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[ダウン症児と私54]年長クラスを前に練習成果が後戻り、歩けなくなる

幼稚園の先生と目標を共有しながら、少しずつできることが多くなっていたユキトくん。今回は、積極的に歩こうとしていたユキトくんが、年長クラスを前に突然歩かなくなってしまったときのお話です。周りのお友だちが歩けるようになる姿を横目で見ながら、ユキトくんが歩けるように頑張ってきたナナさんでしたが、歩かなくなってしまったユキトくんを目の前に、精神的に疲れてしまったのです。

 

舌と耳の治療後、秋の行楽シーズンにお出かけが増える

ユキトは年中の7月に、幼稚園を卒業したら通いたいと思っていた小学校の特別支援学校を見学しました。希望の特別支援学校へ入るためにも、幼稚園生活の残り1年半、食事や歩行を頑張っていこうと思った矢先、歩行訓練中に転んで舌を切ってしまいました。幸いにも傷はすぐに治ったので、幼稚園のお休み期間は短くて済みましたが、今度は耳が化膿してしまい病院通いが多くなりました。そして耳の症状が完治したころには秋が訪れ、行楽旅行に出掛けたり、私の実家へ帰ったりと、外出が多くなりました。

 

ベビーカーでのお出かけ、自分から立たなくなったユキトくん

旅行やお出掛けのときは、弟もいてバタバタしてしまうので、ユキトの移動にはずっとベビーカーを使っていました。そんなことをしていたところ、ユキトはまったく歩かなくなってしまったのです。今までは積極的に自分から立って、不安定ながらも10歩くらい歩いていたのに、2週間くらいベビーカーを使い続けていたら、自分から立つこともしなくなってしまいました。私が立たせても歩こうとせず、無理に歩かせようとするとすぐに座り込んでしまうのです。

 

突然歩けなくなり、次年度の進路が決められなくなる

このころはちょうど10月だったので、周りの友だちはだんだんと次年度の進路が決まっていきました。ユキトは、年長では歩ける子のコースを希望していましが、歩かなくなってしまったので担任の先生との進路の話し合いもできていませんでした。通っている福祉幼稚園は縦割りクラスなので、2つ年下の子も、3つ年下の子もいます。春の時点ではユキトが1番歩けそうだったのですが、年下の子1人に抜かされ、2人に抜かされ、気が付けばクラスの半分以上の子がしっかり歩けるようになっていました。一方、突然歩かなくなってしまったユキトは、来春から歩けるコースに進めるかどうかが分らなくなってしまいました。

 

精神的に疲れてしまったナナさん

2歳すぎで捕まり立ちを始めたときから3年近くも歩く練習をしてきました。やっと歩き始めたのに、ベビーカーに乗せる時間が長くなってしまっただけでまた歩けなくなってしまったのです。同じダウン症でも成長は、人それぞれだと分っていても、周りのお友だちは捕まり立ちから歩くまで半年くらい、3歳くらいで歩けるようになる子がとても多いのです。ユキトは内臓など、耳以外の疾患はほとんどなく、もうすぐ5歳になるというのに、全く歩かなくなってしまったのです。こんなことになってしまって、私は精神的に疲れてしまいました。

 

何でも覚えてくる弟の方が可愛く思えるようになり、諦めが

一方、2歳年下の弟はユキトが年中になった春から保育園に通い始めました。ダウン症の兄の介護を理由に、スムースに保育園に入園できました。当たり前ですが、弟は保育園で習ったことをどんどん吸収して、私が教えていないこともあっという間にできるようになっていきます。私はユキトよりも弟の方が可愛くなってしまい、ユキトを歩かせるのを諦めてしまいました。特別支援学校を見学して、年長は歩ける子のコースを目指していたけど、私は疲れてしまったのです。

健常の弟が可愛いから、もうそれでいいやとも思うようになりました。でも幼稚園には私も一緒に行って療育しなくてはいけません。歩かなくなって座ってばかりのユキトをはじめは無理やり引っ張って歩かせようとしましたが、私のやる気もなくなり、そのまま座らせたまま遊ばせるようになってしまいました。周りの年下の友だちは歩いて元気に遊んでいます。

 

幼稚園の先生に心中を告白

そんな状況にとても辛くなってしまった私は、担任の先生に相談しました。「2週間くらいベビーカーに乗せてばかりいたら歩かなくなってしまいました。始めは歩かせようと頑張りましたが、全く歩かなくなってしまい、辛くなってきましたし、弟の方が可愛くなってしまいました」とお話しすると、先生は、「親だったら、普通の兄弟でも、あの子は出来が良くないとか、この子の方が可愛いとか、もちろんそういう感情はあるのよ。ハンディのある子を頑張って育てているのだから、そういう時期があって当たり前。大丈夫、ユキトくんはまた歩けるようになるし、弟はユキトくんの面倒をよく見てくれるようになるから」と、言ってくれました。私は、この言葉を聞いてやっと、無理やりではなくユキトのペースに合わせながらまた歩けるように頑張っていこうと思えるようになりました。

その後、義父にお願いしてときどき公園に連れて行ってもらい、歩く練習を意識的にするようにしました。それから1カ月くらいで少しずつ歩き始め、1カ月半経つと、前と同じくらい歩く様子が見られるようになりました。そして12月には、無事ユキトは5歳になりました。新年を迎えてからやっと進路相談ができ、来年度の年長クラスは月曜から金曜まで通う歩ける子のコースに進級が決まりました。本当に嬉しかったです。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。