日立、ワンタッチで最大消費電力が25%カットできるエアコン「白くまくん」
ステンレス・クリーン 白くまくん Sシリーズ |
日立アプライアンスは、リモコンのワンタッチ操作で節電できるエアコン「ステンレス・クリーン 白くまくん Sシリーズ」8機種を、12月上旬より順次発売する。価格はオープンプライスで、冷房時の適用畳数が14畳程度の「RAS-S40B2」の店頭予想価格は25~27万円前後。
■リモコンで最大消費電力を25%カットする「電力カット」など3通りの節電運転モード
リモコンのワンタッチ操作で、節電の運転モードに切り替えられる |
同社の高級モデルに当たるエアコン。新製品では、リモコンのワンタッチ操作で簡単に節電できる3つの運転モードを搭載した点が特徴となる。
1つ目の節電モードは、従来モデルから搭載されている「[ecoこれっきり]運転」。Sシリーズの室内機には、人の動きや居場所を見る「見るセンサー」、テレビや掃除機がけなど生活音を検知する「聞くセンサー」、日差しを感じる「感じるセンサー」の3つのセンサーが搭載されているが、これらのセンサーが、人の状況をきめ細かく検知し、部屋に居る人の体感温度が高いと判断すると、設定温度を控えた節電運転に切り替える。また、エアコン運転中の部屋から人が30分以上いなくなった場合も、設定温度を抑えた運転に切り替える。
節電運転の1つ目は、従来から継承する「[ecoこれっきり]運転」。人の動きと音、日差しから、自動で節電運転に切り替わる | [ecoこれっきり]運転で使用するセンサー部分 |
2つ目が新たに搭載された「電力カット」運転。最大消費電力を25%抑えたうえで、暖房時は20℃、冷房時は28℃設定の節電運転を行なう |
2つ目は、最大消費電力を抑える「電力カット」運転。これは運転中に「電力カット」ボタンを押すと、最大消費電力を25%抑えたうえで、設定温度を暖房時は20℃、冷房時は28℃で運転するというモード。さらに、リモコンが置かれているエリアを検知し、リモコンの置いてある場所に向かい、風を左右にスイングしながら送風するという。
3つ目は送風のみで涼感を得る「風だけ」運転。電力カット運転と同様、リモコンが置かれている場所に向かって送風し、さらに「見るセンサー」によって人の動きを検知する。そして、体感温度を少しだけ下げるように、風を自動で調節する。消費電力は約32Wと、扇風機並みに抑えられるという。
電力カット運転はリモコン下部のボタンを押すだけ。リモコンのある位置を重点的に空調する | 電力カット運転を実際に動かした場合の消費電力。1,400Wのフル能力で運転している際に、電力カット運転に切り替えると、消費電力はその約25%減となる1,103Wとなった |
送風運転のみの「風だけ」運転も搭載 | リモコン周囲に風を送り、また見るセンサーで人の活動量を検知し、風量をコントロールする | 実際に扇風機の消費電力と比較したデモ。扇風機は32Wだったが、「風だけ運転」は31Wだった |
■室内機の清潔を維持する「ステンレス・クリーン システム」の面積が約1.4倍に
内部構造では、室内機内部に搭載されている「ステンレス・クリーン システム」を改良した。これは室内機内部に、除菌効果のあるステンレスを採用し、普段手入れがしにくい部分の清潔さを保つことを狙ったものだが、新製品ではフィルターやフラップ部分、上部の通風路部分にもステンレスを採用。ステンレスの面積は従来機種よりも約1.4倍に広がった。
室内機のステンレス面積を従来の約1.4倍に増量 | 上が新製品、下が従来モデルのカットモデル。金属部分の面積が広くなっている |
送風中のルーバーにかかる静電気を計測したデモ。プラスチックのルーバーだと静電気が発生するが、ステンレスでは発生していない | 写真上が従来モデル。静電気が発生しているため、ホコリが付着するが、写真下の新製品では、まったく付着しない |
