活環境で測定しているため、メーカ公表値と異なる場合がある点に注意して欲しい。


実験内容は「満充電時の長持ち性能」「電圧の高さ」「耐久性」「繰り返し利用回数&コスト」

 この5つの電池を使って行なう実験は、以下の4つだ。

(1)充電1回あたりで、どれだけ長く機器を利用できるか? (小/中/大電力の場合)

 ニッケル水素電池を満充電して、各メーカーの電池がどれだけ長持ちするかを調べる。ただ、機器には携帯用ラジオやLED懐中電灯など比較的小電力のものもあれば、デジカメやストロボのように大電力の機器もある。そこで、この実験では小電力、中電力、大電力の3つの機器を想定して、それぞれの機器でどれだけ長く使えるかを調べてみよう。

実験は、小/中/大電力の機器に見立てた「抵抗」(写真中央の白い四角い捧)という部品と、パソコンでリアルタイムに電池の電圧を測れるテスター、そしてスイッチをON・OFFする自作の制御ボックスに、筆者が独自に開発したプログラムを使っている 実験で使用したプログラム。制御ボックスのスイッチをコントロールしつつ、電池の電圧を常にモニターして10秒ごとに電圧を記録。1.0Vを下回ったところで、実験を中止する。そのほか、指定時間ONとOFF状態を繰り返すモードもある

(2)どのニッケル水素電池が一番乾電池に近いか? 高電圧をチェック

 言わずもがなだが、ニッケル水素電池は乾電池の代わりに使える。しかし、乾電池は1本1.5Vの電圧を出力できるが、ニッケル水素電池は1.2Vと、少し電圧が低めだ。満充電のニッケル水素電池を機器に入れても、乾電池を半分ほど使い切ったぐらいの電圧しか出せないことになる。

 例えば、新品の乾電池をモーターを使ったおもちゃに入れると、おもちゃは素早く動く。しかし、満充電にしたニッケル水素電池を入れると、乾電池ほど早く動かない。懐中電灯でも、ニッケル水素電池を入れると、乾電池に比べて僅かに暗さを感じるだろう。

 そこで、各メーカーのニッケル水素電池がどれだけ高い電圧を出せるのかを調べ、より乾電池に近い電圧を出せる電池を見つけようという狙いがある。

(3)ニッケル水素電池にダメージを与えて耐久性をテスト(後編で公開)

電池に抵抗をつないだ状態で3日間(72時間)放置。通常なら5時間で電池は規定の1.0Vを割っているので、かなりのダメージを受けているはず。これを再び満充電して、どれだけ性能回復できるかをテスト。電線が密着するようにクランプで挟み込んでいる

 ニッケル水素電池は、1.0Vを下回り電池をスッカラカンまで使う(いわゆる「深放電」)と、性能に大きなダメージを与えるという弱点がある。しかし、電池の残量計が付いているデジカメなどを除けば、ついつい最後まで使ってしまいがちだ。

 そこで各メーカーのニッケル水素電池をスッカラカンになるまで使い、再び満充電したとき、以前の性能からどのぐらいのダメージを受けているかを調べ、より耐久性のあるものを調べてみる。

(4)繰り返し利用回数&コスト(後編で公開)

 各社で意外と差があるのが、繰り返し利用できる回数。そこで、繰り返し使用回数まで使った場合の“ライフタイムコスト”を調べてみる。さらに、店頭での実売価格など、コスト面での差も見ていこう。

 そして最後に、すべての実験結果や評価をまとめて、「これを選んでおけばまちがいない」という“キング・オブ・ニッケル水素電池”を選出してみよう。

 このように実験が多いため、今回は記事を前編と後編に分け、1〜2は今回の前編で、3〜4は後編でお伝えする。キング・オブ・ニッケル水素電池は、前編だけでは分からないので、家電Watchを欠かさずチェックして欲しい(笑)。

