やじうまミニレビュー
タカラトミー「ホームカイト」
~風もない部屋で遊べる不思議な凧
by 藤山 哲人(2013/6/3 00:00)
いつからだろう? 河川敷で凧揚げする姿を見かけなくなってしまったのは? 筆者の自宅近くには、鶴見川という大きな川が流れており、広い河川敷もある。筆者が子供のころの遊び場といえば、だいたい河川敷だった。正月にもなると、三角形の凧「ゲイラカイト」……は買ってもらえなかったので、角材とゴミ袋で自作したヤツを引っさげて、よく凧揚げをしに行ったものだ。
しかし今となっては、凧が電線に引っかかって危ないだの、人に当たるだので、子供たちは凧揚げの楽しさを知らない。そもそも大都市だと、凧揚げするスペースすらないのだ。
そんな中、先日ニュースで凧揚げ大会を見かけた。端午の節句がある5月は全国的に凧揚げ大会が開催されるらしく、それを見てたら無性に凧揚げがしたくなった。
そこでオモチャ屋に行ってみると、部屋でも凧揚げできるというオモシロアイテムがタカラトミーから発売されいた。それが「ホームカイト」だ。ここでは、組み立てから実際に飛ばすまでをレポートしたい。
メーカー | タカラトミー |
---|---|
製品名 | ホームカイト 04 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 1,938円 |
手回し発電でプロペラを回す屋内専用の凧揚げキット
少し変わった製品なので、まずはホームカイトがどんなものなのかを説明しておこう。この製品は凧といっても、室内専用。風がある屋外では上げられない。風もない室内でどうやって凧揚げするかと言うと、ヘリコプターの模型のようなプロペラがついていて、これを回転させることで宙を舞うようになっている。ヘリコプターの模型は、電池でモーターが回るが、ホームカイトの場合は電池が不要で、手元にある手回し式の発電機を回すことで、モーターを回すようになっている。ちなみに凧糸のように見えるのは、極々細い電線だ。
この手回し式の発電機が実にいい感じで、本物の凧を揚げるとき凧糸を送ったり引いたりする感覚や重さに、ものすごく近いのだ。凧揚げしている感がすごくある。
そして本物の凧がすんなり上がることもあれば、なかなか上がらないこともあるように、ホームカイトも結構気まぐれ(笑)。ただ1回うまく上がったときの味を覚えると、なかなか上がらないときに何度も何度もトライして、つい夢中になってしまう。いい年した大人の筆者がそうなのだから、子供に遊ばせるとサルのように遊びまくるハズ。またコツを掴むとうまく上がる確率や滞空時間が長くなったりするので、これまた面白くなってくるのだ。
デザインは全部で6種類あり、何十年も前にはやった「ギョロ目」のモデルもある。たぶん40歳代の読者は、思わず懐かしい! と手にしてしまうだろう。
作り方は簡単だけど丁寧な作業が求められる
今回購入したのはミリタリーグリーンのモデル。箱の中には凧の部品が分解された状態で入っているので、組み立てなければならない。
手順としては4ステップほどしかないが、なにぶんバランスが命の凧なので、手先の器用さと丁寧な作業が求められる。なお対象年齢は6歳以上となっているが、組み立ては工作が得意な中学生以上といった難易度だろう。また軽く、柔らかくて細いプラスチック素材がほとんどなので、細心の注意も必要だ。その点を考えると、たとえ大人でも、買ってスグに飛ばしたいという人には不向きだ。
組み立ては、まず超小型モーターが仕込まれた本体とプロペラの取り付け方から。プロペラをまわすシャフト(軸)は、直径1mm程度と細く、曲がってしまうと飛び具合が不安定になるため、細心の注意を払ってはめ込む。またプロペラの向きにも要注意だ。
次は本体に、羽と翼を取り付ける。これも前後があったり、本体を曲げないようにまっすぐ取り付けたり、付属のテープで片方ずつを仮止めしてして作業しなければならないなど、うまく飛ばすためのポイントになる部分が多い。しかし組み立ての説明書は、紙面が足りなかったのか、多くのポイントが省かれているのが残念だ。
理系や技術系の人であれば「言われなくても知っていること」なのだが、多くの人にとってはわかりにくいだろう。通販の購入者レビューなどを見てみると、説明書が酷評されているが、おそらくポイントに加えて挿絵が部分、部分のアップばかりで、その部分が全体のどこにあるかがわかりづらいためだろう。工作には自信がある筆者でもパッケージの写真と説明書と見比べつつ組み立てたほどだ。
最後に尻尾のような足と、翼のバランスを取るバランサーを取り付けて完成となる。
