長期レビュー

ダイキン工業「うるおい光クリエール MCK75L」最終回

~“空気をキレイに”という基本性能で選ぶならコレ
by 正藤 慶一

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ダイキン工業の加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK75L」。今回は加湿機能を中心に取り上げる

 10月初旬から全3回に渡って、ダイキン工業の加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK75L」のレビューを連載しているが、今日で最終回。初回の頃は日中の気温がかなり高く、「ヤバい、取り上げる機会を間違えたか……」と冷や汗をかいたが、最近は気温も落ちてきており、今週後半の東京の最高気温予想は、軒並み10℃台と低くなっている。いよいよ、室内の空気環境を整えてカゼを未然に防ぐ、加湿空気清浄機の本格的な出番である。

 特に最近はマスク姿の人を多く見かけるが、気温の低さよりも、湿度の低さの方を問題に感じている人が多いのではないだろうか。そんな時には、加湿空気清浄機で空気を潤せば、ノドのカラカラも抑えられ、ついでに空気もキレイにできる。しかもMCK75Lでは、ダイキン独自の「光速ストリーマ」により、加湿する水までも除菌できるというのだ。

 最終回では、MCK75Lの加湿機能について紹介しよう。

 [第1回目はこちら] [第2回目はこちら



パワフルに加湿するなら「自動」ではなく「連続」「のど・はだ」モードで

タンクは前面パネルを開けたところにすぐある。タンクについては後ほど詳しく紹介する

 MCK75Lで加湿機能を使うには、タンクに水を入れ本体にセットし、運転をONにした後で「加湿 入/切」ボタンを押すだけ。デフォルトの運転モードは「自動」だが、「加湿切替」ボタンを押せば、自動のほか「連続」、湿度を高めに維持する「のど・はだ」というモードも選べる。

 ちょうど空気が乾燥していたので、「連続」でスタート。すると、最初は37%だったが、1時間で45%まで高めることができた。2時間だと44%と足踏み状態だったが、後日計測しなおしたところ、4時間で41→55%まで上げることができた。使い始めはノドが乾いていたのだが、湿度が50%を越えたあたりから、ノドの乾きを気にすることはなくなった。

 運転モードは、冬の期間は「連続」または「のど・はだ」モードでの使用が良いだろう。というのも、実は一番最初に「自動」モードで加湿運転を始めたのだが、風量についても「自動」を選択していたため、ニオイやホコリを感知した時だけしか風量が上がらず、ほとんど加湿効果がなかった。加湿空気清浄機では、風が強くないと、加湿効果は高くならないのだ。

MCK75Lの加湿機能部分。トレーから伝った水を、中央の水車がすくいあげ、オレンジ色の加室フィルターに水を注ぐ。ここに風を当てることで、加湿できるのだ

 MCK75Lの加湿機構は、本体内部の加湿用のフィルターを風が通過し、湿気を含んだ空気を部屋に放つことで加湿するという仕組みになっている。いわゆる、「気化式」という方式になるのだが、この加湿フィルターを風がどんどん通過させることで、湿気を含んだ風がどんどん室内に放たれるため、空気はより潤う。風量が強いほど加湿効果も高く、風が弱いほど加湿の効果も低くなるのだ。

 改めて考えれば当然のことだが、最初に使った時は「なんで加湿できないの?」と首をひねってしまった。ちなみにパンフレットによれば、8畳の部屋でターボ運転をした場合、15分で湿度20%から50%に上げられるという。というわけで、家に帰ってきた時や、特に空気が乾燥する日、加湿効果があまり出ない場合には、風量を強くしてみよう。

最初に加湿運転をしたときは、風量・加湿モードをいずれも「自動」にしていたため、湿度は上がらず、逆に下がる一方だった(デジタル時計下段中央が湿度表示)加湿モードを「連続」にすると、1時間で湿度が37%から45%に上がった。2時間後は44%と、加湿の勢いが止まっている翌日、再度加湿モードを「連続」で運転。すると、4時間後には湿度が41%から55%に上がっており、ノドが乾燥している感覚もなくなった


