リチウムイオン電池市場は5年間で約2.7倍に拡大見込み、富士経済調べ
富士経済は、一次電池、二次電池の世界市場について調査した。それによると、2016年のリチウムイオン二次電池市場は、2010年比で約2.7倍となる2兆4,028億円の市場に成長するという。
同調査では、乾電池などの一次電池と、バッテリーなどの二次電池について、世界の生産地域出荷ベースを品目ごとにまとめている。電池市場はリーマンショック以降、落ち込んでいたが、2010年から需要が回復し、2011年には前年比3.1%増の6兆54億円を見込んでいるという。
一次電池、二次電池の世界市場 |
一次電池については、単価の下落や環境負荷対策から二次電池へ移行している傾向もあり、横ばいあるいは微減すると予想する。2011年は、日本国内の東日本大震災や、海外でのハリケーンや地震発生により一次電池の需要が拡大したが、2012年にはその反動がくるとしている。
市場の内訳は、マンガン乾電池とアルカリマンガン乾電池(アルカリ乾電池)が90%を占める。マンガン乾電池は安価で日用品などに使用されているため、市場規模は大きいものの、近年は長寿命・大電流への需要が高く、アルカリ乾電池にシフトしているという。2011年の震災やハリケーンの特需を受けたのもアルカリ乾電池だという。
そのほか、補聴器を主な用途とする空気亜鉛電池の市場も堅調に推移している。ヨーロッパでは、補聴器を無償で支給している国もあり、交換需要も大きいという。
一方、二次電池は、一次電池からのシフト、モバイル機器やコードレス機器の増大などを背景に、今後も拡大推移が予想されている。従来より単価は下落しているものの、応用製品の生産が増えていることから、数量の大幅増大がそれを上回っているという。
内訳は、鉛蓄電池が市場の73%を占める(2010年実績)。鉛蓄電池は日本国内においては頭打ちの状況だが、アジアの新興国を中心に順調に拡大している。
富士経済が特に注目しているのは、市場の20%を占めるリチウムイオン二次電池市場で、2011年は1兆801億円の売り上げを見込んでいる。
注目市場として挙げるリチウムイオン二次電池市場。2016年には2010年比268%の2兆4,028億円まで市場が拡大すると予測している |
リチウムイオン二次電池は、小型の民生向けから産業用機器、電力貯蔵向けなど様々な対象があり、用途別にシリンダ型、角型、ラミネート型、車載専用、産業用・電力貯蔵用がある。高性能要求の強まりや環境性、低価格化などにより、ニカド電池やニッケル水素電池からのシフトが続いており、携帯電話やポータブルAV機器、ノートブックPCなどの生産増加も市場拡大を後押しする。さらに、今後は車載向けタイプの本格化と、産業用の電力貯蔵向けの立ち上がりが期待されるため、2016年には構成比37%に上昇することが予測されている。
調査では、中国、インド、東南アジアのコピー製品や、中堅メーカーの比較的性能の劣る携帯電話やノートパソコンなどに搭載されている「リチウムイオン二次電池B級品」についてもまとめている。それによると、近年大手ブランドがコピー製品対策を強化していることや、中国当局による取り締まりの強化、中国の所得水準向上による本物志向の高まりにより、リチウムイオン二次電池B級品市場は低迷している。2011年の市場は前年比18.3%減の8.5億セルを見込んでいる。
(阿部 夏子)
2012年2月27日 18:40