藤山哲人のモバイルバッテリー診断

パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL102」

~ストラップにも使える1,430mAhの小容量モバイルバッテリー

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
パナソニック「QE-QL102」ピンク。ほかに白と水色と、ピンクの水玉模様が用意されている。パッと見た目は、女性用のコンパクトそっくり

 今回紹介するのは超小型のモバイルバッテリー、パナソニックの「QE-QL102」だ。容量は1,430mAhと、スマートフォンが半分ほど充電できるかどうか? といった感じだが、サイズは手のひらにスッポリ収まる。塗り薬の「メンソレータム」の小さい缶、もしくは、入浴剤の「バブ」とほぼ同じぐらいだ。

 その小さなボディには、Micro USBコネクタを持った直結式ケーブルまでついており、ケーブルを別途持ち歩く必要もないというのが特徴的。カラーバリエーションも白、水色、ピンクに加え、ピンクの水玉模様も用意され、女性が小さなハンドバックに入れて持ち歩くのにピッタリという印象だ。

メーカー名パナソニック
品名・型番QE-QL102
バッテリー容量1,430mAh
繰り返し利用回数説明書に記載なし
サイズ(幅×奥行き×高さ)66×66×16mm
重量58g
カラー・モデルピンク、ホワイト、ブルーの3色
販売価格1,980円(yodobashi.com)
対応スマートフォンAndroid:○(本体直結ケーブル)
iPhone:○(本体USBコネクタ)
iPad:○
上部。左側の角が取り外せ、Micro USBコネクタになる
上から見て本体右側。スマートフォンや携帯のストラップが取り付けられる穴が開いている
天面。上部中央が電源ボタン、その右側がバッテリー残量(1灯3色)で、右側が取り外せるコネクタ
下部。ケーブルは下部に直結され、収納用の溝にピッタリ収まる
上から見て本体左側。側面にもケーブル収納用の溝が切ってある、ケーブルは細くフラットケーブルを採用
底部。出力など仕様が印刷されている

ケーブルいらずで超小型。スマートフォンを半分チャージ

充電の実測テストに利用した、2012年夏モデルの富士通製ARROWS X F-10D。内蔵バッテリー容量は1,800mAh

 まずは内蔵バッテリー容量1,800mAhのスマートフォンを実際に充電して、どのぐらい充電できるか、使い勝手を試してみた。

 充電用のコネクタを本体から外し、スマートフォンに取り付ける。コネクタの取っ手が大きな三角形となっているが、Micro USBコネクタの部分は細くなっているので、スマートフォン本体にぶつかることもなくすんなり差し込める。ケーブルの長さも十分で、スマートフォンとモバイルバッテリーを重ねて置いておける。

 電源ケーブルの幅は3mm、厚みは1mmと非常に細く薄いので、引っ張るとすぐに切れてしまわないかが心配。そこで、バネ量りを取り付けてケーブルを1kgで引っ張ってみたが、まったく切れる様子はなかった。どうやら電線を覆うビニール皮膜で強化されているらしい。また2kgを掛けても異音や切れる様子も伺えなかったので、何かの拍子でケーブルを引っ掛けても切れることはないだろう。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「50%」(918mAh相当)

※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

モバイルバッテリーの角を引っ張ると、それが充電用のコネクタになる
取っ手の部分は大きいが、コネクタの根元は削られているので、スマートフォンにコネクタが当たって差し込めないということはまずない
大きさはスマートフォンの約半分。ケーブルも10cmほどあるので、充電中にスマートフォンと重ねておける

 スマートフォン充電テストの結果は、ピッタリ50%充電できた。通話中の電池切れには十分過ぎる容量だ。普段はさほどスマートフォンを使わないが、今日は待ち合わせ場所がわからずナビを使っていたら電池切れになった、という場合などにピッタリだろう。

 出力は一般的なモバイルバッテリーの半分相当の500mA(0.5A)。スマートフォンを急速充電することはできないが、低速充電は可能だ。タブレットなどは、充電時に最低1A必要な機種もあるので適さない。

 また、コネクタがMicro USBでケーブル直結になっているため、基本的にAndroid系スマートフォン専用と思っていい。ただしメーカーでは対応機種を明記していないので、自己責任になるが変換コネクタを使ってiPhoneの充電用にも使える。

 バッテリー残量計は、緑(フル充電)→オレンジ→赤(電池切れ)の3段階表示になっているが、容量がスマートフォン半分と少ないため、だいたいの残量の見分けはつく。

【スマートフォン充電(出力)スペック】
項目詳細
USBコネクタ数1(直結式Micro USB)
USB最大電流Micro USBコネクタ:0.5A(500mA)
充電ケーブル(コネクタ)本体直結式Micro USB(スマートフォン充電用)
Micro USB-USB(本体充電用)
残量インジケータ3色1灯式 (緑:60%以上、オレンジ:30%以上、赤:30%以下)
自動電源OFF本体電源OFF時のみ有効
40mAでON状態を確認
複数台同時充電-

