藤山哲人のモバイルバッテリー診断
ソーラーパネル内蔵で電源なしでも蓄電できる充電器
by 藤山 哲人(2015/2/18 07:00)
今回紹介するのは、ビーズ「ピタッとソーラー充電器 BEC-02」だ。太陽電池を内蔵し、電源がなくても蓄電できる充電器。表示容量は5,000mAなので、一般的なスマホをおよそ2回充電できる。
しかし、太陽電池で蓄電できる充電器は、これまでにも数多く発売されている。この製品の凄いところは、窓ガラスに貼り付けて、充電できるという点だ。
メーカー名 | ビーズ |
---|---|
品名・型番 | ピタッとソーラー充電器 BEC-02 |
バッテリー容量 | 5,000mAh |
繰り返し利用回数 | 500回 |
サイズ (幅×奥行き×高さ) | 110×110×18mm |
重量 | 250g |
カラー・モデル | シルバー |
実売価格 | 4,698円程度 |
さて、太陽電池が最も効率よく発電できるのは、パネルに対して垂直に太陽光線が当たっているとき。朝日が昇って夕日が沈むまでに太陽は東から西に移動するが、効率よく発電するには太陽を追うように方角を調整する。
また、夏至と冬至では南中する太陽の高さが違い、夏は天頂近く、冬は低い位置にある。実際の角度は「南中高度=90-緯度±23.4」で計算できる。
たとえば東京なら緯度を35.7として計算し、23.4を加算したときの77.7度(地平線を0度とした場合)が夏至の角度で、冬至は引き算したときの30.9度となる。つまり、夏なら太陽電池をほぼ真上に向けておけばいいが、冬は太陽電池を立てるようにした方が、効率よく発電できるのだ。
現在は、太陽が低くなる秋分の日~冬至~春分の日にあたるので、南側の窓ガラスにピタッ! と貼ってやると、効率よく充電できるというワケだ。ただし、ガラス1枚を隔てるので直射日光より効率は悪くなる。夏場は、他の太陽電池と同様に、地面に置き空に向けて置けばいい。
容量の割には少し大きいがモバイルバッテリーとしての性能は○
まずは、内蔵バッテリー容量1,800mAhのスマートフォン(ARROWS X F-10D)を実際に充電して、5,000mAhのモバイルバッテリーとしての性能を見てみよう。
【スマートフォン充電テストの結果】
充電回数「1回と80%」(3,204mAh相当)
※ARROWS X F-10Dの状態 Wi-Fi:ON、Bluetooth:OFF、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリBattery Mixにて容量変化を記録
結果は、ほぼ2回の充電が可能で、1回と80%充電できた。ただ実際に充電してみると、デカさが気になる。厚みは2cmもないが、11×11cm(縦×横)はさすがに大きい。窓ガラスに粘着する部分があるので、カバンなどに入れて持ち歩く際は、下敷きのようなものに貼り付けておく必要がある。
出力は最大1Aなので、一般的なスマホは急速充電できる。しかしタブレットや、1Aより出力の大きいUSB-ACアダプターが付属されている機種では急速充電できない場合があるので注意して欲しい。
付属のケーブルは50cmあり長さは十分。窓ガラスに貼り付けた状態でもスマホを充電できるだろう。ただし、太陽電池でバッテリーを充電しながら、スマホの充電はできないようだ。
バッテリー残量表示は、「本体のLEDが緑に光れば充電OKで、光らなければ空」という、あるか、ないかの2つの状態しか把握できない。容量が5,000mAhあるので、せめて緑、オレンジ、赤の3色で3段階表示は欲しいところだ。
項目 | 詳細 |
USBコネクタ数 | USB×1 |
USB最大電流 | 1A |
充電ケーブル (コネクタ) | Micro USB |
残量インジケータ | 1灯1色式 |
自動電源OFF | 本体電源ON時も有効 40mAでOFFを確認 |
同時充電 | - |
タブレットには使えないがスマホならおよそ2回分充電できる
たいていのスマートフォンは約1Aで急速充電するため、独自の測定器を用いて、連続して1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。
実用量は、パッケージに記載の「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。
