走るライター南井正弘のコレはホントにスグレモノ!

厚底全盛の今だからこそ注目すべき裸足感覚の1足!
2020年12月22日 07:00
2009年5月、1冊の本がアメリカで出版され、のちに全米のランナーのあいだで大きな話題となった。それが、クリストファー・マクドゥーガルの「BORN TO RUN」。人間と、走ることの関係性を突き詰めた内容は、足を保護しすぎた現代のシューズのいくつかの部分を否定し、裸足や裸足感覚シューズの有用性を説いていた。翌年には日本語版も登場し、日本のランナーからも注目を集め、裸足感覚シューズは、ランニング業界における重要なキーワードとなった。あれから10年が経過し、それらベアフットタイプのシューズを展開するブランドは減った。だが、メレルは現在も裸足感覚シューズをしっかりとラインナップ。今回は、そのなかでもキーモデルである「ベイパー グローブ 4」を紹介する。
メーカー名 | メレル |
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製品名 | ベイパー グローブ 4 |
価格 | 7,700円(税込) |
それほどランニングに詳しくない人でも現在の厚底ブームは知っているだろう。
だが、一昔前はマラソンや駅伝を走るエリートランナーは、自らの脚力を効率よく路面に伝達するために、こぞってソールの薄いタイプのレーシングシューズを履いていた。その状況を一変させたのが、2017年に登場した「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」だ。
エリウド・キプチョゲ(ケニア)を始めとしたアスリートが、このシューズを履いて好記録を連発。この結果、「エリートランナー=薄底」が「エリートランナー=厚底」となるパラダイムシフトは顕著となった。
現在はトップアスリートのみならず一般ランナーも、レース時、練習時を問わず、厚底シューズを履くことが珍しくなくなった。だが、それはいままでのシューズでは体感できなかった推進力が得られるから。より少ない力で進むことができるので、ついついこういったタイプのシューズばかりを履いてしまうが、厚底シューズばかりを履いていると、脚力が徐々に衰えてしまう。そのため、厚底シューズを履くのはレース直前の練習とレース本番だけにして、普段の練習は一般的なランニングシューズで行なったほうがいいという意見もある。
個人的には、厚底シューズを何回か履いて走ったら、1週間に一度は「ルナサンダル」というシンプルな構造のランニングサンダルか、ベアフットシューズで脚をリセットするようにしている。そうすると、脚部の筋肉に刺激が入れられるような気がして、脚力をキープできると考えているからだ。
そんなベアフットシューズのなかでも、特に愛用しているのが、メレルの「ベイパーグローブ 4」である。アッパーにダイレクトにアウトソールを取り付け、ミッドソールを廃した設計は、同社のベアフットタイプでも最薄で、足裏の感覚を研ぎ澄まし、より裸足感覚を体感することができる。
また衝撃吸収性をあえて持たせていないため、一歩一歩の着地を丁寧に行なうようになり、自らのランニングフォームを再検証するきっかけになる。このシューズを履いて走った翌日に厚底シューズを履いて走ると、まさに羽根が生えたようにストライドが伸びる。そのたびに「やっぱり週に一度はベアフットタイプでのリセットは必要だなぁ……」と思うのである。