やじうまミニレビュー

無印良品「オールステンレス三徳包丁」

~手入れが楽で、熱湯消毒もできる
by 但見 裕子


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


無印良品「オールステンレス 三徳包丁」

 私が使っている包丁は、昔ながらの鉄の刃、木の柄のものだ。

 木の柄は握った感じが落ち着くし、とりあえず手になじんだものなので使いやすい。ここ十何年、これ1本だ。

 ただ、毎日の手入れが面倒だ。鉄の刃はさびやすいので、使って洗ったらすぐに水気を取り、かわいた状態でしまっておかなければならない。「洗い桶につけておいて、あした洗おう」なんていうのは論外だ。

 また、木の柄は管理が悪いと腐食したりゆるんだりするので、これも洗ってよく乾かしておかなければいけない。「柄も毎回洗剤で洗い、定期的にクレンザーで磨きましょう」と、ものの本には書いてある。

 今回紹介する無印良品の「オールステンレス三徳包丁」は、刃も、柄もステンレスで継ぎ目がない一体型の包丁だ。すっきりした形で洗いやすそうだし、清潔に使えそうだ。

 小型のものと、一般的なサイズの2種類が発売されているので、試してみることにした。小型のものは刃渡り約12cm、柄まで入れた長さは約24cmある。大きい方は刃渡り約17cm、全体の長さは約28.5cmだ。


メーカー無印良品
製品名オールステンレス三徳包丁 小
販売価格2,000円2,900円
購入場所無印良品ネットストア

 製品名にある「三徳包丁」とは、野菜、魚、肉の三用途に使える包丁ということだそうだ。昔は「文化包丁」ともいった。

 野菜を切る菜切り包丁、魚を切る出刃、肉を切る牛刀など、それぞれ用途別の包丁を、総合用途の1本にまとめたものといえる。

柄は丸みと厚みがある上から鉄の包丁、無印良品の大、小。一番下は30cmの定規

 銀一色の一体型は、シンプルでスタイリッシュだが、「鋭い刃が、継ぎ目なく柄まで一体になっている」ところが、全身刃物のような印象を与えて少しこわい。その一方で、何だかのっぺりしてユーモラスな印象もある。

 考えてみたらホットケーキやハンバーグを食べるときのテーブルナイフは、やはりこのような一体型で、何の不思議も感じずに使っているわけだ。慣れの問題なのだろう。

立ててみたところ小と、洋食用のテーブルナイフ。どちらも一体型で構造が似ていることがわかる

 握ってみると、見た目に比べてかなり軽い。特に小の方は思っていたよりずっと軽い。柄まで金属なので、ある程度の重さを予想してしまうのだが、この柄は中空構造になっているために、見た目で感じるほどには重くないのだった。

 重さを量ってみると、刃渡り12cmの小が118g、17cmの大が156gだった。ちなみに前から使っている鉄の包丁は144gだ。

 刃は「切れ味に優れた三層割り込み鋼」だそうで、芯に、耐摩耗性と粘り強さに優れた「ステンレス刃物鋼」を用い、それを包む外側は「ステンレス鋼」の、サンドイッチ状になっているらしい。

 柄は十分な厚みがあり、木の柄と違って角が丸くカーブしている。そのためか、金属製ということで想像していたよりも、普通に手になじむ。柄に何の飾りも凸凹もないのは、洗いやすくて清潔に保てそうだが、何だかツルツルで手が滑りそうな感じがする。

 ともかく、実際に使ってみよう。しばらくの間、この2本で毎日の料理をしてみることにした。

 まず、大を使って、ジャガイモやニンジン、鶏肉などを切ってシチューを作った。切れ味は良好だ。特に、鶏肉がスパスパと気持ちよく切れた。皮を下にしてまな板に置き、身の方から切っていくのだが、このとき身は切れても皮のところで包丁が止まって滑ってしまうことがある。しかし、この包丁だと身も皮も抵抗なく一度に切れた。

 ニンジン、ジャガイモなどの皮むきも、問題なくできたが、私の手のクセのせいか、自分の鉄の包丁にくらべて、わずかに包丁が動きにくく感じた。これは、包丁の刃の厚さと関係があるように思える。並べて背の方から見てみると、数分の一ミリ、無印の包丁の方が厚いのだ。

 後日、長芋をむいたことがあった。サクサクとやわらかい素材だからどうむいてもいいようなものだが、くるりと丸くむくよりも、縦にスッスッとむくほうが、この包丁は得意だと感じた。刃付けの仕方が違うのだろうか。

