長期レビュー

ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」その1

~話題の“3人乗り電動アシスト自転車”ってどうなの?
by 石井 和美

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ブリヂストンサイクル「アンジェリーノアシスタDX」

 子供が2人以上いる家庭では、「自転車3人乗り(幼児2人乗り)」をしている割合が高いそうだ。

 いくら子供とはいえ、2人も乗せてちゃんと運転できるの? と心配にもなるが、都市部の保育園や幼稚園では、駐車スペースの問題から車での送迎を認めていないところも多い。また、子供がまだ小さい場合には、1人を置いて買い物やお迎えに行くのも逆に心配だ。そう考えると、2人の子供がいる親にとって、自転車の3人乗りは必要不可欠ということがいえるかもしれない。

 我が家にも5歳と2歳の子供がいる。田舎暮らしなので、子供の送迎や買い物も、車を使うことが多いが、車は1台しかなく、主に夫が使用しているため、子供を連れてちょっと遠出したいな……という時の乗り物がない。「自転車3人乗り」の必要性が、日に日に高まってきた。

 そこでこの夏、3人乗り対応の電動自転車「アンジェリーノアシスタDX」を購入することにした。


メーカーブリヂストンサイクル
製品名アンジェリーノアシスタDX
品番A26L60
希望小売価格136,800円(本体のみ)
購入場所楽天市場
購入価格116,380円(本体のみ)

“3人乗り解禁”に対応したファミリー向け電動アシスト自転車

 我が家が3人乗り自転車の導入を検討し始めたのは、2009年7月、各都道府県の道路交通規則が一部改正された時のこと。6才未満の子供を自転車の前と後ろに乗せることができる「3人乗り」が解禁になったからだ。そう、実はそれまでは、3人乗りは法的には認められていなかったのだ。

写真の「2人同乗基準適合車」のマークが付いている自転車が、3人乗りに対応していることになる。もちろん、今回購入したアンジェリーノアシスタDXも適合している

 この3人乗り解禁のニュースを初めて知ったとき、「これでやっと親子3人で自転車に乗れる!」と、現在2人乗りの自転車に、もう1つチャイルドシートを取り付けるつもりだった。しかし、従来の自転車にチャイルドシートを追加し、3人乗りにするのはNGとのこと。3人乗りが認められる自転車は、社団法人自転車協会が定めた安全基準「幼児2人同乗基準適合車」に適合したものに限られている。この基準をクリアするには、強度が十分であること、転倒しにくいこと、走行中にハンドル操作に影響する振動が起きないことなど、いくつかの条件が設けられている。

 我が家にある自転車は、残念ながらこの基準をクリアしていない。そのため、専用の新型自転車を購入する必要があったのだ。

 アンジェリーノアシスタDXは、もちろん「幼児2人同乗基準適合車」の基準をクリア。前ハンドル部には、前乗せ用のチャイルドシート「スーパーエンジェルシート 2.0」が、標準で搭載されている。

  また、リアキャリヤ(荷台)には、クラス27(最大積載重量27kg)対応のパイプキャリヤを採用している。これなら体重が17kgある我が子でも、余裕で後部座席に乗せることができる。後部用のチャイルドシートは別売りで、今回は、同じくブリヂストンの「エンジェルリヤシート」を購入。自転車屋さんでガッチリ装着してもらった状態で購入した。日々成長する子供も安心して乗せることができそうだ。

前部座席はあらかじめ「スーパーエンジェルシート 2.0」備えられている。このシートには体重15kg(3才児の平均体重)まで載せることができる。頭部までしっかり守ってくれるヘッドガード付き後部座席は別売りとなっている。今回は「エンジェルキャリアシート」を選び、自転車屋さんで装着してもらった。ヘッドガード、シートベルトが付いている

 購入に際しては、迷いもあった。我が家の子供達は子供は5才と2才なので、上の子は長くてもあと1年弱程度しか乗せられない。その1年のために、10万円超えの3人乗り対応自転車を買うのはもったいないかな~と思っていた。しかし、色々調べるうちに、子供が大きいからこそ短い期間でも頑丈な自転車を買った方がいいのではないか、と思えてきたのだ。

