長期レビュー
パナソニック「食器洗い乾燥機 NP-TS1」 最終回
3回に渡ってお届けしてきた食器洗い乾燥機NP-TS1のレビューだが、今回で最終回となる。これまでに導入編、機能編とお届けしてきたが、今回は洗浄コースについての説明と、更にコース別の洗浄能力、コースの使い分け、更に気になるメンテナンスなどについて説明したいと思う。
■用途や状況に応じて使い分ける6種類の洗浄コース
NP-TS1には6種類の洗浄コースが搭載されている。本体の操作パネルには、「標準」「高温パワフル」「低温ソフト」「ゆとり」「少量」「スピーディー」など、そのまま内容が想像できるようなコース名がズラリと並ぶ。詳しくは以下の表をご覧頂きたい。
NP-TS1に搭載されている洗浄コース(NP-TS1取り扱い説明書より) |
しっかり落としたいのか、それとも時間を重視するのか、省エネ重視にするのか、なんてところが使い分けのポイント。ちょっと、わかりにくいのが「低温ソフト」というコース。これは、熱に弱いプラスチック製の食器などを洗うときに選ぶというもの。プラスチック製の食器というと、ちょっとイメージが沸きづらいが、幼児用の食器には多用されている素材だ。小さいお子さんがいるお宅では、重宝しそうなコースだ。
また、表の中で注目したいのが、給水温度によって、運転時間が違うということ。ガスや、電気給湯器の給湯スイッチを入れないまま本体の運転を行なうと、運転時間が長くなるほか1回の運転による消費電力も変わってくる。運転前には、給湯スイッチを確認した方が良いだろう。
■洗浄能力を比較――アラ、汚れは全く残りませんでした
さて、運転コースをズラっと並べられると、気になるのはコースごとの洗浄能力と消費電力の差だ。きれいな洗い上がりをキープしつつも、電気代はなるべく抑えたいというのが本音。そこで、使用後の食器をサンプルとして、経過時間、使用コース、洗い上がりの差を比べて検証してみたい。
と、さっそく意気揚々と実験を始めたまでは良かったが、いざ洗浄能力の差を見てみると、工程時間が最も短いスピーディーコースでほとんどの汚れが落ちてしまった。
具体的には以下の写真でご確認いただきたいが、カレーの皿では食べ終わった直後、12時間後、更に24時間後でカチカチになった状態もぴかぴかの洗い上がりになった。ちなみにこれらはいずれもスピーディーコースを選択した時の場合だ。
■スピーディーコース洗った場合
・カレーを食べた後の食器
一度にたくさん作れるカレーは我が家では月イチのお馴染みメニュー。お米には古代米を混ぜている | 作るのは簡単だが、後片付けが大変。左は食べ終わって約12時間、左は約24時間経ったもの。表面が乾いていて、手洗いの場合だと汚れを落とすのがかなり大変だ |
お皿とお皿の間には少しスペースを設けた | 洗い上がりを見てびっくり! 汚れはどこにもない | 一緒に洗ったお皿や、スプーンもピカピカだ |
・ コーヒーを飲んだ後のマグカップ
コーヒーを飲んだあとのマグカップ。時間が経つとそこの方にコーヒーが固まってしまう | これも、スピーディーコースでしっかり落ちた |
さすがにスピーディーコースだけの洗い上がりを掲載するのも忍びないので、以下に標準コースでの洗い上がりも掲載する。さすがにこれは落ちないだろうと思っていた、グラス底に固まったコーヒー牛乳もしっかり落ちていた。
■標準コースで洗った場合
頑固な汚れがついた食器たち。どれも使ってから12時間ほど経過したもの | 標準コースを選択 |
・ 頑固なココアの汚れ
底の方に固まったココアの飲み残し | ココアがこびりついていたマグカップもこの通り |
・ 耐熱皿の油汚れ
グラタンを作った後の油ギトギトの耐熱皿 | 耐熱皿の汚れもすっきりと落ちている | コーヒーメーカーの専用ポット。さすがに中の茶しぶまでは摂れないが、フタはスッキリと汚れが落ちた |
・ 使ってから半日経って固まった卵の黄身
卵焼きの黄身も手洗いだとなかなか落ちない汚れだ | 黄身のこびりついていた皿、すっかりきれいになっている |
・ ひっくり返しても落ちてこない固まったコーヒー牛乳
さすがにこれは無理だと思ったのが、コーヒー牛乳が底に固まったグラス | 洗い上がりはこの通り。隅の汚れまでしっかり落ちている | マイボトルとして活躍中の1人用魔法瓶。底の汚れが洗いにくいのが問題だった。食洗機を使い始めてからは汚れはもちろん、しつこいコーヒーのニオイまですっきり落ちる |
ただし、注意したいのは、これらはあくまで“目に見える汚れ”であること。特にこれからの季節は菌が発生しやすいので、使用直後に洗うのが一番だろう。
実は、家事の負担が少なくなったという理由の次に、嬉しかったのがこの洗浄力の強さだった。