 野菜はほかにも色々切った。おもに小を使った。

 冷やし中華のキュウリ、お味噌汁に入れる大根の千切り、玉ねぎの薄切り、みな問題ない。

トマトを薄くスライスして、長ネギの糸切りをかけたサラダ

 この包丁でとりわけ「うまく切れたな」と思ったのは、長ネギの糸切りである。繊維にそって細く切って、サラダやラーメンなどにのせるものだ。

 自分で「このくらいの細さに仕上がるだろうな」と目算したのより、さらにいくらか細く切れて、いい具合だった。こういうちょっとした飾り切りがうまくいくと、「料理らしい料理を作った」という満足を作った本人に与えてくれていいものである。

 次に、刺身にも挑戦してみよう。我が家では、生魚の柵(さく)を買ってきて、刺身にすることがよくある。切って刺身にしてあるのを買うより多少安くつくし、切りたてはやはりおいしいからだ。

 しかし、メジマグロやカツオなどのやわらかい身の魚を切る場合、包丁目がきれいに立たず、なんだかキリッとしない刺身になってしまうことがある。

 包丁の付け根の方から刃を入れていき、一気に引いて切るのがコツなのだが。引ききったつもりがまだ切れていなくて、もう一度刃を入れ直したりする。切れ目がきれいにならないわけだ。

 無印の包丁は肉がよく切れたので、刺身もうまく行くのではないだろうかと、メジマグロで試してみた。やってみるといい感じだ。魚の身に刃がスッと気持ちよく入り、一息に引き切れた。断面もきれいだ。これは気持ちがよかった。

 断面がきれいな刺身は、食べてもおいしい。切り口の細胞がつぶれていなくて、なめらかな面が舌に触れるからだ。これは大成功だった。

マグロの身がスッと切れるマグロの刺身

 料理をしたあとの手入れは、スポンジで軽く洗って、洗いカゴに立てかけておき、食後の後片付けのときにフキンで残った水気を取って収納するようにした。野菜しか切らなかったときは、水ですすぐだけで同じく洗いかごに立てかけた。

 鉄の包丁だと、とにかく使って洗ったらすぐに水気を取っておかないといけないという頭があったが、ステンレスだと割合ゆるくてもいいので気が楽だ。

熱湯をかけて消毒できるので衛生上も安心だ

 ステンレスもさびないというわけではないが、鉄に比べて神経質にならなくていい。またこの包丁は熱湯消毒にも対応する。食中毒がこわくなってくるこれからの季節にはうれしい性能だ。

 熱湯に耐えるのなら、食洗機で洗うのもいいのではないかと思ったが、「食器洗浄機、食器乾燥機などを使用すると、汚れをふくんだ水分が付着したまま乾燥され、さびが発生する場合があります」と注意がされている。

 「汚れをふくんだ水分が付着」というのは、多分、非常に汚れが残った食器類と一緒に、時間の短いコースなどを選んだ場合など、汚れが残るというケースだろうか。よほどの不注意をしなければ起こりにくそうな事故だ。食洗機を日常的に使っている私の場合、自己責任で食洗機を使っている。すすぎまで終わった後で、乾燥せずにフキンで拭くようしている。

 この包丁を使い始める前に、柄がツルツルして滑りやすそうだと言ったが、実際に使ってみるとそんなことはなく、濡れた手で扱っても特に危ないことはなかった。

 柄が刃と一体の金属なのは、どんな扱い方をしても柄が腐食したりゆるんだりしないのが保証されていて、そこは安心だ。

 使い勝手でいうと、特に小の方が、とりまわしが楽で、使用頻度が高い。若い頃、実家から持ってきたペティナイフ一本で料理をしていたことがあったが、けっこう間に合っていたものだ。そのころのことを思い出した。自炊頻度が高くないし大げさな料理はしないという人は、この小さい方一本で十分だと思う。

 ただ、「切った材料を包丁の腹にのせて鍋に運ぶ」「包丁の腹で材料を押しつぶす」などのテクニックは、この小さい包丁ではできない。また、丸ごとの魚や、大根やキャベツなど大きめの野菜を扱うのなら、大きい方を選んだ方がいいだろう。

 いずれにせよ、この大小2本をともに揃える必要性は、あまりないだろう。使う人の料理スタイルで、どちらかを選べばいいと思う。

 この包丁は、手入れが楽で、衛生面を大事に考える人に向いているし、切りやすさを重視する人にも勧められる。本格的に料理をしてみようかと思い立った人が選ぶ包丁としても推薦できる。



2010年 6月 3日   00:00