【ライティングフェア2011】
LEDに続く新光源「有機EL照明」の試作品が続々登場

 照明機器・技術の展示会「ライティング・フェア2011 第10回国際照明総合展」が、3月8日、東京ビッグサイトで開幕した。会期は11日までの4日間で、入場料は1,500円。本誌では家庭用の照明器具を中心にお伝えする。


有機EL照明パネル

 LEDに続く新しい照明として注目されているのが「有機EL照明」。面発光ができる点や、目にやさしい光、薄型で軽い点が特徴となる。一般向けの照明としてはまだ投入されていないが、NECライティングやパナソニックといった大手メーカーのブースでは、来年以降の商品化に向けて、試作品が公開されていた。

 当記事では、ライティングフェアにて公開されていた有機EL照明の試作品について、写真を中心に紹介する。新しい光源の息吹を感じていただければ幸いである。


NECライティング、有機ELパネルを差し込むと光る装飾照明など

NECライティングのブースの一角に設けられた、有機EL照明の試作品の展示スペース

 NECライティングのブースでは、有機EL照明パネルを用いたシーリングライトやスタンドライト、装飾照明の試作品を展示していた。

 シーリングライト「Knity(ニッティ)」は、織物のテキスタイル(布地)をイメージにデザインされたシーリングライト。正方形の有機ELパネルを縦7個×横7個に並べ、その上に半透明のカバーを重ね合わせており、薄くて軽い有機ELの特徴を活かした、デザイン性の高い照明だ。天井から降り注ぐような、やさしい光も特徴となる。

 フロアスタンドの「Cube Stand(キューブスタンド)」は、内側が有機EL照明で光るキューブ(立方体)を、縦に6つ組み合わせたスタンド照明。このキューブは、ひとつひとつが回転し、向きを変えることができるため、キューブが空中に浮いているようなデザインにすることも可能となる。

シーリングライト「Knity(ニッティ)」。パネルを覆うカバーが、布地のように編み込まれている。パネルもカバーも薄いため、圧迫感は感じられない立方体を重ね合わせたフロアスタンドライト「Cube Stand(キューブスタンド)」キューブはそれぞれ向きが変わるため、写真のようなデザインにすることも可能だ
装飾照明の「Infinite Puzzle(インフィニットパズル)」

 3つめの「Infinite Puzzle(インフィニットパズル)」は、有機ELのパネル形状を活かしたおもしろい照明。壁に掛けられた本体には、縦横に16本のスリットが開いているが、ここに有機EL照明パネルを差し込むことで、パネルが光を放つという仕組みになっている。どこに、どっち向きに、どれだけのパネルを差し込むか、自分のさじ加減ひとつで、何通りもの照明が作れる点が特徴だ。

 NECライティングではまた、有機EL照明のブランド名を「LIFEEL(ライフィール)」と命名。7日には1W当たりの発光効率が60lm/Wで“世界最高レベル”を謳う有機EL照明パネルを開発したと発表しており、有機EL照明への力の入れ具合が伺える。2011年度中には、一般向けに有機ELパネルを採用した照明機器を発売する予定という。

光源となるのは、この有機ELパネルパネルをInfinite Puzzleのスリットに差し込むすると、パネルが点灯。差し込む場所によって、オリジナルの照明が作れる点がおもしろい
NECライティングは、発光効率60lm/Wで“世界最高レベル”を謳う有機EL照明パネルを開発している有機EL照明のブランドネーム「LIFEEL(ライフィール)」を新設するなど、有機ELに掛ける意気込みがうかがえる発光効率のロードマップ。これによれば、2015年前後には、発光効率でLEDを越えることになる
 

山田照明、フィリップスの有機ELを使用したデスクライトを6月に発売

山田照明のブースで公開されていた、デープルスタンドライト。フィリップスの有機ELモジュールを光源に採用する

 山田照明のブースでは、6月末に発売を予定している、光源に有機ELを使用したテーブルスタンドライトを公開していた。

 光源にフィリップスが量産化に成功した有機ELモジュール「LumiBlade(ルミブレード)」を採用したテーブル用のスタンドライト。光源はスタンドの先に備えられている。モジュールの光束は75lmで、消費電力1W当たりの発光効率は25lm/W。寿命は約10,000時間となっている。

 光源のほかにも、透明に輝くセード部分も特徴。セード全体に、職人によるダイヤモンドカットを施し、さらにセードに熱を加えることで、土台~セード部分をグニャッと曲げた、独特のデザインとなっている。予定価格は約20万円前後で、かなりの高級品だ。

光源にフィリップスの有機ELモジュールを採用する。高級感漂う本体デザインも見ものだフィリップスのブースで公開されていた有機ELモジュール「ルミブレード」

カネカ、“10万円を切る価格”の有機ELスタンドライト

 カネカのブースでは、有機EL光源パネルを使用した照明器具の試作品「デスクライト」、「ライトオブジェ」、「シェードランプ」が公開された。

 これら3製品は、2月に行なわれた同社の発表会で「ライティングフェアでどれか1つを300個販売する」とされていたが、ブースでは販売されていなかった。販売は4月以降の予定で、価格は10万円を切るという。

カネカのブースで展示されていた「デスクライト」。光源に有機ELパネルを4つ採用しているインテリアライトの「ライトオブジェ」
部屋の隅に置いて、間接光として使用する「シェードランプ」「デスクライト」の使用イメージ

パナソニックも2011年度中に有機EL照明を発売予定

パナソニックの有機EL照明の展示コーナー

 大手照明メーカーではこのほか、パナソニックのブースで有機EL照明の試作品が公開されていた。パナソニックも、2011年度中に一般向けの有機EL照明の発売を目指しているという。

 同ブースでは、棚や薄壁に有機ELパネルを埋め込んだ展示を行なっており、有機EL照明の薄さをアピールしている。パネルには割れにくい薄型樹脂のフレームを採用しており、メンテナンス時には、有機ELパネル部だけを取り外し、交換できるという。また、色の再現度を表す標準演色評価数はRa90と、高い数値となっている(最大はRa100)。


透明の棚に有機ELパネルを埋め込む展示光源は下向きに設置されていた真横から見たところ。ここまで薄くても発光できるのが有機ELのメリットだ
パネルには割れにくい薄型樹脂のフレームを採用。メンテナンス時には、照明部分だけを抜き出すこともできるというシーリング照明も展示されていた


有機EL照明が発光する仕組み電球色以外のほか、赤や青など、カラフルな発光も可能だ(カネカの有機ELパネル)有機ELは現在、一部の携帯電話やオーディオプレーヤーなどで採用されているが、照明用途としてはまだ一般に浸透していない


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(正藤 慶一)

2011年3月9日 00:00