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パナソニックの除湿乾燥機が一年中気持ちよく使える理由
パナソニック「ハイブリッド方式 除湿乾燥機 F-YHFX120」 |
パナソニックの除湿乾燥機が、高い人気を誇っている。
その原動力となっているのが同社独自のハイブリッド方式の採用と、今年のモデルから新たに搭載したナノイーによる除菌、脱臭機能による差別化。これらの機能が、急速な勢いで広がる衣類乾燥の需要に最適化しており、同時に、1年を通じて除湿乾燥機を利用できる環境の提案につながっている。
パナソニックの除湿乾燥機の強みを追った。
■洗濯乾燥機とは違う衣類乾燥のニーズ
パナソニックがラインアップしている除湿乾燥機は、フラッグシップとなるナノイー搭載したハイブリッド式の「F-YHFX120」、ナノイー機能を搭載していない標準モデルの「F-YHF10」、デシカント方式を採用し、軽量を実現した「F-YZF100」、さらに小型化を実現するとともにファッション性を重視したF-YZF60の4モデル。いずれも、4月1日の発売以来、好調な売れ行きを見せている。
パナソニックでは、ハイブリッド式とデシカント式の2タイプの除湿機をラインナップしている。除湿能力や機能はそれぞれ異なる | 持ち運びできるコンパクトなタイプとして人気を集めているデシカント式除湿機「F-YZF60」 | ハイエンドモデルとなる「F-YHFX120」では、今年から同社独自のナノイー機能を搭載した |
パナソニックエコシステムズ 健康空質ビジネスユニットマーケティンググループ商品企画チーム 加来あゆみ氏 |
「とくに、ナノイー搭載モデルの売れ行きが好調。当初はハイブリッドモデルのうち、6割程度をナノイー搭載モデルが占めると見ていたが、実際には8割を占めている」とパナソニックエコシステムズ 健康空質ビジネスユニットマーケティンググループ商品企画チームの加来あゆみ氏は語る。
もともと除湿機のニーズは、梅雨時によくみられるような湿気によるジメジメした不快感を除去することが主だった。
こうしたニーズは依然として高く、多くの人に除湿乾燥機の基本機能として認知されているが、実は、ここにきて、除湿乾燥機の最も多い使い方として注目を集めているのが、衣類乾燥に利用するという手法なのだ。
「雨が多い梅雨時などには、部屋干しをすることが増える。また、夏から秋にかけては、台風や長雨が多くなり、さらに、冬も低温で乾きにくいという状況がある。加えて、春は花粉対策や黄砂の対策のために部屋干しをしたいというように、1年間を通じて衣類乾燥で使用するという動きが出てきた。一方で、共働き世帯、単身赴任者などは、夜中に部屋干しをしたいというニーズのほか、子どもがいる家庭では明日の朝までに体操着を洗濯しなくてはいけない、というような場合にも、除湿乾燥機を利用するといったケースが増えている」という。
除湿機というと季節家電のイメージが強かったが、衣類乾燥のニーズが高まったことで年中能力の高い商品が求められるようになったという |
洗濯乾燥機の広がりによって、乾燥は洗濯乾燥機で行なうという使い方も広がっているが、洗濯乾燥機では、乾燥しあがったものをそのままにしておくと、シワがつきやすいという傾向がある。だが、部屋干し乾燥ではそのまま吊しておいても、シワを最低限で抑えられるということになる。
「衣類乾燥という使い方が出てきたことで、年間を通じて売れる製品へと進化してきた。梅雨がある上期に全販売数量の75%が集中してはいるものの、年間を通じて販売できるという観点から、冬場でも店頭展示を行なう量販店が増えている」(加来氏)という。
また、畳や壁の除湿用としての利用のほか、脱衣所、風呂場、押入れ、靴箱など、除湿機の利用範囲が拡大するといった動きも見逃せない。
同社の調べによると、部屋干し乾燥のために除湿乾燥機を利用したいといったニーズは、購入者全体のうちの82%を占めている。2007 年調査では63%であったことと比較すると、部屋干し目的の購入が増加しているのがわかる。
これに対して、除湿乾燥機本来の機能とされてきた、湿度を下げて快適に過ごすことを目的とした購入は、46%と多いものの、2007 年時点の調査では74%を占めていたのに比べると大幅に減っていることがわかる。
こうした需要動向の変化を捉えて、パナソニックの除湿乾燥機も部屋干しという観点から強化を図っているというわけだ。
■“衣類乾燥スピードナンバーワン”を支える3つの機構
実際、同社は、部屋干しを前提とした機能強化を戦略的に進めており、その機能の象徴ともいえる「衣類乾燥スピードナンバーワンという地位は、他社には譲っていない」と、加来氏は胸を張る。同社の除湿乾燥機では衣類乾燥スピードを支える3つの機構を搭載している。
