日立、食品の鮮度を保つ「真空チルド」を大容量化した冷蔵庫

~“設置率98%”のスリム型、高さ152cmのロータイプも
フロストリサイクル冷却 真空チルドW

 日立アプライアンスは、食品の鮮度を保つ「真空チルドルーム」の収納量を、従来の約1.5倍に増やした冷蔵庫「フロストリサイクル冷却 真空チルドW(ワイド)」シリーズ8機種を、9月26日より順次発売する。ラインナップは以下の表の通り。



タイプ型番定格
内容積
冷蔵室
(真空チルド)
冷凍室野菜室本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
店頭予想
価格
プレミアムR-A6200620L324(22)L185L111L750×728×1,818mm35万円前後
R-A5700565L295(19)L167L103L685×728×1,818mm32万円前後
高級R-SF62AM620L324(22)L185L111L750×728×1,818mm31万円前後
R-SF57AM565L295(19)L167L103L685×728×1,818mm28万円前後
R-SF52AM520L274(17)L152L94L685×688×1,818mm26万円前後
R-SF48FM475L252(14)L138L85L685×643×1,818mm25万円前後
スリムR-S50AM501L261(17)L148L92L620×733×1,818mm25万円前後
スリム&ローR-SL47AM470L230(17)L148L92L620×733×1,735mm24万円前後

R-A6200 クリスタルブラウン(左) クリスタルプラチナ(右)R-A6200 クリスタルブラウン(右)と、新搭載の「真空チルドルームW」(左)

人気の「真空チルドルーム」を大容量化。9.1L→13.8Lに

 日立の最高級機種に当たる冷蔵庫で、同社が2007年から導入している「真空チルドルーム」の収納量を増やした点が特徴。真空チルドルームとは同社独自の機能で、ルーム内を約0.8気圧の真空状態にし、ルーム内部のケースから抗酸化ビタミンを放出することで、肉や魚、野菜や果物といった食材の酸化を抑え、栄養素の減小を抑制できるというもの。従来までは、横幅が約32cmだったが、今回は約48cmに広げることで、収納量を従来の9.1Lから約1.5倍となる13.8Lとした。

 これにより、今までに入らなかったサンマなどの長い食材も丸ごと入り、まとめ買いした食品も保存できるという。同社では、この広い真空チルドルームを「真空チルドルームW」と名付けている。

R-A6200の冷蔵室内にある「真空チルドルームW」最上位モデルでは、収納量を約1.5倍に増やした真空チルドルームのトレー。広さは従来モデルの約32cmから、約48cmに長くなった
これにより、サンマなど長い食材も真空チルドルームに入るようになったまとめ買いした食材も大量に入るという真空チルドルーム内の構造

 なお、真空チルドルームを大きくした事により、真空時のルーム上面の強度が不足する恐れがあるが、ケースを上下に2分割し、上面をドーム状とすることで、耐圧強度をアップしているという。

 真空チルドルームWには、調味液に浸けた食品を入れておくことで、味が染み込みやすくなる「浸透効果」もある。大根の浅漬けの場合、通常の冷蔵室に入れた状態よりも約2倍のスピードで調味液が浸透するという。リンゴのコンポート、きゅうりの酢漬け、から揚げの下ごしらえにも効果があるという。

容量が増えたことで、上面が凹む恐れがある。写真は金属缶による真空状態のデモしかし真空チルドルームWでは、上面をドーム状にすることで、耐圧強度をアップしている強度解析の画像
真空チルドルームWには、真空の力により、調味液が食品にしみこみやすいという大根(上)と干ししいたけ(下)による、浸透効果の比較。特に大根では、液がしみこんでいるのが分かるだろうこちらはレモンのシロップ漬け(左)ときゅうりの酢漬け(下)の比較。記者も食べ比べたが、真空チルドルームWの方が味がしっかりと染み込んでいた
真空チルドルーム利用者の声。保存性に関してはほとんどが満足してるという回答だったが、容量に関しては不満の声が多かった

 同社のアンケートによると、ユーザーが日立の冷蔵庫を選んだ理由の上位に、大容量と省エネに次いで真空チルドルームを挙げる声が多く、さらに同ルームの保存性能について、ほとんどのユーザーが「満足」と回答したという。しかし、容量については「不満」が全体の4割を占めていたことから、真空チルドルームを大容量化したという。


冷却器に付着した霜を有効活用、「フロストリサイクル冷却」も強化

フロストリサイクル冷却のイメージ図。冷却器に発生した霜をヒーターで熱して取るのではなく、冷却に利用する省エネ型の冷却方式だ

 冷却方式には、前年モデルに引き続き、冷却器に付着した霜の冷気を活用し、コンプレッサーを使わずに庫内を冷却する、省エネ型の「フロストリサイクル冷却」を採用。今回は、「冷媒バルブの搭載」、「冷却器の大型化」、「野菜室専用冷気フラップの導入」により、より省エネできる点が特徴となっている。

 「冷媒バルブの搭載」は、従来はコンプレッサー停止時に温かい冷媒が冷却器に流入していたのを、冷媒バルブを新設することで防止。これにより、霜による冷却が効率的にできるという。