実用量率は、表示容量に対する割合で、モバイルバッテリー内部とスマートフォン内部の充電時のロスをさし引いた値となっている。つまり実用量や実容量率の値が大きいほど高性能なバッテリーだ。
電圧は5.2Vと少し高めで安定する。ただ、バッテリー切れ間近になると電圧が落ち、本体のLEDも少し明暗を繰り返しているようだった。一方、電流は950~770mAの振れ幅があるものの、安定してスマホを充電していた。
この結果を元に、表示されている5,000mAhのうち、どのぐらいの容量をスマホの充電に利用できるか計算してみたところ、次のようなグラフとなった。
バッテリー内やスマホでのロス、また充電中に熱となってしまうロスなどを差し引くと、実際にスマホに充電できるのはおよそ61%(3,051mAh)ほどとなった。この数値は可もなく不可もなくという標準的な値だ。
計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレットをおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。
項目 | 詳細 |
バッテリー表示容量 | 5,000mAh |
連続利用時の実用量 | 3,051mAh(61%) |
連続実用量1,000mAhあたりの価格 | 1,901円 |
充電回数(理論値) | Android(1,500mAh):2.0回 |
Android(1,800mAh):1.7回 | |
Android(2,000mAh):1.5回 | |
Android(2,200mAh):1.4回 | |
Android(2,500mAh):1.2回 | |
Android(3,000mAh):1.0回 | |
iPhone4s/5/5s/5c(1,500mAh):2.0回 | |
iPhone 6(1,800mAh):1.7回 | |
iPhone 6 Plus(2,900mAh):1.1回 |
太陽電池での充電は緊急時のみ。普段はUSB-ACアダプターで
本製品には充電器が付属されていないので、2A出力のUSB-ACアダプターを使って充電してみた。カタログではおよそ8時間とあったが、実際には12時間ほどかかり、充電時間はかなり長い。自宅には寝に帰るだけという忙しい人にはオススメできない。
一方、太陽電池で充電した場合は、カタログスペックでも41時間かかるという。1日6時間充電できるとして7日間。フル充電には1週間かかるので、日常的に太陽電池で充電する製品ではない。
ただし、この製品の太陽電池パネルの性能が悪いわけでははなく、このサイズで5,000mAhをフル充電するには、そのぐらい時間がかかるということだ。1日でフル充電しようとすると、A3サイズ以上のパネルが必要になり、それこそ実用性にかけてしまうのだ。
フル充電は時間がかかるので、昼間の4時間だけ充電して、スマホをどれだけ充電できるかを確かめてみた。その結果、スマホを10%ほど充電できた。あと数分だけ通話したい、もう少しだけWebで情報を調べたいという、緊急用の電源としては十分使えそうだ。
項目 | 詳細 |
本体充電用コネクタ | Micro USB |
付属充電器(仕様) | なし |
充電時間(カタログ値) | 8時間(2A出力USB-ACアダプター利用時)、41時間(ソーラーパネル利用時) |
充電時間(実測) | 13時間24分(2A出力USB-ACアダプター利用時) |
クルマでの移動が多い人なら後部座席のガラスに貼って充電!
モバイルバッテリーとしての性能は平均点だが、太陽電池パネルを内蔵しているゆえ、持ち歩くには大きすぎる。また、太陽電池を使ってフル充電するには、1週間近くかかるためイザというときのためのモバイルバッテリーの意味合いが強い。
ただ、毎日クルマで移動するのが仕事という場合は、運転の妨げにならない後部座席の窓ガラスに貼って充電するという使い方もあるだろう。4時間走れば、スマホを10%だけチャージ可能だ。
【お詫びと訂正 2月18日】
記事初出時、不適切な画像を掲載しておりました。お詫びして訂正いたします。
メーカー・品名 | ピタッとソーラー充電器 BEC-02 |
ロスの少なさ | ★★★☆☆(3) |
持ち歩きやすさ | ★☆☆☆☆(1) |
単位容量の安さ | ★★☆☆☆(2) |
充電の早さ | ★☆☆☆☆(1) |
使い勝手のよさ | ★★☆☆☆(2) |