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盆栽はまさに宇宙! ライトアップで夜に映えるBONSAIの新しい魅力を体験しました

「盆栽をライトアップする」というユニークなイベントをさいたま市の「さいたま市 大宮盆栽美術館」で見てきました

日本の伝統「BONSAI」実はカッコいい趣味!

日本語だけどそのまま海外でも通じる単語があります。「OTAKU」(おたく)」は知られているほか、スマホで使う絵文字は海外では「EMOJI」と表現されていますし、「BENTO」(弁当)や「EKI-BEN」(駅弁)も通じます。そして、海外でCoolな趣味として知られているのが「BONSAI」(盆栽)です。

日本人から見ると「お年寄りの趣味?」と思われるかもしれないですが(おそらく「サザエさん」の波平さんでそういうイメージがついたのでは、との談も)、海外では“箱庭”のイメージが強いらしく、日本よりもカジュアルな趣味としてとらえられているようです。

そんなBONSAIを世界各国だけでなく、盆栽をよく知らない多くの日本人にも楽しみながら知ってもらいたいということで、“盆栽をライトアップする”おそらく世界でも初めての試みが埼玉県の「さいたま市 大宮盆栽美術館」で今週末12月10日まで行なわれています。

もちろん筆者も盆栽についてまったく知らない「超」ド素人。しかし少し見方を教わるとCoolな意味が分かり、思わずスマホやパソコンの壁紙にしたくなるBONSAIのカッコよさが分かりました。この異彩を放つ奇(企)画に協力しているのがパナソニック エレクトリックワークス(EW)社です。

BONSAI愛好家はヨーロッパにも!

日本貿易振興機構(JETRO)によれば、2016年の植木/盆栽の輸出額は80億円超えています。しかも農林水産省(横浜植物防疫所)の「令和4年度 盆栽説明会」によれば、植木の輸出は2018年比で2022年は3割減のところ、盆栽は逆に3割増加。盆栽だけで98億本を超えているといいます。その輸出先は中国と台湾で6割ですが、スペインやオランダ、イタリアやドイツが上位6国の入っているのです。

埼玉県さいたま市の東北本線(宇都宮線)土呂駅から徒歩10分のところにある国内唯一の盆栽に特化した美術館

実は埼玉は盆栽の聖地と呼ばれているとのことで、日本で唯一の盆栽に特化した公立美術館「さいたま市 大宮盆栽美術館」があります。町やさいたま市自体が盆栽に積極的で、その甲斐あって各国持ち回りで開催される「世界盆栽大会」が2017年にはさいたまスーパーアリーナで行なわれ、世界の盆栽ファンを集めたそうです。

そして本年。アフターコロナで本格的な海外からの観光客を受け入れる促進プログラム「SAITAMA Wheel 2023」の一環として「ツールド・フランスさいたまクリテウム」(同大会の成績上位の選手が来日しさいたま市を走る)に加え、この「さいたま市 大宮盆栽美術館」にて夜間特別ライトアップが12月10日まで開催されています。

イベント概要

“THE BONSAI Microcosm Journey” 大宮盆栽美術館‐夜間特別ライトアップ
期間:2023年10月27日(金)~12月10日(日)の金/土/日曜/祝日
時間:土曜17時~20時、金/日曜17時~19時
イベント詳細
https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/event/event-9595/

あとで分かったことですが、上から見下ろすのは盆栽の鑑賞方法として魅力が伝わらないという

盆栽といえば、お日様が出ている日中に鑑賞するのが一般的なイメージです。屋内でも照明が当たったところで鑑賞するもので、開催場所である大宮盆栽美術館ですら、日が落ちてからの夜間営業をしたことがないといいます。つまりこれまで誰も見たことのない空間、風景、盆栽が見られるということで、YouTubeをはじめX(旧Twitter)やFacebookで「見てきた!」「感動した!」「幻想的!」という感動の言葉でにぎわっています。

ド素人でも「BONSAI」ってスゲーかも? と感じる鑑賞方法

筆者も「盆栽なんておじいちゃんの趣味。何が面白いん?」というクチでした。この記事を見ている方の中にも同じように思う人はいるでしょう。そこでライトアップ云々の前に、盆栽美術館の学芸員さんに習ったポイントを紹介します。

まずは習う前に撮った写真を見てもらいましょう。遠近でピントをぼかしたりとかでカメラのテクニックを色々使っても、そんなにカッコイイ写真は撮れていないのがお分かりだと思います。「所詮、大きな木を模倣したミニチュアでしょ?」と思う心の中を見透かされてしまったようです。

