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会話機能が進化した最新コミュニケーションロボットに会える「国際ロボット展」

 東京ビッグサイトでは、「2015 国際ロボット展」が12月5日までの日程で開催されている。民生用/工業用を問わず、様々なロボットが一同に会している同展示会。特に、民生向けロボットを中心に取材してきた。

 新たにリリースされたロボットは少ないものの、国内メーカーを中心に、世界のロボットが集結していた。これまでのロボットと言えば、身体能力を追求したモデルが多かったが、今年の特長は、AI(人工知能)技術を投入したモデルが目立ったこと。

AI技術を搭載し、コミュニケーションできるロボットが急増

ソフトバンクのペッパーは、既に様々な企業で活用されている。それら企業向けにソフトウェアがカスタマイズされた、多様なペッパーが紹介されていた

 注目を集めていたのがペッパーをはじめとする「コミュニケーションできる」ロボット。これは、AI技術の進化はもちろん、音声認識技術の進化などが貢献している。

 そして、これまではスマートフォンを中心に活用されていたこうした技術を、ロボットに搭載することで、よりユーザーが語りかけやすくしている。そして、ユーザー=人とロボットのコミュニケーションが増えれば、AIや音声認識の技術も、今後格段に向上していくことが期待できそうだ。

今後はロボットが生活家電を操作する?

 電話機としての側面と、コミュニケーション・ロボットとしての一面を併せ持つ、シャープの「RoBoHoN(ロボホン)」。Wi-Fiにつなげることなく通信が可能なため、家の中でも外出先でも、好きな時に活用できる点が、他の多くのロボットと違う点だ。

シャープ「RoBoHoN」
RoBoHoNの展示コーナーに立ち寄っていた、大阪大学教授の石黒浩教授と、デザインを担当した高橋智隆氏

 会場では、そんなRoBoHoNの企画担当者・景井美帆氏に話を聞くことができた。今後、RoBoHoNをどう育てていきたいのかなどを、家電製品とのつながり方などを中心にうかがった。

 まず、会話ができるロボットは、他にもたくさんあるが、ある程度、役割があった方が、ユーザーが使いやすいと思ったという。そこで、RoBoHoNには携帯電話という役割を持たせたという。

 家電との連携について聞くと……

シャープ 通信システム事業本部 マーケティング企画部 景井美帆氏

 「家電製品が取得した情報、例えば電力の使用状況などをRoBoHoNが話したり、ということは考えられますよね。また、家電のコントロールを、RoBoHoNから行なえるようになるということは、将来的にはあり得る形だと思います。

 さらに、弊社は通信家電の他にも、生活家電やテレビやレコーダーなどまで広く扱っているのが、強みだと思っています。それら製品とのネットワーク化は、近々やっていかなければいけないと思っています」と、家庭内の家電製品とRoBoHoNが連携する可能性を語った。

よりリアルな関係が作れるコミュニケーションロボット

 ペッパーやRoBoHoNの他にも、多くの会話できるロボット=コミュニケーションロボットが展示されていた。

Mjiの「MJI ロボット」は、会話と生活サポート、見守り機能を搭載する
micro SIMスロットにSIMを差し込むことで、簡単にインターネットへの接続や、通話が可能になる
内蔵カメラにより写真や動画の撮影が可能。遠隔地から室内のモニタリングも行なえる

 Mjiの「MJI ロボット」は、来年5月に10万円前後で販売する予定。会話と生活サポート、見守り機能を搭載したモデル。日常会話が可能なコミュニケーション能力を持ち、天気を教えてくれたり、ユーザーに応じた薬の時間を教えてくれたりするという。またmicro SIMカードを入れることで、インターネットに接続し、通話も行なえる。

 同社の説明員によれば、Wi-Fiの環境が身近にない高齢者の方でも、なるべく簡単に使えるように設計したという。また、一番の特長は見守り機能にあり、一定の時間が経過してもユーザーの応答がない場合には、指定したアドレスにメールで通知が行くよう設定できるという。

 「例えば離れて住むおばあちゃんが12時間以上、ロボットと会話していない時に、おばあちゃんとしゃべってないよ、と教えてくれたりします」(同社の説明員)