気化式加湿器の課題を克服する「キレイ水加湿」とは

ダイキン独自の除菌・脱臭技術「光速ストリーマ」は、加湿する水や、水が溜まっているトレーも除菌できるという(写真は発表会のもの)

 さてMCK75Lには、加湿において新しい機能が追加されている。それが、ダイキン独自の「光速ストリーマ」を使った「キレイ水加湿」である。

 光速ストリーマについては、第2回目で詳しく取り上げたのでそちらを参考にしていただきたいが、簡単に言えば除菌・脱臭効果のある活性種(高速電子)を本体内に放出する機能。光速ストリーマを空気に照射することで、空気中に含まれるウイルスや菌が除去できるというもの。実は、空気以外にも、水の中に含まれるレジオネラ菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌といった菌が除去できるらしい。

 「キレイ水加湿」は、光速ストリーマを使って除菌したキレイな水で加湿するという機能。特にMCK75Lでは、水トレー内に直接ストリーマを照射することで、水をキレイに保ち、ヌメリが発生するのを約6カ月抑制できるという。

加湿トレーにはヌメリは発生していないが、これはストリーマの効果というよりも使用期間が短いためだろう

 というわけでトレーを見てみると、確かにヌメリはなかった。が、これはストリーマの効果というよりも、まだ1カ月程度しか使っていないためと考える方が正しい。また、加湿時に使用する水がどれだけキレイかも、「いわれて見れば、なんとなく」くらいで、判定するための材料に乏しい。このキレイ水加湿については、残念ながら今回のレビューで効果を見ることはできない。

 ただし、この「加湿に使用する水を除菌する」というは、気化式の加湿器ではなかなか解決できなかったニーズだった。

 気化式の加湿器は、水トレーにある程度水を溜めておき、そこからフィルターに水を通す、という構造を取っているが、このトレーに長い間水が滞ることで、先に挙げたような菌が発生する恐れがある。水を沸騰して加湿する「スチーム式」なら、煮沸消毒も期待できるが、気化式はトレーの水をそのまま使うのが一般的となる。そのため、各社では除菌効果のある銀イオンをトレーに配合するなどの配慮を取っている。MCK75Lでも、トレーに銀イオンが配合されているが、このキレイ水加湿で、清潔性に関する対策をもう一段階積んだことになる。

 他社の加湿空気清浄機を見ても、加湿する水まで除菌する機能を備えているものは少ない。そう考えると、より清潔性にこだわる人向けの製品といえるだろう。


タンクは正直使いにくいが、加湿フィルターは高性能

 というわけで、ここ1カ月ほどMCK75Lの加湿機能を使ってきたのだが、良い点と悪い点がいくつか目についてきた。

 とりあえず、悪い点から指摘してしまおう。加湿器の水タンクである。

水タンクは内容量4L。前面パネルと内部の空気清浄機能の間に挟まっているため、平べったく、縦長のデザイン

 MCK75Lの水タンクは、本体のパネルを開けたすぐそこにある。ただ、これが平べったいうえに背が高く、台所や風呂場でもつっかえてしまうことが多い。要は、水が入れづらいのだ。

 説明書では、タンクをそのまま台所に入れるのではなく、タンク中央部にある漏斗を使って、タンクを横にしながら水を補充するように書かれている。しかし、水が満タン近くまで入るとそこそこの重さになるため、片手では持ちづらい。また、タンクを横から縦に戻すときに、水が溢れることもたびたびあった。そもそも、漏斗をつけること自体がひと手間で面倒くさい。正直に言って、この形状は使いづらい。

 これは恐らく、2回目で詳しく紹介した、内部構造の複雑さが影響しているだろう。本体内部の空気清浄機構が充実している一方、水タンクに無理が出てしまったようだ。若い人なら問題はないだろうが、お年寄りが使うとなると、かなり難儀することになるだろう。

