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京セラ、世界初のフルスペクトル「アクアリウムLED照明」4色、サンゴや藻類の育成環境を再現

 京セラは、紫色LEDとRGB蛍光体による「CERAPHIC(セラフィック)」技術を発表し、同技術を用いた家庭向けの「アクアリウムLED照明」4種類を8月中旬に発売する。価格はオープンプライス、店頭予想価格は10万円前後(税抜)で、アクアリウム専門ショップで販売される。現在、同技術を用いた水族館向けのLED照明も開発中であるという。

紫色LEDとRGB蛍光体を組み合わせた「CERAPHIC」

 「CERAPHIC(セラフィック)」技術は、紫色LEDとRGB蛍光体を組み合わせることで、より太陽光に近い、高演色で自然な光を作り出せる京セラの独自技術。一般的なLEDは、青色LEDをベースに黄色の蛍光体と組み合わせたものが多く、再現できる波長が狭く、色ムラも発生しやすいという。

 京セラ 執行役員 半導体部品セラミック材料事業本部長・奥ノ薗 隆志氏は「LEDと組み合わせている蛍光体が幅広いことにより、赤~紫の広い波長の光を再現できるという特徴があります。さらに組み合わせる蛍光体の配合によって、様々な光を再現することもでき、例えば、植物が光合成を行なえる太陽光に似た光や、動物の育成に適した光、建物などを美しく見せる光のほか、自動車塗装の検査用の光、手術用の光など、目的や用途に適した光を提供できます」とした。

京セラ 執行役員 半導体部品セラミック材料事業本部長・奥ノ薗 隆志氏
紫色LEDとRGB蛍光体を組み合わせた「CERAPHIC技術」
CERAPHIC技術の応用例

アクアリウムLED照明は、水深に応じて4種類

 このCERAPHIC技術を用いた「アクアリウムLED照明」は、水深2.5mのスペクトルを再現した光「Marine Blue(CSL-SMBB0000)」、水深11mのスペクトルを再現した光「Aqua Blue(CSL-SABB0000)」、先の2製品と共に利用して水深度を調整できる観賞用深い青色の光「Deep Blue(CSL-SDBB0000)」、地上の太陽光のスペクトルを再現した光「Natural White(CSL-S50B0000)」の4種類。

 サンゴや藻類が実際に生息している環境を再現した光で、それぞれの生態の育成に適しているという。製品の開発に当たっては、アクアリウム専門ショップ「コーラル ラボ」と共に、フィリピンのサンゴ礁で水深ごとにスペクトルを測定したという。なお、アクアリウム用のLED照明において、1つのランプからフルスペクトルの光を発する製品は、世界初となる。

水深度を調整できる深い青色の光「Deep Blue(CSL-SDBB0000)」
水深11mのスペクトルを再現した光「Aqua Blue(CSL-SABB0000)」
地上の太陽光のスペクトルを再現した光「Natural White(CSL-S50B0000)」
アクアリウム照明の外観
照明には、48個のLED素子を搭載
「Marine Blue(写真左)」「Aqua Blue(写真右)」のスペクトルタイプ
「Natural White(写真左)」「Deep Blue(写真右)」のスペクトルタイプ

照明の違いで育成状況も変化、静岡大学と新江の島水族館で実験

 また発売前には、静岡大学 グリーン科学技術研究所 カサレト・ベアトリス・エステラ教授、新江ノ島水族館・竹嶋 徹夫館長との実験も行なったという。

 静岡大学との実証実験では、エダコモンサンゴとミドリイシを、従来型の青色LED環境、アクアリウムLED照明 Natural White環境で2カ月間育成。結果的に、アクアリウムLED照明で育成したサンゴは、色素のクロロフィル/ペリジニンや、褐虫藻が多いことから、より健康に生育しており、サンゴのストレス耐性や、長期育成の面で優れていると言えるという。

静岡大学 グリーン科学技術研究所 カサレト・ベアトリス・エステラ教授
従来型の青色LED環境、アクアリウムLED照明 Natural White環境で、エダコモンサンゴとミドリイシを2カ月間育成
アクアリウムLED照明で育成したサンゴは、色素のクロロフィル/ペリジニンや、褐虫藻が多いという結果

 新江ノ島水族館ではLED照明について、2004年の全面リニューアル時に導入を検討したものの性能と価格が合わず導入せず、2011年の東日本大震災後に省エネを目して初導入。未だ残る旧型のHIDランプは水銀を使用しているために、2013年採択の「水銀に関する水俣条約」上も転換を選択せざるを得ない状況だと語った。

 実験では、アマモをHID照明環境とアクアリウムLED照明環境で48日間育成。アクアリウムLED照明の方が、アマモの育成結果が良かったことに加え、消費電力も18.6%に抑えられたという。

新江ノ島水族館・竹嶋 徹夫館長
HID照明環境とアクアリウムLED照明環境で、アマモを48日間育成
アクアリウムLED照明の方が、アマモの育成結果が良く、消費電力も18.6%に抑えられた

同社のLED照明事業の今後

 今回の発表会では、「CERAPHIC」のブランドロゴも発表。周囲のドットが赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色を、中心が白い光を表現しているという。また周囲のドットの並び方は、ブランド名の頭文字「C」も表してもいる。

 またLED照明事業の目標数値も発表され、2023年度に100億円を目指すとした。またアクアリウム照明分野は、現在国内に約10億円、海外に約800億円の市場があるとし、2021年度に10億円を目指すという。

 さらに、水族館向けの「アクアリウムLED照明」や、動物園向けのLED照明もすでに開発中で、年内の販売開始を予定しているとした。

「CERAPHIC」のブランドロゴ
LED照明事業の目標は2023年度に100億円