■「ジェット・スクロール圧縮機」で暖房力アップ。55℃の高温風も
室外機の圧縮機に、新たに「ジェット・スクロール圧縮機」を採用した |
暖房効果も向上した。まず、室外機の圧縮機に、新たに「ジェット・スクロール圧縮機」を採用することで、低温時の暖房能力が、従来モデルの7.5kWから8.2Wに上がった。ジェット・スクロール圧縮機では、高速運転できるように高精度バランス構造を採用し、省エネ性を向上するために、冷媒吹き出し口を大口径化、吐出ガスバイパス穴を新設している。
また、室内機のフラップの面積を、従来モデルに比べ約20%拡大。大きな2枚のフラップで温風を足元に届けることで、広いリビングでも部屋の奥までしっかり暖めるという。
暖房機能ではさらに「温風プラス」というモードも搭載した。吹き出す風の温度を約55℃に高めた運転を約30分連続して行なう。室内機から吹き出る風の温度が物足りないと感じた時や、もっと暖かい風が欲しい時に便利という。
ジェット・スクロール圧縮機のカットモデル | 新製品と従来モデルとの暖房の差を見ると、写真上の従来モデルよりも、写真下の新製品の方が、温度が高い部分が多い |
室内機のフラップの面積を、従来モデルに比べ約20%拡大。大きな2枚のフラップで温風を足元に届ける狙いがある | 暖房中の実際のフラップ | 「温風プラス」モードを使ったデモ。通常は40℃程度の温風が、56.3℃まで上がった |
■待機電力は“ほとんどゼロ”。全モデルにステンレスや電力カット運転を採用
日立アプライアンス 空調システム設計部 大塚厚部長 |
さらに、待機電力は“ほとんどゼロ”を謳う0.04W。日立アプライアンスの空調システム設計部 大塚厚部長によれば、「エアコンにはたくさんの機能が付いており、従来のエアコンでは、それらの機能の待機電力で、停止中も電力を消費していた。しかし今回は、運転リモコンの受信に必要な電力だけを使う回路を搭載した」という。
このほか、肌のうるおいや髪の毛のキューティクルも整える「イオンミスト」も、従来モデルより搭載する。
待機電力は“ほとんどゼロ”を謳う0.04W | 会場での計測では0.039Wと、スペック値とほぼ同じ数値が出た |
Sシリーズのほかのラインナップとして、デザインにこだわったプレミアムモデル「Xシリーズ」を2012年2月に、Sシリーズの下位モデルに当たる「SPシリーズ」「Mシリーズ」「ASシリーズ」を2012年春に発売する。シリーズすべてにおいて、電力カット運転、待機電力カット、ステンレス・クリーン システムを採用する。価格は未定。
Sシリーズと同等の機能を備えているが、高級感のあるデザインのプレミアムモデル「Xシリーズ」 | 写真上がSシリーズ。その下のSPシリーズでは、[ecoこれっきり]運転は採用されていない | 下位モデルのM、ASシリーズ |
■家庭内の消費電力のうち、エアコンは1/4、夏の日中では半分以上も占めている
日立アプライアンス取締役 ルームエアコン統括本部の飯塚慎一本部長は、電力カット運転を採用した背景として、「年間の家庭内の消費電力のうち、エアコンは1/4を占めており、さらに夏の日中に限れば53%と高い。エアコンに対する節電の取り組みが注目されている」と説明した。また、日立アプライアンス取締役 空調事業部 青山貢 事業部長は、Sシリーズを発売することで「高級ゾーンにおけるシェアを、24%から27%に伸ばしていきたい」と、シェア目標を示した。
飯塚氏はまた、2011年度のエアコンの需要について「猛暑だった2010年度の反動から落ち込むと見られていたが、4~6月は節電意識の高まりで買い替えが起きた」と予測。2012年度については「特需はなく、通常の買い替え需要」として、750万台の出荷を見込んでいる。
日立アプライアンス 取締役 ルームエアコン統括本部 飯塚慎一本部長 | 日立アプライアンス取締役 空調事業部 青山貢 事業部長 |
(正藤 慶一)
2011年10月6日 17:30