最大出力500mA。急速充電はできないが、安定性は良好

 たいていのスマートフォンは、通常約1Aで急速充電するが、USB-ACアダプタやモバイルバッテリーから1Aの電流を取れないとスマートフォンが判断すると、およそ500mAで低速充電するようになる。

 このモバイルバッテリーの出力は最大500mAとなっているため、測定機器の設定を500mAにして、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

きわめて安定した5Vを出力
電流の安定性もまったく問題ない

 一般的なモバイルバッテリーは急速充電に対応する1A出力なので、その半分の出力しかない500mAの製品と一概に比較することはできない。しかし電圧、電流ともに安定しているといっていいだろう。

 テストから算出したスマートフォンの充電に使えるバッテリーの実容量は、58%の827mAhとなった。バッテリー容量が少なくなると、実容量率が悪くなる傾向にあるが、表示量の表示が1,430mAhということを考えると、58%はロスが少ない部類に入るだろう。

実容量とロス率。実用量はカタログ値である1,430mAhの58%に当たる827mAhだった

 なお計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量1,430mAh
連続利用時の実用量827mAh(58%)
連続実用量1,000mAh
あたりの価格
\2,417
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):0.7回
Android(1,500mAh):0.6回
Android(1,800mAh):0.5回
Android(2,000mAh):0.5回
Android(2,200mAh):0.4回
iPhone4S(1,432mAh):0.6回
iPhone5(1,434mAh):0.6回
ソニー PSP(1,200mAh):0.8回
任天堂 3DS(1,300mAh):0.7回

モバイルバッテリーを充電するには付属のケーブルを使用

 モバイルバッテリーの充電時間は、カタログ上では4時間となっていたが、2A出力のUSB-ACアダプタを利用したところ、3時間半で充電できた。容量が1,400mAhなのに時間が掛かり過ぎる感もあるが、500mAで充電を行なうため、充電時間が遅くなっている。とはいえ3時間半で充電できれば、会社や学校でも充電できる範囲内であり、実用上は不便を感じることはない。

 ただし、スマートフォンの充電ではバッテリーに直結されたケーブルが利用できたが、モバイルバッテリーの充電には、製品に同梱のケーブルを持ち歩く必要がある。

 充電コネクタは、スマートフォン充電用コネクタを取り外すと現れるMicro USB(メス)となっている。ここに製品に同梱のUSB - Micro USBケーブルを差し込み、充電を行なう。

充電する際は、製品に添付のUSB-Micro USBケーブル(約40cm)を充電コネクタに接続する

 なお一般的なモバイルバッテリー(に内蔵されているリチウムイオン電池)は繰り返し500回利用できるが、本製品は繰り返し利用回数が明示されていない。

【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタMicro USB
添付充電器(仕様)なし
充電時間(カタログ値)4時間(ACアダプタQE-AP104利用時)
充電時間(実測)3時間29分
繰り返し利用回数記載なし

モバイルバッテリーをスマホのストラップとして付けるという新発想

 女性用のコンパクトに非常に似ている点と、小さく薄いデザインは、ポーチや小さなハンドバックにもスッポリ収まるコンパクトなモバイルバッテリーと言える。なお、このほか赤、白、緑色も用意されている。

 バッテリー容量から言えば、毎日外でスマートフォンを充電するほどでないが、「たまに外でナビやWebでの調べ物などをして電池切れが心配」という人にピッタリだろう。逆に言えば、毎日外でスマートフォンを充電するなら、3,000mAhクラスのモバイルバッテリーをオススメする。

市販のストラップをつけて、スマートフォンにぶら下げておけば緊急用のバッテリーとして役立つ。重さ58g、サイズは6cm四方しかないので、通話の邪魔にならない

 またこの製品を2つ用意すれば、スマートフォンをちょうどフル充電できるが、コストパフォーマンスは悪い。2013年5月現在の市場価格はおよそ2,000円だが、あと数百円出すと、3,000mAhクラスのパナソニック製品「QE-QL101」が購入できてしまう。

 ケータイのストラップを取り付けられる穴も開いている上、重さもわずか58gと軽いので、イザというときに備えて、モバイルバッテリーをストラップにしてしまうというのもいいだろう。

【総合評価】
メーカー・品名パナソニック QE-QL102
ロスの少なさ ★★★☆☆(3)
持ち歩きやすさ★★★★★(5)
単位容量の安さ★☆☆☆☆(1)
 充電の早さ ★★★★☆(4)
使い勝手のよさ★★☆☆☆(2)

藤山 哲人