 上の子の体重が17kg、下の子が12kg。2人合わせて30kg近いので、華奢な自転車に乗るのは恐ろしい。やはり、子供の命にも関わることを考えると、安全性の高い自転車を選ぶべきではないか、と考えたのだ。


業界でも珍しい3人乗り専用シリーズ。発進時のアシスト力アップでふらつきの解消も

 さて、なぜ数ある自転車の中から「アンジェリーノアシスタDX」を選んだかだが、これにはいくつか理由がある。

 まずは、「電動アシスト自転車」である点。アンジェリーノシリーズには、電動アシスト機能がない普通の自転車タイプのものある。もちろん、そちらの方が求めやすい価格となっており、家計にはやさしいことになる。しかし、私は以前から電動アシスト自転車を使用しており、一度あの便利さを知ってしまうと、普通の自転車には後戻りできないのだ。ちょっとお値段は張っても電動自転車から選ぼう! ということで、子供を乗せる自転車も電動アシストタイプに決めたのだ。

 また、「3人乗り自転車」専門のシリーズである点。電動アシスト自転車といえば、パナソニックやヤマハ、三洋電機などからも出ているが、3人乗り限定のシリーズ展開というは、業界でも珍しい。シリーズ全機種が幼児2人同乗基準適合車であり、チャイルドシートなど、オプション品も充実しているのだ。

リチウムイオンバッテリーは、6.0Ahの大容量タイプ。鍵付きなので、自転車から離れても安心

 電池容量が多いという点もポイントとなった。製品名に「DX」とあるが、どのへんがデラックスなのかというと、電池容量がデラックスなのだ。「DX」が付かない「アンジェリーノアシスタ」では、リチウムイオンバッテリーの容量が4.0Ahなのに対し、DXでは6.0Ahの大容量バッテリーが採用されているのである。1充電あたりの走行距離の目安は、アンジェリーノアシスタでは標準モードで16kmだが、DXでは25kmと、約1.5倍に延びている。

 さらにいえば、人力とアシスト力の比率が、従来の1:1から1:2に強化された点も購入理由のひとつ。我が家でこれまで使用していた電動アシスト自転車は、2007年に購入した三洋電機の「エナクル」で、これはアシストの比率が人力:動力=1:1のものだ。このアシスト比率は、2008年12月より緩和されており、アンジェリーノアシスタも人力:動力=1:2の新基準に対応している。

 個人的には、このアシスト比の強化に大変注目している。アシスト力の1:2は、時速10km以下の場合に限られているため、発進時のペダルをこぐ力がアップすることになる。重い子供を前後に乗せて発進すると、走行開始時にどうしてもふらふらしてしまいがちだが、モーターによる強力なアシストによって、スピーディーに加速でき、転倒などの危険が未然に防げる仕様となっているのだ。

 このほか、ハンドルを回すだけで簡単にギヤが変えられる「3段変速グリップシフト」も、使いやすそうで気に入った。


「3段変速グリップシフト」。持ち替えなくても、ハンドルを回すだけでギヤを変えられる


安定感抜群、子供の乗り降りが簡単にできる

今回、購入したカラーは「ジュエルブラウン」。シックなカラーリングで、高級感がある

 というわけで、我が家に到着したアンジェリーノアシスタが左の写真だ。本体カラーはジュエルブラウン。ほかにはクリームアイボリー、ルビーレッド、アッシュブルーの3色用意されている。

 個人的な感想だが、アンジェリーノアシスタはどの色もシックでとてもおしゃれ。子供を乗せるママチャリは、どうしても所帯じみたダサイ印象になってしまうが、若いママでも抵抗なく乗れそうな洗練された色とデザインのように見える。このジュエルブラウンは、ホームページには「ヤングミセス系」と紹介されているが、ヤングミセスと言うにはトウが立ちすぎている私でも、落ち着いたデザインで違和感なく乗ることができる(と思う)。年齢を選ばず、幅広い層で使える飽きのこないデザインだ。

