ホンダ、停電時に電気とお湯が使える「エコウィルプラス」

~LPガスで発電できるポータブル発電機も

 ホンダは、停電時に電気とお湯が使える家庭用発電・給湯システム「エコウィルプラス」と、LPガスで発電する非常時向けのポータブル発電機「EU9i GP」のメディア向け説明会を開催した。両機とも、停電時の非常用電源として使える点が特徴で、ガス給湯器への給電も行なうため、温かいお湯が使える。

 ホンダは製品の開発・製造を担当しており、エコウィルプラスの販売は各ガス会社が、EU9i GPの販売は矢崎エナジーシステムを通じて各LPガス事業者が行なう。

家庭用発電・給湯システム「エコウィルプラス」LPガスを使って発電するポータブル発電機「EU9i GP」

停電時もお湯と電気が使える「エコウィルプラス」

 「エコウィルプラス」は、ガスエンジンで発電し、その際に生じる排熱を利用して給湯や暖房を行なう家庭用発電・給湯システム。発電効率や熱回収率に優れた独自の「ガスエンジンコージェネ」技術を搭載しており、92%の高いエネルギー利用率を実現している。東京ガスでの販売価格は、24号貯湯ユニットとの組み合わせで1,069,950円で、発売は11月より。

右が給湯ユニット、左がコージェネレーション(熱電併給)ユニットエネルギー利用率に優れた独自の「ガスエンジンコージェネ」技術コージェネレーション(熱電併給)ユニットカットモデル

 新製品では、停電時も供給されるガスエネルギーを用いてエンジンを起動させることにより、自立した発電・電気供給ができる点が特徴。家庭内に電気供給を行なうためには、通常時使用している電力系統連系(電力会社の配電線に接続すること)から、自立運転に切り替える必要がある。エコウィルプラスの場合、電源コンセントを通常時から停電時に切り替える。その後、本体の発電モードを切り替えて、本体側面の「始動グリップ」を手で引っ張ることで、発電エンジンを始動させる。

通常時コンセントと停電時コンセントの2種類が備えられている通常は、電力会社から購入した系統電力と、エコウィルで発電した電気で室内の電力をまかなっている停電時は、系統電力を切断し、エコウィルプラスの自立運転に切り替える
停電になったらまずはコンセントを入れ替える次に本体側面のパネルをコイン状のものを使ってあける始動グリップを何回か引っ張って、エンジンを始動させる

 自立運転時の発電出力は最大約980W。専用の100Vコンセントからテレビやパソコン、照明などに電力を供給する。安定した電力供給を行なう「正弦波インバーター」を搭載しているためチラつきのない、“商業電力並み”の安定した電力供給が可能だという。

 また、発電した電気は、給湯器の電源としても活用できるため、台所や浴室でお湯を使えるほか、床暖房も使うことができるという。

エンジンの始動は、本体側面の振動で確かめる自立運転時の発電出力は最大約980W。給湯器の電源も確保するため、お湯も使える

 ホンダでは、2003年よりエコウィルのコージェネレーションユニットを製造しており、各ガス会社より一般家庭向けに展開され、累計約12万戸に設置されているという。

 本体サイズは580×298×750mm(幅×奥行き×高さ)。本体重量は76kg。燃料に天然ガスを使う「MCHP1.0R」と、LPガスを使う「MCHP1.0RP」が用意される。

LPガスで発電するポータブル発電機「EU9i GP」

 LPガスで発電するポータブル発電機「EU9i GP」も今年8月より発売した。希望小売価格は、本体と「専用ガス供給ボックス」をつなぐコードの長さが3mの場合230,790円、5mの場合232,890円。

 ホンダでは、これまでカセットガスで発電する発電機「エネポ」を発売しており、東日本大震災後には、被災地に1,000台を寄贈。その際、カセットガスではなく、「LPガスをつなくことができないのか」「LPガス容器仕様の発電機はないか」という問い合わせが多かったという。「EU9i GP」は、それらの声に応える形で“簡単に、安心して、長時間、使える発電機”を目指したという。

LPガスで発電するポータブル発電機「EU9i GP」震災や計画停電、台風など、停電は従来より身近な存在となった被災地にカセットガスで発電する発電機「エネポ」を寄付したところ、「LPガスをつなくことができないのか」「LPガス容器仕様の発電機はないか」という問い合わせが多く寄せられたという

 EU9i GPは、本体とLPガス缶をつなぐ「専用ガス供給ボックス」から成る。停電時には専用ガス供給ボックスに収納されているコードをEU9i GPに接続、EU9i GPのコードリールを引っ張ってスイッチを入れる。電気機器を使用する際には本体に備え付けられているプラグにコンセントを差し込む。

EU9i GPの接続方法。専用ガス供給ボックスと本体をコードでつないで、スイッチを入れる内部構造専用ガス供給ボックス
発電時は専用ガス供給ボックスからコードを取り出すコードを本体に接続する本体側面のコードリールを引っ張って、スイッチを入れる
本体側面のプラグに電気機器のコンセント差し込む本体側面部

 使用できる機器は、最大900W以下の電化製品。テレビやパソコンなどの情報通信機器や照明機器のほか、ガス給湯器やガスファンヒーターの作動電源としても使用できるという。LPガス50kgの場合、約100時間の長時間運転が可能で、2台を並列に接続することで、最大1,800VAの出力にも対応する。エコウィルプラス同様、商用電源と同等の安定した出力ができる「正弦波インバーター」を搭載する。

 発電時もガス給湯器への供給を行なっているためお湯の給湯も可能。

使用できる機器は、最大900W以下の電化製品停電時に給湯可能なのも大きな利点だ

 本体サイズは242×451×379mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約13.4kg。導入の際には、ガス事業者による取り付け工事が必要となる。

 このほか、運転時の騒音を軽減する専用防音ボックスも用意される。吸音材と防音構造を備えた専用ボックスで、本体を収納することで騒音を約10dB軽減できるという。通常、200W発電時の運転音は約79dBだが、防音ボックスに入れることで「体感として、約半分程度に抑えられる」(担当者)という。希望小売価格は99,750円。

専用の防音ボックス本体を収納するときは、中のスライダーを使う

発売2カ月弱で、約2,000台の受注

EU9i GP 開発責任者 初谷勉氏

 本田技術研究所 汎用R&Dセンターの初谷勉氏は、「LPガスは、全国総世帯5,000万世帯の約半数の2,500万世帯に置いてある。配管が短いため、異常があれば、個別で修理でき、災害時の復旧も早かった。なにより、家の軒下にあるガス管をすぐに使えるというところが、心強い」と製品をアピールした。

 また、「8月7日に発売したばかりだが、現時点で約2,000台の受注をいただいている。当初の目標が年2,500台だったので、予想を大きく上回る反響があった」と語った。






(阿部 夏子)

2012年10月2日 17:21