【実験その1】小電力で連続使用すると、やっぱり2,000mAhクラスの電池が長持ち

 まず実験するのは、「充電1回当たりの長持ち性能」だ。小/中/大電力の3パターンについて調査をするが、まずは携帯用ラジオやLED懐中電灯など、さほど電力を食わない“小電力機器”において、どのニッケル水素電池が一番長持ちするかを調べてみよう。

 小電力実験では、実験装置に3Ωの「抵抗」と呼ばれる電子部品を装着した。実験装置の内部抵抗も加えると3.6Ωで333mAとなり、約300〜400mAの電流が流れる機器をシミュレーションしている。なおニッケル水素電池では、電池がなくなったとされる「終止電圧」が1.0Vと定められているので、測定は1.0V以下になった瞬間までとしている。

小電力(およそ333mA)の機器だと、容量2,000mAhのソニー製サイクリエナジー ゴールドと日立マクセルのエコフルが長時間利用できる。1,900mAhだと、エネループと充電式インパルスが同着といった感じだ

 結果は、いかにも順当というものだった。容量が2,000mAhのソニー「サイクルエナジー ゴールド」が一番長持ちで5時間20分、次いで同じく2,000mAhの日立マクセル「エコフル」が5時間12分となった。1,900mAの三洋「エネループ」、パナソニック「充電式エボルタ」、東芝「充電式インパルス」は5時間〜5時間10分の間に集中している。

 気になるのは、充電式インパルスがほかに比べると電圧が低めになっているという点。電池残量表示が付いている機器だと、1.2Vを割る3時間20分程度で「容量半分」表示になってしまいそうだ。残量計で見ると「えらく容量が少ない」「長持ちしない」と感じられてしまうかもしれない。


中電力では東芝が長持ち性能を発揮。充電式エボルタは踏ん張りが利かない?

 次に、電子辞書やICレコーダー、モーターを使ったおもちゃなどの“中電力機器”を想定した実験を行なった。実験の抵抗は1Ωで、電流が1.2Aだが、実験装置の内部抵抗も含めると1.6Ω、750mAの電流が流れることになり、先程の実験のおよそ2倍となる。

中電力の機器の場合、容量のアドバンテージは見られない。充電式エボルタを除き、すべて2時間に集中している

 この実験では、各社の特徴が出はじめて面白い結果を見せてくる。容量2,000mAhのソニー「サイクルエナジー ゴールド」が長持ちなのは“当然だよな”という結果なのだが、電圧が他に比べると低かった1,900mAhの東芝「充電式インパルス」が、ソニーと同率首位をマーク。電圧を見ると、ソニーは太く短く、東芝は細く長くという傾向があるようだ。

 2位は1,900mAhの三洋「エネループ」、3位は2,000mAhのエコフルという結果になったが、その差はわずか40秒なのでともに2位と言ってもいいだろう。また1位と比べてもその差は2分なので「どのメーカーを使ってもほとんど変わりはない」と言ってしまってもいい。

 とはいえ充電式エボルタのみは別で、1時間55分で電池切れ。1位とは7分差を開けられた。実験結果を見ると、1.1Vを割ってからの踏ん張りが弱いように思える。


大電力ではふたたび2,000mAhクラスが活躍

 今度はデジカメやストロボなど“大電力機器”を想定して、0.5Ωで2.4A、内部抵抗を入れると0.7Ωで1.7Aという測定条件で実験してみよう。細かいことを言うと、電線を変えたため、先程の実験から内部抵抗は少し減っている。

 先に断っておくと、この実験では1時間以上連続して使っているため、電池が熱を持ち、グラフが若干いびつになっている。

大電力(およそ1,700mA=1.7A)の機器だと、再び2,000mAhタイプが優位に。東芝の充電式インパルスは、電圧が“細く長く”という性質を持つためか、1,900mAhクラスでは1位となった

