三菱、太陽光と電気自動車で“1週間停電しても生活できる家”の実証実験

太陽光と電気自動車で“1週間停電しても生活できる”ことを謳う実験用住宅施設「大船スマートハウス」

 三菱電機は、同社の実験用住宅施設「大船スマートハウス」に、太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)を連携して制御するパワーコンディショナーを設置。家庭用エネルギー管理システム「HEMS」と併用することで、災害などで1週間停電しても過ごせるスマートハウスの実証実験を行なう。実施期間は約1年間。


“ゼロ・エミッション”を達成した住宅に、太陽光発電・電気自動車のパワコンを設置

 大船スマートハウスは、神奈川県鎌倉市の三菱電機 情報技術総合研究所内に、2011年5月にオープンした実験用の住宅施設。同施設ではこれまでに、家庭内のエネルギー消費量を太陽光発電ですべてまかなう“ゼロ・エミッション住宅”の実験を実施。HEMSで居住者の生活パターンに応じた制御を行なう、給湯は太陽熱を利用するなどで節電することで、太陽光による発電量がエネルギー消費量を上回る結果になったという。

大船スマートハウスでは、これまで家庭内のエネルギーを太陽光発電ですべてまかなう“ゼロ・エミッション住宅”の実験が行われたていたHEMSで居住者の生活パターンに合わせて制御したり、太陽熱を給湯に用いるなどで、“ゼロ・エミッション”を実現したという

 今回は同施設に、太陽光発電と、EVなど容量の大きい蓄電池を連携して制御する、新開発のパワーコンディショナー「PV・EV連携パワコン」を、屋外に設置。太陽光で発電した電力を、家庭機器に供給したり、余剰電力を売電するほか、EVなど大容量の蓄電池の充電も行なう。さらに、HEMSも連携することで、平常時や、災害時による停電時でも、使用電力の最適制御が実現できるという。

今回は太陽光発電とHEMSに加えて、EVもシステムに加えて実験する太陽光発電とEVを連携するパワコンも導入
新開発のパワーコンディショナー「PV・EV連携パワコン」。屋外に設置されるEVに接続し、充放電を行なうガンスタンドも設置される(写真左)写真は撮れなかったが、屋根には太陽光パネルも設置されている。出力は2世帯住宅を想定し6kW


停電でも1週間の生活が可能。雨の日はHEMSで自動節電

PV・EV連携HEMSのシステムの構成。各機器に無線アダプター「ECHONET Lite(エコーネットライト)」が付いており、ワイヤレスで制御する

 停電時では、新しいパワコンの導入によって、太陽光の発電量や家庭の電力需要に合わせて、EVの蓄電池の充放電を行ない、家電が使用できる。また太陽光とEVから電力の供給が少なくなっても、HEMSコントローラーが家電の機能や性能を制限することで、電力消費を抑制し、快適さをできるだけ損なわない生活を実現するという。

 例えば晴天の場合は、太陽光発電とEVの電力を家庭内に供給するため、停電時でも家電は通常通り使用可能。余剰電力はEVに充電する。曇天の場合も通常使用が可能だが、電力供給と消費が逼迫する場合は、HEMSコントローラーが家電の電力消費を抑制する。

 夜間についても、EVの電力を利用することで、停電時でも家電は通常通り使える。しかし、悪天候続きで充電量が少ない場合は、HEMSコントローラーによる消費抑制を行ない、場合によっては家電の使用を停止することもあるという。

PV・EV連携システムにおける電気の流れ方。蓄電池は基本的に安価な夜間電力で充電される昼間のピーク時には、太陽光と蓄電池の電力を用いる。商用電源を使わずにピークカットもできる
停電時には、蓄電池と太陽光発電で、家庭の電気を賄う停電時でも太陽光発電の発電量が多ければ、蓄電池への充電も可能
停電でも1週間暮らせる電気機器の例。晴れならばどんな家電も問題なく使えるが、曇りや雨だと、制限を受けることもあるリビングに設置されたHEMSコントローラー。いろいろなモードが設定できる

 同社では、この「PV・EV 連携HEMS」により、停電になっても1週間は生活できるとしている。また、コンセントは差し替える必要がなく、停電後に自動で切り替わるという。

 平常時については、太陽光発電による発電電力や、夜間などオフピーク時にEVへ充電された電力を、HEMSコントローラーにより有効活用する。また、電力需要のピーク時に蓄電池を放電することもできる。さらに、今後の電力料金制度の変更にも対応可能という。

家庭用分電盤の中に設置された生活パターンセンサー。約2週間で家電の使用状況を学習し、生活に合わせた運転を実行するHEMSによる使用制限の一例。HEMSで「昨年より15%削減」と設定しておけば、自動的に制限が設けられ、それを超えた機器については、自動で運転が抑えられる。写真はエアコンとIHクッキングヒーターを同時使用した場合

EVを使う理由は“バッテリー容量が大きく、一週間踏ん張れる”

三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業部の梅村博之本部長

 三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業部の梅村博之本部長は、固定型の蓄電池ではなく、EVの蓄電池を利用する理由について、バッテリー容量の大きさを挙げた。

「蓄電容量が15kWh以上あると、1週間踏ん張れる。固定型の蓄電池でも良いが、それだと1週間は持たない。日産のリーフは(バッテリー容量が)24kWh、三菱のi-MiEV(アイミーブ)は16kWh。スマートハウスに今一番要求されているのは、災害時にどれだけ踏ん張れるかということ。EVなら、それができる」 

 今後については、実証実験に並行して、ハウスメーカーと共同で実際の家での実験も行ない、太陽光発電とEVを連携するHEMSの事業化を目指すという。






(正藤 慶一)

2012年5月16日 00:00