日立、マイナス1℃で肉や魚の鮮度を保つ冷蔵庫

フロストリサイクル 真空チルドS R-Z6200

 日立アプライアンスは、マイナス1℃で肉や魚の鮮度を保つ真空チルドルームを搭載した冷蔵庫「フロストリサイクル 真空チルドS」シリーズ6機種を9月29日より順次発売する。製品の詳細は以下の表の通り。

 








タイププレミアムタイプ高級タイププレミアムタイプ高級タイプ
型番R-Z6200R-SF62ZMR-Z5700R-SF57ZMR-SF527MR-SF48ZM
定格内容積616L565L520L475L
冷蔵室容量320L290L269L248L
冷凍室185L167L152L138L
野菜室111L108L99L89L
年間消費電力量360kWh330kWh未定
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
750×728×1,818
mm
685×728×1,818
mm
685×683×1,818
mm
685×638×1,818
mm
希望小売価格オープンプライス
店頭予想価格35万円前後32万円前後32万円前後29万円前後27万円前後25万円前後
発売予定日9月29日10月上旬9月29日10月中旬10月下旬


 同社の高級冷蔵庫のプレミアムタイプ2機種を含む冷蔵庫の新シリーズ。主な特徴はチルドルームの機能向上、冷却器に生じる霜の冷気を利用した新採用の「フロストリサイクル冷却」、庫内容量の拡大などが挙げられる。
プレミアムタイプ2機種高級シリーズ4機種R-Z6200のカットモデル
庫内容量615LのR-Z6200の冷蔵室庫内を低酸素状態にすることで食品の鮮度を保つ「真空チルドルーム」真空チルドルームの奥に設置されているビタミンを放出する「ビタミンカセット」
本体前面の操作パネル冷蔵室に設けられている「下がって届くん棚」。引っ張ると下に下がってくる引き出し製氷室
マイナス40℃の吹き出し冷気とアルミトレイで冷気を循環させて食品を素早く凍らせる「デリシャス急冷凍」ルーム冷凍室冷凍室は500mlのペットボトルが立てて収納できるように底面にくぼみが設けられている

マイナス1℃で魚や肉の鮮度を保つ「真空チルドルーム」

 庫内を低気圧状態にして食品の酸化を防ぐ「真空チルドルーム」は、ユーザーの満足度が高かったとして、新機能を搭載した。同社のアンケートではチルドルームに収納する食材として肉や魚を挙げる人が多かったという。そこで、新「真空チルドルーム」では保存する食材に合わせて、庫内の温度を切り換えられる機能を新たに搭載した。

庫内を低気圧状態にして食品の酸化を防ぐ「真空チルドルーム」はユーザーの満足度が高かったという新製品では、食品に合わせて庫内の温度を切換えられる機能を新たに搭載した

 0.8気圧、1℃で食材を保存するチルド設定以外に、今回新たに搭載したのは、庫内温度を肉や魚の保存に適したマイナス1℃に保つ「真空氷温」設定。庫内温度をマイナス1℃にすることで、食品を凍結させずに酵素の働きを抑え、肉や魚に含まれるタンパク質の劣化スピードを抑制させる効果があるという。同社によるとを真空氷温設定した真空チルドルームにマグロを3日間保存した場合、食材の劣化は冷蔵室保存に比べ約13%抑えられるという。

 なお、庫内温度の切換えは本体前面の操作パネルで行なう。

庫内の温度をマイナス1℃にすることで肉や魚などの劣化を防ぐ効果があるというマイナス1℃は食品を凍結せずに酵素の働きを抑えるには適温だという真空氷温に設定すると、チルドルーム後ろに設けられた冷気フラップから冷気が食品を包み込むように発生する
食品の劣化を抑える効果があるという解凍後のマグロを冷蔵保存、真空チルド、真空氷温で保存した場合。右の真空氷温で保存したマグロはドリップが出ていない牛肉で実験した場合も同様の結果になった
庫内に設置されている真空チルドルームのモデル庫内を低酸素状態にする真空ポンプ

庫内の霜を冷却に活用して消費電力を削減する「フロストリサイクル冷却」

 省エネ性では、庫内の霜を庫内冷却に活用する「フロストリサイクル冷却」を新たに採用する。冷蔵庫の庫内はコンプレッサーと冷却器で冷やすが、通常、運転していると冷却器には霜が付着する。霜は冷気を通す風路を塞いでしまうほか、冷却器の冷却効率を落としてしまうため、冷却器に付着した霜はヒーターで溶かしていた。

 新シリーズでは、霜に氷と同じ冷却効果があることに着目し、庫内の冷却に霜の冷気を活用する「フロストサイクル冷却」機構を新たに搭載した。フロストサイクル冷却では、冷却器に付着した霜の冷気をファンで風路に送風する。フロスト冷却中は、霜から生じた冷気で庫内を冷却することができるため、コンプレッサーを止めることができ、消費電力の削減になるという。また、冷却器に付着する霜の成長を抑える効果があるほか、霜取りにかかる時間も削減できるという。

