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質と快適性がより追求されたLEDの明かり~ライティング・フェア 2015
(2015/3/13 12:18)
「Junp to the next」をメインテーマに、3月3日~6日まで東京ビッグサイトで開催された「ライティング・フェア2015(第12回国際照明総合点)」。国内外の照明メーカーが一同に会し、最先端の技術、およびデザインが幅広く紹介された。
今年の出店メーカー総数は222社で、展示スペース数は748にも及んだ。その中から住宅用の明かりとして印象に残ったものをいくつかを紹介しよう。
パナソニック、明かりの快適領域が簡単に再現できるシステム「シンクロ調色LED照明」
パナソニックでは、高演色のベースライトやダウンライトなど、主にオフィスやショップ向けの物が中心だった。だが、その中にあって思わず足が止まったのは、「シンクロ調色LED照明」だった。これは、暮らしにはその時々の「心地良い明るさ」と、「心地良い光色」があることに着目した商品だ。
ユニークなのは、明るさを変えるとそれに合わせて心地良い光色に変化する点だ。人が心地良いと感じる明かりのゾーンを科学して、調光器で快適領域だけを簡単に再現できるシステムだという。構成はシンプルで、灯具と調光器がワンセットになったものだ。
操作は簡単で調光器を回すだけ。最も絞った時は、明かりは暗く(0.5%)、白熱電球よりも赤っぽい光色(2,200K)。調光器を右に回すと明るさが無段階でアップして、正午の位置では明るさは90%、電球色(2,700K)になる。さらに調光器を右に回すと、明るさは90~100%の穏やかな範囲で変化するのに対し、光色は温白色~昼白色(5,000K)、さらに昼光色(6,200K)へとガラリと変わる。
つまり、日中の活動時間は昼光色~昼白色で外光に合わせ、賑やかな団欒なら暖かみのある明るい温白色、ゆったりとしたくつろぎは電球色、就寝前は暗く赤っぽい光で眠りに供える…など、暮らしに合わせた心地良い明かりの演出が自在。昼光色は勉強や細かな文字を読むのにも活用できる。
展示していた「ダウンライト」以外のラインアップは、「スポットライト」、「ペンダント」、「ブラケット」、さらに部屋の構造に合わせて埋め込み設置ができる「建築化照明」まで揃う。それぞれを組み合わせれば、多目的にも使える部屋全体の明かりが演出できる。
実はこの商品、2013年には登場していたのだが、今回のものは「既存の2線式」の配線が利用できるのが大きく変わった点だ。何と言っても施工がラクなので、リフォームにも簡単に対応できる。文字が見やすい6,200Kの昼光色も再現できるようになった。
他に、この夏に発売を予定する、平均演色評価数が95Raという高演色を謳った「美ルック(ミルック)」シリーズのLEDペンダントも展示されていた。食材や肌、植物やインテリアの木目の色味まで、自然光のようにキレイに再現するという。
東芝、LEDクリヤー電球と、ゼロlxまで調光できるLEDダウンライト
1890年(明治23年)に日本初の白熱電球、2009年には業界初の一般電球形LEDの電球を送り出した東芝は、白熱電球と同じガラスグローブを使用したLEDクリヤー電球のプロトタイプを展示していた。
東芝のクリヤータイプも! という声に応えたものだそうで、LED光源はソケット部に収め、透明な導光柱でクリヤー電球の優しいきらめき感を再現したものだという。むき出しのLEDが目を直撃せず、基板の影もできず、口金付近まで光がたっぷり広がる。どこか懐かしささえも感じられる、きらめく光が印象的だった。
発売は未定という事だが、手持ちのガラス製の器具などの印象をそのまま生かせるLED電球として、発売を待ち遠しく感じた。
もう1つ気になったのは住宅用ではないのだが、ゼロlxまで調光できるダウンライトだった。これは本来「0%まで調光できる」とういう条件が要求される、病院の内視鏡検査室、X線透視室、眼科暗室などの「生体検査室」向けに開発されたものだ。
