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北アフリカの家電市場、日本企業にも商機あり

 JEMA(日本電機工業会)は、北アフリカ地域における生活家電市場の調査結果を発表した。北アフリカ地域の白物家電市場は拡大が見込まれており、日系メーカーが今後参入する余地は十分にある、と結論付けた。

 調査の対象となったのは、エジプト、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、リビアの5カ国。合計人口は約1.7億人で、アフリカ全体の約16%だが、GDP(国内総生産)の占める割合はアフリカ全体の約34%と高く、順調に経済成長を続けているエリアだ。

 堅調な経済成長に伴い、白物家電の市場拡大も見込まれている。

冷蔵庫の普及率は、7割~9割以上

 国ごとの白物家電の市場規模は、エジプト、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、リビアの順で大きい。

「白物家電3製品の年間概算市場規模」(単位:千台)。エジプト、アルジェリア、モロッコの順で規模が大きい

 レポートでは、各国のエアコン、冷蔵庫、洗濯機の普及率の高さについても言及している。エジプトではエアコン35%、冷蔵庫と洗濯機が各95%。エアコンは、富裕層は所有し、中間層は持っていないという。

 アルジェリアの普及率はエアコン65%、冷蔵庫95%、洗濯機30%。価格だけでなく、品質やアフターサービスも重視する傾向にあるという。JEMAでは、ほかのアフリカ諸国に比べ、メイド文化が定着していないことが、白物家電の普及率に影響していると指摘している。

 モロッコの普及率はエアコン6%、冷蔵庫70%、洗濯機28%。都会で働く女性が増え、洗濯機等のニーズが高まっており、都市部だけでなく地方にも普及し始めているという。

 欧州式の生活を営んでいるチュニジアの普及率は、エアコンと冷蔵庫が85%前後、洗濯機50%。富裕層や中間所得層の多いリビアの普及率はエアコン80%、冷蔵庫99%、洗濯機90%、といずれも高い。

 なお、各国の流通構造は、伝統的な零細小売店から、家電専門店やショッピングモールへと移る過渡期にある。

白物家電の流通構造は、伝統的流通から現代的流通への過渡期にある。各国とも代理店経由が約7割で、小売店への直接販売が約3割。家電専門店やスーパーでの販売は6割以上で、伝統的小売店での販売が3割強という

メーカー別シェアは、韓国企業が一歩リード

 メーカー別シェアの現状は、地域全体では韓国メーカーのLG、Samsungが大きなシェアを占める。

 国別では、エジプトでは現地資本と提携した日系メーカーも健闘しているほか、アルジェリアでは、韓国メーカーのほかにWhirlpool(米国)やCondor(地場メーカー)、Electrolux(スウェーデン)、BSH(ドイツ)が強い。

 モロッコでは、Whirlpoolが強いが、地場メーカーのManar、Union Airなども一定のシェアがあり、チュニジアでは、韓国系メーカーに続いてHaier(中国)やArcelik(読み:アルチェリッキ、トルコ)がシェアを占めている。リビアでは、日系メーカーやArcelikも健闘しているという。

“日系メーカーが参入する余地は十分にある”

 JEMAによると、北アフリカ市場は、経済成長や流通構造の変化などの過渡期にあり、市場のポテンシャルは高いが、シェアが流動的なため、日系メーカーが参入する余地は充分にあるという。

 JEMAでは、新興市場への戦略として、2つのパターンを挙げる。1つ目は、LGのように最初にシェアを獲得するために経営資源を大量投下する方式。2つ目はBSHのようにターゲットを富裕層に絞り、利益率を重視する方式。日系企業は後者が多いという。

 また、進出先の消費者市場の成熟度によって、アプローチを変えることも重要という。

 例えば、アルジェリアやリビアは、利益率重視の「相対的成熟市場」として、製品価格の安さだけでなく、品質やサービスを重視する傾向がある。このため、ブランドの認知度の向上や販売体制の強化、現地の人材育成などのアプローチが有効という。

 一方でエジプトやモロッコは、消費者が価格を重視する「成長市場」として、まず現地の販売体制を強化するために販社の設立や人材育成、都市部での大々的な売り場営業や宣伝活動などが考えられるという。

「相対的成熟市場」と「成長市場」の消費者ニーズおよび販売チャネル戦略をまとめている

小林 樹