 「冷却器の大型化」については、奥行きを従来よりも1.7cm広げることで、伝熱面積を約25%拡大。こちらも、霜による冷却が効率的にできるという。

 「野菜室専用冷気フラップの導入」は、これまでは冷蔵室と冷凍室用が用意されていた冷気フラップに、野菜室専用のものを追加。これにより、各室が独立して冷却できるため、きめ細かい冷気の制御ができるようになった。また、霜を使っているため冷気に水分が含まれており、野菜の乾燥を抑える効果もあるという。

 このほか、冷蔵庫の使用パターンを学習し、ドア開閉がすくない深夜や留守中に霜取りを行なうことで、過度な温度上昇を抑える学習機能も搭載。さらに、フロストリサイクル冷却中など、消費電力量を抑えたときには、扉前面の「[eco]運転サイン」が点灯する仕様となっている。

冷媒バルブの採用により、冷却器に高温の冷媒が入り込まず、効率よく冷やせる構造になった冷却器は厚さを6cmから7.7cmにすることで、伝熱面積が約25%拡大、冷却効率が向上した野菜室に専用の冷気フラップを新搭載。冷気をきめ細かく制御できるようになった
フロストリサイクル冷却は、霧の水分を含んでいるため、野菜室に入れてある野菜の乾燥を抑える効果もあるという従来機種との、野菜の鮮度の比較。右側が新製品の野菜室に入れた野菜だが、全体的にみずみずしさが感じられる省エネ運転時にLEDで知らせる「[eco]運転サイン」、使用パターンを学習して、温度上昇を抑える学習機能も備える


生卵置き場とチューブ容器置き場が自在に動かせる

 収納に便利な機能としては「フリー卵ケース」「チューブスタンド」が新たに用意された。いずれも庫内のどの棚にも簡単に配置できるケースで、フリー卵ケースでは卵や小物類が、チューブスタンドはチューブ類が収納できる。なお、チューブスタンドはキャップを下向きに立てることで、最後まで中身が出しやすくできる。

 このほか、庫内を照らすLEDライトを、冷蔵室・冷凍室・野菜室に設置。また、手前に引っ張ると引き出しが下がってくる最上段の棚「下がって届くん棚」や、下段冷蔵室や野菜室のドアがワンタッチで開く「電動引き出し」といった機能も引き続き搭載する。

 本体前面の扉には、強化ガラス製のクリスタルドアを採用。カラーは、クリスタルブラウン、クリスタルプラチナ、クリスタルブラックの3色が用意される。

フリー卵ケース庫内の棚のどこにでも置ける仕様となっている卵以外のものを入れても大丈夫
わさびなどチューブ類が入れられる「チューブスタンド」。扉のどこにでも置ける冷蔵室と冷凍室に搭載しているLEDを、野菜室にも採用した

“98%の部屋に設置できる”スリムタイプ、高齢者向けのスリム&ロータイプ

横幅620mmの「スリムタイプ」(左)、横幅620mmで高さが1,735mmという「スリム&ロータイプ」も同時に発売する

 今回のラインナップでは、本体幅が620mmとスリムな「スリムタイプ R-S50AM」と、同じく本体幅が620mmで、高さが1,735mmと低めの「スリム&ロータイプ R-SL47AM」を追加した点も特徴となる。

 スリムタイプは、本体幅が620mmとスリムにしながら、定格内容量501Lを確保したモデル。同社の冷蔵庫では、容量501L以上のものはすべて幅が685mmを超えていたが、これを620mmとしたことで、設置性が向上。同社の調査では、幅が685mmの冷蔵庫は、部屋に据え付けられる確率が91%だったが、620mmにすることで98%に向上できるという。

 スリム&ロータイプは、本体幅が620mm、高さが1,735mmと、細く低い本体デザインが特徴。容量は470Lとラインナップ中最も少ないが、冷蔵庫最上段までの高さは152cmと、従来機種よりも3cm低く、手が届きやすい高さとなっている。なお同社の調べでは、50代以上の7割がロータイプの冷蔵庫を購入しているという。

本体幅が620mmになると、“据え付け率”は98%と、非常に高い数値となっているロータイプは50代以上の購入者が多いスリムタイプ、スリム&ロータイプともに、真空チルドルームを備えている

幅広いラインナップはエコポイント制度終了後の布石

日立アプライアンスの石井吉太郎 常務取締役家電事業部長

 日立アプライアンスの石井吉太郎常務取締役家電事業部長は、真空チルドルームを大容量化した理由について「保存効果は良いが、もっと肉や魚を入れたい、もっと大きくしてくれないのか、と言う声をいただいた。機械的な強度や真空の保持など、技術的な課題があったが、チャレンジしてきた。今年は真空チルドの集大成をお客様に発信していきたい。」と説明。さらに、スリムタイプなどさまざまなラインナップを揃えた理由には、「12月にエコポイント制度が終了する予定になっているが、(その後は)非常に厳しい市場が待っていると思われる。そのためには、お客様の多彩なニーズをキッチリ捕まえて、ラインナップを強化していきたい」と、エコポイント終了後を見据えたものであることも明らかにした。

 なお、消費電力や消費電力量などのスペックは現時点では明らかになっていないが、フロストリサイクル冷却の進化などにより「現行製品よりも大幅に下がる予定」(石井氏)という。





(正藤 慶一)

2010年8月26日 18:12