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オムロン、持ち運べる超小型の心電計。Apple Watchよりも多くの症状を早期発見
2022年6月22日 15:05
オムロン ヘルスケアは、持ち運んで心電図をスマートフォンに記録できる「携帯型心電計 HCG-8060T」を6月22日より発売する。直販価格は34,800円。医師や医療関係者の指示により購入できる特定保守管理医療機器となっている。
不整脈の一つである心房細動の早期発見と早期治療に役立てることを目的とした心電計。不整脈や動悸などの自覚症状を感じた時に、自分で心電図を記録できる。本体サイズ90×30×7.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量24gとコンパクトで持ち運びやすいのが特徴。
なお、Apple Watchのように携帯できて心電図を測れる機器は他にもあるが、心房細動以外の不整脈も分かる「6誘導」に対応した携帯型心電計の発売は日本初だという。
脈の乱れがあっても8割が「何もしない」。医者とのデータ共有で早期発見へ
心房細動は、心臓の心房内に流れる電気信号が乱れ、心房が痙攣したように細かく震えて血液をうまく全身に送り出せなくなる病気。血栓ができやすくなり、治療せずに放置しておくと血栓が血流により脳に運ばれ血管に詰まり、脳梗塞を発症する恐れがある。心房細動の人はそうでない人に比べ脳梗塞発症のリスクが約5倍高くなるというデータも確認されている。
早期に心房細動を治療できれば完治する可能性が高まるといわれており、治療には発症時に記録した心電図が必要となる。しかし、心房細動の症状を一度感じても治まることも多いため、健康診断時だけで、症状を感じている時と同様の心電図を記録することは難しいとされている。
同社による心房細動に関する意識調査では、普段の生活で脈の乱れを感じたことがある人のうち約8割(77.6%)が「何もしていない」と回答。放置すると心原性脳塞栓症を発症するリスクがあるが、違和感があっても、その後は放置している人が多いことが分かった。そこで、外出先などでも服を脱がずに両手で測定でき、スマホでデータを確認できる携帯型の心電計を製品化した。
HCG-8060Tは2種類の記録方法ができ、心房細動の確認ができる「I(いち)誘導」と、心房細動以外の不整脈の確認も可能な「6誘導」に対応。本体の表側に2つ、裏側に1つの電極を備え、I誘導は両手の指で電極に触れて測定。6誘導は両手の指のほか片足の膝または足首も電極に触れさせて測る。
測定後のデータは自動でスマホアプリ「OMRON Connect」に転送。アプリ上で「心房細動の可能性」「正常な洞調律」など6種類のパターンで解析結果を表示。その心電図はPDFとして保存され、印刷やメール送信により、医師と共有できる。なお、本体に記録用のメモリは内蔵していない。
【6種類の解析パターン】
心房細動の可能性 :心房細動が検出された際に表示
正常な洞調律 :異常な収縮がない正常な洞調律の際に表示
徐脈 :収縮リズムが正常で心拍が遅め(40~50拍)の際に表示
頻脈 :収縮リズムが正常で心拍が速め(101~140拍)の際に表示
分類できません :上の4項目に該当しない際に表示
解析できません :心電図を正しく読み取れなかった際に表示
心拍計測範囲は30~300拍/分。電源はCR2016リチウム電池1個で、約200時間分の測定に対応するため、1年間程度は使用できるという。医療機器認証番号は、30400BZX00046000。
心房細動の2030年の推定患者数は108万人
心房細動は加齢とともに増えるといわれ、2020年の日本の推定患者数は100万人。高齢化が進むことで、2030年には108万人を超えると見込まれている。
京都府立医科大学 循環器内科学 不整脈先進医療学講座の妹尾恵太郎先生によると、心房細動の患者のうち、無症状の人は4割に上るという。動悸以外にも、めまいや、疲れやすさなど様々な症状が起こるとされている。
心房細動になりやすい人は、心不全や高血圧といった心臓由来の原因がある場合と、肥満や糖尿病といった心臓由来でないものがあり「不規則なライフスタイルな人は心房細動にもなりやすい」とのこと。
早期発見には、軽い息切れや動悸の症状を見逃さずに、自分で脈を調べる(検脈)をするほか、家庭用の心電計で測ることを推奨している。
ただし、測定しても「陽性的中率はそれほど高くない」とのことで、一度測って正常でも安心せず、何度も測ることが重要。これまでのデータによると、1日間心電図を測った人と、14日間連続で測った人の比較では、不整脈の検出率が6倍以上高かった事例もあるという。妹尾先生は「情報量が多ければ多いほど、判断材料が多くなり、より正確に診断できる」とし、早期発見した場合にためらわずに病院で受診するよう訴えた。
なお、京都府立医科大学では「心房細動アプリ」も無償で提供。動画で心房細動について学べるほか、「服薬アラーム」で薬の飲み忘れを防いだり、カレンダーで服薬や体調を記録できる機能も備えている。