というのも、忙しい時や時間が限られている時、またはイライラしている時などついつい、食器を適当に洗ってしまいがち。そういうときに洗った食器はやっぱり洗い上がりに差が出る。汚れがちゃんと落ちていなかったり、時にはご飯粒が残っていたりなんてこともあった。
それが、NP-TS1を使い始めてからは、いつでも一定以上の洗浄能力が保証されているのだ。実際、使い始めてからは、食器の洗い残しや汚れを発見したことが一度もない。食に関することだけに、いつでも同じ仕上がりをキープしてくれるというのは大きな“安心感”につながる。
■早くて、安い、汚れもしっかり落ちるスピーディーコース
実際の洗い上がりを見てみても、NP-TS1の洗浄能力はかなり確実なもの。よっぽどしつこい汚れでないかぎり、コース間の洗浄能力の差はそれほどない。
というわけで、根がせっかちな性格の私は、自宅に居るときはほとんどスピーディーコースを選択している。「自宅に居るとき」と限定したのは、スピーディーコースでは乾燥工程が省略されているからだ(乾燥工程を入れた運転にアレンジもできる)。食器洗い乾燥機では、高温のお湯ですすぎを行なうため、運転終了後すぐに本体のフタを開けておけば、すぐに自然乾燥してしまう。逆に、自宅にいない場合、濡れた食器が長時間庫内に密閉されるのは衛生的に問題がありそうなので、外出時には、乾燥工程が含まれている標準コースを選んでいる。
スピーディーコースを選ぶもう1つの大きな理由は、電気代を安くするということにある。乾燥工程がないのだからその分、電気代が安いのは当然なのだが、実際に比べてみるとかなり大きな差があった。
また、電気代を安くするもう1つのポイントは運転中にガスのスイッチを入れておくということ。この一工夫で、電気代はかなり抑えられる。
標準コースで、ガスを点けなかった場合。1回につき、約14.2円の電気代がかかる | スピーディーコースで、ガスを点けなかった場合。1回の運転で9.6円 |
給湯用のガスを点けた場合ではどうだろう | 標準コースでは約9.2円 | スピーディーコースでは約7円 |
■鍋や五徳はパワフルコース
前述したように、私個人の場合は、標準コースとスピーディーコースに頼ってしまっているが、NP-TS1ではそれ以外にも多くの洗浄コースが用意されている。特徴などは上記の表を見て確認していただくとして、ここでは実際の使い分けについてお話ししたい。
1日1回のまとめ洗いを基本としている我が家では「少量コース」はほとんど使っていない。また、プラスチック製の食器を使っていないので「低温ソフトコース」も無縁に近い。せっかちな性格の私には「ゆとりコース」はどうも性に合わない。というわけで、標準・スピーディーコース以外によく使っているのが「高温パワフルコース」だ。
これは、主に通常のコースと比べてすすぎ時間が長く、使用する温度も高めの設定になっているコースで、油がべったりついた五徳や、鍋を洗うときに使っている。
しっかり汚れを落としたい鍋はパワフルコースを選択 | 五徳など油汚れが気になるときもパワフルコースが便利 |
食器の汚れ具合や、その時の状況、生活スタイルに応じて洗い方まで選択できるのはやはり嬉しい機能だ。
■専用洗剤の値段がチト痛い……
普通の食器洗い用洗剤に比べ、かなり割り高な食器洗い乾燥機専用の洗剤 |
私的家電ランキングで早くも殿堂入りしそうなくらい気に入って使っているNP-TS1。水道代は確実に節約につながっている。電気代に関しても、劇的に上がるということもなく、許容の範囲。少しくらい上がった金額よりも実際の機能に満足しているというのが正直な感想だ。
そんな私が一点だけ気になっているのが、食器洗い乾燥機専用の洗剤の値段。食器洗い乾燥機専用洗剤では、ジェル、粉末、タブレットなど様々な種類のモノが出回っているが、どの製品も普通の食器用洗剤と比べると、かなり割高だ。実際に下の表を見てもらえば一目瞭然だろうが、最大で5倍以上ものお値段が付いている。
製品名 | フィニッシュパウダーボックス | フィニッシュタブレット | ハイウォッシュジョイ | フレッシュアップ食器洗い機専用ジェル | チャーミークリスタルジェル | キュキュット |
メーカー | アース製薬 | P&G | エステー | ライオン | 花王 | |
内容量 | 500g | 5g×35 | 700g | 400ml | 600g | 700g |
購入場所 | ケンコーコム | 楽天市場 | ケンコーコム | Amazon.co.jp | ケンコーコム | |
購入価格 | 498円 | 473円 | 733円 | 460円 | 498円 | 698円 |
