家電製品ミニレビュー
東芝「ヘアードライヤー ウルオス HDH-900X」
~15パターンの風で、髪を傷めず素早く乾かせる!
by 小林 樹(2013/3/28 00:00)
風呂上がりにさっぱりと髪を乾かせるドライヤー。最近では高機能・高付加価値モデルが市場に多く出ており、家電量販店の店頭を見れば、価格が1万円を超える高級機種が並んでいる。
今回試したのは、そんな高級ドライヤーのひとつ、東芝ホームアプライアンスの「ヘアードライヤー uLos(ウルオス) HDH-900X(以下、ウルオス)」だ。Amazon.co.jpでの価格は13,500円だった。
ほかの高級モデルにない特徴は、温度と風量を細かく設定でき、それらを組み合わせることで合計15通りもの風を送り出せるという点だ。夏場や冬場といった季節にも合わせて、髪を痛めずに素早く乾かす風を出せるという。我が家ではこれまでパナソニックの高級ドライヤー「ナノケア EH-NA93(以下、ナノケア)」を使ってきたが、どのような違いがあるのか、体験したい。
メーカー | 東芝ホームアプライアンス |
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製品名 | ヘアードライヤー uLos HDH-900X |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 13,500円 |
ウルオス本体はシンプルな形で、サイズは176×87×225㎜(幅×奥行き×高さ)。ドライヤーにしては、やや大きめな印象を受ける。本体重量はコードを含めると約575gで、ちょっと重たい印象。本体には取り外しできるノズルが付いており、風向きを整えたいセット時に便利だ。
付属の電源コードは長さ約1.6mで、たっぷりと余裕がある。カラーはペールピンクゴールド、パールホワイト、ペールブルー、ペールグリーンの4色がラインナップしており、今回はパールホワイトを選んだ。
操作は、電源の「ON/OFF」ボタン、風量切り替えボタン、温度調節ボタンの3つのボタンで行なう。電源ボタンはスライド式。あとの2つはプッシュ式で、繰り返し押すと切り替わる。風量と温度は、本体側面に青色のランプで表示する。このあたりはよくあるドライヤーと変わらない。
風量は、「COOL(冷風)/SET(弱風/DRY(中風)/TURBO(強風)」の4段階。TURBO運転時の風量は1.4立方mになる。
面白いのは、独特な温度設定だ。レベル1~5まで細かく5段階あり、温度は順に約50℃、約60℃、約100℃、約110℃、約120℃。このうち約50℃と約60℃は、「頭皮ケアモード」として地肌をいたわりながら乾かしたい時向け。風量を「COOL」に設定している時は、風量は切り替えられない。最大消費電力は、風量がTURBOで温度が約120℃の場合で1,200Wとなっている。
ちなみに、このウルオスは、東芝独自のイオン技術「ピコイオン」の発生装置を搭載している。ピコイオンとは強いマイナスの電気を帯びた微細な水の分子で、ユニットの電極ピンに高電圧をかけることで電極ピン先端の水が微細化されて生成され、空気中に放出される。一般に髪は帯電しやすいと言われており、このピコイオンを髪に当てることで、静電気を抑え、櫛通りを良くする効果があるという。同じように他社の高級ドライヤーでは、パナソニックがナノイーを、シャープがプラズマクラスターを搭載している。
季節に合わせて、髪に優しく乾かせる
ウルオスの電源をONにすると、本体側面のパネルに、風量と温度を示す青いランプが点灯。初期設定では、風量が「DRY」、温度は110℃に設定されている。そこから好みに合わせて風量と温度を調節していくわけだが、一度電源をOFFにすると、次にONにした時にはこの初期設定にリセットされる。
さて、このウルオスのメリットは、5段階の温度と風量の使い分けられる点にあるのは、先にも述べたとおり。東芝によれば、ドライヤーの温風を受けた時の髪の表面温度は、室温により異なるため、髪を傷めず乾かすには、室温に応じてドライヤーの送風温度を切り替えることが望ましいという。
具体的には、以下の図のように、冬場は大風量で高温、夏場は大風量のまま冬場よりも温度を抑えて乾かせば、季節問わず健やかな髪が保てると提案している。
今回はまず、まだ気温が低いので、“冬場のおすすめ”の風量・温度設定――最大風量、最高温度で風呂上がりの髪を乾かしてみた。自分の髪は胸に届くロングヘアで、毛量は多い。乾かし終わるまでにかかった時間は約8分で、以前使っていたナノケアと同じくらいで早い。本体の重量は、素早く乾かせるから気にならない。運転音に関していえば、キーンという高いモーター音が少し気になった。
乾かした後の髪の質感は、しっとりでもなく、サラサラでもなく、普通。毛先がまとまりやすい感じはあって、使い心地は良い。根元や頭皮の乾きムラはない。
