パナソニック、両面受光の太陽電池で“光合成”を演出

~ミラノサローネの空間展示で活用
ミラノサローネで展示される空間芸術「Photosynthesis -光合成-」における、両面受光タイプの太陽電池の一部分

 パナソニックは、4月にイタリア・ミラノで開催される家具・インテリアの国際展示会「ミラノサローネ」において実施する空間展示「Photosynthesis -光合成-」の事前プレゼンテーションを開催。展示内容の一部となる、両面受光タイプの太陽電池ユニットを公開した。

 今回の展示は、「光合成」をテーマに、太陽電池、蓄電池、LED照明といったパナソニックの“創エネ/蓄エネ/省エネ”製品を組み合わせ、「循環可能な新しいエネルギーの時代」を表現することを狙ったインスタレーション(空間芸術)。会場はミラノ大学内の中庭「インテルニ レガシー」で、中庭の中央部に太陽電池と蓄電池を配し、その電気を用いて、キャンパスの廊下のLED照明を照らすという構成になる。

 展示にて採用される太陽光パネルは、一般的な片面受光タイプではなく、表裏両面で受光し、発電する“両面受光”タイプを使用する。パネルは地面や屋根に敷き詰めるのではなく、ポリカーボネートで立体的に固定され、かつそれぞれが互い違いに、異なる方向を向くように設置されている。

会場のイメージ図(昼)。中庭に設置された太陽電池で発電、蓄電池に電気を溜める。電気は廊下の照明に使われる夜は溜めた電気でライトアップする今回公開されたのは、太陽電池の一部分。4枚で1ユニットだが、各パネルはそれぞれ違う方向を向いている
太陽電池は両面受光タイプのHIT太陽電池。出力などはミラノサローネ開催中に発表されるという。写真は“表”の黒い面“裏面”はやや白っぽくなる。この面でも発電するという中には地面を向いているパネルもあった
「Photosynthesis -光合成-」のデザインを務めた建築家の平田晃久氏

 デザインを務めた建築家の平田晃久氏は、このようなデザインを採用した理由について、「平面ではなく、木のような立体的な構成を試してみたい」という考えがあったという。

 「太陽光パネルは屋根の上に敷き詰められるイメージが強い。確かに、真南に向けてパネルを並べるのは効率が良いが、自然界において同じようなことしているのは、苔や芝といった2次元に広がっているもの。ほかの植物は、立体的に葉を生やして光合成をしており、そうした形でうまく生き永らえている」

 また、パネルを立体化し、異なる方向に向けるメリットとしては、「あらゆる方向に向けることで、南中時に空が曇っていたとしても、そのほかの時間帯の時に晴れていれば、発電効率は高くなる。言ってみれば“多角経営的”で、発電できないリスクを抑えるために、いろいろな方向を向かせている」と説明した。

 また、このデザインを実現するためには、太陽光パネルが「両面受光タイプ」である必要があったという。

 「両面受光のパネルは、通常は東西方向や垂直面に使われることが多く、拡散光をうまく入力することで効率が高められる。もし、パネルを面的にならべて配置すると、パネルの下がすべて影になってしまうが、立体的に配置すれば、下になんとなく光が入り、スペースもできる。木のように分散して太陽光パネルを設置することは、両面パネルだからこそ可能になった」

 この太陽電池で発電した電気は、廊下のLED照明のほか、回廊部分の装飾照明にも使われる。装飾照明としては、風船内に搭載したLEDがカラフルに変化する「バルーン照明」や、壁一面に敷き詰められた有機EL照明、“雲”をイメージし、天井から多数吊るされたクリアタイプのLED電球が用意される。

キャンパスの建物内には、さまざまな照明が用意される。写真は風船の中にLEDを搭載した「バルーン照明」壁一面にパネルを敷き詰めた有機EL照明もクリアタイプのLED電球は、天井から多数吊るすことで“雲”を表現
会場の見取り図。蓄電池は中央部に配置される4枚ワンセットの太陽電池ユニットを敷き詰める

 平田氏は展示について「木の葉が太陽の光を受けてエネルギーを作り、それを蓄えたり使うことは、ひとつのネットワークになっている。光合成は、小学校で誰でもが習うような誰でも知っていることだが、意味に富んでいる。(今回の展示で)1本の木で起こっているようなことを再現したいと思っている」と話した。

 なお、今回の展示で使用されている両面受光の太陽電池は、変換効率の高い「HIT太陽電池」となる。出力など詳細なスペックは、ミラノサローネ開催時に発表されるという。

会場の見取り図。蓄電池は中央部に配置される会場のミニチュアも公開された4枚ワンセットの太陽電池ユニットを多数設置している。「非常に単純なものの反復だが、なにか全体としては有機的な形ができることをイメージしている。単に反復していくと、自然とその形になっているという、自然界の生態ができるのと似たような作り方をしたいと思った」(平田氏)
 

 






(正藤 慶一)

2012年3月2日 17:52