 1位は、ソニー「サイクルエナジー ゴールド」、日立マクセル「エコフル」で、1時間32分。容量が2,000mAh同士の同着となった。2位は、“細く長く”が特徴の東芝「充電式インパルス」。1位と4分を空けれられるも、1,900mAhの意地を見せたという感じだ。

 続く3位は三洋「エネループ」で、1時間25分と1位とのタイム差7分となった。そして最下位は1位に11分差を開けられて充電式エボルタ。エネループとエボルタの特徴は、互いに1,900mAという容量ながら、2,000mAより高い電圧を長時間維持できるという点がある。しかし、1.1Vを割ったあたりからの粘り強さは、エネループに軍配が挙がるようだ。


【実験その2】電圧の高さを比較。エネループと充電式エボルタが上位

 続いての実験は、「高い電圧を出せるのはどれ?」だ。

 乾電池型のニッケル水素電池は、当然ながら乾電池の代わりとして使える。しかし、ニッケル水素電池の電圧は、乾電池の1.5Vよりも低い1.2V。乾電池を使った場合よりモーターが遅く回ったり、懐中電灯が暗く感じたりするハズだ。

 そこで電子辞書やオモチャなど、中程度の消費電力の機器を想定して、乾電池と各社のニッケル水素電池を比べ、どれだけ電圧が出せるのかを調べてみた。ちなみに電池負荷は、上の実験の中電力と同じとしている。

負荷を接続した状態で、一番高い電圧を出せたのはエネループで1.305V。次いで1.293Vの充電式エボルタ。3位は1.269Vのソニーのサイクルエナジーとなった

 まずは比較対象となるアルカリ電池の電圧を見ていこう。グラフの一番上がそれで、何も接続していない無負荷の)態では1.62V、中程度の負荷をかけると1.43Vとなった。ちなみに電池は、スーパーやコンビニで良く売られている、パナソニックのアルカリ電池「EVOLTA」を使用している。

 ニッケル水素電池の中で一番高い電圧を出せるのは、無負荷で1.44V、負荷を接続すると1.3Vまで出せる三洋「エネループ」だった。次いで充電式EVOLTAも無負荷で1.42V、負荷を接続すると1.29Vまで出せた。この2つは、乾電池に近い能力が出せるニッケル水素と言えるだろう。

 逆にモーターの回転数や豆電球の暗さを感じてしまうのは、負荷を接続した電圧が1.24Vの東芝「充電式インパルス」と、1.25Vの日立マクセル「エコフル」だった。

【中間報告】サイクルエナジーとエネループが良い感じ

 今回は「1回の充電の長持ち性能」と「乾電池に近い電圧」という2つについて調査したが、消費電力の大小に関わらず長時間機器を利用できるのは、容量2,000mAhのソニー「サイクルエナジー ゴールド」と日立マクセル「エコフル」、1,900mAhクラスでは三洋「エネループ」と東芝「充電式インパルス」あたりだろうか。また、乾電池に近い電圧が出せるのは、パナソニック「充電式エボルタ」、と三洋「エネループ」だ。

 まだ実験はいくつか残っているが、中間報告として今回の2つの実験をまとめると、機器が長く使えて、より乾電池に近い電圧を出せるニッケル水素電池は、ソニー「サイクルエナジー ゴールド」と三洋「エネループ」が良い、ということが言えそうだ。

次回は耐久性とコスト比較。キング・オブ・ニッケル水素電池はどれだ!

 実験はまだまだ残っている。次回は、ニッケル水素電池の耐久性、そして繰り返し使用回数も含めたコストの比較も調べてみよう。さらに、今回はスイッチをONにしっぱなした状態での長持ち寿命を調べたが、ONとOFFを繰り返した場合の長持ち性能についても、付け加えて調べてみたい。そして総合評価として、“キング・オブ・ニッケル水素電池”を選出しよう!

後編に続く →





2012年3月1日 00:00