タイプ | 粉末 | タブレット | 粉末 | ジェル | ジェル | 粉末 |
使用想定回数(約6人分) | 約56回 | 約35回 | 約100回 | 約80回 | 約67回 | 約116円 |
もちろん、これらの洗剤にもそれなりに高い理由がある。例えば、食器を洗うときに一緒に庫内の洗浄をするものだとか、グラスをキレイに磨きますよ。だとか、それぞれの製品で付加価値を謳っている。が、イチ主婦としては毎日使うものだけに、それよりはやはり値段が気になる。いくつか使い比べてみたが、やはり付加価値の機能よりも値段に負けて、今は粉末タイプの詰替用を愛用しているというのが実情だ。
粉末タイプというと、洗濯のイメージで「溶けにくいんじゃないか」とか「食器に洗剤がついていたらいや」なんて声が聞こえてきそうだが、食器洗い乾燥機では、高温のお湯で洗浄するためそんな心配は不要。実際、ただの一度も溶け残りの洗剤を発見したことはない。
■お手入れはほとんど苦になりません
ここでは気になるお手入れについて説明しよう。
まず、毎日するお手入れとしては、残さいフィルターを洗うこと。残さいフィルターは、食器に残っていたご飯粒や野菜屑などをたまる網のようなもの。本体の底部付近に設置されていて、前面から簡単に取り出せる。要は、シンクの網と一緒の役割を果たしている。と、いっても、形状は平べったく、サイズも小さいのでそれほど苦にはならない。たとえばシンクの網を洗うよりはずっと楽だ。
残さいフィルターは毎回洗う必要がある | 残さいフィルターには取っ手が付いていて、取り出しが簡単 |
本体前面のフタの内側は汚れが溜まりやすい |
また、月に1回程度は、庫内を乾いた布で拭くようにとある。特にフタの溝あたりに汚れが溜まっきて、赤カビのようになってくるので、必ずしたいお手入れだ。カビなどを防ぐためには、使用しないときは、使用しないときはフタを開けたままにしておく、残さいを必ず捨てるなどいくつか予防策がある。また、ニオイが気になるときは、食器はセットせず、洗剤だけを入れてカラ運転させるというのも方法の1つだ。
半年近く使ってみて、これらのお手入れはほとんど苦になっていない。残さいフィルターの処理も慣れれば必ずやるようになるし、庫内の汚れに関しては、気がついた時にサット拭き取ればそれで終わりだ。手洗いで、そのたびにシンクの掃除をすることに比べれば、ずっと負担は少ない。
■生活が変わる!
今や我が家には“なくてはならない家電”となった食器洗い乾燥機。まだまだ普及率が低いというのが不思議に感じるほどだ。それは、なくてもなんとかなる家電、贅沢家電のイメージがまだまだ強いからだと思う。実際、母に言われたのが「夫婦2人の洗い物なんておままごとみたいなもんじゃない」という一言。5人家族の台所を握っていた、母に文句も言えるはずもなく、ただ頷いてその場はやり過ごしたが、まだまだ贅沢家電のイメージが強いんだろうなというのを実感した瞬間だった。本音で言わせてもらえば、家族が多かったり、忙しくて自宅にいる時間が少ない“普通の家庭”でこそ重宝する製品だと思う。
なにより、洗い物を溜めなくなる。「食器を洗う」という行為が負担で無くなるので、食器を使った人、その場に居る人が洗い物をするということが、ごく自然にできるようになる。実は我が家では、食器洗い乾燥機を導入してから2対8くらいの割合で夫が食器を洗ってくれるようになった。
こんな風に書くとまた鬼嫁なんじゃないかと思われてしまうが、夫は楽しんでやっているようなのだ。休みの日になると、食器だけでは飽きたらず、何か洗えるものはないかと探しはじめ、こちらが止めない限り、冷蔵庫の中の分類トレーまで洗い出そうとする。
元々キレイ好きの彼なので、さほど不思議でなことではないが、今までは、こっちは休みたいのに――とキリキリしていた。それが、システマティックに食器を次々を洗ってくれる食器洗い乾燥機の導入で「旦那→キッチン、私→リビング」という状況があまり気にならなくなった。というのも、そこまでやっても実際の作業時間は15分程度で済んでしまうからだ。導入後は、確実にキッチンがキレイになった。
エアコン、冷蔵庫、洗濯機などが当たり前に普及している現代では、家電を買ったからといって劇的に生活が変わると言うことはほとんどない。が、食器洗い乾燥機を購入したことで我が家は確実に生活が変わった。お金持ちが持つ贅沢な家電というイメージを1回捨てて、ぜひ検討してほしい。共働きの夫婦や、小さい子供がいる家族などごく一般的なご家庭でこそ、もっとも活用できる有能な家電だ。
2009年5月26日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)