まず、1つ目は2003年から搭載し、いまや全機種に搭載している「カラッとセンサー」機能だ。温度センサー、湿度センサーを用いることで、周辺の温度、湿度を測定。それにより、部屋干しした洗濯物が乾くまでの時間を算出。乾いたと判断したら、自動的に電源を切るというものだ。センサーが1分ごとに計測し、適切な時間で自動停止するようになっている。
「洗濯物が乾いたのに、除湿乾燥機が動いていたり、タイマー予約をしたものの乾ききる前に除湿乾燥機が止まってしまったということがないように使えることが好評。余計な時間まで除湿乾燥機を稼動させずに済むため、使用電力を削減。省エネの観点でも効果がある」とする。
2つ目は、ワイド3Dルーバーである。2006年から3Dルーバーとして採用した同機能は、部屋干しの仕方によって、ルーバーの動きを「モード」として選択できるというものだ。
同社では、実際に部屋干ししているユーザーの様子をデジカメなどで撮影。これを分析したところ、百人百様といえるほど、部屋干しのスタイルが異なることがわかった。壁にかけて干す方法、部屋の中央に干す方法、上下に2段階にして干す方法。
また、部屋干し専用の部屋を用意している家庭もあったという。さらに、部屋干しの量も、家庭によってバラバラで、梅雨時などには大量に干したり、明日必要とする衣類だけ部屋干ししたりといったように、季節やその時の状況によっても左右されていた。
そこでパナソニックでは、部屋干しの状況によって、選択できる3つのモードを用意。縦に移動するルーバーと、横に移動するルーバーとを組み合わせ、広く干すときにはワイドモード、少量の洗濯物を乾かす際には風量を集中させるスポットモード、量が多く重ねるように干すときには、上下左右の2つのルーバーを動かし、風を攪拌することで、多くの洗濯物を満遍なく乾かせるウェーブモードを用意。最上位モデルに搭載したワイド3Dルーバーでは、左右100度、上下最大160度に風を展開でき、1分間に3.9立方mの大風量を実現した。
「とくに、スポットモードでは、早く乾かしたいという場合に効果的であり、半分ぐらいの時間で乾かすことができる」という。
部屋干しの状況によって選べる3つのモードを用意した | ルーバーは左右100度、上下最大160度に風を展開する |
3つめが衣類乾燥モードの設定だ。ここでは、とくに早く乾かしたいときには「速乾モード」を選択できるようにし、一方で、電気代節約を優先する際には「エコモード」を選べるようにした。
「フルタイムで働いている主婦の50%以上が夜の時間帯に洗濯している。だが、夜に洗濯後、明日の朝まで一晩かけて乾かせばいいというような場合、エコモードを選択することができるようにした」
速乾モードでは、4kgの洗濯物を乾燥させるのに4時間程度のものが、エコモードでは6~7時間程度と長くなるが、消費電力量は約半分にまで削減できるという。
そして、2009年モデルから採用して好評なのが、乾き具合の「見える化」である。
ドライナビと呼ぶこの機能はセンサー機能と連動させたもので、乾燥開始時点では、洗濯物のマークが3つ表示されているが、乾燥が進むたびに洗濯物の表示枚数が減り、乾燥が終了すると点灯し、さらに運転を自動的に停止する。
「すべての洗濯物に触れなくても、乾き具合が確認できるほか、遠くからも確認できるのが狙い」という。同機能は最上機のハイブリッド式のF-YHFX120に搭載されている。
本体上部の操作パネル。エコモードなどの運転コースはここで操作する | 洗濯物の乾き具合をランプで知らせる「ドライナビ」機能 | 本体上部の画面にTシャツのアイコンで表示される |
■ナノイー搭載で部屋干しがさらに進化
2010年モデルでの新機能は、同社独自のナノイー機能の搭載だが、これも部屋干しという点では、大きな威力を発揮することになる。
ナノイーが部屋干しで威力を発揮する理由の1つが、除菌機能だ。
「これまでにも自然乾燥に比べると、7割程度まで菌の抑制効果はあったが、ナノイーで実現する99%といった『除菌効果』といえるレベルにはなかった。除菌に対するニーズは高く、今年の製品ではこの点が大きな訴求ポイントになる」とする。
そして、ナノイーは、布製品の脱臭効果に対するメリットも大きい。衣類に対しては、菌よりもニオイの付着のほうが気になるという声が多く、ナノイーの脱臭効果は効果的だ。
「スーツに付着したタバコ臭、ソファに付着したペット臭、衣類に付着した体臭といったようにニオイに対して、多くの人が敏感になっている。ナノイーを活用することで、ニオイの悩みも、除湿乾燥機で解消できるようになった」
ナノイーによる部屋干し臭抑制効果 | 衣類に付着したタバコのニオイなどにも効果的という |