水を入れる時は、タンク中央部の漏斗を使う漏斗をタンクの口にセットし、水を注ぐ。正直、片手では持ちにくく、バランスが悪い直接タンクの口に入れようと思ったが、浴槽の枠にタンクが当たってしまい、蛇口にハマらなかった。説明書どおり、漏斗を使った方が良さそうだ
加湿フィルターには、水を通さない繊維を使用している

 良かったのは、加湿フィルターだ。MCK75Lの加湿フィルターは円形で、トレーから水車ですくい上げた水をフィルターが受ける、という仕組みになっているが、このフィルターは繊維自体が水を吸わない素材らしく、いつ触ってもカラッとしている。フィルターが常に水に浸かっているとカビが発生する恐れがあるが、このフィルターはあまり水を含んでいいないため、カビの発生に効果がありそうだ。かといって、加湿能力が低いわけではないのは、先に挙げた湿度の変化の写真を見ていただければ分かるだろう。しかも、10年間交換不要のオマケ付き。これなら、月1回の水洗いによるメンテナンスも気軽にできそうだ。


掃除機並みに吸い込む前面吸込口。キャスターがあればなお幸せ

 加湿機能以外でびっくりした点でいうと、本体下の吸込口が、本当にガンガンに吸い込むことにびっくりした。パネルを開けて下吸い込み口があるあたりを見ると、床に落ちた髪の毛などが吸い込まれているのだ。ハウスダストは床上30cmほどの低い位置に溜まることが多いらしいが、MCK75Lなら、そのあたりもしっかりケアしてくれているようだ。

 逆に不便に感じたのが、本体にキャスターが付いていないため、本体を動かしにくいところだ。寝るときに寝室に持っていけば、ノドが乾きがちな睡眠中にも重宝しそうなのだが、本製品では難しい。基本的に据え置きで使うべき製品なのは分かるが、高額なので複数台を用意するというのは安月給のサラリーマンには至難の業。ワガママな願いだが、確か同社の除加湿空気清浄機「クリアフォース」には付いていたはずなので、不可能ではないはずだ。個人的に、来年モデルには期待をしたい。

 あと、これは良い点でも悪い点でもなく、使用上の注意なのだが、本製品から風向が変えられる「かえルーバー」という機能が付いたが、これを最大まで開いた場合、風は本体正面から見て右側に流れるようだ。そのため、本製品の右側面に壁があるような場所に設置すると、風が壁ばかりに当たって、空気がうまく循環できなかったり、壁が汚れるといったことがあるかもしれない。フラップを閉じれば風は本体正面に上がるので大した問題ではないだろうが、念のため以下に動画で紹介させていただこう。

本体裏側にはキャスターなどは付いておらず、移動させるのは難しい。基本的に据置きで使用するものと考えるべき細かい話だが、風向が変えられる「かえルーバー」を全開にすると、風は本体正面から見て右側へ流れるようだ。ルーバーを閉じると、真ん中寄りに風を吹き出す


 全3回に渡ってダイキンの加湿空気清浄機「MCK75L」を紹介させていただいたが、何層にも重ね合わせた空気清浄構造に、ストリーマで除菌した水での加湿、強力な風によるパワフル運転と、空気をキレイにすることに関しては、確実な能力を持っていることがいえる。個人的にも、運転を停止した後に風邪を引いたこともあって、その効果が身をもって感じられた。

 大きめの本体に、5万円を越える価格を考えると、なかなか手を出しづらいかもしれないが、換気ができなかったり、ホコリやニオイが気になる部屋に1台あれば、確実に効果は感じられる。また、加湿運転における清潔性も、他社にはないものだ。部屋の空気をキレイにするという基本性能で選ぶなら、自信を持ってお勧めしたい。



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2010年10月26日 00:00