おそらくこの写真をパソコンやスマホの壁紙しよう! なんて人はいなそうです

しかし学芸員さんお教えのまま、寄ったり引いたりしてみると、写真が急にかっこよくなりました! 「超重要」なのは、上から見るのではなく、自分が盆栽と同じスケールに人間になったと考え、「盆栽を仰ぎ見る!」これ超重要です。するとどうでしょう、ただのミニチュアの木が、凄い大木やご神木のように見えるじゃないですか! どれも壁紙にしたくなるカッコよさなのです。

ローアングルで仰ぎ見るとめちゃくちゃカッコよくなる! これにはビックリ!

さらに盆栽には表裏があり、木の幹がよく見える方が表で、表からまず鑑賞すること、盆栽の中には幹や枝が枯れ、白くなっている部分がありますが、これは「神」や「舎利」と呼ばれ、中でも舎利は「遺骨」の意味を持ちます。つまり盆栽の中には、美しい形も表現されているのですが、生死も表現しているというのです。いやー、奥深いっす。マジで。

右がよく見えるこちらが盆栽の前側。右下の葉はわざと後ろ側に動かして幹にかからないようにしている!
白くなった幹は「舎利」と呼ばれる木が死んでいる部分。でも全体としては活き活きと躍動しています。バランスがスゲー!

CoolなBONSAIを世界に広げる演出とは

ここまで、日光や通常のライティングで見たBONSAIが少しわかったところで、今回のイベントの特徴であるライトアップを見てみましょう。単純に上から見ているだけでも幻想的です。そして盆栽ひとつひとつを下から見てみると、まじカッコイイ! んです。盆栽を趣味にしている方々は「盆栽は宇宙だ」という方も多いようですが、ライトアップするとにわか知識でも「宇宙」を感じられました。

この日は月明かりもキレイで、下から見ると盆栽が宇宙と一体化する
にわかの知識でも分かってみるとメッチャ奥深い世界というのがよくわかる

BONSAIのライトアップという過去に類を見ない試みにチャレンジしたのは、前述したパナソニックのEW社です。パナソニックの中でもコンセントやビル照明などを手がけるチームですが、これまで京都の二条城や神社、沖縄、スカイツリー、さらには各地の球場やスポーツ施設などに照明機器を納入しています。

この“奇画”に使われているのはパナソニックEW社の「YOI-en」。クラウドのプラットフォームなので、町全体だけでなく国境を超えた光の同期や演出ができます。今回はスマホからのインタラクション介入が採用

使われているライトアップシステムは「YOI-en」と呼ばれるもので、屋外の広い区画をインターネット経由してリンクできるようになっています。今回は盆栽美術館の敷地内だけでしたが、システム的には町全体をリンクしたり、インターネットなので国境を超えたリンクなども可能です。

盆栽のライトアップでは、自分のスマホにアプリをインストールし、会場内にあるQRコードを読み込ませると、スマホと会場の照明の色やパターンをコントロールできるという、インタラクティブな照明を提案していました。

専用のアプリをインストールして会場のQRコードを読み込ませると星占いが始まる
占いに応じて全体の照明色が切り替わる

“あらかじめ用意された演出を見るもの”というライトアップの常識を覆し、自分のスマホでライトアップを変化させることができるというのが新しいポイントです。本会場では光のコントロールに加え星占いも付加され、当日はメディア関係者のみのお披露目だったのですが、大変な盛況でしょっちゅう色やパターンが変化していました。

街全体だけでなく、国境を超えた光の同期や演出まで行なえる「YOI-en」

それまでまったく興味のなかったものでも、ほんの少しだけアドバイスをしてもらうだけで、新たな視点を発見でき面白さや興味が何倍にも膨れ上がることを今回の取材で教えられました。

虫の音がノイズにしか聞こえないという海外の方がいるのに比べ、我々日本人はその音を聞き分け「わびさび」を感じられます。自然の中だけでなく、人工物にも「わびさび」を日本人は感じられるのかもしれません。

少し未来のライトアップが楽しめるチャンスが色々

これから年末にかけライトアップの季節になります。日本からインドの照明をコントロールしたり、横浜において人の動きを認識して照明演出が変化するなどの「YOI-en」ライトアップコンテンツが実施されます。また2024年度中には、常設での運用も予定しているとのこと。もしそういったQRコードなどを発見したら、自分だけのライトアップをインタラクションしてみると楽しそうです。