最初はまったく飛ばないし、バランスも悪く一瞬しか飛ばない
普通のオモチャであれば、組み立てが終われば即遊べるものだが、ホームカイトは組み立て終わっても完成度は50%というところ。なぜならテスト飛行させながら、翼のバランサーを調整してまっすぐ飛ぶようにしてやらなければならないからだ。
しかも、ヘリコプターの原理や物理に詳しい人なら、恐らく「え? なんでこれで飛ぶの?」って突っ込むだろうぐらい、実に微妙なバランスで飛ぶのがホームカイトだ。というのも、ホームカイトのモーターは常に一方向に回転するので、飛ぶ時は常にモーターの向きとは逆向きの回転力(反作用)がかかる。ヘリコプターの機体が回転しないのは、お尻に逆回転力を打ち消す横向きのプロペラがついているためだ。つまり組み立てたばかりで、翼を調整していないホームカイトが、うまく飛ぶなんてまずありえない。
そこでうまく飛ぶように翼のバランサーを左に右にと移動させて、バランスを取る必要がある。これが思いのほか時間がかかり、初めて飛ばした時は、30分ほど時間を要した。しかも飛ばすたびにバランスが変わるので、そのたびに調整が必要になる(最初ほど時間はからないが……)。
バランスが変わってしまうの原因は、次の点だ。
・発電ハンドルを回す強さ……逆回転力が毎回変わってしまう
・電線のよじれ……逆回転力を助長したり抑制したりが変わってくる
・電線の長さ……逆回転力の伝わり方が変わってくる
・バランサーそのものの位置……モノにぶつかるなどでバランサーの位置がズレる
・モーターの加熱による回転数のバラつき……休みなしに長時間プロペラを回し続けた場合などに、温度で電気的な特性が変わる
ここに挙げたのは代表例で、無風の部屋の中であっても換気のために空気の流れがあるため、凧揚げする場所によってもバランスが変わるなどの原因もある。
このようにバランスが変わる原因はいくつもあるので、翼のバランサーの位置以外をできるだけ、同じ条件にしてやると調整が楽になる。少なくても次の点に注意するのがよさそうだ。
・発電ハンドルを早く回し過ぎない
・発電ハンドルの回転数は毎回同じにする
・発電ハンドルは最初遅く、だんだん早く回す
・電線がよじれてきたら戻してやる
・慣れないうちは電線を短くして飛ばす
ついやってしまうのが、一番最初に挙げた「ハンドルを回しすぎる」点だ。なかなか凧が上がらないので、つい発電ハンドルを思い切り回して浮力を得たいところだが、あまり早く回し過ぎると浮力以上に逆回転力が大きくなり、凧が安定しなくなくなる。筆者の試した限りでは、1秒間に2回転ぐらいがベストだ。毎回このペースを守るようにして、バランサーの位置を調整するといいだろう。
また発電ハンドルを、いきなり1秒間に2回のペースで回転させると、プロペラが回転した瞬間の逆回転力が大きくなり、これも安定して飛ばない原因となる。最初はゆっくり回し、1~2秒かけて1秒に2回転のペースまであげるといいだろう。
さらに遊んでいると、電線がどんどんよじれてくる。この電線のよじれも安定性を大きく作用するので、よじれが目立って(だいたい10回も飛ばすとかなりよじれる)きたら、元に戻してやるといい。また慣れないうちは、電線を短めにして飛ばすほうが簡単だ。最初から最長まで伸ばすと、飛ばすのが難しくなる。
調整がうまくいけば、こんな感じで天井近くまで飛ぶはずだ。
対象年齢6歳以上だが、実のトコ技術系の大人向け
ホームカイトの組み立てから凧揚げまで試してみたが、対象年齢となっている6歳ひとりでは、ちょっと組み立ては難しいばかりか、調整のしかたを試行錯誤してコツを見つけるのは難しそうだ。あくまで大人のアドバイスを必要とする。また大人であっても、コツコツとバランサーを調整することに楽しみを見出せない人には、ちょっと不向きだ。
しかし凧揚げの難易度は、電線の長さで大きく変化するので、小学生や技術に不慣れな人は、電線50cm程度からはじめれば楽しく凧揚げできるだろう。すべてが用意され、裏技や解説本を見れば遊べてしまうゲーム機では味わえない、重さや触覚などを使った遊び方を子どもに教えてあげられるおもちゃに間違いない。言い方を変えれば、小学生が楽しめる五感を訓練する知育オモチャといえる。
ホームカイトを強くオススメしたいのは、技術系やプログラマ、自作PC派の読者だ。まず確実にハマること間違いなし!「なぜ飛ばない?」と原因を考え、あれこれ試して飛ばすのは、パズルを解く楽しさとまったく同じで、まさに飯を食うのも忘れて没頭するだろう。技術系のお父さんであれば、子どもにお父さんの凄さを見せ付ける絶好のアイテムになる。っていうか、なりました(笑)。