家電製品ミニレビュー

石崎電機「SURE SK-1200」

~カセットガスコンロの好敵手となる大火力電気コンロ

お正月は電気コンロのシーズン

石崎電機「SURE SK-1200」

 以前はよく使われていたのに、最近は影が薄い電気製品の1つに「電気コンロ」がある。

 私が子供の頃は、お正月に餅を焼くといえば電気コンロが登場していたものだが、最近は大型量販店の店頭でもあまり見かけない。

 電気コンロは手軽な調理器具だが、火力が弱いことと、使用しているニクロム線が吹きこぼれなどに弱く切れやすいという欠点があった。どうも、そのあたりが衰退の原因とおもわれる。

 しかし、上記の2つの欠点を克服した、別のタイプの電気コンロを店頭で見つけることができた。今回は、石崎電機製作所の電気コンロ「SURE SK-1200」を紹介しよう。

メーカー名石崎電機製作所
製品名SURE SK-1200
価格12,600円
購入先Amazon.co.jp
購入価格4,363円

戦前からあるヒーター専門会社の製品

 石崎電機製作所という会社は、なじみがなかったのだが、Webページを見ると、戦前からある歴史の長いメーカーなのだ。

 製品一覧を見ると、業務用製品でははんだごて、熱風機、シーラーなどを、家庭用製品では、アイロン、ホットサンドメーカーなどを作っており、電気ヒーターに特化した専門性の高い会社であることが分かる。こういう会社が作っている電気コンロなら、期待が持てそうだ。

 ちなみに、この製品についてメーカーでは「電気コンロ」ではなく、「クッキングヒーター」として区別している。これは、ヒーターの違いによるものだが、のちほど詳しく説明しよう。ここからはメーカーにならってクッキングヒーターという名前を使う。

大火力を象徴するような赤いパッケージ
本体は発泡スチロールでがっちり固定されている

 Amazonから到着した箱は、意外なほど大きく、取り出した製品もがっしりとした大きさがある。片手で持てる一般的な電気コンロより一回り大きく、移動するときは両手が必要となる。本体サイズは300×322×100mm(幅×奥行き×高さ)、重さは約2kgだ。

前面は黒、上面はステンレス
30cm定規よりちょっとだけ幅が
カメラが写り込むほど反射率が高い
シーズヒーターは複雑な形をしている

 本体は、ステンレス製で安っぽさはない。ヒーター部分にニクロム線はなく、シーズヒーターが三重に輪となっている。シーズヒーターは金属製のパイプの中にニクロム線などの発熱体を入れたヒーターだ。パイプの中には絶縁体を充填してあるので耐久性が高い。

 つまり、石崎電機では、むき出しのニクロム線を使った製品は「電気コンロ」、シーズヒーターを使った製品を「クッキングヒーター」と区分している。名前を変えて差別化することで、ただの電気コンロじゃないよと言いたいわけだ。

 このクッキングヒーターでは、鍋を載せる五徳という金具がなく、鍋はシーズヒーターの上に直接載せるようになっている。それだけ、シーズヒーターは強度が高く、耐久性があるというわけだ。

操作は、電源スイッチと火力調整のダイヤルの2つだけ

 電源スイッチは独立しており、「入/切」のタンブラー式で、「入」にすると赤くLEDが灯る。火力の調整はダイヤル式だ。ダイヤルのポジションは、「強/中(の上)/中(の下)/弱」の4段階で、それぞれ1,200W/800W/400W/270Wの出力となる。「切」の次が、「弱」ではなく、いきなり「強」になっているのは、アメリカ製の家電でよくある配列だ。このダイヤルのポジションや、“SURE”というブランド名から考えると、もともとは輸出用の製品だったのかもしれない。

 一般的な電気コンロの出力は600W前後なので、最大出力では約2倍の火力があることになる。この火力の強さもクッキングヒーターと名乗る理由だろう。

火力が必要な鍋料理も楽々

 梱包を解いたクッキングヒーターを、いろいろな料理に使ってみたが、一番特徴が表れていたのが、鍋料理だった。

 我家の鍋は、簡易型の寄せ鍋で、最初は鍋に野菜を入れ、だし汁を注ぐ、箸が進んできたら野菜などをがんがん追加して行く。この時に、火力が弱いと、野菜を入れた時にだし汁の温度が下がってしまい、なかなか煮えない。テンポが遅くなって、鍋料理特有の祝祭感がなくなって、盛り上がらないのだ。

 ところが、このクッキングヒーターで作ると、冷たい白菜をガバっと入れても、すぐにまたグツグツと煮えたってくる。どんどん入れて、どんどん食べるという、幸せな鍋のサイクルに没入することができた。

ウチの鍋は野菜中心だ
肉は鶏肉のつくねを入れる
作り置きしてあるだし汁を注ぐと準備完了
強にすると、火力が強いのですぐに煮立ってくる
グツグツという音とともに具が揺れる
3~4分で食べごろになる。食べる端から、具を追加していく
シメの冷凍うどんも、あっという間にゆで上がる

 火力が強いカセットガスコンロを使っているようなノリで食事が進む。また、カセットガスコンロと違って、換気の必要がないため、部屋の暖まり方も速い。

 ポータブル型のIHクッキングヒーターのようにファンなどはないので、鍋が煮え立つ音や、家族との会話もよく聞こえる。

 なお、IHクッキングヒーターのように鍋の材質を選ぶことはないが、鍋の形はやや選ぶ。このクッキングヒーターには五徳がなく、平らなヒーターの上に鍋を置くので、底が丸くなっていない平らな鍋が向いているのだ。

赤熱するシーズヒーター
今回使ったホーロー鍋は直径が18cmなので、外側のヒーターが見える

 鍋から吹きこぼれがあった場合でも、ヒーターには影響はなく、また汁受け皿が取外しできるので、片付けが簡単だ。ステンレス製の本体も濡れたフキンで拭くだけできれいになる。

シーズヒーターを持ち上げると汁受け皿が見える
汁受け皿は取り外して洗える

 電源コードは約1.8mと長めで、ゴムの感触がある耐久性のありそうなケーブルが使われている。

 鍋料理以外の用途で、良かったのが、海苔(のり)を焼くことだった。カセットガスコンロと違って、湿度がないので、パリっとした感じに仕上る。いまどきの海苔は、焼き海苔としてパッケージされていることが多いが、このヒーターで炙るだけで、海苔の香りと食感が、グッと良くなる。

カセットガスコンロの好敵手

 というわけで、シーズヒーターを使ったクッキングヒーターは、頼もしささえ感じるほどの火力と強度を持つ製品だった。

 電源コードをつなぐだけという簡単さや、湿気の少ない熱という利点もあり、十分にカセットガスコンロと渡り合える製品だと思う。

 しかし、今年のように電力需給が逼迫している冬に、1,200Wの電気製品を使うのに、まったくためらいがないわけではない。せめて、需給が逼迫している、夕方から夜の時間を避けて使うように心がけている。

 それで思い出したが、このクッキングヒーターや電気コンロは、防災用品としても適している。つまり、震災などの直後は、電気が使えない場合があり、カセットガスコンロなどが活躍する。しかし、電気というインフラは、都市ガスに比べて復帰時間が短い。震災直後はカセットガスコンロ、電気が復旧したらクッキングヒーターという選択肢もあるわけだ。

 ともあれ、シーズヒーターを使ったクッキングヒーターは、旧来の電気コンロの弱点をカバーした良い製品だった。カセットガスコンロの導入を検討する際には、ライバルとして選択肢に入れてみることをお勧めする。

伊達 浩二