ナノイー搭載製品では、「衣類リフレッシュモード」を用意。「普段洗えないようなスーツやコートなども、これにより、除菌、脱臭が可能になる」という。
衣類リフレッシュモードでは、ナノイーを飛ばす送風運転だけを行なうため、除湿機能の際に出る水捨てが不要になり、ランニングコストも1時間あたり約2円とお得だ。
2010年モデルからナノイー機能の搭載できた背景には技術的な工夫がある。ナノイーはもともと水分を利用するだけに、水分を除去する除湿乾燥機には適さないものだった。
パナソニックエコシステムズ 健康空質ビジネスユニット技術グループ除湿チーム 堀達也氏) |
だが、低湿な空気を吹き出す風路を避ける形で、風路外側にナノイーユニットを搭載。誘引孔を設け、吹き出し口の除湿風に、ナノイーを誘引して放出できるようにしたという。
「さらに、ナノイーユニットの小型化、高性能化も、除湿乾燥機で安定的なナノイーを発生させることにつながっている」(パナソニックエコシステムズ 健康空質ビジネスユニット技術グループ除湿チーム・堀達也氏)としている。
■独自のハイブリッド方式で年中快適に使える除湿機に
パナソニックの除湿乾燥機を語る上で欠かすことできない特徴の1つがハイブリッド方式である。
2005年から採用したハイブリッド方式は、長年に渡り除湿乾燥機の主流であったコンプレッサー式と、現在、多くの採用しはじめているデシカント方式の両方を組み合わせたものだ。
コンプレッサー式は、その名のとおり、エアコンや冷蔵庫などにも使われているコンプレッサーを利用。現在でも市場の約半分がコンプレッサー方式だ。冷風機能や電気代という点ではメリットがあるが、寒さに弱いというデメリットがあり、冬場では求める能力が出にくいという課題があった。除湿乾燥機が1年間を通じて利用されるというニーズの変化を捉えると機能面で限界があったともいえる。
これに対して、デシカント方式は、空気中の水分をデシカント素子に吸着させ、ヒーターの熱であたため、熱交換機で結露させて、除湿するというもの。冬場に能力は落ちないというメリットはあるものの、ヒーターを使用するために室温が上昇。とくに夏場の利用には適していないという問題があった。
「ハイブリッド方式は双方のいいところ取りをして、年間を通じて利用できるようになった」とする。
ハイブリッド方式では、放熱器の排熱を利用して除湿ローターの水分を放湿。高湿の空気を作りだすことで、冷却器での効率的な除湿を可能にしている。さらに、補助ヒーターを使い除湿ローターの水分をより多く放湿。冷却器での除湿量をより多くすることもできる。それだけではない、冷却器で冷やされた空気は除湿ローターに水分をより多く吸着しやすいため、さらに除湿能力の向上につながっている。
ハイブリッド式は、従来の除湿方法であるコンプレッサー式とデシカント式の良いところを集めたような技術であるという | ハイブリッド式の内部モデル | まずは室内の空気を放熱器で温める |
除湿ローターを通することで、水分を放湿し、冷却器で除湿する | その後、さらに除湿ローターで水分を吸湿し、湿気の少ない空気を放出する |
「理論的にはできるが、本当に実現するのかという不安もあった。だが、開発を進めるうちに、省エネ化や、より効果的な除湿が可能な仕組みへと進化させることができた。2005年に発売した第1号モデルでは、補助ヒーターを使わざるを得なかった場面でも、いまでは排熱利用の効率化が進み、それが通常利用時には不要になったり、冷却器の能力を高めることで排熱バランスを改善するなど、大幅な進化を遂げている」(堀氏)
他社が追随できないハイブリッド方式を完成させた背景には、コンプレッサー方式とデシカント方式の2つの技術ノウハウを持つ技術者が社内におり、それぞれの特徴を融合させることができた点が大きい。
中村邦夫会長(当時社長)が推進した事業再編に伴い、従来はパナソニック、パナソニックエコシステムに分かれていたコンプレッサー方式とデシカント方式のノウハウが一本化したことも見逃せない要素だ。
また、これらの技術を同社独自のブラックボックス技術として、また知財として抑えていることも、他社が追随できない理由の1つだ。そして、多くの技術をグループ内で内製できることも強みとなっている。
「今後はさらなる省エネ化の実現に向けて、ヒーターなどの改善に取り組んでいきたい」とする。
加来氏は、「除湿乾燥機が衣類乾燥にも最適であること、年間を通じて使用できる商品であることをもっと訴求していく必要がある」と前置きし、「ナノイーを搭載したことで、年間を通じて利用できるという訴求が、より強く行なえるようになった。店頭展示の強化を図り、需要を喚起していきたい」と意気込む。
除湿乾燥機のトップメーカーとして、パナソニックは、市場開拓と、新たな用途提案を強力に推進する考えだ。
2010年6月16日 00:00