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パイオニア、価格を5分の1以下に抑えた有機EL照明

「光がキレイをつれてくる」――美容用途も

 映像・情報・通信機器の総合展示会「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン) 2013」が、千葉県千葉市の幕張メッセで開幕した。開催日程は10月1日~10月5日の5日間。一般公開日は10月2日~4日で、入場料は1,000円だが、事前登録を行なうことで無料となる。最終日の土曜日は無料。

価格を従来の5分の1以下に抑える有機EL

 パイオニアのブースでは、入口に、有機EL照明パネルが様々な色合いに変化する光の空間を設けるなど、有機ELを全面に押し出していた。

パイオニアのブース入口には有機EL照明による光のインスタレーションを展示
ブースでは、有機ELを前面に押し出していた
コンパニオンは首から有機ELパネルをぶら下げていた

 有機EL照明は、薄型、軽量で面発光し、形状の自由度が高いなどの特徴を持つ次世代照明。パイオニアでは2011年7月より、他社に先駆けて有機EL照明モジュールの量産化に取り組んできた。2013年6月には三菱化学と合弁会社を設立し、店舗照明をはじめとした様々な用途へ向けて有機ELパネルやモジュールを販売している。

左が有機EL、右がLED。会場では有機ELとLEDの光の違いを確認できた。有機ELのほうが、自然な色合いで、影も気にならない

 会場には、従来の有機ELから発光層の工程を変更することで、コストを大幅に抑えた「発光層塗布型 有機EL照明モジュール」を展示していた。

会場に展示されていた、「発光層塗布型 有機EL照明モジュール」
光色は白単色のみとなる
パネルは薄型

 有機ELは、基盤の上に電極や発光層が積み重ねられて作られる。この発光層の成膜工程において、従来の有機ELは、原料を真空装置の中で加熱しガス化させ、基盤の上に堆積させる「蒸着成膜プロセス」を採用してきた。ただし、原料の利用効率が悪く、技術とコストの面で課題があったという。

 新たな発光層塗布型の有機EL照明モジュールは、溶液に原料を溶かして塗布することで成膜する。原料の利用効率が良く、真空である必要もないため、製造コストを抑えられるほか、将来的には基盤を大型化する足がかりになるという。なお、発光層の成膜にこの塗布プロセスを採用した有機ELモジュールは、世界初となる。

 光色は白単色で、既にサンプルを出荷している。具体的な価格は、会場に展示されていたフルカラータイプのパネルが1枚5万円程度とのことだったが、新製品の市場想定価格はその5分の1から10分の1程度に抑える見込みという。今後、家庭をはじめとした一般照明や、オフィスやホテルの上質な照明として拡大を目指す。

「光がキレイをつれてくる」――化粧台に合う有機EL照明を資生堂と開発

 同じブースには、調光、フルカラー調色型の有機EL照明を活用した「メーク用有機EL照明」を参考出品していた。メーク用有機EL照明は、化粧をする際に理想的な自然光に近いあかりを再現して、見たままの色を確認できる点が特徴。「部屋で化粧をしてから外に出たら化粧が濃すぎた」「ファンデーションの色が肌と合っていなかった」など、照明が原因となっているトラブルを防ぐという。

「自然光」「ブルー」「ラウンジ」「ディープブルー」「ピンク」の5つのボタンを押すと、それぞれ異なる明るさ、光色で点灯する

 展示されていたメーク用有機EL照明には、5つのボタンが用意され、それぞれの設定に合わせた明るさと光色で点灯する。ボタンは左から、正しい色がわかる「自然光」、オフィスの蛍光灯に近いあかり「ブルー」、レストランやホテルのロビーなどのおもてなし空間のあかり「ラウンジ」が用意されている。利用者は、出かける先の照明を想定して、それに合わせてメイクすることで、メイクをちょうど良い濃さや色合いに調節できるという。

 このほか、パイオニアの提案するカラーセラピー効果を謳う「ディープブルー」と「ピンク」の2色のボタンも試験的に用意されていた。カラーセラピーとは、光によるリラックス効果をもたらす療法で、欧州では医療機関でも導入されているという。

パイオニアの提案する「メーク用有機EL照明」。こちらは、「自然光」を再現した状態
オフィスの蛍光灯に近い「ブルー」
レストランやホテルのロビーなどのおもてなし空間のあかり「ラウンジ」
カラーセラピー効果を謳う「ディープブルー」
グラデーションの美しい「ピンク」

 メーク用有機EL照明は、実際に10月から「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」に試験導入される。また、「パイオニア プラザ銀座」でも、実際にメイクをしながら光による見え方の違いを実感できるブースを設けるという。

小林 樹