 可能な会話レベルについては、購入当初は「(iOSなどの)Siriと同程度の、アシスタント機能としての音声操作+日常会話になります。ただし、会話の内容や頻度によって応答に変化ができるようにしていいます。」という。そのため、話せば話すほど会話の内容が変わっていき、例えば最初は「ありがとうございます」と言っていたのが、話しかけていくうちにユーザーに合わせて「ありがとう」や「サンキュー」などと変わっていくようにしているという。

ユニロボットの「unibo(ユニボ)」

 ユニロボットの「unibo」は、来年7月に10万円以下で販売することを目指している。同社によれば、家族間の交流の促進や生活を支援するためのソーシャルロボットという位置付け。

 展示会では実際に聞くことができなかったが、会話機能に関しては、流暢で自然な会話ができるとする。また、人の声に限りなく近い肉声感や明瞭感が特徴だという。

 そのほか、複数ユーザーの顔や名前を覚え、それぞれの趣味や嗜好を学習。クラウド上のデータとアクセスしながら、使うほどに成長していくという。

 ユニークだと感じたのは、頭や手、足などに触れると、反応する点。これは各部にタッチセンサーを内蔵しているためで、ボディタッチによるコミュニケーションを楽しめる。

富士ソフト「PALRO(パルロ)」

富士ソフトがソフトウェアを開発した「PALRO(パルロ)」は、100人以上の顔と名前を覚えられるほか、体操やダンスが行なえる身体能力の高さも魅力。クイズやゲームも一緒にでき、現在は各地の高齢者福祉施設に導入されている

うなずきかぼちゃん

 最先端のソフトウェアやハードウェアをまとったモデルが多い中、異色だったのが「うなずきかぼちゃん」。あえてハイテク技術を搭載せず、現実的に購入できる価格“2万円”を先に設定して開発したという。

 搭載されている機能はシンプルで、頭を撫でたり、手を上げ下げしたり、だっこして揺らしてあげたりすると話を始める。また、メッセージを録音して、再生することもできるという。

 「うなずきかぼちゃん」は、ピップエレキバンでお馴染みのピップの介護事業を担うグループ子会社が開発したモデル。説明員によれば「介護スタッフと話をするなかで、利用者には日々のケアの他に、メンタル面でのサポートが必要だということが分かりました。」(説明員)

 そのメンタル面でのサポートに役立つロボットを、ということで生まれた製品なのだという。主に高齢者を対象としたモデル。展示されている「うなずきかぼちゃん」は、様々な服を着ているが、これらの服は、主にユーザーに手作りしてもらいたいという。

 「販売パッケージには、かぼちゃんの体型に合わせた2つの型紙が入っています。それを使って、ユーザーの方に服を作ってもらいたいんです。今までお世話される側だったユーザーが、かぼちゃんのお世話をする、というイメージです。」(説明員)

身体能力が優れた小型ロボットも多数展示

 ロボットと言えば、人類と同じように動き回れる身体能力の優れたロボットも魅力だ。そんな踊ったり転んだり立ち上がったりを自在にこなせる小型ロボットも多数見られた。

ロボットゆうえんちが開発したロボットアイドル「プリメイドAI」。

 展示会の初日にリリースされた、ロボットゆうえんちが開発したロボットアイドル「プリメイドAI」。2016年1月に、148,000円(税抜)で販売予定。25軸のサーボモーターや2基のジャイロセンサーを搭載し、“キレッキレ”のダンスが踊れる。サイズは130×465mm(幅×高さ)で、重さは1.9kg。一度のバッテリーで約15分動作できる。

 スマートフォンで音楽とダンスプログラムをダウンロードし、Wi-Fi通信で本体に転送すれば良いだけ。発売以降も、ダウンロードできる楽曲やダンスパターンのラインナップを増やしていく予定だという。