風量には各段階ごとにはっきり差があった。「DRY」は普通に乾かす時向け、「TURBO」は急いで乾かす時向け、「COOL」は仕上げに髪表面の温度を落ち着かせたい時、「SET」は朝髪をセットしたい時など、シーンによって使い分けられるのが便利だ。
ここで試しに、部屋の暖房をつけて室温を25℃まで上げ、“夏場におすすめ”の風量と設定温度で、髪を乾かしてみた。温度は約86℃で、冬場の約110℃よりも低いが、乾かすまでにかかる時間は“冬場におすすめ”で乾かした時よりも約30秒短縮した。部屋の湿度が低かったせいもあるだろう。髪は根元までしっかり乾き、パサつきなどはなく、髪はまとまりやすい。夏場にはこの設定を使いこなすのが良さそうだ。
ひと通り使ってみたが、ここで家族の意見も聞いてみたいので、ショートヘアで毛量が少なめの祖母に使ってもらった。設定は同じく最高温度、最大風量にしたが、薄毛が気になる部分は風が当たると「少し熱い」とのことだったので、途中から「頭皮ケアモード」に切り替えた。トータルの所要時間は約1分半と早く乾いた。
仕上げに、セットにも挑戦。30秒ほど、“セットに最適”と説明書で謳われていた風量「SET」、温度「レベル4」に設定して、髪形を整えた。すると、毛流れにふんわりとボリュームが出た。祖母はいつも仕上げに櫛で髪をとかしており、髪がペタっとボリュームダウンしてしまうのが悩みだったのだが、「これなら若々しく見えるわ」と喜んでいた。
本体の重さについては、祖母も「物はこれくらい重みがあったほうが良い」と、さほど気にしていなかった。
乾かしすぎを防ぎ、最適温度で送風
ウルオスの良いところは、髪の乾かしすぎを防ぐところだった。高温は高温でも、110℃と120℃を吹き出せるので、乾きやすい毛先は110℃、乾かしにくい根元は120℃と切り替えて、なるべく髪が傷むのを防げる。
これまで我が家で使ってきたナノケアとの違いは、ナノケアで乾かした髪はしっとりと重みのあるような質感に仕上がるのに対し、ウルオスは、どちらかというとサラサラで柔らかい質感に仕上がる。しっとりとした質感だと、どうも乾いた感じがしなくて、長く熱風を当ててしまいがちだったのだが、ウルオスなら髪の乾いた感じがわかりやすく、適当なところでストップできる。
そしてもう1つ、2台のドライヤーを使っていてわかったのが、ウルオスは吸い込み口から吹き出し口にかけてまっすぐな円筒形をしており、熱風を出した後に吹き出し口のまわりにほとんど熱を帯びていなかったことだ。手を触れても熱くない。一方ナノケアは、吹き出し口に向かって先がすぼまっていく形状をしているためか、熱風を出したあと、しばらくは吹き出し口の周りが熱かった。ドライヤーを使い終わった後、すぐに戸棚に収納したいならば、本体が熱くなりにくいウルオスは便利だ。
ただしナノケアのほうが、本体操作がシンプルで、本体重量もウルオスより少し軽く、運転音は低めで静かだと感じている。使い心地の面では、東芝のウルオスシリーズはまだ改良の余地があると思う。
髪を本格的にケアしたい上級者や、家族の好みに合わせて風を使い分けたい方に
ウルオスの説明書によれば、髪の表面温度が60℃を超えると、髪のタンパク質であるケラチンの変性が起こって髪が傷みやすいという。髪の傷みを防ぐにはなるべく低温で乾かすことが望ましいが、実際には低温で乾かすと乾き残しがあったり蒸れたりしたら困るという不安もある。忙しい日常の中で、髪を乾かす時間は短いに越したことはない。そうすると、運転モードは大風量の高温で乾かすしかない。
だがウルオスならば、髪を早く乾かしたい髪を傷めたくない……そんなアンビバレントな欲求にも、室温に合わせて風量と温度を切り替えることで対応できる。毛先や根元など、部位ごとに風に変化を付けることも可能だ。乾かした髪は、全体的にまとまりやすくなった。
ただ、ウルオスを使いこなすとなると、風量や温度を切り替えたり、どうしてもボタン操作が多くなる。正直、シンプルに「乾かしたい」「セットしたい」という祖母がこれらの機能を使いこなすのは無理。どちらかと言えば、髪にこたわりのある方や、こうした機器を使いこなすのが好きな上級者向けのドライヤーと言えるだろう。
とはいえ、髪の長さ、毛量、髪や頭皮の状態に合わせて、さまざまな髪が出せるので、家族それぞれの好みに合った風が選べる点には満足。弟は頭皮をいたわって乾かし、母や祖母は髪にボリュームを出してセットし、私は長い髪を素早く、なるべく傷めずに乾かせるようになった。私が特に気に入ったのは、“セットにおすすめ”の風。毎朝髪形をセットする際に、この風量と温度で頭頂部から毛先に向けて風を当てると、髪の絡まりが取れ、髪がまとまりやすくなるし、さらにブラッシングすればツヤも出るので、重宝している。
ウルオスは幅広く、きめ細かなニーズに応えてくれる。今後高級ドライヤーの購入を検討する際は、使いこなしを前提に選択肢に入れてみてはいかがだろうか。