ほんの数年前まで、LEDは微妙な調光は望めなかったのに、今ではこれほどの微細な明るさまで調節可能になったのは進化の証。今やLEDは、特殊性が要求される分野の照明として浸透している。このような技術が今後どのような形で応用されるのか、大いに興味をそそられた。
アイリスオーヤマ、“明るいのに眩しくない”LED電球
膨大な数のLEDがガンガンに光り輝く広い会場を歩いていて、「あれ!? これって白熱電球?」と勘違いするほど、ほっとするような暖かみと柔らかな光につつまれたブースに思わず足を引き寄せられた。そこはアイリスオーヤマの新しいLED電球を使った器具が並ぶ一角だった。
そこに並ぶ器具は、間もなくアイリスオーヤマから発売されるペンダントやシャンデリアのブース。透明ガラス、フロストガラス、乳白ガラス、陶器、木、アクリル、真鍮、ホーロー調など、素材やディティールにこだわりを見せ、どれも雰囲気が良い。
聞けば、それらに取り付けてある電球は全て、6月に発売予定の「E17口金 小型電球タイプ LDA5L-G-E17-V1」だという。全光束は540lmで、40W形相当の明るさなのでしっかり明るい。だが、電球が隠れている器具ならいざ知らず、電球の先がはみ出しているものもあれば、透けているものもあるのに、なぜか眩しくない。
「明るいのに眩しくない」。これこそが、LDA5L-G-E17-V1の大きな特徴だ。
LDA5L-G-E17-V1は、電球全体を「均等」に光らせるのではなく、照明の真下は効率良く明るく照らし、一方で電球が直接目に触れても眩しさを感じにくいように設計された、今までにない配光性能を備えたものだった。
「電球形LED電球」は、明るさ、配光性、演色性などが出揃った感があり、今回のフェアでは特に目新しいLED電球は見当たらなかった。それゆえ新鮮で、まだこんな切り口もあったのかと、改めてLED電球の可能性に驚かされた。
ルーメンセンター・イタリア、イタリアの照明器具ブランドとLEDの融合
最後に目に止まったのは、イタリアはミラノに本社を構えるメイド・イン・イタリアの照明器具メーカー「ルーメンセンター・イタリア」の照明器具。
1つは、「クアドロ VII リエディション」という名前がついた1929年にジャック・アドゥネによってデザインされた、フランスのモダニズムを継承するエレガントなテーブルライトだ。まさかと思ったが、光源にLEDを使っているという。
乳白色のアクリル樹脂を外してもらったが、小指の先程のCOB型(チップオンボード式)LEDが表れた。もちろん、調光にもしっかり対応している。80年以上も継続する歴史的とも言える照明器具が最先端のLEDをまとい、現代にマッチして再版されたものだった。
もう1つは「ヘリオス」と言うテーブルライトだ。とにかく「やさしい」あかりが特徴的。単に光色がキレイというレベルではなく、人間の概日リズムに極力影響を及ぼさないLED光源を使用しているそうだ。
そのLEDは青色のピーク周波数を除去し、限りなく太陽光に近いスペック、演色性を再現できるまで、東芝マテリアル社と徹底的に共同開発したものだと言う。会場で自ら説明をしていた、LCI JapanのCEO Augusto Grilllo氏は「LEDの中でも唯一、納得の行く光の質」と胸を張った。
写真では伝わりにくいが、本当にやさしく、自然な色合いの明かりで、いつまでも見つめていたくなる美しい光を放っていた。
今年のライティング・フェアは、各社「快適性」や「明かりの美しさ」といった、「光の質」をより一層意識した製品が多数展示されていた。その傾向はオフィスやショップ向けの製品にもそのまま当てはまる。
数年前まで、LEDは白熱電球や蛍光灯の代替製品という印象だった。ところが、いまやそれらを凌ぎ、LEDだからこそできる製品が会場をこれでもかと埋め尽くしていた。LEDの進化は想像を超える勢いで、まだまだ続いていくだろう。