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濡れずに涼める! 新橋SL広場に設置されたパナソニックの屋外エアコンを体験

 パナソニックの屋外用ミスト式冷却機「グリーンエアコン」が、東京・新橋のJR新橋駅西口SL広場に常設されることになり、2019年7月1日に、港区の武井 雅昭区長などが出席し、オープニングセレモニーを行なった。

新橋駅西口SL広場に設置された「グリーンエアコン AE-GXA031」
オープニングセレモニーでは、地元やパナソニックの関係者がスタートボタンを押した
関係者によるオープニングセレモニーの様子

 パナソニックと港区は2016年7月~9月に、実証実験の形でSL広場南西側に「グリーンエアコン」を設置していた経緯がある。その経験などをもとにパナソニックが改良を加え、2019年4月に、新製品として「グリーンエアコン AE-GXA031」を発表。このほど、港区が第1号導入として、SL広場のJR新橋駅日比谷改札前に常設することになった。

 午前9時45分から行なわれたオープニングセレモニーでは、港区の武井 雅昭区長が挨拶。以下のようにコメントした。

 「パナソニックは、東京本社を汐留に置く地元企業であり、オリンピックのワールドワイドパートナーである。そのパナソニックが開発したグリーンエアコンの第1号機を、港区が新橋駅前に設置した。

 港区との実証実験の結果を含めて、それらをもとに研究開発を行ない、改良してもらった装置である。今日から7月に入り、まもなく夏本番がやってくる。昨年の猛暑もあり、今年の夏場の暑さ対策が注目されるなかで、それに間に合うように設置することができた。グリーンエアコンは微細なミストを使い、蒸発する効果によって、体感温度を大幅に下げることができる。また、エアカーテンによって、オープンな場所でも効果を発揮する。新橋を訪れる人に、少しでも夏の暑さを和らげてもらいたい」

港区の武井 雅昭区長
オープニングセレモニーに出席した武井区長をはじとめする関係者

 また、パナソニック アプライアンス社 カンパニー戦略本部 事業開発センター・中島 宏史所長は、「実証実験を行ったときには、ロケットのような形のものであったが、その後改良を加えて、今回の形になった。ビジネスの中心地であり、パナソニックの東京本社があるゆかりのある場所に、グリーンエアコンを設置できた。機器廃熱量よりも、冷却する能力の方が大きく上回っているのが、ハナソニックのグリーンエアコンの特徴で、地球環境にやさしい装置である。暑さ対策の装置として、日本や世界に広げていくことで、人類共通の課題である地球環境問題や、熱中症などの人の命を脅かす問題の解消にも貢献できると考えている。新橋の新たなモニュメントとして、愛され続けることを期待している」とした。

 新橋は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時には、国内外の多くの来訪者が訪れる交通拠点であり、さらに、SL広場は、お祭りやイベントの開催などが多く、待ち合わせ場所として利用されるなど、都民や区民にも広く愛されるエリアだ。

パナソニック アプライアンス社カンパニー戦略本部 事業開発センター・中島 宏史所長
SL広場のJR新橋駅日比谷改札前にグリーンエアコン第1号が常設される

ぬれ感の少ない気化冷却「シルキーファインミスト」を噴霧

 今回、新橋SL広場に設置された「グリーンエアコン AE-GXA031」は、パナソニックが独自に開発した2流体ノズルから、粒径が約10μmの極微細なドライ型ミスト「シルキーファインミスト」を噴霧。ぬれ感の少ない気化冷却により、冷気を生成するのが特徴だ。

 パナソニック アプライアンス社カンパニー戦略本部事業開発センター グリーンエアコンプロジェクト・尾形 雄司プロジェクトリーダーが、製品の構造について解説。

 「従来型のミストによる冷却装置は、一般的に1流体ノズルの構造となっており、圧縮された水をノズル先端から噴霧する仕組み。高圧化するためのコンプレッサーが必要であるといった課題や、微細化、気化性、濡れ度には限界があった。

 だが、パナソニックの2流体ノズルでは、圧縮された水に対して、圧縮空気をぶつけることで生まれる微細化したミストを噴霧。低圧運転で、さらなる微細化を実現している。大型のエアコンプレッサーが不要であり、濡れにくく、蒸発しやすい快適な空間を実現できる」

