年末特別企画

料理に疲れた限界人間を癒してくれた1冊のレシピ本【私の2023】

購入して2カ月ほどですが、たぶん、人生でいちばん使い込んでいるレシピ本です

30代に突入したからなのか、ものすごく疲れやすくなったと感じた2023年。残業しているわけでもないのに仕事が終わったらへとへとで、なんだか毎日くたびれていました。

特にしんどいと感じるのは、日々の料理です。仕事を終えて追われるように作って疲れ切って。テイクアウトしたりネットスーパーを使ったり、できる限り楽するようにはしているのですが、やっぱり負担に思ってしまいます。そして、料理は好きだったはずなのに、しんどいと感じてしまうことになんだか悲しさもありました。

ミールキットや宅配弁当、作り置き、自動調理鍋などあらゆるものを試しましたが、どれもしっくりきません。一通り試して気付いたのは、自分はメニューを自由に決められないのが嫌なのと、食材を切ったりするのが負担に感じるということでした。

そんな折、X(旧Twitter)で見かけたのが、料理家で管理栄養士の長谷川あかりさんのレシピ。シンプルで作りやすそうなのに、なんだかとってもおいしそうに見えたのです。Xに掲載されているレシピを1~2品作って、これは当たりだと確信。著書の「材料2つとすこしの調味料で一生モノのシンプルレシピ」(飛鳥新社)を購入しました。

材料も作り方もシンプルなのに、おしゃれに見える長谷川あかりさんのレシピ

お肉や魚といったメイン食材1種類に、野菜1種類。2つの材料だけで作るレシピは準備も楽で、いろんな食材をいろんな切り方で下ごしらえするのがしんどかった筆者にぴったりでした。

調理の工程もほとんどが煮るだけ、焼くだけで簡単。例えば「鶏肉とパプリカのくたくた」は、フライパンでパプリカから順番に焼き、最後は15分ほど蒸し焼きにして仕上げます。味付けもにんにく、白ワイン、塩、オリーブオイルとごくシンプルなのに、これがとってもおいしい。派手な料理ではないけれど、じんわり染みるおいしさです。

初めて作ったのは「鶏肉とパプリカのくたくた」。オレンジパプリカがなくて赤パプリカですが、パプリカの甘みがぐっと引き出されておいしい!

このレシピ本のお気に入りポイントは、簡単さ、おいしさだけではありません。野菜たっぷりで安心感もあるうえ、複数の野菜を少しずつ使うといったことがないので、中途半端に余った野菜をダメにしてしまうことが減りました。

また、レシピがどれも普段の食卓に合うものなので、何を作るか迷った日はとりあえずこの本の中から選べばOK。献立にも悩まなくなりました。レシピ本って、いくつか作って眠らせちゃうことが多かったのですが、誇張なしでほぼ毎日活躍しています。

豚肉とピーマン、しょうが、海苔を巻いた春巻き。揚げ物だけど、具は炒めなくていいし油も少しでいいのでハードルは高くありません。調味料は塩だけなのに感動のおいしさでお酒が進む……!

ここ最近、自分で作る料理があまり好きではなかったのですが、この本は何を作ってもおいしい。そして自分が作った料理がおいしいと自己肯定感が上がるという好循環に。おいしいごはんで幸せになるのはもちろんですが、おいしいレシピもまた人を幸せにするのだなと気付きました。

長谷川さんのXでつづられるレシピへの思いにも共感していて、特に「食べ疲れない」ことにこだわっている部分は本書を通じても伝わってきます。野菜多めで食べるとすっきりするし、こっくりした味わいのものもあるけれど、重たくないから毎日でも食べられる、そんなレシピばかりです。

シンプルだから食べやすくて作りやすい、そしてなんだか穏やかな気持ちになれる。食べる人にも作る人にもやさしいレシピ本との出会いで、限界ギリギリの日々から救われました。掲載されている全60レシピを制覇したら、既刊の「つくりたくなる日々レシピ」(扶桑社)、「クタクタな心と体をおいしく満たす いたわりごはん」(KADOKAWA)にもチャレンジしていきたいです。

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鄭 恵慶