 アンジェリーノアシスタの重量は、本体だけで31.6kgと、数値を見ると重く感じられるかもしれない(電動ではない普通タイプの3人乗り自転車「アンジェリーノ」は25.9kg)。しかし、子供二人の体重が30kg近くになることを考えれば、これくらいの重量があったほうが安心できる。フレームは太く、全体的にしっかりしていて、普通の自転車よりも安定感がありそうだ。押して歩いてみたが、重量はそれほど感じなかった。

 まずは、アンジェリーノアシスタに子供2人を乗せてみた。

 子供を乗せるときは手元でロックできたり、太いスタンドでしっかり立てることができて、走行時よりも怖い子供の上げ下ろしもラクに行える。前輪が小さく、前部座席も低めなので、子供を乗せるときもそれほど腕が疲れない。

スタンドはかなりワイドで安定感抜群! 一番不安な子供の上げ下ろしだが、この安定感は心強い前輪は22インチ、後輪は26インチ。前部シートがハンドルにはさまっている状態なので、普通の自転車にシートを装着するよりも低く、子供を載せやすくなっている前に子供を乗せるのはこれが初めて。前輪が小さいので子供を乗せやすいはずなのだが……息子が足を曲げてくれず、四苦八苦。子供は予想外の動きをするので注意が必要
2才の息子は前部座席、5才の娘は後部座席に座ってもらう。サイズはぴったり。ヘルメットは絶対につけよう!!
足がしっかり地面につくので、子供を二人乗せても安定感がある

 ところで、3人乗りの電動アシスト自転車を購入する前には、「適正身長」を確認しておきたい。子供を乗せる自転車は、普通の自転車と違い、転倒しないように停止時には足をしっかり地面に着けて踏ん張る必要がある。そのため、3人乗り時は両足裏全体が地面に着く高さが、適正身長となっている。

 私の身長は162cmなので、適正身長が155cm以上のアンジェリーノアシスタ(タイヤサイズが前輪22インチ、後輪26インチ)を購入したが、小柄な人のために、適正身長が144cm以上の「アンジェリーノミニ アシスタ」(前輪、後輪とも22インチ)も用意されている。実際に店頭などで乗ってみて、足裏がきちんと地面に着くかどうか試してから選んで欲しい。

パネル式3モード手元スイッチ。上下の切替ボタンで走行モードを簡単に切替えることができる。バッテリー残量も4つのLEDで知らせてくれるので、一目でわかるタイヤは高圧対応で、適正圧力は4.5気圧。一般的なタイヤよりも太めで、パンクしにくく軽い走行感を実現しているという
タイヤの空気圧を常にチェックする「空気ミハル君」。空気圧が不足すると、白から赤に変わる。こうやって一目でわかるのは嬉しいサドルは大きめでフカフカ。大きなお尻でも安定感バッチリ。サドルは足裏が付くまで下げておく。普通の自転車より「ちょっと低いな」くらいがちょうどいい

なんという軽さ! 子供を2人乗せているとは思えない!!

 今回、子供2人乗せて走るのは初めての経験だ。重い子供を前後に乗せて、うまく走ることができるのか? ドキドキヒヤヒヤしながら、広い近所の公園で試してみた。

 なんとビックリ!! 驚くべき軽さだ。想像していた以上に、発進時がラクチンだ。

 ふらつきもなく、スイーッと前に出る。子供2人乗せているなんて思えない軽さである。加速して安定するまでの距離が短いので、これなら狭い場所でもすぐに安定した走行に入れるだろう。また、サドルが低いので、停車したときに両足がしっかり地面につき、踏ん張ることができる。

 低速で走ってみても、ハンドルがユラユラしない。すばらしい安定感だ。


子供2人載せたのはこれが初めて。しかし、走り出しは本当に快適! 普通の自転車では、走り出しの数mはかなりグラグラするものだが、ふらつきはほとんどない(標準モード、ギヤは2)

 椅子に座っている子供たちも、頭までホールドするチャイルドシートの座り心地がよいらしい。息子は非常に怖がりだが、最初からニコニコ笑って前部座席に座っていた。3人乗り電動自転車、予想外にスゴイー!!

 そんなわけで、次回は3人乗り自転車は普通の自転車とどこが違うのか、機能面についてもっと詳しくレポートします!



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2010年8月9日 00:00