従来では冷却器に付着した霜はヒーターで溶かして除去していたフロストリサイクル冷却では、霜の冷却効果に着目した冷却器に付着した霜を庫内の冷却に使うという発想を採用した
冷却器に付着した霜の冷気をファンで風路に送風するフロストリサイクル冷却の仕組み

 なお、霜の冷気は、冷蔵室や野菜室には最適だが、冷凍室には温度が高いため、フロストリサイクル冷却中は、冷気が冷凍室にいかないように風路をフラップでコントロールする。

 そのほか省エネ性能をあげるため、冷却器やコンプレッサーなどの庫内部品を改良したほか、運転を制御するセンサーを搭載した。

 冷却器はより冷却しやすい構造にするため冷却フィンの枚数を増やした。コンプレッサーは新給油構造の採用により、従来より低い回転での運転が可能になったほか、回転の段階数も従来の10段階から11段階になったことで、きめ細かい制御が可能になったという。

 また、冷蔵庫の使用状況や収納状況、周囲の温度などを検知して運転を制御するために、本体には4種類のセンサーを搭載する。センサーは「ドア開閉センサー」「冷蔵庫の周囲温度センサー」「庫内温度センサー」「冷却器温度センサー」の4種類。

冷却フィンの枚数を増やした冷却器コンプレッサーは低回転での運転が可能になったほか、より細かい制御が可能になった運転状況などを検知して運転制御を行なうために本体には4種類のセンサーを搭載する

 これらの省エネ技術により、庫内容量615Lの「R-Z6200」「R-SF62ZM」の年間消費電力量は360kWh、庫内容量565Lの「R-Z5700」「R-SF57ZM」の年間消費電力量は330kWhとなる。なお、「R-Z5700」「R-SF57ZM」の2機種は、同等クラスの冷蔵庫において“省エネNo.1”になるという。

霜の冷気を利用して庫内を高湿に保つ

 霜の冷気を利用して庫内冷却を行なう「フロストリサイクル冷却」では、冷気に霜の水分が含まれるため、庫内の食品の乾燥が抑える効果があるほか、コンプレッサーの運転が低速になることで乾燥を抑制する効果もあるという。同社ではこれを「うるおい冷却」として、食品の乾燥を抑える効果があるとしている。

霜の冷気を利用することで、食品の乾燥を抑える効果があるといううるおい冷却の仕組み右側のうるおい冷却で保存したハムとチーズは端がめくれ上がっていない

全てのクラスで容量アップ

 庫内の幅サイズはそのままに、庫内容量は全てのクラスで向上している。中でも庫内容量最大クラスの「R-Z6200」「R-SF62ZM」の2機種では、庫内容量が従来の602Lから14L大きい616Lに向上した。これにより、冷蔵室の棚の奥行きは従来より約4cm広い約45.5cmになり大皿や鍋なども収納できるとしている。

 そのほか、プレミアムクラスの2機種では、本体の表面素材にクリスタルガラスを採用する。また、前面に設けられた操作部は触れるだけで操作ができる「ガラスタッチ式操作部」を備える。表面に凹凸がないため手入れが楽にできるとする。

 また冷凍室と野菜室は電動で引き出しが開く「電動引き出し」を採用する。

全てのクラスで庫内容量が従来よりアップしているプレミアムクラスの2機種には表面素材にクリスタルガラスを採用する操作ボタンは「ガラスタッチ式操作部」を採用。凹凸がないため、お手入れが楽に行なえるという
常務取締役 家電事業部長 石井吉太郎氏
 会場では、製品発表の冒頭で、常務取締役 家電事業部長 石井吉太郎氏が今年4月に公正取引委員会により摘発された冷蔵庫の不正表示について「大変ご迷惑をおかけしましたことを改めましてお詫び申し上げます」と述べた。

 これは、公正取引委員会が、同社が昨年発売した冷蔵庫「栄養いきいき 真空チルドV」など9機種に関して、カタログやウェブサイトなどに掲載していた表示に、景品表示法に違反する内容があるとして、排除命令を行なったというもの。摘発の内容は製造時におけるCO2排出量が表示と実際の数値が異っていたことと、断熱材の使用においても表示と実際の採用が異なっていたというもの。

 石井氏は、今後の対策として、体制強化、コンプライアンス教育の実施などを挙げたほか、社外に出る文書など全てに目を通し、二重、三重の監視を設けるため社長直属「文書・表示監査室」を新設したことを発表した。また、問題が発生した時期が4月だったことから、今後4月を「表示品質向上月間」として意識改革を進めていくとした。





(阿部 夏子)

2009年9月11日 00:00