パナソニック アプライアンス社カンパニー戦略本部 事業開発センター グリーンエアコンプロジェクト・尾形 雄司プロジェクトリーダー
濡れにくく蒸発しやすい冷気で、快適な空間を実現

 ミストは、工場内になどにおいて、湿度調整や静電気防止のために分見される例もあるが、工場内には高圧コンプレッサーを利用しやすい環境にあるため設置が容易だが、公共施設や屋外では高圧コンプレッサーを設置するには、施工費用や場所の負担が大きくなる。こうした課題も2流体ノズルで解決できるというわけだ。

 また、高圧コンプレッサーを使用しないため、熱交換するヒートポンプ方式よりも排熱量が少なくなり、環境負荷が小さく、効率的に冷却ができるため、低騒音での駆動が可能だという。同社によると、発熱量は1.8kWであるのに対して、冷却性能は14kWに対するという。

グリーンエアコンを体験、メガネが曇ることなく冷気を実感

 また、極微細ミストの蒸発を促進し、気化冷却の効果を高めることで、体感温度で約7℃、気温で約4℃の低下を実現。ミスト粒径が小さいため、肌で蒸発しやすく、冷涼感を得ながら濡れの不快感がないのが特徴だ。

 実際に体験してみたが、通常のミスト冷却に比べて、濡れるという感覚はまったくない。筆者はメガネをかけているが、グリーンエアコンの下に入っても、メガネが濡れたり、曇ったりといったことがなかった。女性であれば、化粧が落ちるといったことを気にすることがなく、ミストを直接受けることができる。

 「濡れにくいことから、人の近接部で噴霧が可能であり、体表面からの蒸発による直接冷却によって、より効果的に身体を冷やすことができる」(パナソニック・尾形氏)というメリットもあると話す。

グリーンエアコンが稼働している様子

 もうひとつの特徴は、ミスト噴霧時に旋回気流を発生させることで、噴霧口の直下に横風の影響を受けにくい直径2mほどのドーム状の冷却空間を形成。屋外設置の際に課題となっていた自然風で冷気が乱されることがなくなるという点だ。

 同社によると、エアカーテン効果によって、0.8m/sの自然風の条件でも、冷気が乱されることを防ぐという。冷却した空気は、下部から吸い込み、冷たい空気を使って、効率的に循環される。

 エアカーテンの周辺には、13~15人の休憩に適した心地よい涼空間を提供可能。さらに、涼空間をスポット化することで、ミスト冷気に直接当たりたくない人にも配慮しているという。

雨天時を除いて、午前8時から午後6時の間、稼働する
制御装置が横に設置されている

 さらに、本体には通信機能を搭載。ウェザーニューズが配信する気象予測データと連動して、気温に応じた噴霧流量の切り替えや停止などを自動で制御する。さらに、異常時にはメールで通知する遠隔監視機能も搭載している。

 「実証実験の際には、通信機能を持っておらず、本体に搭載したセンサーをもとにした自動運転を行なっていたが、故障した際などに課題があったための通信機能を搭載した。また、ウェーザーニュースの予測データを活用することで、新橋エリアにおいて、数時間後にゲリラ豪雨が発生すると予測されている場合には運転を行なわないなどの制御ができる」という。

 本体は中央壁側から上部にL字型に配置され、日除けのためのバイザー型の屋根を設置している。

 「実証実験ではロケット型の形状とし、それを中央部に設置していたが、地上の中央部に設置すると、通行の妨げになるなどの課題があった。そこで、L字型の新たなデザインを採用した」という。

 パナソニックでは、「多くの人が集うさまざまな屋外空間でのクールスポットを創出でき、夏の屋外における暑熱対策に利用できる」としており、公園や駅、商業施設などに展開していく考えだ。

L字型の構造となっている
天井部からトルネード型で微細なミストを噴霧する

簡易施工型「グリーンエアコン Flex」

 またパナソニックでは、すでに敷設されている施設にもグリーンエアコンの機能を設置できる、簡易施工型の「グリーンエアコン Flex」を2019年9月下旬から発売する。

 ミストを噴射するノズルユニットと、制御部や駆動部を内蔵した機器ボックスで構成。樹脂製配管での施工が可能であり、既設構造物への後付け設置や、ベンチ、モニュメント、木などとの一体化設計なども可能になるという。価格はオープンだが、工事費は別で約150万円になる。

簡易施工型の「グリーンエアコン Flex」のノズルユニット