経産省、今夏の節電対策案を公開

~個人/家庭は15~20%程度の節電を目指す

 政府が、この夏の電力需給対策として考えている政策案が判明した。個人/家庭向けには、15~20%の節電を目指す内容となっている。

 これは経済産業省が、4月8日に首相官邸で開催された「電力需給緊急対策本部」へ提出した資料を公開したもので、4月末を目途にまとめられる政策の下案となる可能性が高い。

 政策案は、東日本大震災で発電所に被害を受けた東京電力と東北電力の管内を主な対象としている。しかし、両電力会社の供給力の強化だけでは足りない電力需要に対して、広く国民全体に節電を呼びかける内容となっている。

 政策案は、計画停電が「やむを得ない緊急処置」であったとしながらも、その負担の大きさを「このままでは、国民生活やとりわけ国の活力の源である産業活動が疲弊し、震災からの復興と日本経済の再出発は望めない」と訴え、「原則として常に通電されている状態への転換」を行なうとしている。

強化が順調でも電力は足りない

 政策案では、電力会社2社の供給状態と、夏期の需要を検討し、順調に電力の積み増しができたとしても、需要のすべてをまかなうことはできない、と結論している。

 不足分については、電力需要を抑制する。つまり、広く節電を呼びかけることになる。抑制目標は、東京電力管内で1,000万kW、東北電力管内で280万kWとしている。これは、供給面の積み増しと合わせて、需給ギャップを解消できる量として想定されている。

 


2011年夏の電力需給状況
項目東京電力東北電力
供給力4,500万kW1,150万kW
供給力(積み増し分)500万kW50万kW
需要(平年並み)5,500万kW1,300~1,380万kW
最終的な不足分(平年並み)500万kW100~180万kW
需要(猛暑)6,500万kW1,480万kW
最終的な不足分(猛暑)1,000万kW280万kW

 

家庭/個人は15~20%の節電が目標

 節電の対象は、ピーク時を対象としている。具体的には7月から9月の平日、10時~21時の期間が対象となる。節電の目標は、2つの電力管内で共通とされる。

 目標は契約電力の大きさにより、3つの段階に分けられる。

 契約電力500kW以上の大口需要家は、「25%」が目標となる。契約電力500kW未満の事業者は、「20%」が目標となる。家庭/個人については、「15~20%程度」という幅のある目標設定となる。

 家庭/個人の場合、節電目標が設定されても、どうすれば達成できるのかがわかりにくい。政策案では、「どのような行動を取れば、どの程度節電できるのか」という具体的な例をまとめた対策メニュー例の作成も検討されている。たとえば、「冷房を2度高く設定すると何kWの節電に貢献」などの表現が例示されている。

 また、具体的な方法として、空調温度の引き上げ、エアコンに代わる扇風機の利用、照明の消灯、LED/電球型蛍光灯の導入などの例が挙げられている。

夏期節電対策の具体例

節電型社会へのターニングポイント

 節電にあたっては、2つの管内の個人や企業の努力だけでなく、国民運動として進めるとしている。

 例は多岐にわたっており、まず営業時間の短縮やシフトと、夏期休暇の設定や期間の延長、設定時期を分散などの方策が挙げられている。また、電力の需給状況のテレビや交通機関の画面への表示、大型イベントの開催日時をピーク時からずらすなどの配慮、学校における節電教育の実施など「ライフスタイルの変革につながる取り組み」を計画するとしている。

左下の図にあるように、営業時間をずらすことで、15時前後のピークを分散する。同様に、右下の図にあるように、お盆時期に集中している夏期休暇をずらすことで、その前後のピークを分散する

 以上の目標設定などは案であって、最終的な決定は4月末を目途にまとめられる。しかし、電力の不足分について、需要を抑制するしか方法がないのは明らかであり、ほぼ、このままの内容で決定されると見られる。

 全体として、強制的で副作用の大きい計画停電から、痛みを分かち合う節電型社会へと切り替えようという意図が感じられる内容となっている。すでに、今回の政策案の内容を先取りして、休業日の無かったデパートで定休日の設定を検討するなどの例も出てきており、社会全体の雰囲気が変わるきっかけとなる可能性がある。






(伊達 浩二)

2011年4月11日 00:00