ダイキン、バイオフィルターが新型/鳥インフルエンザウイルスの抑制に効果と発表
ダイキン工業は、空気清浄機・エアコンのフィルター用に発売しているフィルター「バイオ抗体フィルター」に含まれる成分「バイオ抗体」が、新型インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスを不活性化する効果があると発表した。空気清浄機用のバイオ抗体フィルター「KAF979B4」の希望小売価格は1枚入りで2,100円。発売中。
「バイオ抗体フィルター」は、同社の空気清浄機、およびエアコン向けに、本体とは別売りで発売されるフィルター。フィルター内には、フィルターがキャッチしたウイルスを不活化する、鶏卵由来の成分「バイオ抗体」が含まれており、ウイルスを素早く除去できるという。これまでにも、インフルエンザウイルスA型(H1N1、H3N2)とB型にも効果があることが実証されていた。
今回は、新型インフルエンザウイルス A型(H1N1)と鳥インフルエンザウイルス A型(H5N1)を不活化することを、ベトナム国立衛生疫学研究所など計5機関による共同研究で実証したとしている。
実験内容は、実験用の細胞に新型/鳥インフルエンザウイルスを摂取させ、バイオ抗体の有無による違いを評価するというもの。この結果、バイオ抗体がない場合の細胞は、18時間後に感染していることが認められたが、バイオ抗体がある場合には、ウイルスの感染が阻害された。このことから、バイオ抗体が新型/鳥インフルエンザウイルスの感染を不活化したことが確認できたとしている。
バイオ抗体は、ダイキンのエアコンや空気清浄機のほか、三景産業のマスクにも採用されている | バイオ抗体フィルターがウイルスを不活化する仕組み。空気中のウイルスがフィルターに捕らえられ、バイオ抗体(IgY)によって不活化される。ウイルスが再浮遊しても、感染力はないという | 今回、効果があると発表されたのは、新型/鳥インフルエンザウイルス。A型のソ連型や香港型、B型は既に効果が発表されている |
鳥インフルエンザにおける実験結果。バイオ抗体がない細胞(右)では、インフルエンザウイルスによって細胞が破壊されている。一方、バイオ抗体がある細胞(左)では、細胞がギッシリと並んでいる |
ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター推進室 技術企画担当部長 新井潤一郎氏 |
バイオフィルターが空気清浄機やエアコンに標準装備されない点について、新井氏は「かなり高価で、フィルターが加わることで圧力損失(空気が流れにくくなること)が起きる」ことを理由として挙げている。同フィルターの寿命は1年。
なお、同社の空気清浄機などに搭載されている技術「光速ストリーマ」でも、新型/鳥インフルエンザウイルスを除去する効果があると謳われている。
●ニワトリの“受動免疫システム”を活用
発表会では、バイオ抗体を開発するゲン・コーポレーションの梅田浩二氏が登壇し、ニワトリの卵黄からバイオ抗体生成する仕組みを解説。バイオ抗体を作るために、生まれたばかりの雛鳥が外界の病原体から身を守る「受動免疫システム」を活用していることを示した。
「母鳥はウイルスなどに対する抗体を卵黄の中に蓄積し、受動免疫システムによって、生まれてくる雛に抗体を移行する。このシステムを利用し、タマゴを生む鶏に各種の不活化したインフルエンザウイルスを摂取、インフルエンザウイルスの免疫を誘導し、卵黄から抗インフルエンザのバイオ抗体を取り出している」(梅田氏)
また、母鳥に投入したウイルスに応じて抗体が作り出せることから、「新しく流行したウイルス株についても、改良した抗体を供給していきたい」との意向も示した。
ゲン・コーポレーション 抗体事業カンパニー 研究開発部 梅田浩二氏 | バイオ抗体が生成される流れ。母鳥に不活化されたインフルエンザウイルスを摂取することで、産み出された鶏卵から抗インフルエンザのバイオ抗体が取り出せるという |
●新型インフルエンザは甘く見ない方が良い
早稲田大学教育学部 生物学教室 並木秀男教授 |
また現在、ダチョウの卵から生まれたインフルエンザ抗体を含むマスクが発売され、人気となっているが、これについては「(インフルエンザ対策として)有効だと思います」と評価。その一方で、「ダチョウは卵が大きく、また屋外で飼うことになるため、個人的にはニワトリの方が良いのでは」と、抗体を作り出す際の飼育や手間の観点から、鶏卵由来のバイオ抗体が有利であることを指摘した。
(正藤 慶一)
2009年12月8日 16:10
-ページの先頭へ-