次世代エネルギーパークへ進化するハウステンボス

~電力需要の3割を自社内で発電
長崎県佐世保市のハウステンボス

 長崎県佐世保市のハウステンボスは、従来から設置している太陽光発電システムおよび天然ガスコジェネレーションシステムに加えて、将来に向けて蓄電池設備の導入を検討していることを明らかにした。ハウステンボスは、ヨーロッパの街並みをイメージしたテーマパークで、園内にはアトラクションやホテル、様々なショップなどが立ち並ぶ。

 ハウステンボスの澤田秀雄社長は、「現在、ハウステンボス内には約7,000枚の太陽光パネルを設置しており、年間100万kWhの電力を作ることが可能できる。これは、一般家庭が消費する電力量の約250世帯分に相当し、ハウステンボスの施設全体の年間電力使用量の2~3%を賄う規模となっている。これに天然ガスコジェネレーションシステムを加えると、約30%の電力を賄える計算になる。これらの自家発電施設で発電したものを蓄電することで、より効率的な電力活用が可能になる」と語る。

ハウステンボスの澤田秀雄社長

 具体的な時期や規模などについては言及しなかったが、「将来的には、すべての電力を自家発電で賄うといったことも考えていきたい」と意欲をみせた。

 ハウステンボスは、2010年4月から旅行大手のエイチ・アイ・エスの傘下のもとで再建を図っており、2011年9月期中間期決算では黒字化するなど、早くも成果が出ている。

 再建への取り組みのなかでは、夜遅くまで楽しむことができるアトラクションの提案を行なっており、ハウステンボス内の一般店舗は午後10時までの営業としたり、夜間のイルミネーションショーや、屋外でのミュージカルステージも開催している。こうした夜間での電力利用に対して、蓄電池を活用することで、より効率的な電力活用ができるという。

 澤田社長は、「ハウステンボスを1つの街として捉え、そこでどんな形で自然エネルギーを活用することができるのかといった実験も可能になる。また、ハウステンボスは風力での発電にも適している。スマートシティの実験場としてもハウステンボスを活用することも可能だろう」と語る。

 ハウステンボス内には、アトラクション施設や店舗、飲食店、ホテルなどのほか、バスなどの交通、別荘、キャンプ場などがあり、街としての構成要素が揃っているともいえる。

ハウステンボス内には約7,000枚の太陽光パネルを設置している

 また、約7,000枚の太陽光パネルはエネルギープラント部分だけでなく、駐車場や管理棟屋根など10カ所に分散して設置されており、すでにできあがった街のなかに設置する場合には、どうしても複数の場所に分散することになるという現実に則した実証実験も可能になる。

 中期経営目標として「観光ビジネス都市」へ発展を掲げるなかで、エネルギーに対する取り組みも重要な要素になるといえよう。

 ハウステンボスにおける現在の次世代エネルギーへの取り組みは、ハウステンボス内に設置されている長崎次世代エネルギーパークで見ることができる。

長崎次世代エネルギーパーク

 同パークは、太陽光発電をはじめとする次世代エネルギーを体験できる地域拠点として、経済産業省 資源エネルギー庁が整備を促進している施設。全国で認定された6つの次世代エネルギーパークの1つにもなっている。また、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の採択による「太陽光発電新技術等フィールドテスト事業」としての共同事業であり、長崎県内の企業や大学、行政と共同での太陽光パネルを搭載したソーラーシップの実証実験も行なっている。

 長崎次世代エネルギーパークでは、ハウステンボス場内に設置された約7,000枚の太陽光パネルの発電量をリアルタイムに表示したり、パネルや映像を使って、次世代エネルギーへの取り組みを紹介しているのが特徴だ。

次世代エネルギーに関する様々な展示が行なわれているハウステンボス内に設置されている三菱重工が開発した微結晶タンデム型太陽電池パネル太陽光パネルの種別も紹介している

 ハウステンボス内に設置されている太陽光パネルは、三菱重工が開発した微結晶タンデム型太陽電池パネルを使用。設置面積は1万1,000平方m、900kWの発電が可能になっており、年間発電量は100万kW。年間で約400tのCO2排出量を削減できるという。これは東京ドーム40個分の森林の年間吸収量に相当する。

 また、コジェネレーションシステムは、1992年の創業時から設置しており、給電電力量は8,088Mwh(2006年実績)。ハウステンボの電力使用量の21.1%を賄えるほか、非常時や停電時には非常用発電設備として活用できる。

 このシステムは、ガスタービン発電設備と廃熱ボイラーの組み合わせており、天然ガスを主燃料として発電すると同時に、その廃熱を利用して高圧蒸気をつくり、地域熱供給会社に熱源として供給。ガスタービン発電設備は電力会社と常時系統連系を行ない、受電電力の平準化を図っているという。

 そのほか、同パークには、懐中電灯を使ってソーラーシップの模型を動かしたり、自転車のペダルを漕いで発電したエネルギーによって人形を動かすといった、子供たちを対象にした体験型の資料展示も行なっているほか、来場者を対象にしたツアーも用意されており、専門スタッフによる説明に加え、実際に設置されている太陽光発電パネルの見学なども可能になっている。





(大河原 克行)

2011年7月29日 14:05