パナソニック、チェコに海外初のエコアイディア工場

~シンガポールでは「アジア大洋州環境宣言」を発信
パナソニックAVCネットワークス チェコで行なわれた会見の様子

 パナソニックは、チェコ共和国ピルゼン市の薄型テレビ生産拠点である、パナソニックAVCネットワークス チェコ(PAVCCZ)を、海外工場初のエコアイディア工場に認定。このほど、同工場でその内容について発表した。

 エコアイディア工場は、「商品のエコアイディア」、「モノづくりのエコアイディア」、「ひろげるエコアイディア」という3つの重点取り組みを柱に、すべての活動において「一歩先のエコ」をめざすパナソニックのエコアイディア戦略を具現化しているモデル工場。国内では、白物家電の生産を行なう滋賀県の草津工場が、2008年6月に初のエコアイディア工場として認定。今回のPAVCCZのエコアイディア工場は、海外展開の第一歩となる。

 また、パナソニックヨーロッパは、2008年10月に、欧州における中長期的な環境経営目標「欧州エコアイディア戦略」を発表しており、同工場をエコアイディア工場とすることによって、環境活動への取り組みを加速させることができるとしている。

 PAVCCZは、1996年3月に、欧州市場向けのテレビの組み立て拠点として稼働。2006年にはテレビの累計生産台数が1,000万台に達している。また、2004年からはプラズマテレビおよび液晶テレビの生産を開始し、現在では、ブラウン管テレビの生産を終了し、薄型テレビの専門工場となっている。

 欧州におけるパナソニックの生産活動の約20%のCO2排出量をPAVCCZが占めており、同工場における環境への取り組みが、パナソニックのグローバルCO2排出量削減の目標達成に大きな意味を持つ。

挨拶するパナソニックヨーロッパのローラン・アバディ会長

 パナソニックヨーロッパのローラン・アバディ会長は、「パナソニックは、1963年から欧州で事業を開始し、16の販売会社と流通パートナーにより、成熟市場と新興市場がミックスする地域をカバーしてきた。その間、環境と生産性と効率の観点から生産力を改善しており、ピルゼンで成功している生産方法はCO2排出量の削減および環境活動に寄与するものとなっている。今後は、20点のダントツGP(グリーンプロダクツ)商品を市場導入する計画である。また、2010年3月までの3年間で、生産拠点におけるCO2排出量を6,000トン、もしくは10%削減することを掲げているが、これまでの2年間ですでに1万トンのCO2排出量を削減した。今回は欧州で最初のエコアイディア工場となり、欧州の他の工場の先進事例となると確信している。今後は、エコアイディア工場として、同工場は環境負荷低減に向けた取り組みを加速するとともに、ピルゼン市、ひいてはチェコ共和国の環境保全に貢献していく」などとした。

 商品のエコアイディアとしては、大画面テレビで大幅な省電力を実現する「ネオ・プラズマパネル」採用のプラズマテレビや、透過率の高さで電力ロスを大幅低減する「IPSαパネル」採用の液晶テレビを生産。特定化学物質不使用としている。また、製品の品質保持を重視しつつ、製品の強度や重量、3Rを考慮した包装材の使用により、環境負荷の低減に取り組んでいるという。

 モノづくりのエコアイディアでは、工場内の温度や熱使用量などを管理するエネルギーマネジメントシステムを導入することで、生産工程の改善などを実行。2008年度目標として掲げていたCO2排出量の10%以上の削減という目標を達成。今後も、生産活動におけるエネルギーのあらゆる無駄を見える化し、CO2排出量削減に継続的に取り組むほか、部品の削減や材料の変更による資源の有効利用の推進、廃棄物発生量の最小化、リサイクルに取り組む。

会見後に関係者は海外初となる同工場の様子を見学した握手する(左から)パナソニックヨーロッパのローラン・アバディ会長、ピルゼン市のPavel Redi市長、パナソニックAVCネットワークス チェコの安尾典之社長

KWNでグランプリにノミネートされたイェルツァノワ公立中学校の子供たち

 ひろげるエコアイディアでは、ピルゼン市の環境プロジェクトを支援し、桜の贈呈などによる公園整備、不法投棄された廃棄物の処理などのほか、環境NGOと連携し、地域の子どもたちとともに3,000本の植樹活動を実施。さらに、工場近隣の学校に通う子どもたちを対象とした工場見学などを通して環境教育を実施する。

 また、記者会見では、同社が実施しているKWN(キッド・ウィットネス・ニュース)プログラムにノミネートされたイェルツァノワ公立中学校の子供たちが紹介された。

 KWNは、全世界の小中学生にビデオカメラを貸し出し、ドキュメントムービーを制作してもらい優秀作品を表彰する制度。イェルツァノワ公立中学校は、欧州からノミネートされているという。

シンガポールで行なわれたアジア大洋州エコアイディア宣言の様子

 一方、パナソニックは、「アジア大洋州エコアイディア宣言」を、シンガポールで発信した。

 パナソニックおよびパナソニック アジアパシフィックが、アジア大洋州における環境負荷削減と環境意識の啓発に貢献することを目指し、その取り組みについて明らかにしたもので、アジア大洋州の7カ国に48の製造拠点を展開するパナソニックが、この地域において環境配慮型製品の普及や、生産活動におけるCO2排出量削減を推進するほか、各地域に即した環境保全活動に取り組む。

 具体的には、販売総額に占める環境配慮型製品の販売比率を2012年度には約80%に高めることを目標に掲げ、アジア大洋州における省エネ、節水、長寿命商品の普及を目指すほか、アジア大洋州地域の生産活動におけるCO2排出量を、2009年度には、2006年度比で30%減となる総量24万トンの削減を図り、2009年度中にエコアイディア工場をシンガポール、マレーシア、タイの3カ国に、それぞれ1工場ずつ展開する。

 さらに、参加体験型の「エコアイディア体験キャラバン」をアジア各国で実施。エコクイズや家電のエコ診断、来場者によるエコ活動宣言など6つの展示を通じて、一般市民の環境意識の啓発を図る。同キャラバンでは、シンガポールを皮切りに、インド、マレーシア、タイなどアジア各国で順次実施。近隣学校の生徒を招待するなど、教育機関と共同で開催する環境セミナーや工場見学イベントを実施する。また、環境活動をサポートするウェブサイトを開設する。

パナソニックの環境への取り組みについて、政府関係者も関心を寄せたシンガポール政府環境庁のNg Meng Hiong次長(左)と、パナソニックの宮本郁夫常務役員

 「アジア大洋州においても、商品のエコアイディア、モノづくりのエコアイディア、ひろげるエコアイディア3つの重点取り組みを柱に展開する」とした。




(大河原 克行)

2009年6月12日 00:00