近藤科学の二足歩行ロボット組み立てキット「KHRシリーズ」
中国メーカー「UBTECH」のロボット。日本での販売代理店を探しているため、国内の正式販売は未定
ソフトバンクのグループ企業であるフランスのアルデバランロボティクス社製の「NAO」
24の関節を持ち、繊細な指の動きを再現した「Shadow Hand」。動きが滑らかなだけでなく、各指先には高精度なセンサーを搭載し、ソッと撫でるだけで反応する。危険物を遠隔から扱うなどの用途があるという

施設で活躍するサポートロボット

 今回の展示会ではコンシューマ向けモデルが多く出展されているが、それ以上に業務用モデルも多かった。中でも既に実証実験中や実用されているモデルを紹介しよう。

病院内での薬剤搬送などに使われているパナソニックの「HOSPi」(写真右)と、会話や案内機能を追加するなどが検討されている開発中の「HOSPi-Rimo」

 パナソニックの「HOSPi(ホスピー)」は、自律搬送ロボット。病院内で薬や食事などを運ぶために使われているという。ディスプレイで搬送先を指定すれば、人や障害物がいれば停止または回避しながら目的地まで移動してくれる。

 本体サイズは630×725×1386mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約185kg。搬送可能な重量は20kg。かなり大きいという印象だが、同社スタッフによれば、重いことは悪いことばかりではないという。

 「薬を運ぶため、(ロボット自体が)誰かに盗まれてはいけませんが、この大きさと重さなら心配ありません。また、倒れない。これは、人が多く行き来する病院内での安全を確保するために重要です。」

 その「HPSPi」の機動性を応用し、案内や見守り機能などのアプリケーションを追加した開発中のモデルが「HOSPi-Rimo」。音声/顔認識などを搭載し、よりインターラクティブな応答ができる。どういった役割が担えるかを、検証しているモデル。
例えば、ホテルのコンシェルジュだったり、ショッピングセンターなどの案内係として使えるのでないかと。

トヨタが開発中の生活支援ロボット(HSR)

 トヨタが開発中の生活支援ロボット(HSR)は、研究用機材の貸し出しを公募中のモデル。1基のアームを装備し、床にあるものを拾ったり、棚など高い所にあるものを取ったりはもちろん、例えば冷蔵庫のドアを開いて食べ物をユーザーに届けたり、スイッチをひねったりできるという。

 本体サイズは370×830〜1,330mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは32kg。重さ1.2kg、幅130mm以下の物を運べる。

 同社の説明員の話によれば、「家庭内での作業を前提に開発しているのが特徴です。そのため、なるべくボディを小さくしつつ、作業域をできるだけ広くできるか、また安全に使える点、簡単に操作できる点を重視しています」という。

 特に安全面では、ロボット自体が大きな力を出さないということが重要。例えばアームで何かを持ちあげている時に、人がぶつかったら、それ以上アームが上昇しないようにするなどの工夫が施されているという(自重補償機構)。

1.2kg以下の物を掴んで運べるアーム。先端にはアームの延長線上を見るためのカメラを内蔵
マニュアル操作時に映像を送る広角カメラ、距離を計るための3Dカメラのほか、将来的に物体認識などに使えるようステレオカメラも内蔵
台車部のレーザーレンジファインダーで部屋の形状などを計測する

 以上、紹介したロボットの他にも、大学などの研究機関が開発中のロボット、災害時に活躍が期待される大型モデル、パワードスーツなど、様々な最先端ロボットが展示されている。会期は明日5日までなので、足を運んでみてはいかがだろうか。

6軸方向の力などを感知する光学式力覚センサを搭載した、案内誘導ロボット
業務用の掃除ロボット「F.ROBO CLEAN」
立命館大学など、多くの大学の研究室も、研究成果を展示している
ヤンマーは、最新トラクターに自律走行機能を搭載させた実証機を展示
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでは、災害対応ヒューマノイドロボットなどが見られる
災害対応ヒューマノイドロボット「JAXON」
パワーアシストスーツを装着したところ
重い荷物も軽い感覚で持ち上げられる
東京理科大学発のベンチャー企業「イノフィス」は、様々なパワードスーツを展示し、実際に試着も可能だ
三菱重工業の40kg相当の重量を負担してくれるパワーアシストスーツ
多くの工業用ロボットも展示されている

河原塚 英信