カデーニャ

一筋縄ではいかない中国工場でのモノづくり【キキテーニャ】

 「ものづくりって何?」「そもそもハードウェアって?」という非ガジェット女子、レイナがインタビューをするコーナー、「キキテーニャ」。株式会社Cerevoの岩佐さんを相手に、中国深センの電気街「ファーチャンペー」と中国工場の秘密に迫る企画の第4弾では、Cerevoも取引する中国の工場について。一筋縄ではいかない、中国のモノづくりの真相を伺う。

 第3回はこちら

 レイナ:この前、ファブレス(Fabless)という概念を初めて聞いたんです。まだよくわかっていないのですが。

 岩佐:fabは工場のことなので、ファブレスというのは工場を持たないメーカー、という意味ですね。弊社もファブレスで、中国の工場と契約してます。

 レイナ:業界的には、いまは当然ファブレスやという感じなんですか? 私みたいな素人は、メーカーなら工場くらい持っているんじゃないか、と思っていたのですが。

 岩佐:大手でもファブレスなメーカーは多いんです。例えばアップルや一部のソニー製品なんかもファブレスなんですよ。

 レイナ:なるほど。ものづくりってそうやって成り立ってるんだ。

 岩佐:ファブレスについては、家をイメージするとわかりやすいです。弊社はハウスデザイナーや一級建築士事務所で、家のすべてを設計します。どういう素材で壁を作るか、どんな間取りにするか、コンセントはどこにつけるか、キッチンはこんな風に、って。詳細な図面を作る、いわゆる設計ですね。実際に家を建てるのは大工さんです。今はもう分業ですよね。

 レイナ:家の例え、わかりやすいです。

 岩佐:Cerevoの場合は、こんな感じですね。

  ・壁紙や柱をつくっているメーカー:電子部品メーカー
  ・建築士&ハウスデザイナー:Cerevo
  ・大工:工場(EMS)

 レイナ:それで、Cerevoさんは中国の工場と契約してるということですね?

 岩佐:そうです、中国の辺鄙なところにある深センの工場です。

 レイナ:どんな人が働いていますか?

 岩佐:工場の人たちは、独身の若い人がほとんどで、みんな寮に住んでます。近くには一杯20円のラーメン屋とかあって、面白いですよ。

中国の工場と日々奮闘?

 レイナ:Cerevoさんは、その工場で働く人たちに設計通りに組み立ててもらうという感じですね。今まで聞いてきた深センのイメージからすると、いろいろと予定通りに行かないことも多いのかな、なんて思いますが。

 岩佐:トラブルはいっぱいありますね(笑)。ここは0.1mmと指示を出したのに全然厚みが違ったり、 「丸」と発注したら丸は丸だけど楕円形だったり、見た目は問題ないけど機能的に問題があったり。

 レイナ:それは何が原因なんでしょう。工場の人が買うべき部品を間違っていたとか?

 岩佐:先ほどの家の例えで言うと、蛇口を買ってきて付けるだけではかっこいい洗面台にならないので、我々の場合は蛇口メーカーに設計図を送って蛇口を新しく設計してもらったりすることがあります。そうすると指定したサイズ通りじゃないとか、表面が美しくないとか、こちらの指示通りの表面処理になっていないとかが日常茶飯事なのです。

 レイナ:中国のクオリティー問題は日本のメーカーの悩みどころなんじゃないですかね。

 岩佐:ただ、一概に中国が悪いというわけではなくて、文化の違いというのが大きいですね。我々が求めている品質はこのくらいなんだ、というのをしっかり伝えて理解してもらうことが中国とのやり取りではとても大事です。

 また、環境の違いというのもあります。深センは湿度が高いので、説明書が湿気を吸ってしわくちゃになって使えなくなったり。革製品はすぐカビが生えてしまったり。電子部品は特別な冷房がきいた倉庫にいれておいてありますが。

 レイナ:なるほど、中国と日本では人も文化も環境も全然違いますもんね。

 岩佐:そうなんですよね。考え方も環境も違う。中国の工場の人たちとうまくやっていく方法を模索しながら日々奮闘しています。

この記事は、2017年8月18日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

Reina

非ガジェット女子。普段は哲学女子。nebulaを運営しています。